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15.甘やかしと言う名のお仕置き*
いくら幻の酒だからってほだされすぎでしょう!
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車が走り出すと同時、日織がワクワクした様子で羽住酒造であったあれこれを語り始める。
「それで私、今日は初めて『波澄』の大吟醸をいただいたのですっ」
どうやら、羽住酒造の看板酒『波澄』には、主力商品となっている吟醸酒のほかに〝幻〟と称される大吟醸が存在しているらしい。
とうぶんは飲めないと思っていたそれを、今日は特別に利き酒と言う形で振舞ってもらったんだとか。
日織が今日一斗から教わったばかりの知識を鼻息も荒く説明してくれるのを、ハンドルを握ったまま聞きつつ、修太郎は心中穏やかではなかった。
(いくら幻の酒だからってほだされすぎでしょう!)
日織が日本酒好きなのは知っていたけれど、ここまでとは思っていなかった修太郎だ。
日織に対する考え方を改めねば、と顔には出さず一人ひそかに嘆息する。
とりあえず今から結婚式の打ち合わせがあるから、それが終わるまでは保留にするとして……。
(家に帰ったら甘やかしと言う名のお仕置きが必要ですね)
なんて思っていたりする。
明日も普通に仕事の日だし、今夜は別に日織を泊まらせる予定にはしていなかったのだが、場合によってはそこも変更してもいいかもしれない。
そのぐらいに、日織のあれこれに物申したい修太郎だ。
日織は例によって何ら悪びれた様子はないみたいだけど、そこが余計に性質が悪い。
修太郎は時折日織の言葉に軽く相槌を打ちながらも、頭の中では日織が親しげに「一斗さん」と名前呼びした、あの〝和装眼鏡男〟のことを、僕は問い質したくてたまらないんですけどね?とそればかりを考えていた。
まさかとは思うが、相手もうちの妻のことを名前で呼んだりしてませんよね?という懸念とともに。
実際には心配した通り「ビンゴ」だったりするのだが、知らぬが仏。
とりあえずまだその事実をあずかり知らない修太郎は、何とか落ち着いたふりをしていられた。
***
「前撮りで、ウェディングドレスまで着せて頂けるだなんて! 私、修太郎さんとお式が挙げられるだけでも大満足なのに……すっごくすっごく幸せ者なのですっ」
修太郎のマンションのリビングに入ってソファに腰掛けるなり、うっとりと溜め息をついた日織を見て、修太郎も自然笑みがこぼれてしまう。
そんな日織の足元には、少し大きめのボストンバッグが置かれていた。
結局打ち合わせの帰りにそのまま日織の実家に寄って泊まりの支度をさせると、藤原夫妻に断りを入れて可愛い妻を自宅に連れ帰ってきた修太郎だ。
どう考えても門限の二三時半までに日織を帰せる気がしなかったから。
式は修太郎側の家の都合で、和装での神前式になってしまった。
日織はそれでも幸せだと言ってくれたけれど、修太郎としてはやはり愛してやまない妻の洋装も諦められなくて。
今日は打ち合わせに際して、プランナーに前撮りで洋装も入れて欲しいとお願いしたのだ。
「それで私、今日は初めて『波澄』の大吟醸をいただいたのですっ」
どうやら、羽住酒造の看板酒『波澄』には、主力商品となっている吟醸酒のほかに〝幻〟と称される大吟醸が存在しているらしい。
とうぶんは飲めないと思っていたそれを、今日は特別に利き酒と言う形で振舞ってもらったんだとか。
日織が今日一斗から教わったばかりの知識を鼻息も荒く説明してくれるのを、ハンドルを握ったまま聞きつつ、修太郎は心中穏やかではなかった。
(いくら幻の酒だからってほだされすぎでしょう!)
日織が日本酒好きなのは知っていたけれど、ここまでとは思っていなかった修太郎だ。
日織に対する考え方を改めねば、と顔には出さず一人ひそかに嘆息する。
とりあえず今から結婚式の打ち合わせがあるから、それが終わるまでは保留にするとして……。
(家に帰ったら甘やかしと言う名のお仕置きが必要ですね)
なんて思っていたりする。
明日も普通に仕事の日だし、今夜は別に日織を泊まらせる予定にはしていなかったのだが、場合によってはそこも変更してもいいかもしれない。
そのぐらいに、日織のあれこれに物申したい修太郎だ。
日織は例によって何ら悪びれた様子はないみたいだけど、そこが余計に性質が悪い。
修太郎は時折日織の言葉に軽く相槌を打ちながらも、頭の中では日織が親しげに「一斗さん」と名前呼びした、あの〝和装眼鏡男〟のことを、僕は問い質したくてたまらないんですけどね?とそればかりを考えていた。
まさかとは思うが、相手もうちの妻のことを名前で呼んだりしてませんよね?という懸念とともに。
実際には心配した通り「ビンゴ」だったりするのだが、知らぬが仏。
とりあえずまだその事実をあずかり知らない修太郎は、何とか落ち着いたふりをしていられた。
***
「前撮りで、ウェディングドレスまで着せて頂けるだなんて! 私、修太郎さんとお式が挙げられるだけでも大満足なのに……すっごくすっごく幸せ者なのですっ」
修太郎のマンションのリビングに入ってソファに腰掛けるなり、うっとりと溜め息をついた日織を見て、修太郎も自然笑みがこぼれてしまう。
そんな日織の足元には、少し大きめのボストンバッグが置かれていた。
結局打ち合わせの帰りにそのまま日織の実家に寄って泊まりの支度をさせると、藤原夫妻に断りを入れて可愛い妻を自宅に連れ帰ってきた修太郎だ。
どう考えても門限の二三時半までに日織を帰せる気がしなかったから。
式は修太郎側の家の都合で、和装での神前式になってしまった。
日織はそれでも幸せだと言ってくれたけれど、修太郎としてはやはり愛してやまない妻の洋装も諦められなくて。
今日は打ち合わせに際して、プランナーに前撮りで洋装も入れて欲しいとお願いしたのだ。
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