66 / 174
2章
15。飼い猫貸し出しいたします
しおりを挟む
すっかり女王様と仲良くなった私は、難なくお城の蔵書を閲覧する許可を貰うことができた。
これで過去の迷い子達の情報も、この世界の設定も調べられるわね!
きっとお城の書庫なら資料としてまとまったものもあるはずだ。
「司書の方には話を通しておこう。書庫までの道筋は、後でメイドに案内をさせるでの」
持ち出しは禁止じゃが、城に来ている間は禁書でもなんでも好きに読むが良いぞ、とかなり太っ腹なお言葉をいただいた。
ーーというか禁書とか私が読んでも良いんだ。普通一般人は閲覧禁止だから禁書っていうんじゃなかろうか。
そう思えば、「…わらわとソフィアとの仲じゃからの。特別じゃぞ?」と頬を赤らめて上目遣いされた。
…ヤバい、女王様の笑顔が尊いです。可愛すぎて萌え死ねる。
心の中で盛大に悶えていたら、”萌え”って本当に使うんじゃの、とエリザにさらっと心の声をバラされた。
うん、そこは言わないで置いてほしかった…シアンとマゼンタからの視線が痛いわ。
違うの。これは、日本の悪友たちに色々偏った文化を教え込まれたせいなの!元々の私はこうじゃないのよ!と主張したいところだが。
元々の素養があってこうなった、が正解なのよね。
認めたくはないけど、生来のオタク気質って事だろう。…認めたくないけど。
「陛下、そろそろ執務のお時間ですのでーー」
「なんじゃ、もう終いか。折角迷い子との親交を深めるチャンスなのじゃぞ?仕事など後でも良いではないか」
小さく唇を尖らせてそっぽを向く様も、幼女の姿なら可愛くて許せてしまうわ。
見た目美形はほんと得よね、羨ましい。
そんな微笑ましい仕草も、それこそ産まれてから見続けている宰相様には効き目が薄いようで。
「そうは参りませんわ。この後は交易を希望している国の使者との謁見を予定しておりますので、先延ばしはできませんの」
「他所の国の使者など、どうせ碌なことを考えておらん。相手をするだけで憂鬱じゃ」
「ええ、ええ。憂鬱でしょうともーーそれが為政者のお仕事ですわ」
うん、取り付く島もないとはこの事ね。
そろそろ誰かに代わってほしいもんじゃがのう、と零しながら、エリザは椅子からぴょこんと飛び降りた。
どうやら仕事をする気になったらしい。
「ああ、そうじゃ丁度良いわ。ネコ共、お主らはわらわと一緒に来い」
「成る程、それは良いお考えにございますね」
エリザがいいこと思いついたと言わんばかりににんまり笑い、宰相さまもポンと手を打ってにっこりした。
「はぁっ?!なんでだよ?」
「もちろん、届け物屋の仕事の依頼じゃ。謁見の後、使者殿を彼の国に即行で送り返してこい」
「え、飼い主一人にして仕事いくとかヤダし!」
「お主らの居ぬ間は城で預かるわ。ここより安全な場所などあるまい?」
「それでもお断りします。仕事をさせるなら、城の子飼いの者達がいるでしょう」
「此度の届け先はかなりの遠方ですので、彼等では力不足なのですよ」
そう説明されると、二匹揃って渋い顔をした。
「…この国は随分と人材不足なのですね。嘆かわしいことで」
「ええ、仰る通り、とても憂慮すべき事態ですわーーどこかのネコ達が、何度誘いを掛けてもけんもほろろに断ってくるものですから」
「ほんにのう?わらわが直々にすかうとというのをしておるのに、色良い返事を寄越さぬとは何様のつもりなのかと、そろそろ問い詰めてやりたいと思うておったところなのじゃ」
「「………………。」」
「と、いうわけです。ソフィア様?」
「あ、はい」
「此方のお二方、何時間かお借りしても宜しいでしょうか?」
「ええ、それはもちろん」
「ちょっ、フィアぁ~!」「ソフィー酷いです…」
なんだかすっごい恨みがましい目で見てこられるけど。
「あなた達優秀なんでしょ?だったらそのくらいのお願い、朝飯前ってことじゃない。」
それでエリザが助かるならぜひ協力してあげてほしい。
国のトップというのは、きっと想像もできないくらい大変な仕事なのだから。
「その代わり、うちに帰ったらまたお茶でも淹れてあげるわ」
「それって猫用のヤツ?」
「普通のお茶よ!」
いやいやいや、昨日みたいなのはゴメンだーー想像してしまって、エリザにもの凄くニマニマ笑われた。
……昨日の事、バレちゃったじゃないのよ。
「アレはあれで美味しかったんですけどね?……まあ、飼い主のお願いなら仕方ありません。特別に聞いて差し上げますよ」
「しゃーねーな。帰ってからたっぷり撫でてくれよ!」
「はいはい、分かったわよ」
頑張ったら後でご褒美!と強請る二人は、なんだかんだで言う事を聞いてくれるらしい。
あとでこっそりお菓子でも準備しようかしら。
そんなことを思っていると、話が纏まったと見て、エリザがこちらにきて声を掛けてくれた。
「ではな、ソフィア。今日は諦めるが、また城に来た時はわらわとお茶をしておくれ?」
お主とは、もっと仲良うなりたいのじゃ、とモジモジしている女王様を思わず抱きしめる。
「ええ、喜んでーー私も、貴女ともっと仲良くなりたいわ」
「ーー!そ、そうか!何なら毎日でも城に来てくれて構わんからな!」
「ふふ、ありがとう」
社交辞令などではないからな!絶対またすぐ来るんじゃぞ!と言いながら女王様はクロエさんと二人を伴って部屋を出て行った。
入れ替わりで、おそらくは案内役のメイドさんが入室してきて一礼する。
「お待たせ致しました。それでは書庫までご案内させて頂きます」
ーーー!!
メイドさんがしゃべった!
これで過去の迷い子達の情報も、この世界の設定も調べられるわね!
きっとお城の書庫なら資料としてまとまったものもあるはずだ。
「司書の方には話を通しておこう。書庫までの道筋は、後でメイドに案内をさせるでの」
持ち出しは禁止じゃが、城に来ている間は禁書でもなんでも好きに読むが良いぞ、とかなり太っ腹なお言葉をいただいた。
ーーというか禁書とか私が読んでも良いんだ。普通一般人は閲覧禁止だから禁書っていうんじゃなかろうか。
そう思えば、「…わらわとソフィアとの仲じゃからの。特別じゃぞ?」と頬を赤らめて上目遣いされた。
…ヤバい、女王様の笑顔が尊いです。可愛すぎて萌え死ねる。
心の中で盛大に悶えていたら、”萌え”って本当に使うんじゃの、とエリザにさらっと心の声をバラされた。
うん、そこは言わないで置いてほしかった…シアンとマゼンタからの視線が痛いわ。
違うの。これは、日本の悪友たちに色々偏った文化を教え込まれたせいなの!元々の私はこうじゃないのよ!と主張したいところだが。
元々の素養があってこうなった、が正解なのよね。
認めたくはないけど、生来のオタク気質って事だろう。…認めたくないけど。
「陛下、そろそろ執務のお時間ですのでーー」
「なんじゃ、もう終いか。折角迷い子との親交を深めるチャンスなのじゃぞ?仕事など後でも良いではないか」
小さく唇を尖らせてそっぽを向く様も、幼女の姿なら可愛くて許せてしまうわ。
見た目美形はほんと得よね、羨ましい。
そんな微笑ましい仕草も、それこそ産まれてから見続けている宰相様には効き目が薄いようで。
「そうは参りませんわ。この後は交易を希望している国の使者との謁見を予定しておりますので、先延ばしはできませんの」
「他所の国の使者など、どうせ碌なことを考えておらん。相手をするだけで憂鬱じゃ」
「ええ、ええ。憂鬱でしょうともーーそれが為政者のお仕事ですわ」
うん、取り付く島もないとはこの事ね。
そろそろ誰かに代わってほしいもんじゃがのう、と零しながら、エリザは椅子からぴょこんと飛び降りた。
どうやら仕事をする気になったらしい。
「ああ、そうじゃ丁度良いわ。ネコ共、お主らはわらわと一緒に来い」
「成る程、それは良いお考えにございますね」
エリザがいいこと思いついたと言わんばかりににんまり笑い、宰相さまもポンと手を打ってにっこりした。
「はぁっ?!なんでだよ?」
「もちろん、届け物屋の仕事の依頼じゃ。謁見の後、使者殿を彼の国に即行で送り返してこい」
「え、飼い主一人にして仕事いくとかヤダし!」
「お主らの居ぬ間は城で預かるわ。ここより安全な場所などあるまい?」
「それでもお断りします。仕事をさせるなら、城の子飼いの者達がいるでしょう」
「此度の届け先はかなりの遠方ですので、彼等では力不足なのですよ」
そう説明されると、二匹揃って渋い顔をした。
「…この国は随分と人材不足なのですね。嘆かわしいことで」
「ええ、仰る通り、とても憂慮すべき事態ですわーーどこかのネコ達が、何度誘いを掛けてもけんもほろろに断ってくるものですから」
「ほんにのう?わらわが直々にすかうとというのをしておるのに、色良い返事を寄越さぬとは何様のつもりなのかと、そろそろ問い詰めてやりたいと思うておったところなのじゃ」
「「………………。」」
「と、いうわけです。ソフィア様?」
「あ、はい」
「此方のお二方、何時間かお借りしても宜しいでしょうか?」
「ええ、それはもちろん」
「ちょっ、フィアぁ~!」「ソフィー酷いです…」
なんだかすっごい恨みがましい目で見てこられるけど。
「あなた達優秀なんでしょ?だったらそのくらいのお願い、朝飯前ってことじゃない。」
それでエリザが助かるならぜひ協力してあげてほしい。
国のトップというのは、きっと想像もできないくらい大変な仕事なのだから。
「その代わり、うちに帰ったらまたお茶でも淹れてあげるわ」
「それって猫用のヤツ?」
「普通のお茶よ!」
いやいやいや、昨日みたいなのはゴメンだーー想像してしまって、エリザにもの凄くニマニマ笑われた。
……昨日の事、バレちゃったじゃないのよ。
「アレはあれで美味しかったんですけどね?……まあ、飼い主のお願いなら仕方ありません。特別に聞いて差し上げますよ」
「しゃーねーな。帰ってからたっぷり撫でてくれよ!」
「はいはい、分かったわよ」
頑張ったら後でご褒美!と強請る二人は、なんだかんだで言う事を聞いてくれるらしい。
あとでこっそりお菓子でも準備しようかしら。
そんなことを思っていると、話が纏まったと見て、エリザがこちらにきて声を掛けてくれた。
「ではな、ソフィア。今日は諦めるが、また城に来た時はわらわとお茶をしておくれ?」
お主とは、もっと仲良うなりたいのじゃ、とモジモジしている女王様を思わず抱きしめる。
「ええ、喜んでーー私も、貴女ともっと仲良くなりたいわ」
「ーー!そ、そうか!何なら毎日でも城に来てくれて構わんからな!」
「ふふ、ありがとう」
社交辞令などではないからな!絶対またすぐ来るんじゃぞ!と言いながら女王様はクロエさんと二人を伴って部屋を出て行った。
入れ替わりで、おそらくは案内役のメイドさんが入室してきて一礼する。
「お待たせ致しました。それでは書庫までご案内させて頂きます」
ーーー!!
メイドさんがしゃべった!
0
あなたにおすすめの小説
〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。
藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。
そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。
私がいなければ、あなたはおしまいです。
国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。
設定はゆるゆるです。
本編8話で完結になります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる