ちっちゃな魔女様は家出したい! 〜異世界の巨人の国で始める潜伏生活〜

夕木アリス

文字の大きさ
12 / 30

11。場所選びはお好みで

しおりを挟む
私の返事を聞いたユリウスは何故だかとても上機嫌だった。

「そうこなくっちゃね! じゃ、場所は結構選び放題なんだけど、希望ある? 何でもいいって意外と困るからさー」

空中に透明なパネルを出してポチポチと操作しながら、とびきりの笑顔でそんなことを聞いてくる。


希望、希望かぁ。どこがいいだろう。

「言葉は通じるところがいいけど」
「それはボクが翻訳スキルつけてあげるから、気にしなくていいよ」
「四季がある方が楽しいけど、暑すぎるのも寒すぎるのも嫌かな」
「君んとこの魔道士の制服、耐熱耐寒効果ついてたよね? まっ、いいけど。……他は?」
「治安が悪過ぎるのはちょっと……魔物に滅ぼされかけてるとか、国同士が戦争真っ最中とかもパスで」
「じゃ、そこそこ平和なとこね。シーナは危ない場所の方が重宝されそうだけど」
「利用されるとかは勘弁して。魔法が使いたいだけで、戦闘したいわけじゃないからね? 冒険とかは確かにちょっと憧れるけど」

力説したらハイハイって流された。え、信用ないの私?


「うーん、まだ全然絞り切れないな。もうちょっと何かないの?」
「そう言われても……」

価値観や常識が似ている方が馴染みやすいけど、多少の違いは旅の醍醐味だとも思うからこれは必須じゃない。

それ以外だとーー

「あ、じゃあ人種的に、大きい人が多いとこ!」
「はぁ? なにそれ?」
「言ったでしょ、デカブツ女って馬鹿にされたってーー身体的特徴でからかわれるのはこりごりなの」
「そんなの、からかう方が悪いんじゃない。気にすることないーーって言っても気になるのか。ーーああ、だったらちょうどいい場所があるよ!」

ユリウスはにこにこ笑いながら、地図のようなものを表示させたパネルを見せてくれる。

「ほら、ここーー“テラベリル“って世界なんだけど、ここがシーナの希望にぴったりだと思うんだよね」
「……って言われても、説明っぽい文字のとこ、全く読めないんだけど?」
「ん? あ、それもそっかー。でもシーナの希望はちゃんと全部満たした世界だから!」

さっき言ってた翻訳スキルってのを今くれれば読めるのに、それは転移した後じゃないともらえないんだって。

チートがどうとか言ってたけどーー神様にも色々制約があるらしい。


まあユリウスは神様だけあって有能だし、たまに誤魔化されることはあるけど嘘をつかれたことは一度もない。

なので今回も彼の判断を信用しても大丈夫、なはず。たぶん。
……大丈夫よね? 信じるからね?


「じゃあそこにする。あと、お父様達への伝言頼めない? さすがに異世界に行った娘を無駄に探し回らせるのは忍びないから」
「神様をパシリにしようとか、シーナは相変わらず無茶苦茶だねー。ま、手紙くらいなら転送してあげるよ」


そう請け負ってくれたことにひとまず安心し、私はユリウスお薦めの"テラベリル"という世界に転移することにしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...