俺と彼女と彼女と俺の出会いは少し違っている

毛穴翔太

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夏休み2

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 夜奈と遊園地へと行って一週間程経ったある日。俺の携帯に夜奈からのメールが送られてきていた。
『今度の土曜日に海へ行こう!』
 と言うものだった。
「海かー」
 もう長いこと海で泳いでは無い。
 泳ぎが下手だから?いや、違う。行く機会が無かっただけである。
 泳ぎとしては、並みの高校生くらいであろう……。ん?海に行く?それってまさか!
 夜奈の水着姿が拝めると言う事か!
 ビキニ?ワンピース型?それとも競泳用とか、まさかスクール水着とかでは…。
 俺は今年一番の頭の回転で、夜奈の似合いそうな水着を思い浮かべた。
 出来れば、ビキニか、ワンピース型の水着が……。じゃなくて!
 俺は、急ぐ必要は無いのだが、急いで返信をした。
『了解!夜奈の水着を楽しみにしているよ!』
 送信。って、俺は何を送っているんだー!
 時すでに遅し。
 送ってしまった。
 すぐに夜奈から返信が。
『私、学校用の水着しか持ってないよ?』と。
 俺は、その文字を見て、少しがっかりした。
 その時、ふと思い出した。
「あっ!俺も水着持ってなかった……」
 俺は急いで、海パンを買いに行った。

 ようやく、夜奈との約束の日になった。
 夜奈とはいつもの駅で待ち合わせをし、二人で海水浴場へと向かった。
「じゃあ、着替えてくるねー」
「あ、うん。待ってるよ」
 お互いに着替えの為に、一時的に別れた。
 先に出て来たのは、俺であった。まあ、何となく、俺の方が先に出て来るであろうとは、思っていたが。
 其れにしても、人が多い。土曜日だからであろう。
 流石に、江ノ島のような人数は居ないが、それでも多く見える。
 などと考えながら海を眺めていると、肩をトントンと叩かれた。
 俺はくるっと振り返った。
「どう?たっくん?」
 俺は驚いた。まさか、まさかの夜奈は、白のビキニで現れたのだ。
 白い肌に白いビキニ。長い髪は邪魔だったのか、ポニーテールにしてある。そして何より、触り心地良さそうな、おっぱ……ゴホン!
「あの~、たっくん?さっきから、胸を見てない?」
「いや、見てない!断じて!」
「本当かな~?」
 夜奈にじーっと見つめられて、罪悪感に目を逸らした。
「あっ!目を逸らした!やっぱり見てたんだ!」
「ち、違う!」
 まあ、違わないのだが。
「その、夜奈に見つめられて、その~、恥ずかしいと言うか……。これ以上は言わせないでくれ!」
「あっ。うん…」
 やばい!
 時々だが、夜奈とは会って話をしたりして慣れてきたと思っていたのだが、水着の夜奈を見ただけで、どうしてこうもドキドキするのだろうか。不思議だ。
「とりあえず、行こうか!」
「うん…。そうだね」
 俺たちは、海の家からパラソルを借り、海の近くへと向かった。
 借りたパラソルを立て、荷物をパラソルの下に置いた。
「さて、たっくん。たっくんにはお願いがあるの」
「お願い?なんだ?」
「日焼け止め塗ってくれない?後ろだけで良いからさ」
「え?」
 これって、アニメや漫画、ゲームで良くある イベントか!
「じゃあ、お願いね!」
 夜奈は俺に日焼け止めを渡し、うつ伏せの状態になった。
「じゃあ、いくよ?」
「いいよー」
 何故だろう。ドキドキする。
 俺は手に日焼け止めを出し、夜奈の背中へ。
「ひゃっ!」
「あっ!ごめん!」
「?大丈夫だよ。少し冷たかっただけだから」
「そ、そうか」
 とりあえず、何も考えるな!
 俺は無心で日焼け止めを塗り終えた。
「ふう。さあ、たっくん!泳ぎに行こう!」
 夜奈は、俺の手を引いて、海へと走った。
 ザブン!と飛び込むように俺と夜奈は海へと入った。
 冷たくて気持ちいい。
 そして、海独特の匂いがする。
「ねえ、たっくん!」
 俺は夜奈に名前を呼ばれ、夜奈の方を向いた。その瞬間、夜奈が俺の顔に水をかけてきた。
「うおおおおおおおおおお!目がががが!」
 不意を突かれた俺は、防ぐ事が出来ず、もろに海水が目に入った。
「だ、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫…」
 覚えておけよー。
 俺はそう心の中で叫んだ。
「うん?」
「どうしたの?」
「ちょっと待って……」
 俺は足元に手を持っていく。そして、両手で手を組むように、それを海面近くまで持ってきた。
「良いもの捕まえた」
「なになに?」
「今から手を広げるから、よく見ててくれ」
「うん!」
 俺は、ニヤリと笑った。
「じゃあ、いくよ」
 夜奈は興味深々で、顔を覗き込んできた。その瞬間俺は、手の中にあった海水を勢いよく、まるで噴水のように吹き出した。
「うわっ!」
 夜奈は回避する間もなく、顔に海水がかかった。
「ハハハハハ!お返しだよ!」
「もう!」
 夜奈は悔しかったのだろう。再び海水をかけてきた。俺もただ単にかかりっぱなしなのはしゃくなので、俺も夜奈に海水をかけた。
 それからは、二人で水の掛け合いっこをして、気付けばお昼になっていた。
 今回も夜奈のお手製のお弁当を頂く事に。
「どうかな?」
「うん。今日も美味しいよ」
「良かった!ところで、たっくん。ちょっと暑いから、後でカキ氷を買ってくるけどたっくんいる?」
「いるけど…俺が買いに行こうか?」
「大丈夫!私に任せて!たっくんの好きな味は…メロンだっけ?」
「何で知っているの?俺、言ったけ?」
「あっ、うん…。この前聞いたよ。さらっと言ってたから、忘れているんでしょ?」
「そうか?まあ、兎に角それで頼む。でも本当にいいのか?」
「うん!その代わり、今度夏祭りがあるからその時は宜しくね!」
 其れはまた金額が大きく違う気がするのだが?
「了解!とりあえず、今日は頼むよ」
 海を眺めながらのお弁当は、いつも学校で食べているお弁当とは違う気がした。
 其れに、その時その時の風景が違うのも、これまた良いものである。
 お弁当も食べ終わり、夜奈は立ち上がると、「じゃあ、買ってくるね」と俺に告げ、売店へと向かった。
 十分くらい経っただろうか。夜奈は帰って来てない。恐らく混んでいるのだろう。そう思っていた。
 更に十分程経った。
 流石に遅過ぎる。夜奈の身に何かあったのだろうか?心配である。
 俺は、ゆっくりと立ち上がり、売店の方へと向かった。
 そこで俺は、夜奈が遅かった理由がすぐに分かった。
「ねえ、ねえ。俺たちと遊ぼうぜ?」
「そうだよ!きっと楽しい一日になるぜ!」
 まさか、ナンパか?
 しかもガラの悪い男が三人もいた。
「だから、さっきから言っているでしょ!あんた達みたいなモブキャラと、遊ぶなんてお断り!」
 おいおい。何でそんな挑発的な言動を言うんだ!夜奈よ!
「言わせておけば!」
 やれやれ。助けるか。
 正直、心臓はバクバクと鳴っている。恐らくこういった出来事に、耐性がない為であろう。
「おーい、夜奈!どうした?」
 感情を表に出すな。相手に悟られないように、いつも通りに。
「たっくん!」
 夜奈は、俺の顔を見るなり、男達の間を割って俺に抱きついてきた。
「チッ!男がいたのかよ!」
 三人の男達は俺を見るなり、何処かへ立ち去っていった。
「嬉しい!助けに来てくれたの?」
「助けにって言うか……なかなか帰って来なかったから……其れで見に来ただけだ」
「フフ。心配してくれたんだ?」
「うるさい!さあ、早く買ってもうひと泳ぎするぞ」
「うん!」
 夜奈は嬉しそうに返事をした。
 俺たちはカキ氷を買い、再びパラソルの元へ。
「ねえ、たっくん」
 カキ氷を食べながら、夜奈が話しかけてきた。
「どうした?」
 俺はそう言って夜奈の顔を見た。夜奈はどこか浮かない表情でカキ氷を見つめていた。
「このまま、時間が止まればいいのにと思うの。ずっと楽しいこの瞬間が」
「……確かに俺もそう思う時がある。でも、時は進み続ける。其れに俺は思う。今だけじゃなくて、この先の未来でも楽しい事は絶対に起こる!夜奈といれば尚更」
「それってまさか、プロポーズ?」
「いや、そう言う意味で言ったんじゃなくてだな……。あーもう!この話はお終い!さあ、最後に海に入って帰ろうぜ」
「あ、うん!」
 俺たちは、思いっきり楽しんだ。

「結構やけたな!」
「そうだね!お風呂入ったら痛そう」
「そうだな」
 などと、話をしながら、気付けば俺が降りる駅に着いた。
「じゃあ、また」
「うん。また連絡するから」
 俺は、電車から降りた。ホーム中に響き渡るホイッスルの音を合図に、電車のドアが今日も閉まる。
 日にやけた少女は、ドア越しに小さく手振り、其れを見た俺も小さく手を振った。
 ゆっくりと発車する電車と共に、駅の端から改札の方へと俺は歩き出した。
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