【本編完結】森で遭難しかけたら獣とおかしな人達に囲まれました 〜飼い猫が私を逃してくれません!〜

夕木アリス

文字の大きさ
9 / 174
1章

4。オーバーキルはやめてください!

しおりを挟む
なんだか妙な会話を聞いた気もする。

ええと、お城がある方角が西ってとこまでは良いとして。
問題はその後。お城は今日はどっちって、そう言った?

お城が複数あるの?
だとしても、そもそもは西はどっちだって話だったのではなかったか。そんな日替わりみたいな言い方するのおかしくない?
なんだかまた混乱してきたんだけど……


目の前の猫二匹はこっちを無視して、どうやって街まで行こうかの相談中。


「走って行きゃいいだろ?大した距離じゃないし、その方が早いって」
「僕らだけならそうでしょうが、この人はあんまり走れなさそうですよ?」

走ろうと提案していた赤猫お兄さんが私の足元をちらっと見て、確かに脱げやすそうな靴だなーと納得した。
ストラップ付きのサンダルだから、意外と脱げないんだけど。
でもここから再度の長距離走は遠慮したいので、大人しく黙っておく。

「うーん、じゃあ担いで走る!」

ーーえ、まさかの荷物扱い?!

「あの、普通に歩いて行ってはダメでしょうか?担がれた状態で走られたら、酔ってしまいそうなので……」

それ以前に羞恥心とか乙女の色々に大ダメージを受ける。
一応、それなりに気にするお年頃なのだ。自分で言うなって気もするけど。

「昼間ならそれでも良いですが、もう夕方です。歩いていては間に合いません」
「夜の森はそれなりに危険なの!野犬とかに襲われたかねえだろ?」

揃って却下された。というか野犬とか出るのこの森?!
コテージが建ってるくらいだから、安全な場所だと思ってたわ。
確かにもう夕方なら、歩いていたら暗くなる前に街に着けないかもーーん、夕方?

ぱっと上を見上げると、少しだけ切れた枝の隙間から、ほんのりオレンジ色の空が見えた。

え、なんでもう夕方なの?!コテージを出たのは早朝だったのに!

半日丸々森の中だってこと?まさか休憩のつもりで少し腰を下ろした時に、うっかり寝てしまっていた?

いくら安全と思っていたからって森の中で熟睡するなんて、なんて迂闊な……とまた頭を抱えてしまう。


「んー、まあ酔って吐かれても困るしな。どうするよ?」
「仕方ありませんね。転移しましょう」
「げ、それめっちゃ疲れるヤツ……」

ーーは?
転移?
いやいやさすがに聞き間違い…。

「僕がこの人と一緒に転移しますので。一人だけ走ってきますか?」
「えー、冷たいー。オレも一緒に行くってば」

……聞き間違いじゃなかった?!


「じゃあ決まりで」

青猫さんがフリーズした私に一歩近づいて、ひょいと抱きかかえる。
肩に担がれるとかではなく、子供を縦抱きするような形で……って密着度高すぎませんか?!

びっくりして腕を思いっきり突っ張ってるのに、ちっとも隙間開かないし。力強すぎ。

離れようとしているのに気づいた青猫さんが眉をぴくりと動かして、ちょっと不機嫌そうに言う。
「途中で落ちたらどうなるか分からないので、ちゃんと首に腕、回してください」

ちょ、やめて。追撃しないで。
これ以上はオーバーキルだから!
さっきのファンタジーな単語にイケメン猫の抱擁なんて事案も追加されたら耐えられないから!

朝から色々イベントが多過ぎじゃないだろうか……頭から煙でも出てきそう。


ああでもほら。ここにいるのは二匹とも猫で。
猫に抱きつかれたからって恥ずかしがらなくて良いのよきっと。それを恥ずかしがるようなアヤシイ趣味は持ち合わせていないのだから。 

私はノーマル、私はノーマル、私は……

「ーーあれ?」
首を傾げた青猫が、ちょっと失礼、と胸に耳をくっつけてーー


?!?!?!
なんなのこの状況!?

なんでさっき会ったばかりの猫ーーいや、やっぱり猫扱い無理!!
なんでさっき会ったばかりの男の人に胸に顔を埋められてるの?!?!

「どした?」
「ーーいや、胸の奥からなんか音がするような……」

青の猫耳お兄さんがそんなことを言いながら頭を起こし、何故だかとてもびっくりした顔で見詰めてきて。


「……アンタ、ひょっとして『迷い子』ですか」


そんな、当たり前の事を言ってきた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...