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14.予測不能の猪突猛進娘
「この人は僕の妻だ、手を出すな」という牽制
この、凶悪に可愛いけれど、思い立ったら即動いて何をやらかすか予測不能の猪突猛進娘は、きっと〝何か心動かされること〟があって、言いつけを忘れてしまったに違いない。
「あっ! 今日は私、一斗さんにお仕事で利き酒をさせていただいたのですっ!」
修太郎が、どこか険のある声音になっていることに気付いていないのだろうか。
日織が悪びれた様子もなくそう報告してきて。
「――利き酒?」
酒造にバイトに来ているのだから酒は潤沢にあるだろうとは思っていた修太郎だ。
だが、売る側に回るはずの日織が、酒を〝振る舞われる〟側になるだなんて、誰が想像できただろう?
修太郎はじっとこちらを見ている和装眼鏡男の視線に、このままここで可愛くも憎らしい妻の報告を聞くことに苛立ちを覚えた。
(僕の日織さんに勝手に酒を盛るとか、許し難いですね)
もう一分一秒だってそんな男に愛する日織を見られたくないと思ってしまった、了見の物凄ぉーく狭い修太郎だ。
「とりあえず話の続きは車の中で」
それで、〝利き酒であったこと〟について修太郎に話したくてうずうずしている様子の日織の腰を抱くと、一斗の視線から小柄な日織を隠すように身体の向きを変えて歩き出す。
「あっ、もしかして、お約束の時間が迫っているのですかっ?」
そんな修太郎の態度に、日織は式場との打ち合わせ時間が押していると思ったみたいだ。
実際にはここから打ち合わせ場所まで十分と掛からないし、余裕で辿り着けるのだれど。
修太郎は日織の勘違いを肯定も否定もせず、気持ち日織の腰を抱く腕に力を込めて、愛車の助手席ドアを開けた。
そのまま日織を抱き上げて中に乗せるなり、
「シートベルトしますね」
言って、このところは日織に任せていたシートベルトを、今日は自分が付けますね、と宣言する。
もちろん一斗が見ているから。わざと「この女性は僕の妻だ、手を出すな」と見せつけるように日織に覆い被さって、シートベルトを嵌めたに過ぎない。
だが、常とは違う修太郎の様子に、日織はちょっぴり驚かされてしまったらしい。
「もぉ、修太郎さんったら……い、いきなりびっくりしたのですっ。――私、自分でシートベルトを付けられないほど疲れてはいないのにっ。本当甘々さんな困ったちゃんなのです」
一気にそこまでまくし立てると、こらえ切れないみたいにクスクス笑って。
シートベルトをつけ終わって自分から離れようとする修太郎の服をギュッと握ると、「でも……実は私っ、修太郎さんに甘やかされるの、嫌いじゃないのですっ。というよりむしろ大歓迎なのです……。ご、ご存知でしたか?」と修太郎の耳元、囁くようにくすぐったいセリフを落とした。
修太郎はここが羽住酒造の前で、一斗が未だにこちらを見ている可能性があるというのも失念して、日織を無茶苦茶にかき乱したくなってしまった。
予測不能の猪突猛進娘は、時折こんなふうにTPOなんて完全無視で、修太郎の理性を吹っ飛ばそうとしてくるから本当に危険なのだ。
***
「日織、あとで目一杯甘やかしてさしあげますので、とりあえず今は離して?」
修太郎がなけなしの理性を総動員して日織にそうお願いすると、日織がピクッと身体を震わせて、「約束なのですっ」と期待に潤んだ瞳で修太郎を見上げてきて。
それがまた色っぽくて、修太郎は心の中、「だから日織さん!」と、無自覚に自分を煽りまくってくる愛らしい妻に駄目出しをする。
「覚悟しておいてくださいね」
色々と――。
そう付け加えたことは内緒だ。
「あっ! 今日は私、一斗さんにお仕事で利き酒をさせていただいたのですっ!」
修太郎が、どこか険のある声音になっていることに気付いていないのだろうか。
日織が悪びれた様子もなくそう報告してきて。
「――利き酒?」
酒造にバイトに来ているのだから酒は潤沢にあるだろうとは思っていた修太郎だ。
だが、売る側に回るはずの日織が、酒を〝振る舞われる〟側になるだなんて、誰が想像できただろう?
修太郎はじっとこちらを見ている和装眼鏡男の視線に、このままここで可愛くも憎らしい妻の報告を聞くことに苛立ちを覚えた。
(僕の日織さんに勝手に酒を盛るとか、許し難いですね)
もう一分一秒だってそんな男に愛する日織を見られたくないと思ってしまった、了見の物凄ぉーく狭い修太郎だ。
「とりあえず話の続きは車の中で」
それで、〝利き酒であったこと〟について修太郎に話したくてうずうずしている様子の日織の腰を抱くと、一斗の視線から小柄な日織を隠すように身体の向きを変えて歩き出す。
「あっ、もしかして、お約束の時間が迫っているのですかっ?」
そんな修太郎の態度に、日織は式場との打ち合わせ時間が押していると思ったみたいだ。
実際にはここから打ち合わせ場所まで十分と掛からないし、余裕で辿り着けるのだれど。
修太郎は日織の勘違いを肯定も否定もせず、気持ち日織の腰を抱く腕に力を込めて、愛車の助手席ドアを開けた。
そのまま日織を抱き上げて中に乗せるなり、
「シートベルトしますね」
言って、このところは日織に任せていたシートベルトを、今日は自分が付けますね、と宣言する。
もちろん一斗が見ているから。わざと「この女性は僕の妻だ、手を出すな」と見せつけるように日織に覆い被さって、シートベルトを嵌めたに過ぎない。
だが、常とは違う修太郎の様子に、日織はちょっぴり驚かされてしまったらしい。
「もぉ、修太郎さんったら……い、いきなりびっくりしたのですっ。――私、自分でシートベルトを付けられないほど疲れてはいないのにっ。本当甘々さんな困ったちゃんなのです」
一気にそこまでまくし立てると、こらえ切れないみたいにクスクス笑って。
シートベルトをつけ終わって自分から離れようとする修太郎の服をギュッと握ると、「でも……実は私っ、修太郎さんに甘やかされるの、嫌いじゃないのですっ。というよりむしろ大歓迎なのです……。ご、ご存知でしたか?」と修太郎の耳元、囁くようにくすぐったいセリフを落とした。
修太郎はここが羽住酒造の前で、一斗が未だにこちらを見ている可能性があるというのも失念して、日織を無茶苦茶にかき乱したくなってしまった。
予測不能の猪突猛進娘は、時折こんなふうにTPOなんて完全無視で、修太郎の理性を吹っ飛ばそうとしてくるから本当に危険なのだ。
***
「日織、あとで目一杯甘やかしてさしあげますので、とりあえず今は離して?」
修太郎がなけなしの理性を総動員して日織にそうお願いすると、日織がピクッと身体を震わせて、「約束なのですっ」と期待に潤んだ瞳で修太郎を見上げてきて。
それがまた色っぽくて、修太郎は心の中、「だから日織さん!」と、無自覚に自分を煽りまくってくる愛らしい妻に駄目出しをする。
「覚悟しておいてくださいね」
色々と――。
そう付け加えたことは内緒だ。
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