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18.勝算がおありなのですか?

父からの提案

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「では、こちらからひとつ提案です。――春凪はな織田家そちらさまに嫁がせる条件として、その子が最初に生んだ子供を柴田しばたにくださる、というのは如何でしょう?」

 言って、笑顔で付け足された父の言葉に、私は瞳を見開いた。

「もちろん乳飲み子の間はそちらで面倒を見て頂いたんでので」


 そんな……生まれてくる子供の未来を勝手に!
 黙り込んで何を考えているのかと思ったら、本当に酷い!


 あまりの言い分に思わずキッ!と父を睨みつけて身を乗り出しかけた私を制して、宗親むねちかさんが動いた。


「――残念ですが何人子宝に恵まれようとも、我が子を手放すつもりは僕にも彼女にもありませんよ?」

 宗親むねちかさんの取り付く島もない物言いに、父が負けじと言い返す。

「男女関係なく第一子で構わないと譲歩しているのに、ですか?」

 その言葉は言外に、例えと言っているのに?と言う意図が見え隠れして、私は心の底から悲しくなった。

 そもそも生まれてくるかどうかも分からない子供のことを勝手に決めようとしていることにも!
 その子供のことをまるで物品の授受ででもあるかの様にサラリと権利を主張してしまえる無神経さにも!
 あまつさえ男女の分け隔てなく引き受けることを「譲歩」という言葉で片付けようとする物言いにも!

 何もかもに堪らなく腹が立って。


 私は無意識に宗親むねちかさんに絡められたままの手指に力を込めてしまう。

 ――と、わたしの怒りを代わりに吐き出してくださったみたいに、宗親むねちかさんが心底呆れたように吐息を落とされた。

柴田しばたさん。失礼承知で申し上げます。――子供は……僕の愛する春凪はなさんも含め、あなた方が家を存続させるための道具ではありませんよ?」

 宗親むねちかさんは、怒りに震える私をその広い背中に隠すようにして、気持ち低音で淡々と言葉を紡ぐ。

 私は、宗親むねちかさんの言葉に、心臓を撃ち抜かれた気がして瞳を見開いて。
 思わず見遣った宗親むねちかさんの横顔が、いつもの何倍も素敵に見えた。

 仮初かりそめの恋人への嘘偽りにまみれた愛の言葉だとしても、こんなふうに私自身を尊重するような言葉、ハッキリと言われたことがなかったから……。
 今の私には十分すぎるほど嬉しくて泣きそうになる。
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