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15。身バレしました
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「うわぁ、すごいすごい! 速いよヴィヴィアン!」
無事に交渉成立して、私はヴィヴィアンにヨルカナディアに連れて行ってもらえることになった。
最初はクチバシに咥えられそうになって慌てたけど、無限収納からコテージにあった座椅子を取り出し、船にあったロープと組み合わせて即席の鞍を製作。
ちょっと嫌がられたけど、今は背中に乗せてもらっている。
『そォ? まッ、それもそうネ。人形のアンタは空を飛ぶなんて経験できないものネ!』
「えっ? う、うん……」
『何ヨ、歯切れ悪いワね』
「あははは、海キレイだねー」
実は元の世界では普通に魔法で飛べたんだよね。
誰にでもできるわけじゃなかったけど、浮遊魔法という物を浮かす魔法があったのだ。
私はそれを自分に掛けてたまに空中散歩を楽しんでいたんだけど、その魔法もこの世界だと使えなかった。
大気中の魔素に自分の魔力を上手いことぶつけて浮力や推進力を得る魔法だったから、まあここだと無理っぽいよね。
「コンテストの会場まではどれくらいかかるの?」
『丸一日ってとこかしラ。でも、開催日は明日なのヨね』
んん? それって微妙に間に合っていないのでは……
『休憩なしで飛べバ間に合うわ! 寝ながらでも飛べるもノ、余裕ヨ!』
「ね、寝ながら……? ぶつかったりしないの?」
『平気ヨ!』
「そ、そっかー」
うーん。ヴィヴィアンは自信満々だけど、なんか不安だわ。
まあ海の上ならぶつかるものもないし、寝ながらでも真っ直ぐ飛ぶだけなら大丈夫なのかな?
でも飛ぶのって体力使いそうだし、飲まず食わずで飛びっぱなしも気の毒だよね。
「ね、ヴィヴィアン。飛びながらでもご飯食べられる?」
『むしろそっちが普通ヨ? 急にどうしたノ?』
「良かった! じゃあちょっとお口開けてー」
私はロープを伝ってヴィヴィアンのクチバシの方に回り込み、マジックバッグから適当に取り出したパンとハムの塊を放り込んだ。
『ングッ! ナニ今の、美味しいワ!』
「良かったー。他のも食べる? 食べられない物とかある?」
『ないワ! 何でもイケるからジャンジャン入れちゃってちょうだイ!』
その後は『もっともっと』と急かすヴィヴィアンに押されつつ、次々と食べ物を口の中に突っ込んでいった。
ーー 一時間後。
『あラ、もうないノ?』
「もうないのって……ヴィヴィアン、さすがに食べすぎだと思うよ?」
私が何ヶ月掛かっても消費しきれないと思っていた大量の食料のほとんどが、ヴィヴィアンの巨大なお腹に収まっていた。
いやまあ、いっぱい食べるだろうとは思ったけどーーそれにしたって一回で食べきるとは。
「私が食べようと思ってた分も食べちゃうんだもん。想定外もいいとこだよ」
『って、アンタが口に入れてきたんじゃなイ。アタクシは入ってきたものを飲み込んだだけだワ』
「えー。だってヴィヴィアンがほしいほしいって言うから。強請られたらイヤとは言えないし……」
それに餌付けみたいで楽しかったから、ついついやり過ぎちゃったのよね。
ただ明らかに食べすぎた結果、ポヨヨンと膨らんだヴィヴィアンのお腹が風で波打つ様はなんともコミカルな絵柄になっていた。
っていうか、さっきから若干高度が下がってきたのが気になるんだけど。スピードもだいぶ落ちてるし。
これ、やっぱ間に合わない系じゃない?
「ねぇヴィヴィアン、早く着けるようにちょっとだけ手伝ってもいい?」
『はア? 手伝うって言っテも人形にナニがーー「“回復魔法”!」ーー!?』
ヴィヴィアンの身体が柔らかな光に包まれ、スッと消える。
直後落ちていたスピードが回復し、海面スレスレを飛んでいたヴィヴィアンが空高く舞い上がった。
『ーーア、アンタ何したノ? めちゃくちゃカラダが軽いンだけド!?」
「体の疲れが取れる魔法をかけたんだよー。ラクになったでしょ?」
怪我した時に使う普通の治癒魔法と違って、回復魔法は疲労回復にも効果があるんだよね。今の状況にはピッタリなはず!
『魔法っテ、人形が魔法を使えるワケないでショッ! てっきリ冗談だと思ってタのに、アンタ一体何者なノよ!?』
「え?」
あっ、ヴィヴィアンは私のこと人形だと思ってたんだよね。そーいえば訂正してなかったかな?
まあ別に隠さなきゃいけない情報じゃないし、正直に言っちゃってもいいよね!
「えーっと、名前はもう言ったけどシルヴィアーナで、ファウラン公国ラミレス公爵家の長女で、異世界からきた魔法使いです!」
『………………………………………………』
「あれ、ヴィヴィアン? おーい、どうしたの……って落ちてるっ、落ちてるよヴィヴィアン?!」
ーーーーバシャンッ
結局、脱出後わずか数時間で海に逆戻り。
まあウミネコは海鳥だから溺れることはないけど、上に乗っていた私は全身ビショビショになってしまった。
気持ちが悪いから洗浄魔法と乾燥魔法をかけまくっていると、横から『魔法使いっテ、嘘じゃないのネ』というヴィヴィアンのつぶやきと深ーいため息が聞こえたんだけど……。
この世界だと魔法使いって嫌われているのかな? ちょっとショックだ。
****************************************
保存が上手くいかなかったのか、一度公開したはずの話が何故か非公開になってました……しかも書いてた次の話もまるっと消えてるし(泣
しおりつけてくださってた方は申し訳ないです。。。
無事に交渉成立して、私はヴィヴィアンにヨルカナディアに連れて行ってもらえることになった。
最初はクチバシに咥えられそうになって慌てたけど、無限収納からコテージにあった座椅子を取り出し、船にあったロープと組み合わせて即席の鞍を製作。
ちょっと嫌がられたけど、今は背中に乗せてもらっている。
『そォ? まッ、それもそうネ。人形のアンタは空を飛ぶなんて経験できないものネ!』
「えっ? う、うん……」
『何ヨ、歯切れ悪いワね』
「あははは、海キレイだねー」
実は元の世界では普通に魔法で飛べたんだよね。
誰にでもできるわけじゃなかったけど、浮遊魔法という物を浮かす魔法があったのだ。
私はそれを自分に掛けてたまに空中散歩を楽しんでいたんだけど、その魔法もこの世界だと使えなかった。
大気中の魔素に自分の魔力を上手いことぶつけて浮力や推進力を得る魔法だったから、まあここだと無理っぽいよね。
「コンテストの会場まではどれくらいかかるの?」
『丸一日ってとこかしラ。でも、開催日は明日なのヨね』
んん? それって微妙に間に合っていないのでは……
『休憩なしで飛べバ間に合うわ! 寝ながらでも飛べるもノ、余裕ヨ!』
「ね、寝ながら……? ぶつかったりしないの?」
『平気ヨ!』
「そ、そっかー」
うーん。ヴィヴィアンは自信満々だけど、なんか不安だわ。
まあ海の上ならぶつかるものもないし、寝ながらでも真っ直ぐ飛ぶだけなら大丈夫なのかな?
でも飛ぶのって体力使いそうだし、飲まず食わずで飛びっぱなしも気の毒だよね。
「ね、ヴィヴィアン。飛びながらでもご飯食べられる?」
『むしろそっちが普通ヨ? 急にどうしたノ?』
「良かった! じゃあちょっとお口開けてー」
私はロープを伝ってヴィヴィアンのクチバシの方に回り込み、マジックバッグから適当に取り出したパンとハムの塊を放り込んだ。
『ングッ! ナニ今の、美味しいワ!』
「良かったー。他のも食べる? 食べられない物とかある?」
『ないワ! 何でもイケるからジャンジャン入れちゃってちょうだイ!』
その後は『もっともっと』と急かすヴィヴィアンに押されつつ、次々と食べ物を口の中に突っ込んでいった。
ーー 一時間後。
『あラ、もうないノ?』
「もうないのって……ヴィヴィアン、さすがに食べすぎだと思うよ?」
私が何ヶ月掛かっても消費しきれないと思っていた大量の食料のほとんどが、ヴィヴィアンの巨大なお腹に収まっていた。
いやまあ、いっぱい食べるだろうとは思ったけどーーそれにしたって一回で食べきるとは。
「私が食べようと思ってた分も食べちゃうんだもん。想定外もいいとこだよ」
『って、アンタが口に入れてきたんじゃなイ。アタクシは入ってきたものを飲み込んだだけだワ』
「えー。だってヴィヴィアンがほしいほしいって言うから。強請られたらイヤとは言えないし……」
それに餌付けみたいで楽しかったから、ついついやり過ぎちゃったのよね。
ただ明らかに食べすぎた結果、ポヨヨンと膨らんだヴィヴィアンのお腹が風で波打つ様はなんともコミカルな絵柄になっていた。
っていうか、さっきから若干高度が下がってきたのが気になるんだけど。スピードもだいぶ落ちてるし。
これ、やっぱ間に合わない系じゃない?
「ねぇヴィヴィアン、早く着けるようにちょっとだけ手伝ってもいい?」
『はア? 手伝うって言っテも人形にナニがーー「“回復魔法”!」ーー!?』
ヴィヴィアンの身体が柔らかな光に包まれ、スッと消える。
直後落ちていたスピードが回復し、海面スレスレを飛んでいたヴィヴィアンが空高く舞い上がった。
『ーーア、アンタ何したノ? めちゃくちゃカラダが軽いンだけド!?」
「体の疲れが取れる魔法をかけたんだよー。ラクになったでしょ?」
怪我した時に使う普通の治癒魔法と違って、回復魔法は疲労回復にも効果があるんだよね。今の状況にはピッタリなはず!
『魔法っテ、人形が魔法を使えるワケないでショッ! てっきリ冗談だと思ってタのに、アンタ一体何者なノよ!?』
「え?」
あっ、ヴィヴィアンは私のこと人形だと思ってたんだよね。そーいえば訂正してなかったかな?
まあ別に隠さなきゃいけない情報じゃないし、正直に言っちゃってもいいよね!
「えーっと、名前はもう言ったけどシルヴィアーナで、ファウラン公国ラミレス公爵家の長女で、異世界からきた魔法使いです!」
『………………………………………………』
「あれ、ヴィヴィアン? おーい、どうしたの……って落ちてるっ、落ちてるよヴィヴィアン?!」
ーーーーバシャンッ
結局、脱出後わずか数時間で海に逆戻り。
まあウミネコは海鳥だから溺れることはないけど、上に乗っていた私は全身ビショビショになってしまった。
気持ちが悪いから洗浄魔法と乾燥魔法をかけまくっていると、横から『魔法使いっテ、嘘じゃないのネ』というヴィヴィアンのつぶやきと深ーいため息が聞こえたんだけど……。
この世界だと魔法使いって嫌われているのかな? ちょっとショックだ。
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保存が上手くいかなかったのか、一度公開したはずの話が何故か非公開になってました……しかも書いてた次の話もまるっと消えてるし(泣
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