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7・出発前
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成り行きで伝説の聖剣エクスカリバーを探す事になったリアムだったが手掛かりは何もない。
そもそも、こんな探偵紛いの仕事などやったことはないのだ。
仕方がなくまずは仕事で知り合いになった連中に片っ端から連絡を取ってみたが、ジョーク扱いされてまともな話にはならなかった。
そんな中、ひとりだけ手掛かりになりそうな事を知っている人間にたどり着いた。
「その話だったら知ってるぜ」
相手は武器の調達屋だ。チェコ製のコピー品からドイツ製の一級品まで作戦を行う為の武器を揃える生業だ。ヨーロッパ全域で取引をしており、相手はCIAから現地マフィアまでと手広い。
「噂だが工事現場だか発掘現場から見つかった古い剣をエクスカリバーとか言って金持ちを相手にしたオークションに出品されった話だ。俺が言うのもなんだがとんだペテンだと思うがね」
リアムは、この調達屋が以前、中古のAR15をM16と偽ってギャングに売りさばこうとして殺されそうになった事があったのを思い出した。
「誰が買ったか知ってるか?」
「いや。話はそのくらいしか知らない」
唯一入った情報はそれくらいだった。
(やはり一筋縄ではいきそうもないな……)
そう思いながらエレファント&キャッスルの地下鉄を降りると公園に向かった。
園内に入るとベンチに座るグレーのフードを目深に被った若者がいた。リアムはベンチに近づくと若者の横に座った。
「調子はとうだう、ヒュー」
「まあまあだよ。リアム、あんたの方はどうだい?」
若者はフードを被ったまま言った。
「アル中一歩手前だ。今日はすまないな。煩わせて」
「あんたは恩人だし、このくらいどうってことないさ。これ、注文の品」
そう言ってヒューは、使いまわしたようなくしゃくしゃの紙袋を渡した。リアムはそれを受け取ると中身を確認した。中にはサランラップに包まれたサンドウィッチと缶ビール。その下にはビニール袋に包まれた使い古したFNブローニング・ハイパワーが入っていた。それと一緒に弾丸を詰めたカートリッジが2本が入っていた。
リアムは中身を確認した後、ブロックに輪ゴムで巻いたポンド札を渡した。
「毎度あり。サンドウィッチとビールはサービスだから」
「ありがとよ。おふくろさんの具合はどうだ?」
「……あまりよくないよ」
「そうか、いずれ良くなるさ」
「かもね。あんたの方はどうだい? まだ変なものを見る?」
「相変わらずさ。でもそのおかげで稼ぎになる仕事が来た」
「そう? それが今回の仕事? また金持ちのボディガード?」
「いや、違う。伝説の聖剣を探すことになった」
「なにそれ? ゲームじゃん。あんたコミコンとか行く人だっけ?」
「成り行きだよ」
「聖剣探しなら銃より魔法が必要じゃないの?」
「かもな」
そうしていると公園の入り口近くの道路に一台の車が停車した。運転席からブロンドヘアの美女が顔を出すと手招きしてしてきた。
「ああ、お呼びだ。そろそろいかないと」
「ねえ、あれが今回の雇い主? 超美人じゃん」
「いや、雇い主は別というか……今回の仕事の相棒みたいなもんだ」
ヒューは口笛を吹いた。
「超イケてる相棒。いい仕事だね」
「ああ……だけど、俺は嫌われてるみたいだけどな」
「それは残念だね。まあ、ひとの好みはそれぞれだから気にする事ないよ」
「とにかく俺は行く。ありがとうな」
リアムは紙袋を持ってベンチから立ち上がると車に向かった。
ヒューはポケットから右手を出すと軽く振って、リアムを見送った。
早足で車にたどり着くとリアムは車に乗り込んだ。
「よく居場所がわかったな」
「私の特技なの。これでも優秀な追跡者よ」
「なるほどね。せっかく来てくれたのに悪いんだがまだ大した事も分かっちゃいないぞ」
「まずはある所を見せたいの。そこから手掛かりを見つけて欲しい」
「ある所って?」
「エクスカリバーが隠されていた場所」
「事件の現場ってとこだな。いいぜ、まずはそこから調べてみよう」
「リアム、あなたが話していた相手は友達?」
「ああ、俺の弟みたいなやつだ」
「彼、あまり良くないいわ」
「おい、相棒さん。あいつを侮辱するなよ」
「体の具合が悪いって意味よ。彼、何かよくないものが溜まってる」
リアムは窓からヒューの方を見た。確かに以前より顔色も悪く、病気のようにも見える
「なんでわかるんだ?」
「人間には色がある。あなたにもね。彼の色は良くない色。そう……死の色ね」
「体のどこかが病気ってことか?」
「どこがと言われると説明しにくいけど、彼の場合は肺のあたりかしら……?」
「ちょっと待っていてくれ、すぐ戻る」
リアムは車から降りるともう一度、ヒューのところに度向かった。
フルドラは、運転席からその様子を伺う。リアムは、ヒューに何かをまくし立てた後、ポケットから金を取り出し押し付けた。そして再び、車に戻って来た。
「おかえりなさい。何をしてきたの?」
「急いで病院に行って検査するように言ってきた」
「手遅れかもよ」
「まだわからないだろ」
「……そうかもね」
フルドラの話し方にリアムは少し苛立つ。
「で? これからどこにいくんだ?」
「コーンウォール」
そう言うとフルドラは、車をゆっくりと走らせ始めた。
そもそも、こんな探偵紛いの仕事などやったことはないのだ。
仕方がなくまずは仕事で知り合いになった連中に片っ端から連絡を取ってみたが、ジョーク扱いされてまともな話にはならなかった。
そんな中、ひとりだけ手掛かりになりそうな事を知っている人間にたどり着いた。
「その話だったら知ってるぜ」
相手は武器の調達屋だ。チェコ製のコピー品からドイツ製の一級品まで作戦を行う為の武器を揃える生業だ。ヨーロッパ全域で取引をしており、相手はCIAから現地マフィアまでと手広い。
「噂だが工事現場だか発掘現場から見つかった古い剣をエクスカリバーとか言って金持ちを相手にしたオークションに出品されった話だ。俺が言うのもなんだがとんだペテンだと思うがね」
リアムは、この調達屋が以前、中古のAR15をM16と偽ってギャングに売りさばこうとして殺されそうになった事があったのを思い出した。
「誰が買ったか知ってるか?」
「いや。話はそのくらいしか知らない」
唯一入った情報はそれくらいだった。
(やはり一筋縄ではいきそうもないな……)
そう思いながらエレファント&キャッスルの地下鉄を降りると公園に向かった。
園内に入るとベンチに座るグレーのフードを目深に被った若者がいた。リアムはベンチに近づくと若者の横に座った。
「調子はとうだう、ヒュー」
「まあまあだよ。リアム、あんたの方はどうだい?」
若者はフードを被ったまま言った。
「アル中一歩手前だ。今日はすまないな。煩わせて」
「あんたは恩人だし、このくらいどうってことないさ。これ、注文の品」
そう言ってヒューは、使いまわしたようなくしゃくしゃの紙袋を渡した。リアムはそれを受け取ると中身を確認した。中にはサランラップに包まれたサンドウィッチと缶ビール。その下にはビニール袋に包まれた使い古したFNブローニング・ハイパワーが入っていた。それと一緒に弾丸を詰めたカートリッジが2本が入っていた。
リアムは中身を確認した後、ブロックに輪ゴムで巻いたポンド札を渡した。
「毎度あり。サンドウィッチとビールはサービスだから」
「ありがとよ。おふくろさんの具合はどうだ?」
「……あまりよくないよ」
「そうか、いずれ良くなるさ」
「かもね。あんたの方はどうだい? まだ変なものを見る?」
「相変わらずさ。でもそのおかげで稼ぎになる仕事が来た」
「そう? それが今回の仕事? また金持ちのボディガード?」
「いや、違う。伝説の聖剣を探すことになった」
「なにそれ? ゲームじゃん。あんたコミコンとか行く人だっけ?」
「成り行きだよ」
「聖剣探しなら銃より魔法が必要じゃないの?」
「かもな」
そうしていると公園の入り口近くの道路に一台の車が停車した。運転席からブロンドヘアの美女が顔を出すと手招きしてしてきた。
「ああ、お呼びだ。そろそろいかないと」
「ねえ、あれが今回の雇い主? 超美人じゃん」
「いや、雇い主は別というか……今回の仕事の相棒みたいなもんだ」
ヒューは口笛を吹いた。
「超イケてる相棒。いい仕事だね」
「ああ……だけど、俺は嫌われてるみたいだけどな」
「それは残念だね。まあ、ひとの好みはそれぞれだから気にする事ないよ」
「とにかく俺は行く。ありがとうな」
リアムは紙袋を持ってベンチから立ち上がると車に向かった。
ヒューはポケットから右手を出すと軽く振って、リアムを見送った。
早足で車にたどり着くとリアムは車に乗り込んだ。
「よく居場所がわかったな」
「私の特技なの。これでも優秀な追跡者よ」
「なるほどね。せっかく来てくれたのに悪いんだがまだ大した事も分かっちゃいないぞ」
「まずはある所を見せたいの。そこから手掛かりを見つけて欲しい」
「ある所って?」
「エクスカリバーが隠されていた場所」
「事件の現場ってとこだな。いいぜ、まずはそこから調べてみよう」
「リアム、あなたが話していた相手は友達?」
「ああ、俺の弟みたいなやつだ」
「彼、あまり良くないいわ」
「おい、相棒さん。あいつを侮辱するなよ」
「体の具合が悪いって意味よ。彼、何かよくないものが溜まってる」
リアムは窓からヒューの方を見た。確かに以前より顔色も悪く、病気のようにも見える
「なんでわかるんだ?」
「人間には色がある。あなたにもね。彼の色は良くない色。そう……死の色ね」
「体のどこかが病気ってことか?」
「どこがと言われると説明しにくいけど、彼の場合は肺のあたりかしら……?」
「ちょっと待っていてくれ、すぐ戻る」
リアムは車から降りるともう一度、ヒューのところに度向かった。
フルドラは、運転席からその様子を伺う。リアムは、ヒューに何かをまくし立てた後、ポケットから金を取り出し押し付けた。そして再び、車に戻って来た。
「おかえりなさい。何をしてきたの?」
「急いで病院に行って検査するように言ってきた」
「手遅れかもよ」
「まだわからないだろ」
「……そうかもね」
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