【本編完結】森で遭難しかけたら獣とおかしな人達に囲まれました 〜飼い猫が私を逃してくれません!〜

夕木アリス

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番外編

おまけ2。離婚の理由

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気分転換のオマケ話。
4章で、ソフィアのデートの数日前のお話です。
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「そういえば、エリザの離婚の理由ってなんだったの?」


涼しい秋の風が吹き抜ける中庭で、ここいらの権力者に囲まれながらのティータイム。

久しぶりにサイラスさんが同席しているのを見てふと以前答えを聞けなかったお茶会の話題が思い出され、エリザに再度理由を聞いてみる。

エリザは一瞬目を見開いた後、わざとらしくつつぅーっと視線を逸らした。
ーーこの幼女様、話さない気ね。


ふぅん、そう……言ってくれないのなら、ここの料理長に元の世界のピーマン料理を覚えているだけ伝授してやろうかしら。

「なっ、酷いぞソフィア! なんてことを企んどるのじゃ!?」
「あら、これはエリザのためにもなるのよ?」

緑黄色野菜はとっても身体にいいんだから。お肌だって綺麗になるし、成長期に栄養は大事よ?


「何が成長期じゃ! いくら野菜を食べようがわらわはこれ以上歳は取らんわ!!」
「おや、好き嫌いは良くないよエリザ。なんなら私も一緒に食べてあげるから」
「とか言ってヒトの口に押し込む気じゃなかろうなサイラス?!」
「ピーマンだって調理法によっては苦味は消えるのよ?」
「苦いから嫌いなのではない! ピーマンだから嫌いなのじゃ!」


ギャアギャアワーワーと、今日もお茶会は平常運転である。

私は騒がしさの中で戻ってきた平和を噛みしめていたーー



「ーーそれで、結局なんで別れちゃったの? お互いに嫌いになったわけじゃなさそうだしーー」

こうして見ていればエリザとサイラスさんの仲が良好なのは明白だ。

見た目は完全におじいちゃんと孫ではあるが、サイラスさんがエリザを見る眼差しは愛情に満ちている。
エリザもサイラスさんを嫌っていればそもそもお茶会への参加を許したりはしないだろう。なんて言ったって彼女はこの国の最高権力者なのだから。
……まあ相手も隣国の上皇陛下だ。こちらも十二分に権力者なわけだけど。


「それはサイラスが悪いのじゃ! わらわがこの姿になってしまった時、此奴はまだ二十代だったのじゃぞ? その、困る事もあろうからと、側室を取るように勧めたのに断りよったのじゃ!」
「元々ここは君の国だ、入婿の私が側室など取れる訳がないだろう?」
「女王が許可を出しておるのに、できない訳がなかろうが!」
「私は嫌だと断ったよね?」

君以外の妻など求めないと断言したはずだ。

「ーーッ! そ、それでも! 小さくなったわらわではお主の相手ができぬからーー!」


ーー相手? 小さくなったことで相手って、まさかーー


エリザはキレ気味に、真っ赤な顔で言い放った。

「よっ、夜の相手ができぬでは、妻の役目が果たせぬであろう!?」



ーーーーうん。

今のは犯罪だ。


エリザは見た目五歳の美幼女なのだ。

実際の中身が何歳であろうが、そのセリフは言わせちゃダメだろう。

ちなみに、サイラスさんは至極ご機嫌な顔でニコニコしているーーこの人わざと止めなかったわね。


エリザへの申し訳なさもあって少しジト目でサイラスさんを見上げれば、彼は緩めていた顔を戻してエリザに向き直った。

「真面目だなあ君は……妻の役目はそれだけではないだろう? それにあの時点でクロエもエドも生まれていたし、世継ぎの問題もなかったのに」
「元々が政略結婚であったのじゃ。入り婿とはいえ、こちらに瑕疵があれば遠慮なく別れられるであろう?」

ほっぺを膨らましたままそっぽを向くエリザに「本当に生真面目で困る」とサイラスさんは柔らかく微笑んだ。

確かに、エリザって意外と生真面目だ。……色々規格外だからつい忘れちゃうけど。
クロエさんの生真面目さは実はエリザ譲りなのかも。

サイラスさんはお茶目というかーー案外腹黒よね。


その腹黒お爺さんが、少し悲しそうな顔を作りながらため息をついた。

「あの時も今も、私はこれっぽっちも別れたいとは思ってなかったのだけどね」
「……我慢させているのかもしれんと思うたら、居た堪れなくなったのじゃ」
「身体が小さくなっても、愛し合えないわけではないよ?」
「ーーッ! こっ、このたわけがっ! 茶会でなんちゅうことを言うのじゃ!」
「おやおや、何を想像したんだいエリザベス?」
「ーーーー!?!? 巫山戯るのもいい加減にせんか! お主今すぐ国に帰れーーっ!」

あー……私が帰った方がいい気がしてきたわ。



それにしても。

エリザは今も昔もサイラスさんのことが好きなんだろう。それはサイラスさんも。
それなのに別れてしまったり、復縁もしなかったり。でもこうして一緒にお茶をしていたり。

夫婦ってよく分からない。


けれどーーとてもとても、羨ましく思えたのだった。
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