成仏おたすけ屋

はまのべ

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高木志保

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  それにしても、あの様子じゃ約束を守ってくれるのか怪しいものだな。隼人は心配になってきた。
 まあ、霊力を辿ればどこにいるのかは把握できる。一ヶ月以内に"事"を起こそうとしない限りは、大丈夫だ。
 そして、かなえには"事"を起こさせようという邪悪な思惑は感じなかった。かなえはもっぱら、桜田ともう少し一緒にいたいという想いにより"こちら"に留まってしまった口だろう。

  隼人はその例をよく知っていた。もう会えないと思っていた人に会えた喜び、二度目の別れがとてつもなく辛いということを。

「隼人さん、隼人さん~」
お店の扉が勢いよく開くと、そこには高木志保という女性が立っていた。隼人が最近、父親の成仏を手伝った客だ。

「今日のお客さんはどうでした?」
高木志保は、馴れ馴れしく聞いてくる。
「帰ってください」
「そう言わずに~。私は隼人さんの味方なんですから。はい、差し入れです」
彼女が差し出した箱の中を見ると、プリンが二つあった。そういうことか。仕方なく、コーヒーを入れて彼女の手元に置く。
「差し入れなんて、これで最後にしてください」
「そんなわけには。これは、差し入れという名の延滞代なので」
彼女は、手を顔の前で振って拒むそぶりをみせた。

 彼女もかつて、一ヶ月経っても霊力を返しに来ない客だった。男手一人で育ててくれた父親と離れられず、隼人から逃げ回った。

「ありがとうございます」
彼女はそう言ってコーヒーを飲み始める。

「どうしてそんなに付きまとうんですか」
「隼人さんが、独りだから」
彼女は哀れみの目を隼人に向けた。

  家業として成仏おたすけ屋を営んでいた両親は死んで、支えてくれた恋人も死んだ。隼人の近くにいると、不幸になる。隼人は誰のことも近づけないようにしていた。

「僕は独りが好きなんです」
「そんなわけ……」
「放っておいてください」
独りの方が好きな人だっている。俺だって、独りの方が楽だ。隼人は自分にそう言い聞かせていた。

「まあまあ、プリン食べましょ」
こうして、いつも高木志保のペースになっていく。不快であり、心地よくもあった。
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