俺と彼女と彼女と俺の出会いは少し違っている

毛穴翔太

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初めてのデート

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 四月も後半へとなり、気温はどんどん暖かくなった。とても過ごしやすい季節へとなったと思いながらも、入学の時に咲いていた桜は散り、青々と葉が生い茂っている桜の木を見て、どこか寂しさを感じる。
 そんな四月の後半だが、未だに夜奈との関係に進展は無い。
 あの日、部活見学の時に渡された連絡先を持って帰った俺は、早速携帯電話に連絡を登録し、掛けてみた。しかし、その日は電話に出る事は無く、眠りについた。
 翌日も掛けてみた。しかし、繋がらず、一体何の為の携帯だ?と思いながら、夜奈についての疑問が深くなる一方である。
 告白されたあの日の夜に、アルバムなどを探してみたが、何処にもそんな名前の奴、面影のある人物がいなかった。
 ベッドの中でウトウトしながら、考えていると、気づけば朝になっていた。
 眠たい。
 俺は、ふらふらになりながら学校へ行き、学校では睡魔と戦いながら授業を受けた。
 授業中、先生達の説明がまるで眠りの呪文のように聞こえて来て、更に眠気をうながしてきたのには、流石に参った。
 何だかんだで、授業が終わり、家に着くと、早速ベッドへと向かった。
 鞄を机に置き、制服を脱いで楽な格好へなると、布団の中へ入った俺は、その一秒後には、深い眠りについていた。

 目が覚め、携帯電話で時間を見た。午後八時。三時間程眠っていたようだ。
 そう言えば、いつもなら七時くらいに「ご飯だよ!」と母親が呼びに来るはずだが、呼ばれた覚えがない。
 ………いや、確か…母親は中学の時の友達と飲みに行くと言っていた覚えがある。故に、呼ばれていないが正解だ。
 それにしても、どうしようか。俺の晩御飯。
 当初はコンビニで何か買ってくる予定だったが、眠気のせいでそんな事すっかり忘れてしまっていた。
 因みに父親は海外へ単身赴任で、今はいない。隣の部屋には妹が居るのだが、滅多に顔を合わせない、というか、部屋から出て来ない。
 さてと、そんな家族構成のことは置いといて、飯でも買って来るとしよう。
 俺はパパッと着替えて、家を出た。
 いつも乗っている自転車に乗り、コンビニへと向かった。
「寒っ!」
 四月も後半と言っても、朝と夜は冷え、更に潮風が吹いている事によって体感温度が低く感じる。
 自転車で漕ぐ事、五分程。ようやく、コンビニへと着いた。
 コンビニで一通り見ると、唐揚げ弁当を手に取り、会計を済ませ、再び自転車に乗って家へと帰った。
「ただいまー」
 いつもの癖で言ったものの、誰からの返事も無い。
 俺は早速買って来た弁当をレンジで温め、温まるのを暫しの間待った。
 ピーピー!という音が鳴り、レンジから弁当を取り出した。
 俺は熱々となった弁当を開け、食べ始めた。五個入りの唐揚げを一つ、そしてまた一つと食べていく。
 気がつけば、先程まであった唐揚げ弁当が、容器だけになっていた。
「ご馳走さまでした!」
 俺は、食べ終わった唐揚げ弁当の容器をゴミ箱へ捨て、あらかじめ用意しておいたお風呂へ入った。
 そう言えば、妹はいつお風呂に入っているのだろうか?
 昔はよく二人でお風呂へ入った事を思い出しながら、体を洗っていく。
 お風呂上がりは、コンビニで買っておいたアイスを頬張り、自室へと向かった。
 体が火照っている為、布団へは入らず、掛け布団の上に乗るような体勢で携帯をいじる事五分程。いきなり、携帯が鳴り出した。
 表示名は六霊夜奈。
 俺はすぐさま電話を取った。
「もしもし?」
『もしもし。たっくん?今、大丈夫?』
 もちろん、何もしていないし、予定も無い俺は、
「あ、うん。大丈夫」と返した。
『あのね、今度の日曜日空いてる?』
 何!?日曜日だと!?
 大丈夫だ!問題無い!
「うん。空いてるけど、どうしたんだ?」
『いや、その…二人で何処か出かけたいなと?』
 それって、つまり……。
「デートって事?」
 俺は一体、何を言っているのだと思う。
『うん!まあ、そう言う事だね。で、日にちと時間だけど……」
 夜奈によると、デートの日にちは二日後の日曜日で、待ち合わせは福井駅に九時に集合となった。
 俺は、このデートで絶対に夜奈への疑問を解いてみる事を決意し、この日は眠りについた。

 時が経つのは早いもので、気づけば日曜日になっていた。
 朝の七時。いつもの日曜日なら、夢の中である。
 俺は、ベッドから起き上がり、服を着替えてリビングへと向かった。
 リビングでは、母親がコーヒーを飲みながら、テレビを見ていた。
「あら、タク。おはよう。随分と早いわね。今日は日曜日よ?」
 そんな事は重々承知である。と思いながらも、
「ああ。友達とこれから遊びに行くんだよ」
「あらそう」
 母親との短い会話を済ませて、ソファーへと座った。
 ふと、テレビに映し出されている時間に目がいった。
 七時二十一分。九時に集合なので、八時に出れば余裕で間に合う。
 再び時間を見た。
 あれから一分程しか経っていない。
 どうして、待ち時間と言うものは長く感じるのだろうか?
 不思議である。
 再び時間を見た。
 七時三十分。まだである。
 何故だか、胸がそわそわとなり始めた。
 行きたい!しかし、今行けば駅で待つ可能性があり、人混みで待つのはあまり好きではない俺は、極力それを避けたい。早く時間よ、経て!
「そんなにそわそわするくらいなら行けば良いじゃない」
 と、母親に言われ、気づけば福井駅へと来ていた。
 八時十五分。あと四十五分はある。
 早すぎる。
 俺は軽くため息を吐き出し、駅の壁に体を預け、携帯を見た。すると直後、左肩をコンコンと叩かれた。
 俺は一瞬体をビクッと震わせ、左の方を見た。そこには、膝下くらいまである桃色のスカートに白いスリーブセーターを着たオッドアイの少女が立っていた。
「早いね、たっくん。もしかして私とのデートが楽しみだったの?」
 夜奈は何処か悪戯っぽい笑みを浮かべて、俺に聞いてきた。
 楽しみだった事には違いないが…。
「と、兎に角とにかく行こうか」
 照れ臭くて、そんな事言えるはずが無い。

 俺たちが最初に向かったのは、映画館であった。ベタな行き先だが、俺なりに考えたつもりだ。
「たっくん!これ見よう?」
 夜奈が指差したのは、俺が見たいと思っていたアニメの劇場版であった。
「こ、これで良いのか?」
「うん!……其れとも、これじゃ駄目?」
 いや、駄目では無いが、夜奈はこう言うのに興味があるとは…。
「それじゃ、チケット買ってくる」
 俺は手慣れない手つきでチケットを二枚購入すると、夜奈の元へと戻った。
 しばらくして、入場の案内放送があり、俺と夜奈は入場口へと向かった。
「こちらのアニメは二番スクリーンになります」
 入場口に居た女性従業員にチケットを渡し、夜奈と共に二番スクリーンへと向かった。
 中へ入ると、もう既に数十人のお客さんが入っていた。
 俺たちはすぐにチケットに書いている座席に座り、予め買っていたポップコーンを頬張りながら、その時を待っていた。
「ねえ、楽しみだね」
「あ、うん。そうだな」
 あたりは少しずつ暗くなり始め、いよいよ映画が始まった。
 一期、二期とアニメを見ていた俺からすれば、とても楽しめる内容であった。
 二時間程の上映時間が終わり、あたりが少しずつ明るくなり始める。
「たっくん!面白かったね!」
「そうだな」
 ところで今何時だ?
 俺はズボンのポケットに入れていた携帯電話で時間を見た。
 十一時半。
「今十一時半だけど、ご飯でも行くか?」
「うん!」
「何が食べたい?」
「私、行きたいところがあるの!」
 夜奈に連れられて向かったのは、小さなレストランであった。
「たっくん!ここはね、私にとって思い出深いところなの!」
 俺は「そうなんだ」と言いながら、店内を見回した。
 店内は古びた様子は無く、それどころか、真新しく見える。
 キョロキョロと店内を見ていた俺を余所よそに夜奈は呼び鈴を鳴らして店員さんを呼び出した。
「ご注文ですね!」
「これと、これで!たっくんはこれでいいよね?」
 夜奈がメニューに載ってある写真を指差しながら、俺に聞いてきた。
 スパゲッティ…。まあ、悪くはないか。
「あ、うん。それで良いよ」
「じゃあこれで」
「ご注文は以上ですね!では確認させて頂きます」
 店員さんは、夜奈が頼んだ注文の確認の為、電子端末を見ながら注文を繰り返し読み上げた。
「では、少々お待ちください」
 店員さんは確認が終わると、すぐさま次のお客へと向かった。
 間も無くして、頼んでもいないサラダが二つ俺たちの席に届いた。
「あの~、頼んでいないんですけど」
「こちらは、本日オープン記念でサラダをサービスさせて頂いているんです」
「ほ、本日オープン?」
「はい!」
 おい、待てよ。夜奈の奴はさっき、『ここは、思い出深いところなの』って言ってなかったか?
 店員さんはサラダを二つ置いていくと、厨房の方へと向かって行った。
「なあ、夜奈。お前に聞きたい事があるんだが…」
「なに?」
 夜奈はさっき運ばれてきたサラダを食べながら、そう言った。
「さっきお前は、『ここは思い出深いところなの』って言っていたが、どう言う事だ?さっきの店員さんは、本日オープンって言っていたぞ?」
「私、そんな事言ったけ?」
「ああ。言っていたよ。他にも聞きたい事がある。お前は俺と、以前に何処かで会った事があるのか?」
「!?そ、それは……秘密かな?」
 何だよ、それ!
「秘密って、教えられない理由でもあるのか?」
「そのうち、話すよ…」
「そのうちっていつだよ」
「そうだね…。今年の十二月二十五日になったら教えてあげるよ。クリスマスの日に」
 今は、四月末。あと、八ヶ月待てと?
「そんなに待つ意味を教えてくれ!」
「お願い!それまで待って!」
 そう言う夜奈の顔は真剣で、どこか複雑そうな表情であった。
 俺はそんな夜奈を見て、これ以上言うのをやめた。
 食事を済ませ、俺と夜奈は店の外へと出た。
「ねえ、たっくん。ゲームセンターに行こう!私、行った事がないの!」
 夜奈に手を引っ張られ、俺たちはゲームセンターへと向かった。
「凄い音だね…」
 周りの音に負けず、夜奈は少し大きめの声で話しかけてきた。
「で、どれがやりたいんだ?」
 俺も負けじと声を大にして、夜奈に向かって問うた。
「これがやりたい!」
 夜奈は、ガンシューティングゲームを指差しながら、そう言った。
「一緒にやろう!」
 お金を入れて、ゲームスタート。
 俺と夜奈は、銃に似せたコントローラを画面に向けた。
 ゲーム内容としては、出てくるゾンビを倒していくという、ありきたりな作品であった。
 さて、夜奈の腕前は………。
 俺は言葉を失った。
 ヘッドショット、ヘッドショット。
 まるでやり慣れているかの如く、拳銃捌きに視線が釘づけになった。
「リロード。たっくん、お願い!」
 夜奈の言葉に視線を画面に戻す。
 一応、ゾンビの何処を狙っても一撃で倒せるのだが、ヘッドショットを撃つ事によって、最後に出るスコアに影響が出る。
 頭、百点。顔、五十点。胴体、三十点。それ以外、十点。
 俺もヘッドショットを狙うが、左右に揺れ、なかなか当たらない。
 苦戦する中、夜奈のリロードが終わり、再び撃ち始める。
 ヘッドショット、ヘッドショット。
 次々とゾンビを倒していく夜奈を横目に、己の出せる最高の拳銃捌きで夜奈の援護をする。
 そして、ゲームが終了。最後にスコアが表示させた。
「見て見て!Sランクだって!」
「やったな」
 因みに二人合計のスコアはSランクというスコアだったが、個人のスコアも表示されており、夜奈の方が圧倒的にスコアが高かった。
 俺は思った。
 夜奈が一人でやった方が、凄いスコアを叩き出せるんじゃね?と。
「ねえ、次これやりたい!」
 夜奈が次に指差したのは、可愛らしいクマのストラップの入ったクレーンゲームであった。
「たっくん!これってどうやってやるの?」
「まずはここにお金を入れる」
 夜奈は俺の指示のもと、財布から百円玉を取り出し、入れた。
「それで、欲しいもののところへ、そこのスイッチでアームを動かす。一度スイッチを離すと、その方向へは動かないから気をつけろよ。そして、自分の納得のいく場所へアームを持っていけたら、スイッチから手を離す。すると、アームが勝手に降りてきて取ってくれる」
「あっ!落ちちゃった!」
 夜奈はその後も、何度もチャレンジするが、取れたものは無かった。
「むう~!」
 クマのストラップを睨みつけている夜奈の横から、俺は百円玉を一枚入れた。
「ちょっといいか?」
 ここで俺の能力の出番だ。
 先程から夜奈が取りたがっているストラップに狙いを定めた。
 距離とアームの広がる長さを測定した後、アームを動かした。
 右に四十三・二センチメール。奥行き、二十三・六センチメール。
 ……ここだ!
 俺はスイッチから手を離した。
 アームがゆっくりと降りていく。そして、ストラップを掴んだ。しかしここで思いもしなかった事が起きた。掴んだストラップが一つではなく、二つだったのだ。これ関しては、俺の能力ではなく、偶々たまたまで偶然で奇跡的なものであった。
 ゆっくりと取り出し口の方へと向かったアームは、ゆっくりとアームを開き、ストラップを取り出し口に二つ落とした。
「はい!これ」
 俺は、夜奈にクマのストラップを二つ渡した。
「嬉しい!…でも、折角たっくんが取ったんだし、一つはたっくんが貰うべきだよ!それに、お揃いって何か…いい感じしない?」
 何がいい感じがするのかは、説明しろと言われたら分からないが、
「ああ、そうだな」
 悪い気はしないな。
 それから、しばらくゲームセンターで夜奈と遊び、気付けば夕方になっていた。
「たっくん、たっくん!私ね、もう一つ行きたい場所があるんだ」
 俺は夜奈に連れられて、砂浜へとやってきた。
 昼間は明るく照らしていた太陽も、真っ赤に染まり、あたりは薄暗くなりつつあった。
「夕日、綺麗だね」
「そうだな」
 俺は少し素っ気ない返事なような気もしながら、そう答えた。
「ねえ、たっくん。貴方に聞きたい事があるんだ」
 夜奈は真剣な眼差しで、こちらを見た。
「想像してね。もし私が化け物に襲われてたら、たっくんならどうする?」
 難しい質問だ。そもそも化け物という設定が難しい。強姦や殺人鬼が夜奈を襲っているのなら、どうにかして助けるかも知れない。そうじゃなくて、化け物となると、想像だけじゃ、助けるか助けないかは分からない。
「助けられるか助けられないかは別として、助けようとはすると思う」
「そうか…。其れが聞けただけで、十分だよ」
「え?」
 今なんて言った?
 その一瞬、強い風が海から吹き、夜奈が言った言葉が聞こえなかった。
 次の瞬間、夜奈はどこか嬉しいそうな表情を見せてると、
「さて、たっくん。帰ろうか」
 そう、俺に言ってきた。
「ああ」
 俺は短く返事をし、駅へと向かった。
「ここでお別れだね!また、学校で」
「おう。またな」
 駅で夜奈と別れた俺は、家へと向かった。
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