【完結】【R18】崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜

鷹槻れん

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(8)まさか今、猫缶とか持ってたり?

もしもキミが望むなら

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 まるでじんが飼い主だとでも言わんばかりに懐くその姿に、正直驚いてしまった天莉あまりだ。

高嶺たかみね常務、まさか今、猫缶とか持ってたり……」

「するわけないよね」

 クスクス笑いながら言って猫の傍にしゃがみ込んだ尽が、彼女の喉元を愛し気に撫でるのを見て、天莉は胸の奥がキュンとうずくのを感じてしまった。

 尽はいい香りもするし、きっとこの子が帰宅したとき、飼い主は「おや?」と思うに違いない。

 そこまで考えてもしかして、と思う。


「あのっ。まさかその子の飼い主って高嶺常務だったりします?」

 天莉は今まで、この子が誰かにこんな無防備な姿を見せているところを見たことがない。

 尽の家からは大分離れているし、そんなことはないと分かっていても、つい聞いてしまいたくなった。

「まさか。俺は飼い猫を外に出す趣味はないよ? 飼うなら絶対家からは出さないようにするだろうね。外に出せばどんな危険があるか分からないし」

 そこで意味深長にちらりと天莉の方を見遣ると、「何より、俺は大事なモノは閉じ込めておきたい性分しょうぶんなんだ」と続けながら「ほら、お前もこんな人懐っこかったら危ないだろ」と猫に向かって話しかける。

 元々猫が好きだから、猫に懐かれる人と言うのに強い憧れがあったりする天莉だ。

(やめて下さい、常務。その姿は反則です!)

 博視ひろしは猫はおろか、動物全般が余り好きではなかったので、天莉は時折一人で猫カフェに行って猫不足を補給したりしていた。

 元々尽の容姿や立ち居振る舞いなどが嫌いではない天莉だ。
 何とか理性で落ちてはいけないと踏み留まっていたというのに。

 猫をいつくしむ尽の姿に、不覚にもときめいてしまった。

 これは非常によろしくない、と天莉の心の中で警鐘が鳴り響いたのは致し方のないことだろう。


 天莉あまりのマンション外に設置された外灯と、近くの電柱に取り付けられた街路灯の明かりの下で繰り広げられるイケメンとモフモフのラブシーン。

 そこに自分が混ざれないことにギュッと胸が苦しくなって、天莉は一歩ふたりに近付いた。

 だが口惜しいことに天莉の気配を感じるなり猫がパッと走って逃げてしまう。

「あ……っ」

 少しぐらい撫でさせてくれても……なんて気持ちが、所在なく伸ばしたままの指先からダダ漏れてしまった。

「天莉。もしもキミが望むなら……」

 立ち上がってスーツのしわを軽く伸ばしながら。
 天莉の方へ向き直ったじんが、下ろせないままの天莉の手にちらりと視線を投げかけて不敵に微笑んだ。

「一緒に暮らすに当たって、猫を家族に迎え入れるのも悪くないな……なんて思うんだが、どうだろう?」

 忙しくて飼えなかっただけで、元々俺は動物が嫌いじゃないしね、とこちらを見詰めてくる尽に、天莉は思わず前のめりになって問いかけていた。
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