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32.春凪の愚痴と宗親の本心
足利くんのアパートは防音完璧?
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結局新たな店を見つけるのが面倒だと言う話になって、同期会はコンビニでお酒やおつまみを買って、足利くんの家ですることになった。
みんなにお伺いを立てて、大好きなカマンベールチーズをカゴの中に入れさせてもらったところへ、
「足利ん家さぁ、防音だけは完璧だから少々騒いでも平気だよぉ~」
そう言ってニコッと笑ってくれたのは営業のワンコ系・武田くんだった。
「だけってなんだよ。他も結構充実しとるわ」
ムスッとした顔で足利くんが言って、北条くんが「この男、こう見えてバンドに入ってる」と教えてくれる。
「バンド?」
聞いたら「そうそう。俺、ヴィジュアル系バンドのヴォーカルなんだぜ?」とか……。
体育会系にしか見えない足利くんから、V系バンドのイメージがわかなくて、人って見かけによらないなって思ってしまった。
「今度カラオケで俺の魂の叫び、披露してやるよ」
ニカッと笑って自信満々な足利くんに、「人の趣味をとやかく言うつもりはないが、他人を巻き込むのはやめてやれ」と北条くんはにべもなくて。
要するに、部屋で歌ったり楽器を奏でたりしても大丈夫なように、音大生向けの物件に住んでいるんだとか。
「足利さ~、こう見えて結構真剣に取り組んでるんだよ~」
サラリと武田くんがそんなことを言って、私は思わず足利くんをしげしげと見つめてしまった。
「柴田春凪。今の足利をいくら見つめてもステージの上のコイツとは別人だからな?」
北条くんに苦笑混じりにそう言われて、私は小さく吐息を落とす。
「うん、全然イメージわかない……」
歌う時の足利くんは髪型とか色々変えたりメイクをしたりするのかな。
どんなに思い浮かべようとしても、ジャージの方が似合いそうな足利くんを前にしたら、全然ぴんとこなかった。
(あ、でも……今の口ぶりからすると、北条くんは聴きに行ったことあるのかな? 正直そっちの方もイメージわかないんだけどっ!)
ヴィジュアル系バンドの観客席にいる、仏頂面眼鏡のスーツ男性。
うー。違和感しかない……よ?
足利くんがいつか言った通り、北条くんは口こそ毒舌気味だけど、(友達思いの)優しい男性なのかも知れない。
***
「カンパーイ」
足利くんの部屋は1LDKの角部屋で、八畳の広い部屋の隣に二畳くらいの小さな防音室がくっついた間取りになっていた。
防音室にはキーボードやスピーカーなどの機材が所狭しと置かれていて、とてもみんなでワイワイやれる気配ではなくて。
「んなわけで、防音室付き物件っちゅっても、こっちの部屋にいたんじゃ意味ないんだけどね」
ククッと笑う足利くんに、みんなが「確かに」とうなずいて。
あんまりどんちゃん騒ぎをするのは良くないねってそれ相応な声音で静かに飲むことにした。
みんなにお伺いを立てて、大好きなカマンベールチーズをカゴの中に入れさせてもらったところへ、
「足利ん家さぁ、防音だけは完璧だから少々騒いでも平気だよぉ~」
そう言ってニコッと笑ってくれたのは営業のワンコ系・武田くんだった。
「だけってなんだよ。他も結構充実しとるわ」
ムスッとした顔で足利くんが言って、北条くんが「この男、こう見えてバンドに入ってる」と教えてくれる。
「バンド?」
聞いたら「そうそう。俺、ヴィジュアル系バンドのヴォーカルなんだぜ?」とか……。
体育会系にしか見えない足利くんから、V系バンドのイメージがわかなくて、人って見かけによらないなって思ってしまった。
「今度カラオケで俺の魂の叫び、披露してやるよ」
ニカッと笑って自信満々な足利くんに、「人の趣味をとやかく言うつもりはないが、他人を巻き込むのはやめてやれ」と北条くんはにべもなくて。
要するに、部屋で歌ったり楽器を奏でたりしても大丈夫なように、音大生向けの物件に住んでいるんだとか。
「足利さ~、こう見えて結構真剣に取り組んでるんだよ~」
サラリと武田くんがそんなことを言って、私は思わず足利くんをしげしげと見つめてしまった。
「柴田春凪。今の足利をいくら見つめてもステージの上のコイツとは別人だからな?」
北条くんに苦笑混じりにそう言われて、私は小さく吐息を落とす。
「うん、全然イメージわかない……」
歌う時の足利くんは髪型とか色々変えたりメイクをしたりするのかな。
どんなに思い浮かべようとしても、ジャージの方が似合いそうな足利くんを前にしたら、全然ぴんとこなかった。
(あ、でも……今の口ぶりからすると、北条くんは聴きに行ったことあるのかな? 正直そっちの方もイメージわかないんだけどっ!)
ヴィジュアル系バンドの観客席にいる、仏頂面眼鏡のスーツ男性。
うー。違和感しかない……よ?
足利くんがいつか言った通り、北条くんは口こそ毒舌気味だけど、(友達思いの)優しい男性なのかも知れない。
***
「カンパーイ」
足利くんの部屋は1LDKの角部屋で、八畳の広い部屋の隣に二畳くらいの小さな防音室がくっついた間取りになっていた。
防音室にはキーボードやスピーカーなどの機材が所狭しと置かれていて、とてもみんなでワイワイやれる気配ではなくて。
「んなわけで、防音室付き物件っちゅっても、こっちの部屋にいたんじゃ意味ないんだけどね」
ククッと笑う足利くんに、みんなが「確かに」とうなずいて。
あんまりどんちゃん騒ぎをするのは良くないねってそれ相応な声音で静かに飲むことにした。
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