【本編完結】森で遭難しかけたら獣とおかしな人達に囲まれました 〜飼い猫が私を逃してくれません!〜

夕木アリス

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1章

36。猫耳の手触りには抗えません

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「……まあ、この世界の貨幣についてはまた改めて説明しますよ」
僕も手元に全種類はないので、実物は今度見せますねーと言われる。

とりあえず今貰ったのは小金貨と大銀貨、らしい。
どれくらいの価値かまでは分からないので、明日日用品を調達しつつ確かめてみよう。


「なんだよぉ~、二人してオレが悪いみたく言わなくてもいいじゃんかー」
力なく項垂れたマゼンタが、そのままベッドにひっくり返った。イジけてしまったらしい。

「別に悪いとまで言っていないわ。感覚の違いを再認識しているだけよ」
「それ、オレがオカシイって言ってる?」
「まあそうね」
「そこは否定してくれよっ!」

飼い主からの扱いが酷い!冷たすぎっ、処遇の改善を要求するっ とかなんとか喚いているけど。知ったこっちゃない。
これで扱いが酷いと言うなら、昨日から今日にかけての私への扱いはどうなのよ?

ナイフで切られ無断で飼い主にされ、同意なく二度も転移させられた上に数々のセクハラを受けた私の方こそ扱い酷くない?契約の見直しを要求したいとこなのだけど?
そんな風に言い返してやると、マゼンタはぐうっと呻いてシーツに突っ伏した。


フッ……勝ったわ。人間様舐めるんじゃないわよ。

これでも口喧嘩はそこそこ強いのだ。


勝者の笑みを浮かべながら、慰める風を装いつつ、手を伸ばしてマゼンタの頭を撫でてみる。

……実は昨日からずっと触ってみたかったのよね。
もちろん髪をではなく、狙いはこの猫耳だ。

恐る恐る髪の中に手を差し入れ、耳の付け根まで指を伸ばしてみる。
そっと押してみると、ペコっと折れ曲がったあと、ちょっとイヤそうな感じでプルプルッと震えた。


ーーか、可愛い。柔らかいっ……本物の猫耳だわ!


家で猫を飼っていた時も何度も耳にさわってみようとしたのだけど、なかなか触らせてもらえなかったのよね……。
寝ている時を狙ってコッソリとさわろうとするのだけど、途端に目を覚ましてとっても嫌そうな顔で見られてから、スッと何処かへ逃げられてしまうのだーーあれはショックだった。

姉や母が相手だと抱っこまでさせて、なんなら一緒にベッドで寝ていたりしたのに。
なんだろう、触り方が悪かったのかしら。

ーー今たくさん練習しておけば、ひょっとしたら戻ったときワンチャンあるんじゃない?
猫に逃げられずに、他の人みたく普通に撫でられるようになるんじゃない?

うん、申し訳ないけど、マゼンタには練習台になってもらおう。飼い主の特権ということで。
そんな下心(?)もありつつ、そのまま髪も撫でていく。


あ、髪の毛ふわふわですごく柔らかい。本当に猫の毛並みみたいね。体温も高めで、温かくて気持ちいいわ。
耳って、内側も触っていいのかしら。皮膚が薄いから、あまり強くさわっちゃダメよね?嫌がられるかもだから最後に試そう。

ここぞとばかりにサワサワ、ナデナデと撫でていくと、マゼンタが目を閉じて「うにゃあ……気持ちいい~……」とため息をもらした。

お、これはいい感じなのでは?

マゼンタは「もっと~~」と言いながら手にスリスリとすり寄ってくる。
猫が甘えてくる時にそっくりね。思わず笑みが溢れてしまう。

どこをさわられるのが一番気持ち良いのかな?やっぱり耳の付け根ら辺?
そう思ってもう一度耳の方をさわろうとしたのだが、「そこまでですよ」とシアンに手首を掴まれた。


ーーいつの間にかシアンが私のすぐ後ろに椅子を寄せていた。
いけない、マゼンタの手触りに夢中になっていて全然気づかなかったわ。

なんだかシアンってば、うっすーく笑ってるんだけど。あれ、なんかちょっと怖い?


「いくら相手がマゼンタと言えど、それ以上はダメですよ?」
「……!ご、ごめんなさいっ。そうよね、猫の耳って敏感だものね」

あんまり触ったら痛くなっちゃうかもだし、良くないわよね。
そう言ったのだが、シアンは首を横に振った。

「いえ、そうではなく。ーーそんなに見せつけられると、妬けちゃうな、と思って」
「ーーえ?妬けちゃう……?」
「ええ、そうですよ。ーー何をすれば、余所見よそみせずに僕のことを見てもらう様にできるかな、と考えるくらいには」

猫の嫉妬は怖いんですよ?と目を細められる。ーーこれ絶対良からぬことを考えてる顔……!


「ひぇっ、あ、あの? と、とりあえずシアン落ち着いて?」
「ええ、落ち着いて考えてますよ?」
「悪いこと禁止!痛い事はもっと禁止!!」
「どちらもしません」

するとすれば、イイコトですよ?大事な飼い主ですから、ねーー?

そう言って、逃さないとばかりに掴む手の力を強められる。


ーー猫に追い詰められた鼠って、こんな気分なのね……!全然知りたくなかったんですけどっ!

え、待って待って。こ、これは、一体どうやって逃げたらいいの?









*===================================*
 ※次回は微妙に全年齢でない気もするので、気にされる方は読み飛ばし推奨です。

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