俺と彼女と彼女と俺の出会いは少し違っている

毛穴翔太

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クリスマスイブ

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 学園祭が終わって二カ月以上が経った。あの時はカッターシャツでいけた気温も随分下がり、ブレザーを羽織らないと、途轍もなく寒い。そんな季節へとなっている、この十二月。今日はクリスマスイブである。
 街へ駆け出せば、クリスマス一色であった。
 そんな俺は、家でゆっくり過ごしている。
 夜奈とは、明日デートをする予定で、以前から言っていた、夜奈の秘密を知る事が出来る予定でもある。
 もちろん、どんな状況でも夜奈を信じて理解してあげたいと思っている。
「あー!早く明日にならないかな?」
 既に夜奈とのデートの行き先は決まっている。
 夜奈が一か月程前から言っていた映画を観に行く事になっている。
 もちろん、それだけで解散するのはアレなので、他にも色々と周る予定である。
 そして最後に、安物だけど指輪を渡したいと思っている。
 あー!緊張と高揚感で胸が一杯で、今夜はゆっくり眠れそうになれないな。
 等々などなど考えながら携帯でゲームをしていると、突然神田から電話がかかってきた。
「はい、もしもし?」
『もしもし!国井。お前、今どこに居るんだ?』
「どこって…家だけど?」
『え?家?夜奈ちゃんと一緒じゃないのか?』
「そうだけど?」
『いや、さっき。夜奈ちゃんらしき人が男の人と楽しそうに歩いているのを見て、てっきりお前達かなと思ってこうして電話したんだけど…』
「神田!それをどこで見たんだ?」
『え?駅だけど?』
「駅だと?どの方面だ?」
『三国方面だったけど?』
「三国方面……。すまん、ありがとう」
『もしかして、逢いに行くのか?』
「逢えるか分からないが、行ってみるよ」
『何事も無ければ、良いんだけどな』
 全く、そう願いたいよ。
 俺は電話を切り、明日着ていく予定のコートを着て、駅へと向かった。
 三国方面と言っていたな。あの方面で有名な場所は……東尋坊か。
 東尋坊とうじんぼうとは、海の侵食により出来た場所で、断崖絶壁からなるそれは、自殺の名所でも有名な場所である。
 俺は電車に乗りながら、色々な事を考えてしまった。
 神田が言っていた男の人とは一体誰なのか。
 どうして東尋坊へと向かったのか。
 ん?あれ?なんで俺は東尋坊に夜奈が居ると思っているのだ?
 神田はそっち方面と言っていたが、東尋坊に居るとは言っていない。
 けど……居る!根拠はないが、俺の心がそう言っている。
 俺は、焦りと困惑で胸が一杯になりながら、駅に着くのを座りながら待った。
『三国港~。三国港~』
 着いた。
 俺は、電車の扉が開き次第、すぐさま駆け出した。
「どこだ?どこにいる?」
 駅を出た俺は、とりあえず周りを見た。
 居ないようだ。
「とりあえず、東尋坊へと向かってみるか…」
 運良く、東尋坊行きのバスに乗り込む事が出来た俺は、早速東尋坊へと向かった。
 東尋坊へと向かう間も、色々と考えてしまう。
 神田が言っていた男とは誰なのか?もしかしたら、飛び降りーーいや、考え過ぎだ。
 でも、怖い。
 ギュッと苦しくなる胸を右手で、服の上から掴んだ。
 バスに乗って十数分くらいだろうか。ようやく、東尋坊へと着いた。
「あれ?人が居ない」
 クリスマスだからか?それとも寒いからか?将又、そのどちらもなのか?でも、0人は無いだろう。台風や地震の影響なら分かるが……風の弱い、ただの快晴。こんな事があり得るのか。
 ……俺も久しぶりに来たから、絶対にそうだとは言えない。もしかしたら、居ない時もあるかも知れない。けど、何か違和感がある。
 なんだ?この違和感は?
 俺は、東尋坊を眺めながら考えていると、いきなり腰のあたりに衝撃が走った。
「ガッ…!」
 一体何が起きた?
 俺は困惑した。
 ……この腰に当たった感じは、誰かに蹴られた?
 腰に蹴られたような感覚が残っている。
 でも誰に?何のために?
 いや、考えるのは後だ。今は、どうすれば最小限の痛みで済むかを考えろ。
 一気に思考が回転する。
 どうする?どうする?このまま何もしなければ、顔面を地面に強打してしまう。かと言って、手を地面について受け止めたとしたら、恐らく手のひらに怪我をするかもしれない。………いや、考えている暇はなさそうだ。
 俺は手を出し、地面に強打しないように受け止めた。
「イってー!」
 案の定、手のひらに擦り傷ができ、血がじんわりと出てきた。
 一体、どこの誰だよ。
 俺は起き上がり、後ろを振り向いた。
「おいおい。嘘だろ……」
 そこには、誰も居なかった。
 蹴られた感覚は今でも残っている。故に、誰かに蹴られた事は確かなのだが、一体…。
 そんな事を考えていると…
 ドーン!という爆発音のような音が聞こえた。
 俺は咄嗟にそちらの方を見た。
「……なっ!なんだ…これは…?」
 見たことの無い生き物が、そこにいた。
 俺の目で見て計測するに、高さ三十二メートル五十七センチメートル。横幅、四十九メートル二センチメートルの山型の黒い化け物で、その表面には、複数の目がきょろきょろと動いていた。更に、触手のようなものが複数生えており、自由自在に伸び縮みするのが、見て取れた。
 そんな化け物に立ち向かっている者がいた。
 夜奈だ。
 一本の刀と銃を携え、化け物に向かっている。
 一体、これは何なのだ?夢なのか?それとも現実なのだろうか?
 もし夢だとしたら、どこからが夢だったのだ?今日という日からか?それとも、夜奈と出会ったあの日からか?将又、生まれた時からか?
「夢なら覚めてくれ…」
 頬を抓るが、覚める気配はない。
 なら、現実という事か?だとしたら、あの黒い山のようなあの化け物は何者で、何故あれに夜奈一人で戦っているのだ?
 訳が分からない。
「誰か、知っているなら教えてくれ!」
 俺は叫んだ。すると、山のような化け物の目が、夜奈からこちらに向いた。
「え?」
 そして、夜奈を相手していた触手の一本が、こちらに向かってきた。
 マズイ。アレに当たれば、致命傷に間違い無い。
 俺は避けようと試みた。しかし、足が言う事を聞かない。
 必死に動かそうとするも、全く動かない。
 俺は死を覚悟した。その瞬間、体の右横に衝撃が伝わった。
 動かない俺を見て夜奈が、タックルの要領で触手から救ってくれたのだ。
「あ、ありがとう。夜奈」
「なんで…来たの?」
「え?」
「なんで来たのって聞いているの!」
「何でって…神田の奴が夜奈を見たって言うから…それで…」
「訳は後で聞く。だから、今は帰って!」
「帰ってて、言っているでしょ!」
 そう言う夜奈の顔は、涙でぐしゃぐしゃであった。
「……わかった。ただ、ちゃんとどう言う理由なのか、後で教えてくれよ」
 俺はそう言うと、くるりと体を百八十度回転させ、歩いた。
 何か理由がある。そうでないと、夜奈が泣きながら言っては来ない。
 俺はそう自分に言い聞かせ、駅の方へと向かった。
「たっくん!危ない!」
 俺の後ろで、夜奈が叫んだ。その声に俺は振り向いた。
 その瞬間、俺の目の前に赤い液体が飛んでいた。
 何が起きた?
 理解が追いつかない。
 俺は、視線を少し下へずらした。
「嘘だろ……」
 俺の目の前には、黒い触手に胸を貫かれた夜奈の姿があった。
「良かった……。たっくんが…無事で…」
 必死に笑顔を見せる夜奈だが、その奥で凄く辛そうな顔をしていた。
 どうしてこうなった…。
 ズズズズと引き抜かれる触手と共に、夜奈がこちらに倒れてきた。
「ああ…。夜奈…」
 自然と目に涙が溢れ出てきた。
「ようやく…守れ…た。守って……ばっかりの……私が…たっくんを…」
「何を言ってるんだ!俺は一度も夜奈を守ったことなんてない!」
 そう言った俺に夜奈は優しく微笑み、ゆっくりと首を横に振った。
「そんな事、…無いよ?あなたは…たっくんは、いつでも……私を守ってくれた……。けど、悔しいなー……」
 夜奈の目から涙が溢れ出てきた。
「アイツを倒して、たっくんを守りたかった……」
 涙が止まらない夜奈を見ながら、ある事を思い出した。
「そうだ、夜奈!」
 俺は夜奈を地面に寝かし、コートに入れて持ってきた指輪をポケットから取り出した。
「安物だけど…」
 俺は、左手で握っていた銃を夜奈から奪い取り、それを地面に置き、指輪を薬指にはめた。
「嬉しいなあ~。ありがとう…」
 どんどん弱っていく夜奈を見ながら、こう言った。
「夜奈。メリークリスマス」
「メリークリスマス。たっくん」
 にっこりと必死に笑って見せる夜奈に、俺は心が痛かった。
「ゴフッ!ゲホ…ゲホ…。……はあ…はあ…」 
「大丈夫か?夜奈!」
 一目見て大丈夫では無いのは、分かっているが、そう聞いてしまった。
「あー、……はあ…はあ…。たっくんと一緒に…卒業したかったなぁ…。そんで、同じ大学に行って、…就職して…収入が安定したらたっくんと結婚して……子供をつくって…時々喧嘩もして……でも、すぐに仲直りをして、……何だかんだでおじいちゃんとおばあちゃんになって……最後は二人でゆっくりと過ごしたかった……」
 カランと、握っていた刀を地面に落とす夜奈の手は、力が入っていなかった。
「!?…夜奈?おい!しっかりしろ!」
 だが、反応が無い。
「嘘だろ?なあ!!嘘だと言ってくれ!」
 反応はない。
 俺は夜奈の顔を見た。
 綺麗だった夜奈のオッドアイは、光を失くしていた。
 俺は、そっと夜奈の目に手を当てて、瞼を下ろした。
 瞼を下ろしたその表情は、まるで何か成し遂げたような、嬉しそうで、安らかな表情であった。
「………クソー!!」
 俺は叫んだ。
「何でこんな事になったんだよ!!」
 俺は疑問を問いかけた。だが、誰もいないこの状況で答えてくれる者はいなかった。
「………」
 暫しの沈黙の後、俺は夜奈が握っていた刀を見た。
「夜奈…。借りていくよ」
 俺は、夜奈が持っていた刀を手に持った。
 思った以上の重さを感じながら、右手と左手に刀を携え、化け物に向かって行った。
 勝てる?いや、無理だろう。俺にそんな力はない。
 けど、勝てる勝てない以前に、何もせずに逃げるという選択肢はーー
「生憎持ち合わせてないんだよ!!!うおおおおおお!!!」
 俺は叫びながら、走り出した。
 その直後、頭に重い衝撃が走った。
 そして体が傾いている事に気付いた。
 意識が薄れていく。
 俺はそんな意識が薄れていく中、魔物の中で動いている何があるのに気づいた。
 なんだ、あれは?
 俺は、その光景を最後に絶命した。



「お兄さん!お兄さん!起きて下さい」
 誰かの声がする。
 俺はゆっくりと目を開けた。
「あっ!おはようございます。お兄さん!」
 目の前には、十センチメートルくらいの黄色い髪の少女が飛んでいた。
「お前は一体誰だ?てか、ここは一体どこだ?」
 周りを見渡すと、何も無い、ただ暗いだけの空間が広がっていた。

 
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