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2章
19。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
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「いい大人が、体調管理もできないなんてね。本当、いい迷惑」
「あ、ハイ…返す言葉もございません」
低血糖の症状が治って、外が少し薄暗くなってきた頃。
私は、クレイに延々と説教されていた。
ーーなんか、結構ネチネチと長いこと怒られている気がするわ。根に持つタイプだったのかしら。
まあでも、人が目の前で倒れたら相当焦るだろうし、それが不注意の結果なら文句の一つも言いたくなるだろう。
なのでひたすら頭を下げて謝罪に徹する。
すみませんでした、全面的に私が悪かったです、ごめんなさい。
そうやって謝り倒していると、深々とため息をついて「もういい…」とクレイが呟いた。
「まあ、気づいてて放ったらかしたボクも悪かった」
「…?気づいてたって?」
「途中、何回か本の整理中に前を通った。けど、集中して読んでいたから」
邪魔しちゃ悪いし声掛けなかった、ごめんーーと謝られる。
「え、いや。それクレイ全然悪くないじゃない」
というか、私が放っておいてほしいって頼んだからよね?
むしろ気を遣ってもらってたんじゃないだろうか。
そう言うと、ちょっとギクシャクした感じで視線を逸らされた。
「水分も一切取らないし、ずっと座りっぱなしだったろ?そうしてると、血の塊ができて危険なことがあるから」
注意した方がいいとは思ったんだけど、声掛けたくなくて放置した。
そんな感じでポツリポツリと説明をしてくれるが、やっぱり良く分からない。
「でも、邪魔しないでおこうって思ってくれたからだし、やっぱり謝ることじゃないわよ」
「さっきはそう言ったけど…本当は、お前のこと避けてただけ」
近づきたくなかったから声を掛けなかったと言われて、さすがに絶句した。
ーーい、いつの間にそこまで嫌われてたの?
初めて会ってから、まだそんなに経ってないわよね?気づかないうちに地雷でも踏んだんだろうか。
…ひょっとして名前のこと?それとも毛色? あー、思い返すとどっちも地雷っぽい。
せっかく素敵な場所を見つけたのに、初日からそこの職員に嫌われるなんて大失敗だわ、と凹んでいると…
「…だって、陛下のお友達となんか仲良くしたくなかったし」
と、拗ねたような声が聞こえてぽかんと口を開ける。
ーーーあ、そういう感じのなの。なぁんだ。
「…なんで今の聞いて笑うのさ」
「え、だって。それって”坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”とか、そんな感じでしょ?」
私が直接何かしたせいで嫌われたのでなければ、とりあえずそこまで落ち込まずに済む。
「結局嫌われてるのは同じなのに。嬉しそうとか意味分かんない」
「うーん、昨日今日とやたらと皆に良くしてもらたり、好かれたりしてたから。逆にちょっと気持ち悪いくらいだったのよね」
自分が万人受けするタイプじゃないのは、自分でもよく分かっている。というか、結構めんどくさい人種だと思う。
それなのに、もれなく全員から好かれたりするのは変なのだ。
無条件の好意なんて家族からでもなければ受けられないものだと思ってるし、誰も彼もが自分に優しくしてくれる世界なんて幻想もいいところ。
それこそ、都合の良い夢でも見ているのでなければあり得ない。
その点クレイが私を嫌うのは、とても自然で理解できる感情だから安心しちゃって、と笑う。
今度はクレイの方がぽかんと口を開けた。あれ、変なこと言ったかしら?
うーん、それにしてもこんな顔でも可愛いなんて、美形ってズルい。
「……オカシな奴」
「あはは、よく言われるわ。ーー助けてくれてありがとう。そろそろ戻るわね」
いい加減出て行かないと邪魔だろうと思い立ち上がると、クレイがドアを開けてくれた。
そのまま書庫の出口まで送ってくれたのだが、何故か一緒に書庫の外に出て、外から扉の鍵をかけてしまった。ーーえ?
「なんでクレイまで書庫出ちゃうの?」
「食堂まで案内するーーもうちょっと何か食べとかないと、すぐまた倒れるから」
ボクもそろそろ晩ご飯のつもりだったし、と前を歩いて行くが……あれれ?
「クレイ、私の事キライなんでしょ?」
「キライだよ」
ーー即答かいっ!
「だったら案内とかいいわよ。誰か手の空いていそうなメイドさんに頼むわ」
「今日初めて城に来た人間が急に声掛けてきたら、警戒される」
うーん、そうかな?ここに来るまでは挨拶してもにこやかに返されたけど。
まあさっきは横にメイドさんがいて、客人ってすぐ分かる状態だったからって線もあるし。クレイの言う通りなのかも?でも…。
「…でも、キライな人の案内するとか嫌でしょ?嫌なことは、無理しやらなくていいのよ?」
「ついでだから」
途中で誰か暇そうなメイドがいたらソイツに引き継ぐしと言われ、まあそれなら、と納得する。
「じゃあ…重ね重ね、お手数掛けます?」
「ん」
そう言って少し離れて前を歩き出すクレイ。
うーん、この距離感、新鮮だなあ。
ツンツンしまくりのクレイをにまにま眺めながら、後ろをついて行こうと一歩踏み出そうとしてーー
「はい、そこまでー」
その一歩を踏み出すこともできなかった。
「あ、ハイ…返す言葉もございません」
低血糖の症状が治って、外が少し薄暗くなってきた頃。
私は、クレイに延々と説教されていた。
ーーなんか、結構ネチネチと長いこと怒られている気がするわ。根に持つタイプだったのかしら。
まあでも、人が目の前で倒れたら相当焦るだろうし、それが不注意の結果なら文句の一つも言いたくなるだろう。
なのでひたすら頭を下げて謝罪に徹する。
すみませんでした、全面的に私が悪かったです、ごめんなさい。
そうやって謝り倒していると、深々とため息をついて「もういい…」とクレイが呟いた。
「まあ、気づいてて放ったらかしたボクも悪かった」
「…?気づいてたって?」
「途中、何回か本の整理中に前を通った。けど、集中して読んでいたから」
邪魔しちゃ悪いし声掛けなかった、ごめんーーと謝られる。
「え、いや。それクレイ全然悪くないじゃない」
というか、私が放っておいてほしいって頼んだからよね?
むしろ気を遣ってもらってたんじゃないだろうか。
そう言うと、ちょっとギクシャクした感じで視線を逸らされた。
「水分も一切取らないし、ずっと座りっぱなしだったろ?そうしてると、血の塊ができて危険なことがあるから」
注意した方がいいとは思ったんだけど、声掛けたくなくて放置した。
そんな感じでポツリポツリと説明をしてくれるが、やっぱり良く分からない。
「でも、邪魔しないでおこうって思ってくれたからだし、やっぱり謝ることじゃないわよ」
「さっきはそう言ったけど…本当は、お前のこと避けてただけ」
近づきたくなかったから声を掛けなかったと言われて、さすがに絶句した。
ーーい、いつの間にそこまで嫌われてたの?
初めて会ってから、まだそんなに経ってないわよね?気づかないうちに地雷でも踏んだんだろうか。
…ひょっとして名前のこと?それとも毛色? あー、思い返すとどっちも地雷っぽい。
せっかく素敵な場所を見つけたのに、初日からそこの職員に嫌われるなんて大失敗だわ、と凹んでいると…
「…だって、陛下のお友達となんか仲良くしたくなかったし」
と、拗ねたような声が聞こえてぽかんと口を開ける。
ーーーあ、そういう感じのなの。なぁんだ。
「…なんで今の聞いて笑うのさ」
「え、だって。それって”坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”とか、そんな感じでしょ?」
私が直接何かしたせいで嫌われたのでなければ、とりあえずそこまで落ち込まずに済む。
「結局嫌われてるのは同じなのに。嬉しそうとか意味分かんない」
「うーん、昨日今日とやたらと皆に良くしてもらたり、好かれたりしてたから。逆にちょっと気持ち悪いくらいだったのよね」
自分が万人受けするタイプじゃないのは、自分でもよく分かっている。というか、結構めんどくさい人種だと思う。
それなのに、もれなく全員から好かれたりするのは変なのだ。
無条件の好意なんて家族からでもなければ受けられないものだと思ってるし、誰も彼もが自分に優しくしてくれる世界なんて幻想もいいところ。
それこそ、都合の良い夢でも見ているのでなければあり得ない。
その点クレイが私を嫌うのは、とても自然で理解できる感情だから安心しちゃって、と笑う。
今度はクレイの方がぽかんと口を開けた。あれ、変なこと言ったかしら?
うーん、それにしてもこんな顔でも可愛いなんて、美形ってズルい。
「……オカシな奴」
「あはは、よく言われるわ。ーー助けてくれてありがとう。そろそろ戻るわね」
いい加減出て行かないと邪魔だろうと思い立ち上がると、クレイがドアを開けてくれた。
そのまま書庫の出口まで送ってくれたのだが、何故か一緒に書庫の外に出て、外から扉の鍵をかけてしまった。ーーえ?
「なんでクレイまで書庫出ちゃうの?」
「食堂まで案内するーーもうちょっと何か食べとかないと、すぐまた倒れるから」
ボクもそろそろ晩ご飯のつもりだったし、と前を歩いて行くが……あれれ?
「クレイ、私の事キライなんでしょ?」
「キライだよ」
ーー即答かいっ!
「だったら案内とかいいわよ。誰か手の空いていそうなメイドさんに頼むわ」
「今日初めて城に来た人間が急に声掛けてきたら、警戒される」
うーん、そうかな?ここに来るまでは挨拶してもにこやかに返されたけど。
まあさっきは横にメイドさんがいて、客人ってすぐ分かる状態だったからって線もあるし。クレイの言う通りなのかも?でも…。
「…でも、キライな人の案内するとか嫌でしょ?嫌なことは、無理しやらなくていいのよ?」
「ついでだから」
途中で誰か暇そうなメイドがいたらソイツに引き継ぐしと言われ、まあそれなら、と納得する。
「じゃあ…重ね重ね、お手数掛けます?」
「ん」
そう言って少し離れて前を歩き出すクレイ。
うーん、この距離感、新鮮だなあ。
ツンツンしまくりのクレイをにまにま眺めながら、後ろをついて行こうと一歩踏み出そうとしてーー
「はい、そこまでー」
その一歩を踏み出すこともできなかった。
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