俺と彼女と彼女と俺の出会いは少し違っている

毛穴翔太

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体育祭

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 六月になり、毎日のように雨が降っている。そんな中、俺たちが通っている高校では、体育祭が行われていた。
 くそッ!雨が降れば良いのに!と、心の中で思いながら、暑い日差しの中にいた。
 小中学の時は思わなかったが、高校生の体育祭はぐだぐだである。
 校長の話が終わると、早速競技が始まった。
 まずは百メートル走。正直、これに出たかった。勝とうが負けようが、百メートル走りきれば終わるからだ。
 しかし、俺はそれを選ばず、男女混合リレーなどという、名前を聞いただけで面倒臭そうなモノを選んでしまった。
 理由は簡単。
 夜奈が一緒に走りたいと言って来たからだ。つまり、夜奈も男女混合リレーに出るという事だ。
 しかも、アンカーだ。更に、勝った方が負けた方に言う事を聞くと言う罰ゲームまでもある。つまり、夜奈の奴は相当足に自信があるのだろう。
 億劫おっくうな気持ちこの上ない。
 帰って良いだろうか?
 俺は、特に面識のない他クラスの人を見ながら、自分の番を待った。
 競技は、お昼からだ。
「よう!俺は終わったぜ」
 そう言ってきたのは、神田であった。
「みたいだな。で、何のようだ?」
「今から女子の二百メートル走が始まるから見に来たんだよ」
「男子の二百メートル走は?」
「馬鹿たれ!野郎の走っているとこなんざ、暑苦しいだけだ!…それより、この二百メートル走に学園のアイドル、六霊夜奈が出るらしい」
 夜奈が?
「しかも、途轍もなく足が速いらしい」
 そうだろうな。そうでなきゃ、あんな罰ゲームなど言ってはこないだろう。
 さて、どれくらいの足の速さなのだろうか。
 夜奈が走り出すのは、五組目である。
 一組目が走り出す。二組目が走り出す。三組目、四組目と走り出し、いよいよ夜奈の番である。
「位置について、よーい……」
 パン!という空砲の合図と共に走り出す。
「って、おいおいおい!」
 一言で言うと、夜奈の走りは速かった。
 詳しく説明すると、走り出す為の加速力。そして、相手を寄せ付けない程のスピードで、一番後ろの選手との差が百メートル開く程であった。
 簡単に言うと、ぶっちぎりの一位である。
 素直に思った事を言っていいだろうか。
 勝てる気がしない。
 俺はそう確信した。

 競技は着々と進んでいき、お昼時間となった。その瞬間、夜奈からメッセージが入った。
『お昼一緒に食べない?』と。
 俺は速攻で返事を返す。
『いいけど、どこで?』
『プールのところに来て!』
 俺は夜奈に言われた場所へと行く。
「たっくん!こっちこっち!」
 夜奈に手招きされ、小走りで向かう。
「なるほど。こんな場所があったとは…」
 他の学校へと行った事が無いので分からないが、この学校のプールは地面から少し高く数段の階段がある。その先に更衣室の扉が二箇所あるのだが、その更衣室の前の通路に雨除けのひさしがあり、そこが丁度影になっていて、弁当を食べるには最適であった。
 体操服姿の夜奈は、ぺたんと通路に座り、お弁当を広げた。
 俺はその姿を横目にお弁当を広げる。
 すると、右側に座っている夜奈に右肩をツンツンと叩かれた。
 俺は何だろうか?とそちらに視線を向けた。
「たっくん。あ~ん!」
 夜奈は、自分のお弁当に入っている玉子焼きをお箸で掴み、俺の口元へと持って来ていた。
 俺はその行動に一瞬、フリーズした。
 これは、もしかして…。
 急に胸がドキドキしてくる。
 俺はふと、周りを見回した。
 誰もいない事を確認すると、夜奈に向けて口を開けた。
 ぱくっ。
 玉子焼きは、いつも母親が作ってくれているモノより、少し甘く俺好みであった。
「美味しい?」
「うん、美味しい!」
「それは良かった!」
 夜奈はにっこりと微笑み、俺の方に口を開けた。
 俺もやれってか!?
 玉子焼きを箸で掴み、夜奈の口へと入れた。
「なるほど、なるほど」
 夜奈は玉子焼きの味をチェックしながら、玉子焼きを食した。

 昼休みが終わり、午後の部が始まった。
 気持ちは憂鬱。勝てる気がしない。
 午後の部が始まって二種目めに、俺が出る男女混合リレーが行われる。
 と言う事で、入場門付近で待機する事に。
 早く帰りたい!
 男女混合リレーの前の種目、障害物競走も着々と終わりを告げている。
「続きましてー、男女混合リレーです!」
 アナウンスの声と共に、前の人から入場門をくぐる。
 ここまできたのだ!精一杯頑張ってやる。
 俺はグラウンド中央に座らされ、第一走者たちが各レーンへと向かう。
 因みに、この男女混合リレーは各クラスで走る順番はバラバラで、男子が一番手とか女子が二番手とかは存在しない。故に、俺と夜奈が走る事も可能なのだ。
 ……ちょっと待てよ。もし、第一走者目で突き放されれば、二走者目は大変な事になる。それがアンカーまで響くとしたら?
 走者の順番ミスでチームの 所為せいになる。
 計画通りだ!
 と言うのは、ただの妄想。そして理想。現実は違う。
 俺のクラスは現在一位で、二位との差はグラウンド四分の一ほど開いている。
 因みに、二位のクラスは夜奈のいるクラスである。
 おいおいおいおい!待て待て待て待て!
 頑張り過ぎだって!
 俺は、頭が痛くなってきた。
 渋々、レーンへと入る。その隣には、見覚えのある女子がレーンへと入る。
 チラリと横目で夜奈を見る。
 真剣な眼差しで、その時を待っている。
 こうなったら、腹をくくるしかない。
 俺は、バトンを受け取ると、思いっきり地面を蹴った。
 今までにないくらいの力強さで。
 一歩、また一歩と。
 気付けば最初のコーナーへと差し掛かった。
 夜奈はどこにいるのだろうか。
 今見れば、確実に負ける気がする。
 どうせなら勝ちたい。
 無事にコーナーを曲がり終わり、直線へと入った。
 抜かれてはいない。つまり、まだ後ろにいるのが分かる。ゆっくりだが、近づいて来ている。
 俺はこれでもかと言うくらい、手と足を速く動かす。
 直線も気付けば終わり、最終コーナーへと差し掛かる。
 その時だ。
 ザッ!ザッ!という砂を蹴っている足音が真後ろまで聞こえて来た。
 分かる。夜奈だ。
 この最終コーナー、体を極力インコースへと入れた。
 そして最後の直線。
 視界の隅に頭が見えた。
 すぐ隣にいる。が、そんな事は気にしていられない。
 俺は、最後の力を振り絞り、ゴールテープに突っ込んだ。
 ゴールテープに触れた感触はあった。
 俺はゆっくり走るのをやめ、歩き出した。
 すると、緑色のゼッケンを着た人に腕を引っ張られ、二位のところへと連れて行かれた。
 あとで聞いてみると、ほぼ同時にゴールしたらしいのだが、一位の夜奈の方が、僅かにテープを切ったらしい。
 神田曰く、胸の大きさの分だな!との事。
 それに関してはどうしようもない。
 そんなこんなで、俺の出番が終わり、その後は残りの競技を見ていた。
 体育祭が終わる頃には、日に当たっていた腕や首や足は真っ赤になっており、お風呂に入ると悲鳴を上げるに違いない。
 閉会式が終わると俺たち生徒は一旦は教室へ戻り、ホームルームをちゃちゃっと終わらせ、ようやく長かった体育祭が終わった。
 その日の夜。
 案の定お風呂で悲鳴を上げた俺は、そそくさとお風呂場から退散し、自室へと戻った。
 俺はふと携帯を触ると、夜奈からメッセージが届いていた事に気付いた。
 内容はこうだ。
『体育祭の罰ゲームを発表します!この夏休み、私とどこかに遊びに行く事!それが今回の罰ゲームです!』
 俺は無意識のうちに笑みを浮かべていた。
「考えている事は同じって訳か……」
 俺はすぐに返事を送った。
『了解しました!』と。
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