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1章
やりたい事探し・2
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冬の弐の月の最後の日、学校で、一番年上の僕たちのお見送り会が開かれた。
手作りの、心のこもった温かい会。
半数以上は、マリーアの高等学校へ進学する。
マリーアに親戚が住んでいて、そのおうちから通う子もいるけど、ほとんどの子は学生寮に入ってそこから通う。
南海州各地から生徒が集まる学校へ通う間に、そこでお嫁さんを見つけてマウリへ一緒に帰ってくる子もいる。
反対に、旦那さんを見つけて一緒に相手の街へ行く子も。
マリーアや他の街に働き口を見つけて、マウリには戻らない子も。
スーリアへ行くのは僕たちだけ。
先生は、自分の教え子がスーリア学園に入学するなんて、それも二人も!!とやたらと感激していて、マリーアへ行く子たちがちょっと拗ねた。
シーランとレオリムがすごいのは分かるけど、自分たちだってがんばって勉強したのに、と詰め寄られた先生は、すぐに謝って、みんな大切な誇らしい教え子よ、街に残る子もみんなね!と、一人一人ハグしていった。
僕の前に来た時、先生は、僕の隣にいたレオリムを見た。
レオが、こくりと頷いてから、先生は腕を広げた。
なんで僕とハグするのに、レオに確認するのかな?!
疑問は残るけど、先生とハグをした。
「シーラン、あなたの才能は素晴らしいわ。スーリア学園は素晴らしい学校よ。たくさん学んで、あなたにしか出来ない、やりたい事を見つけて」
僕のやりたい事……。
それは、まだ見つからない。
僕は幼い頃からちょっとのんびりした子供だった。
慎重で臆病で、大人びているというよりも、枯れている、なんてことを言われたりする。港の奥さんたちは容赦がない。
そんな僕とは対照的に、レオリムは活発で、やんちゃで、怖いもの知らず。
海へ、森へ、山へ、僕を、いつも冒険に連れ出してくれた。
僕が怪我をすると、自分の怪我では決して泣かないレオリムが、涙を堪えて、僕の手を引いて家まで連れて帰った。大泣きしている僕と、涙を堪えるレオを、姉さんがいつも手当てをしてくれた。
それで、冒険はいいけど、怪我には気を付けなさいといっぱい怒られて、今でも姉さんには頭が上がらない。
姉さんは、僕たちの母さん代わり。
スーリア学園の話が出るまで、僕は、この街で、父さんたちを手伝いながら、レオの奥さんになって、ずっと過ごすんだって、漠然と思ってた。
だって、僕は、レオにずっと一緒にいようって言われていたから。
でも時々、蒼い瞳で遠くを見つめるレオリムに気が付いた。
今まで僕は、家族から離れて暮らす寂しさを感じているのかな、と思っていた。それらは、たまに訪れるサンタナ侯爵を見送った後が多かったから。
最近になって僕は、レオは、貴族の責任について考えていたり、もしかしたら、もっと広い世界を見たいのじゃないかと、考えるようになった。
僕の知っている貴族は、マリーア州侯様と、たまにうちに訪ねてくるレオリムのお父上くらい。二人共立派な方で、レオリムは本来、そちら側の人だ。
街のことや、人々の暮らしのことを、我が事以上に考える責任ある立場の人。
レオリムが、マウリ家で暮らしている理由を、じつはちゃんと尋ねたことがない。
レオに訊いても、シーラとずっと一緒にいたいからとしか答えないし、レオがそう答える以上、父さんにこっそり訊くのも悪いし。
だから、本当のところがどうなのかは、分からないのだけど。
僕は、心にひとつ、決意をした。
父さんにも言われた、本当にやりたい事。
それを、探したいと思う。まだ、その入り口だけど。
そして、それとは別に、はっきり望んでいることが、ひとつだけある。
「はい、先生……ありがとう!」
先生に、ぎゅ、としたら、急に後ろからレオリムに引っ張られて、引き剥がされちゃった。
レオ、もうちょっと先生とのお別れの余韻に浸りたかったんだけど?
むぅと抗議の声を上げると、たくさんはダメ、とぼそりと言って、僕をぎゅ、とした。
「ふふ、レオリム、ごめんなさいね。あなたも、元気で。シーランと仲良くね」
先生が笑いながらレオリムに向けて腕を広げると、はい、と頷いて僕から離れて、先生とぎゅ、とハグして、すぐに僕のところに戻って来た。
それで、どうしてみんな、僕にハグする時は、全員レオに許可を取るの?
小さい子たちまで、大教室のみんなを真似て、レオに許可を取ってから僕にぎゅ、とひっつく。
ちなみに、僕の背中には、レオリムが引っ付いてた。
僕が首を傾げていると、港でよく水揚げを手伝う子の一人が言った。
「シーランとレオリムは、“初恋失恋同時製造機”だからな~」
途端、みんなもそうそうと頷く。
「なにそれ?!」
レオリムは、ちょっとだけ首を傾げた。
「男子の初恋はたいがいシーラン、女子もシーランかレオリム、どっちかが初恋だからな!!」
「それで、あっという間に失恋!!」
わぁとみんなの笑い声。
えぇ!? そんなの全然知らなかった!!
レオリムが背後から、僕の横顔を覗き込んで、シーラ、と呼んだ。
「シーラは、俺のだからね」
僕は、向きを変えて、レオリムに向き直った。
再度僕を抱き込んだレオリムにぎゅ、とされながら、僕もレオの背中に腕を廻して、ぎゅ、と掴んだ。
「レオだって、僕のだよ」
うん、と答える声は、弾んで嬉しそう。
もう一度、みんなから、わぁぁ!という歓声。
なんだか恥ずかしかったけど、くすぐったかった。
みんなに見送られて、僕とレオリムは、明日、スーリアへ向けて旅立つ。
手作りの、心のこもった温かい会。
半数以上は、マリーアの高等学校へ進学する。
マリーアに親戚が住んでいて、そのおうちから通う子もいるけど、ほとんどの子は学生寮に入ってそこから通う。
南海州各地から生徒が集まる学校へ通う間に、そこでお嫁さんを見つけてマウリへ一緒に帰ってくる子もいる。
反対に、旦那さんを見つけて一緒に相手の街へ行く子も。
マリーアや他の街に働き口を見つけて、マウリには戻らない子も。
スーリアへ行くのは僕たちだけ。
先生は、自分の教え子がスーリア学園に入学するなんて、それも二人も!!とやたらと感激していて、マリーアへ行く子たちがちょっと拗ねた。
シーランとレオリムがすごいのは分かるけど、自分たちだってがんばって勉強したのに、と詰め寄られた先生は、すぐに謝って、みんな大切な誇らしい教え子よ、街に残る子もみんなね!と、一人一人ハグしていった。
僕の前に来た時、先生は、僕の隣にいたレオリムを見た。
レオが、こくりと頷いてから、先生は腕を広げた。
なんで僕とハグするのに、レオに確認するのかな?!
疑問は残るけど、先生とハグをした。
「シーラン、あなたの才能は素晴らしいわ。スーリア学園は素晴らしい学校よ。たくさん学んで、あなたにしか出来ない、やりたい事を見つけて」
僕のやりたい事……。
それは、まだ見つからない。
僕は幼い頃からちょっとのんびりした子供だった。
慎重で臆病で、大人びているというよりも、枯れている、なんてことを言われたりする。港の奥さんたちは容赦がない。
そんな僕とは対照的に、レオリムは活発で、やんちゃで、怖いもの知らず。
海へ、森へ、山へ、僕を、いつも冒険に連れ出してくれた。
僕が怪我をすると、自分の怪我では決して泣かないレオリムが、涙を堪えて、僕の手を引いて家まで連れて帰った。大泣きしている僕と、涙を堪えるレオを、姉さんがいつも手当てをしてくれた。
それで、冒険はいいけど、怪我には気を付けなさいといっぱい怒られて、今でも姉さんには頭が上がらない。
姉さんは、僕たちの母さん代わり。
スーリア学園の話が出るまで、僕は、この街で、父さんたちを手伝いながら、レオの奥さんになって、ずっと過ごすんだって、漠然と思ってた。
だって、僕は、レオにずっと一緒にいようって言われていたから。
でも時々、蒼い瞳で遠くを見つめるレオリムに気が付いた。
今まで僕は、家族から離れて暮らす寂しさを感じているのかな、と思っていた。それらは、たまに訪れるサンタナ侯爵を見送った後が多かったから。
最近になって僕は、レオは、貴族の責任について考えていたり、もしかしたら、もっと広い世界を見たいのじゃないかと、考えるようになった。
僕の知っている貴族は、マリーア州侯様と、たまにうちに訪ねてくるレオリムのお父上くらい。二人共立派な方で、レオリムは本来、そちら側の人だ。
街のことや、人々の暮らしのことを、我が事以上に考える責任ある立場の人。
レオリムが、マウリ家で暮らしている理由を、じつはちゃんと尋ねたことがない。
レオに訊いても、シーラとずっと一緒にいたいからとしか答えないし、レオがそう答える以上、父さんにこっそり訊くのも悪いし。
だから、本当のところがどうなのかは、分からないのだけど。
僕は、心にひとつ、決意をした。
父さんにも言われた、本当にやりたい事。
それを、探したいと思う。まだ、その入り口だけど。
そして、それとは別に、はっきり望んでいることが、ひとつだけある。
「はい、先生……ありがとう!」
先生に、ぎゅ、としたら、急に後ろからレオリムに引っ張られて、引き剥がされちゃった。
レオ、もうちょっと先生とのお別れの余韻に浸りたかったんだけど?
むぅと抗議の声を上げると、たくさんはダメ、とぼそりと言って、僕をぎゅ、とした。
「ふふ、レオリム、ごめんなさいね。あなたも、元気で。シーランと仲良くね」
先生が笑いながらレオリムに向けて腕を広げると、はい、と頷いて僕から離れて、先生とぎゅ、とハグして、すぐに僕のところに戻って来た。
それで、どうしてみんな、僕にハグする時は、全員レオに許可を取るの?
小さい子たちまで、大教室のみんなを真似て、レオに許可を取ってから僕にぎゅ、とひっつく。
ちなみに、僕の背中には、レオリムが引っ付いてた。
僕が首を傾げていると、港でよく水揚げを手伝う子の一人が言った。
「シーランとレオリムは、“初恋失恋同時製造機”だからな~」
途端、みんなもそうそうと頷く。
「なにそれ?!」
レオリムは、ちょっとだけ首を傾げた。
「男子の初恋はたいがいシーラン、女子もシーランかレオリム、どっちかが初恋だからな!!」
「それで、あっという間に失恋!!」
わぁとみんなの笑い声。
えぇ!? そんなの全然知らなかった!!
レオリムが背後から、僕の横顔を覗き込んで、シーラ、と呼んだ。
「シーラは、俺のだからね」
僕は、向きを変えて、レオリムに向き直った。
再度僕を抱き込んだレオリムにぎゅ、とされながら、僕もレオの背中に腕を廻して、ぎゅ、と掴んだ。
「レオだって、僕のだよ」
うん、と答える声は、弾んで嬉しそう。
もう一度、みんなから、わぁぁ!という歓声。
なんだか恥ずかしかったけど、くすぐったかった。
みんなに見送られて、僕とレオリムは、明日、スーリアへ向けて旅立つ。
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