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2.同窓会
売り子の誘い
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「……羽住くん?」
その様子に日織が不安そうに羽住の顔を見て。
「何だかよく分かんねぇけど……俺だったらそんな訳分かんねぇ状態にはしねぇんだけどな、と思ってな」
ポツン……と落とされて、日織はキョトンとした。
羽住がそう言う状態にしないのと、自分の現状とは関係ないと思ったからだ。
「えっと……。は、羽住くんの奥さんになられる方は幸せです、ね?」
自分も、現状はどうあれ修太郎と夫婦になれてとってもとっても幸せなのだけれど、何と答えたらいいのか分からなくて思わずそう言ってしまって。
そのことが羽住に変な誤解をさせて、大好きな修太郎に要らぬ喧嘩を売らせてしまうだなんて、その時の日織は思いもしなかったのだ。
***
「なぁ藤原。お前、息抜きにもなるしさ、俺んトコの蔵、手伝いに来ねぇ?」
酒まつりの時の売り子を探しているのだと続けられて。
「お前、日本酒好きそうじゃん? 俺んトコの蔵の酒も結構飲んでくれてんだろ? アレコレ教えなくても最初からある程度基礎知識がある人間が手伝ってくれたらこっちも楽だし有難ぇんだわ……」
そう続けられて、日織は戸惑いとともに、誰かから必要とされることへのワクワク感が湧き上がってくるのも感じて困惑する。
修太郎と一緒に、生まれて初めて市役所で働いた経験は、日織にとって間違いなくかけがえのない宝物だったから。
羽住からの売り子への誘いで、それをふと思い出したのだ。
仕事をしてその対価として得たお金で、大好きな修太郎に何かプレゼントができたなら。
いつも与えられてばかりいる日織だから……そう考え始めたら夢想が止まらなくなって。
今、家で花嫁修行の一環として家事手伝いをしながら料理のノウハウを実母や義母から教わるのも楽しい毎日ではあるのだけれど。
出来たらまた、ほんのちょっとでいいから外で働いてみたいという気持ちもあって。
何より――。
「藤原が来てくれたらうちの蔵、すげぇ助かるんだけど」
自分が他者から必要だと言われるのは、日織の心を堪らなく揺さぶった。
「あ、あのっ。すっごくすっごく興味津々なのですっ。でも――」
「ああ、家の人とよく相談した後に返事くれたんで構わねぇよ。即決は求めてねぇ」
言われて、「ってわけで――」とスマホを取り出された日織は「ん?」と思う。
「連絡先」
聞いておかないと、是か非か聞けねぇだろ?と続けられた日織は、「ああ、その通りでしたっ」と慌てて鞄の中をガサガサする。
取り出したのは、修太郎とお揃いの食べかけリンゴマークメーカーの、真っ赤なスマートフォン。
その様子に日織が不安そうに羽住の顔を見て。
「何だかよく分かんねぇけど……俺だったらそんな訳分かんねぇ状態にはしねぇんだけどな、と思ってな」
ポツン……と落とされて、日織はキョトンとした。
羽住がそう言う状態にしないのと、自分の現状とは関係ないと思ったからだ。
「えっと……。は、羽住くんの奥さんになられる方は幸せです、ね?」
自分も、現状はどうあれ修太郎と夫婦になれてとってもとっても幸せなのだけれど、何と答えたらいいのか分からなくて思わずそう言ってしまって。
そのことが羽住に変な誤解をさせて、大好きな修太郎に要らぬ喧嘩を売らせてしまうだなんて、その時の日織は思いもしなかったのだ。
***
「なぁ藤原。お前、息抜きにもなるしさ、俺んトコの蔵、手伝いに来ねぇ?」
酒まつりの時の売り子を探しているのだと続けられて。
「お前、日本酒好きそうじゃん? 俺んトコの蔵の酒も結構飲んでくれてんだろ? アレコレ教えなくても最初からある程度基礎知識がある人間が手伝ってくれたらこっちも楽だし有難ぇんだわ……」
そう続けられて、日織は戸惑いとともに、誰かから必要とされることへのワクワク感が湧き上がってくるのも感じて困惑する。
修太郎と一緒に、生まれて初めて市役所で働いた経験は、日織にとって間違いなくかけがえのない宝物だったから。
羽住からの売り子への誘いで、それをふと思い出したのだ。
仕事をしてその対価として得たお金で、大好きな修太郎に何かプレゼントができたなら。
いつも与えられてばかりいる日織だから……そう考え始めたら夢想が止まらなくなって。
今、家で花嫁修行の一環として家事手伝いをしながら料理のノウハウを実母や義母から教わるのも楽しい毎日ではあるのだけれど。
出来たらまた、ほんのちょっとでいいから外で働いてみたいという気持ちもあって。
何より――。
「藤原が来てくれたらうちの蔵、すげぇ助かるんだけど」
自分が他者から必要だと言われるのは、日織の心を堪らなく揺さぶった。
「あ、あのっ。すっごくすっごく興味津々なのですっ。でも――」
「ああ、家の人とよく相談した後に返事くれたんで構わねぇよ。即決は求めてねぇ」
言われて、「ってわけで――」とスマホを取り出された日織は「ん?」と思う。
「連絡先」
聞いておかないと、是か非か聞けねぇだろ?と続けられた日織は、「ああ、その通りでしたっ」と慌てて鞄の中をガサガサする。
取り出したのは、修太郎とお揃いの食べかけリンゴマークメーカーの、真っ赤なスマートフォン。
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