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40.記憶と結びつくもの

許可をください!

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「明後日。日中ほたるとお出かけする許可をください! む、宗親むねちかさんがお仕事を終えられるまでには絶対絶対戻ってきますので! お願いします!」

「……春凪はな?」

 Misokaミソカから帰宅するなり拝むようにして宗親さんへ畳み掛けた私に、彼が珍しくお酒の気配を感じさせる鼻に掛かった声で私の名前をつぶやいた。

 年末年始の連休を間近に控えたこの時期。
 普通に考えても忙しいであろうところにもってきて、宗親さんの転職と自分自身の退職に向けての準備などで休んでいる場合じゃないことは百も承知の上でのワガママなおねだりだ。

 ガバッと頭を下げたまま、顔を上げられない私は宗親さんの出方が気になってフルフルと身体を震わせる。
 お酒の力を借りていなかったら、こんな無謀なお願い自体出来なかったかも知れない。

 でも仕方ないじゃない。

 ちょうど二日後の明後日が、ほたるの仕事がお休みで、もっと言うとそこが正にクリスマスイブ当日と言う差し迫った時期だったんだもん。

 八月七日の宗親むねちかさんのお誕生日に何のお祝いも出来なかったダメダメ妻な私としては、何としてもこのクリスマスだけは外せなかったの。

 ほたると、Misokaミソカで二人、男性陣の気配を気にしながら作戦会議をして、プレゼント選びに出掛けるならそこしかない!という結論に達したのだ。


「あ、あの……ほたるから明智あけちさんのお誕生日プレゼントを選ぶのに付き合って欲しいって頼まれて……それで」

 恐る恐る彼の様子をうかがうように顔を上げて。
 本当は自分自身が宗親さんのクリスマスプレゼントを選びたい癖に、すべての罪をほたるになすり付けるような言い方をした私に、宗親さんが一瞬だけスッと目をすがめたのが分かった。

 何につけても察しの良い宗親さんをあざむくことなんて無理なのかもしれない。

 その瞬間そんなことを思って、ヘビに睨まれたカエルの気持ちでキュゥッと身体を縮こまらせたら、「明智の誕生日、三十日でしたっけ」と存外穏やかな声が降り注いできた。

 それと同時、ふわりと頭を撫でられて、「それなら仕方ありませんね。でも、夜は絶対僕のために時間をあけること。――いいですね?」と間近でじっと顔を見つめられる。


 康平との一件があって以来、宗親むねちかさんの過保護には拍車が掛かっている。
 そんな彼を説得してほたると二人きりで出かけることは、かなり困難を極めるだろうと覚悟していた私は、余りにあっさりOKをもらえたことに拍子抜けしてしまった。
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