【完結】【R18】崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜

鷹槻れん

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【2023ハロウィン】甘い甘いイタズラ*

トリック・オア・トリート!

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「ただいま」

 玄関を開けるなり、ニャニャーン♪と嬉し気にリビングの方から廊下を一直線に駆け出してきたオレオが、俺の姿を視界に収めるなりビクッとして急ブレーキを掛けた。

 そうして遠巻き。
 戸惑いに揺れる目で俺を見詰めてくる。


「……お帰りなさい、じんくん。ってあれ? オレオ?」

 続いてリビングからエプロンで手を拭いながら姿を現した天莉あまりが、廊下の途中に立ち止まってソワソワと玄関先を見続けているオレオに視線を落としてから、小首を傾げて俺の姿を認めて。

「……!?」

 オレオと同じように目を真ん丸にしてから、戸惑いに揺れる瞳で俺を見詰めてきた。


***


 だが、それもこれもすべて想定の範囲内。

「ただいま、天莉あまり

 言うなり、俺は「トリック・オア・トリート!」とつぶやいてマントをバサッと広げて天莉に近付いた。

 突然のマントのはためきに、オレオが驚いたように身体を跳ねさせると、匍匐ほふく前進さながらに腰を低めたまま廊下を逃げて行ってしまう。

 その様に少し申し訳ない気持ちになりつつも、俺は邪魔者オレオがいなくなったのをいいことに、その場へ立ち尽くしたままの天莉をギュッとマントの内側へ包み込むように抱き寄せて閉じ込めた。


***


 実は今日、うちの社の系列会社――ドラッグストア『アスマモル薬局本社前店』のイベントで、店員たちがハロウィンのコスプレをすることになっていた。

 企画部の人間にあらかじめ頼んで、黒の表地に裏地が真紅しんくになったマントを借り受けるようにしていた俺は、帰り際、副社長室で自前の黒いスーツに着替えてから、少し遅れ毛の出ていた髪の毛を再度綺麗なオールバックにセットし直した。

 そうして我が家の玄関扉を開ける直前――。
 スーツの上へ手配してもらったマントを羽織ってから「ただいま」を言ったのだ。


***


「あ、あの……じんくん……その格好は……」

「ん? 見て分からない? 吸血鬼の仮装だよ?」 

 言って、わざとらしく天莉あまりのほっそりとした首筋に唇を寄せると、チュッと音を立てて吸い付いた。

「ひゃぁっ」

 途端ビクンッと身体を跳ねさせて、天莉が首をすくめるから。
 俺は天莉の敏感な反応が、嬉しくてたまらない。

「気付いていないのかい、天莉。今日はハロウィンだよ? ――さて、俺の世界一可愛い奥さんは、お菓子とイタズラ、どっちがご所望かな?」

 ククッと笑いながら腕の中の天莉を逃がしたくないみたいにギュウッと捕まえたままに問い掛けたら、「お菓子……って答えても取りに行かせてはくれないんでしょう?」とか。

 本当うちの奥方様は優秀だ。

「そうだね。――ところで天莉。台所、ちゃんと火は止めてきたよね?」

 話しながらも合間合間にチュッ、チュッとリップ音を立てながら天莉の首筋に何度も何度も口付けを落として。

 時折わざと吸い付いたまま、意識的に天莉の肌を舌先でチロチロとくすぐった。

「はぁ、んっ、……じんくんっ。……火はっ、ちゃんと止めて……きたけどっ……。早くリビングに戻らなきゃ……オ、レオがっ。テーブルの上に並べたおかずにイタズラ、しちゃう……かもっ。……ぁんっ」

 懸命に話しながらも天莉が、俺の愛撫に応えるみたいに何度も何度も息を乱す様が可愛くて……。

 このままここでもっともっとイタズラしたくてたまらなくなったのだけれど――。
 折角天莉が作ってくれた料理をオレオにどうこうされてしまうのは面白くない。


「仕方がない……。一旦移動しようか」

 俺はわざと彼女の耳朶に吹き込むように「ほぅっ」と切なげな吐息を落とすと、天莉の首元に沈めた顔を上げた。
 そうして、マントを掻き分けるようにして天莉を横抱きに抱き上げると、キッチンと繋がったリビングへと歩を進める。

 そのままキッチンカウンター前に天莉あまりを下ろすと、後ろからぴったりと密着するように天莉を抱きしめて――。

 そうしておいて背後からスカート越し。
 天莉のふんわりと柔らかな臀部でんぶを撫でさすったら、天莉が「じんく、ダメ……ぇ」とつぶやいて、力が入らなくなった足を補うようにカウンターへ両手を付いた。

 オレオがそんな俺たちの姿を遠巻きに見ているけれど、マントで彼の方からは何も見えないのをいいことに、天莉のスカートをたくし上げてしまう。

「ヤダ、尽くんっ、こんなところでそんなっ……」

 今から俺が自分にしようとしていることに、きっと天莉は気付いているんだろう。

 口ではダメと言いながらも、声にどこか媚びるような甘さが乗っかっていることに気付かない俺じゃない。
 そのことを確認すべく、スッとかすめるように触れた天莉の下着のクロッチ部が、温かな湿り気を帯び始めていることに、俺はほの暗い喜びを覚えた。


「ねぇ天莉、首筋にちょっとだけ歯を当ててみてもいい?」

 今日の俺は吸血鬼だから。
 たまにはこういうプレイも悪くないはずだ。

「痛く……しない?」

 不安そうに俺を振り返ってきた天莉が、頭ごなしに〝ダメ〟と言わないのだって、きっとこういうプレイを彼女自身が楽しんでくれているからだろう。

「もちろんだよ」

 答えながら、俺は天莉の細い首筋にスーッと舌を這わせてから、やんわりと嚙みついた。

「……んっ」

 俺はさっき、天莉にお菓子の選択肢は与えなかったけれど、チュッと吸い上げた天莉の肌は、どこもかしこも不思議なくらい甘く感じられて――。

 俺は天莉にバレないように、服の襟元えりもとから見えるか見えないかと言う際どい位置に、赤々と所有痕キスマークを刻んだ。


 年に一度のハロウィンだ。
 このぐらいのイタズラ、許されるだろう?


   END(2023/10/30)
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