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再会
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ピピピピピピ!
俺はいつも聴き慣れているアラーム音で、目が覚めた。
見覚えのある天井。見覚えのある机。見覚えのあるテレビ。
「あー、戻って来れたんだ」
果たして戻って来れたのか?
何だか、長い夢でも見ていたような気もする。
俺は、ハンガーに掛けてあるピカピカの制服を手に取り、慣れた手つきで着替えた。
ところで今はいつ何だろか?
俺は携帯の画面に出ている日付けを見て確認した。
「なるほど。アイツ、面白い日へと戻してくれたな」
忘れる筈が無い。今日は、夜奈が俺に告白して来た、初登校日であった。
俺は、朝食も食べずに家を出た。
何だか緊張する。
会ったら、まず何を話せばいいのだろうか?
初めまして?いや、違う気がする。
久しぶり!これは無いな。
付き合ってください!唐突すぎるかな?いや、夜奈もそんな感じだったか?
などと考えながら、夜奈と初めて出会った場所へと着いた。
「おはよう。どうも、はじめまして」
声をかけてきたのは、入学式の時の新入生の挨拶の時の黒髪ロングの青と黄色のオッドアイの女子生徒であり、俺の初めての彼女であった。
俺はそんな彼女にグッと抱きついた。
言葉より先に体が動いていたのだ。
「え!?え!?」
彼女はいきなり抱き付かれて、戸惑っていた。
「会いたかった!夜奈……」
嬉しかった。夜奈に再び出会える事が出来て。俺は更に強く抱きしめた。
「あ、そうなんだ……」
夜奈は何か分かったように、そう言った。
そして、
「私、たっくんを守れ無かったんだね」
涙が溢れ落ちながら、夜奈はそう言った。
その夜奈の言葉に俺は、首を横に振った。
「違うよ。夜奈は俺を守ってくれたんだ。死んでしまったのは、俺が勝てる筈も無いあの化け物に向かって行ったからさ」
「そうか。私、ようやく貴方を守れたんだね」
「ああ」
「良かった……」
微笑みながらそう言った夜奈は、今までで一番綺麗であった。
「夜奈。喜ぶのはまだ早い。倒そう!アイツを。あの化け物を一緒に!」
「………たっくん。私はね、貴方に生きて欲しいの。アイツは私が倒す。だから、たっくんは、出来るだけアイツから、あの化け物から逃げて。お願い」
「……なあ、夜奈。俺は生き返る時にやりたい事が二つあったんだ。一つは、お前と再会する事。もう一つは、お前といつまでも一緒にいる事。頭の良いお前なら分かるよな。俺はもう死なない。お前も死なせない。そして、これが最初の約束だ。俺と一緒にクリスマスデートをして下さい」
「……ば、ばか。こんなところで……。恥ずかしいよ……」
「其れはオーケーって事かな?」
「……う、う、うるさい!てか、学校に行くよ」
そう言った夜奈は、俺が知っている夜奈とはちょっぴり掛け離れた、素の夜奈を見れた気がした。
放課後。俺と夜奈は待ち合わせをし、会う事になった。
「たっくんお待たせ。待った?」
「いいや。そんなに待ってはいなかったよ」
「そう。其れなら良かった」
俺が待ち合わせ場所に選んだところは、誰も居なくなった教室であった。
俺達はそれぞれ机を引っ付けて、向かい合わせに座った。
「さてと、第一回魔物討伐会議をします」
俺は今朝、夜奈との感動的再会の後、あの魔物を倒せる可能性があると、夜奈に告げておいた。夜奈は食い気味にその内容を聞いて来たが、時間が時間で話せそうに無かった為、メールでこの教室に待っていると告げ、こうして今、二人っきりで教室にいる。
「朝も言ったように、あの魔物を倒せる可能性があると言ったが、具体的にどうすればいいのか、説明していこうと思う。まず、あの魔物で一番厄介なのは何か分かるか?」
「うーん……無数の触手と無数の目?」
「いや違う。恐ろしいまでの回復スピードだ」
「そう言えば、何度斬っても、すぐに治っていた……」
「ああ。実際あの自己再生により、夜奈のスタミナは減るが、奴の触手や体に傷がつく事は無い。そこで俺は、自称神に問うた。すると、あの馬鹿……いや、自称神はその解決策を教えてくれた」
「自称神?」
「俺の事だよー」
「そうそう。コイツの事………ん?」
俺は声が聞こえて来た方を見た。そこに居たのは、自称神の神田であった。
「どうしてお前がここにいるんだ?」
「居たら悪いのか?ねえ?夜奈ちゃん」
「兎に角、死んで下さい」
「酷く無い!?俺の扱い、酷く無い!?」
「「いや、全然」」
流石に言い過ぎたのか、神田は教室の角で体育座りをしながら、落ち込んだ。
「まあ、いいんじゃない?其れより、解決策って?」
「ああ。まず魔物と呼ばれるモノ達には弱点がある。其れは霊力。これが魔物にとっても弱点なんだ。昔、ある二人の人間があの魔物と戦ったんだ。一人は男で、霊力を帯びた剣で挑み、もう一人は女で霊力を能力に変えて挑んだ。この話は死んだ時に聞いたりしたか?」
夜奈はふりふりと首を振った。
「そうか。まあ、話を続けるとだな、普段の二人なら楽勝で勝てた。しかし、女性の方が出産後で体力がなく、魔物を消し飛ばすことが出来なかった。やむを得ず、封印することにした。話が少しズレたが要するに、霊力を使って戦えば、回復されにくく、勝てるという事だ。そうだろ?」
「ああ。神である俺の考えでは、一瞬で回復していたモノが、十秒から十五秒程で回復すると思われる」
「そして、ある程度触手を切断した後、スパン!と核を破壊する」
「核?なにそれ?」
「もしかして、核がある事が分からずに戦っていたのか?」
「うん。真っ二つにすれば、簡単に倒せたからね」
「その考えはあながち間違いじゃ無い。低級の魔物の核は全て中心軸のいずれかにある。故に簡単に倒せた。しかし、あの魔物は違う」
「違う?どう言う事?たっくん!」
「核が移動しているみたいなんだ」
「え!?じゃ、じゃあその移動している核を破壊しないといけないって事!?」
「そうだ。しかも核のスピードは相当速いらしく、当てる事は困難だと」
「でも、数回見たけど、そんな核みたいなのは無かったよ?」
「体内にあるんだ」
「そ、そんなの無理じゃ無い!どうやって倒せって言うの!」
「その為の作戦会議だよ。神田曰く、俺の目には弱点である核が見えるとの事。実際、死ぬ前に動いている何かが見えた。恐らく其れが核だと思う」
「そこで俺からの提案だ。六霊夜奈。君には囮になってもらって、注意と魔物の戦力を減らす。そして国井には、これを使ってもらう」
神田はそう言うと、パチンと指を鳴らした。すると、神田の胸の付近に直径五十センチメートルくらいのブラックホールのような見た目のモノが現れた。神田はそこに手を突っ込み、探る素振りを見せた。数秒後、神田は目当ての物が見つかったのか、突っ込んでいた手を引っ張り、それを取り出した。
「其れって……」
神田が取り出した それは、長さが一メートル以上はある、ライフル銃であった。
「これをお前にやる」
神田は俺に其れを渡してきた。
恐る恐る受け取ったライフル銃は重く、そして冷たい印象であった。
「弾は三発。まあ、お前なら楽勝だろう。因みに、その三発の弾には神聖力が込められている。……俺が言いたい事は、もう分かるよな?六霊夜奈が最前線で、相手の体力と戦力を減らす。その後、国井がそのライフル銃で、核を破壊する。簡単だろ?」
理屈では簡単だ。けど……
「俺、こんなモノ扱ったこと無いし、それに……」
「六霊夜奈に当たるのが怖いか?」
「ああ……」
「そう言うと思ってた。けどな、俺はお前なら出来ると思っているんだ。お前の動体視力と六霊夜奈との気持ち、心、波長などが合い、共鳴し合えるのは、お前しかいないんだ!」
「そうは言うが……」
怖い。もし俺が撃った銃弾が夜奈に当たったりしたら俺は、やる気も生き返る気力もこの人生も全て折れてしまうだろう。
そんな俺はふと、夜奈の方を見た。すると夜奈は俺の手を取り、
「大丈夫だよ。私は死なない。そうでしょう?たっくんが、私を死なせないと言ったんだよ?だったら、私はそれを信じる。そして、クリスマスにデートしよ?」
「夜奈……」
そうだよ。俺は何を言っている。
俺が言ったんじゃないか!
「ああ。そうだったな」
俺のその言葉に夜奈はにっこりと微笑んだ。
「じゃあ、あとは刀だな」
「そうだな。……夜奈、ゴールデンウィークは空いてるか?」
「空いているけど、あの刀は駄目なの?」
「霊力が弱すぎる。すぐに回復されてしまう。故に刀を新しく作った方がいい」
「だそうだ。どうする?」
「分かった…。そうする。けど、何処に行くの?」
「大阪府だよ。そこの堺市に行って刀を作ってくれる」
「そこそこ遠いね……。福井県の坂井市なら良かったのに」
「だな。けど仕方ない」
「うん……。でも、お金はどうするの?」
「「あっ……!」」
神田と共にお金の方を忘れていた。
「恐らく、刀の方は大丈夫だ。二人であの映像を見た時に刀を持ってきていたから、その方は大丈夫だ。しかし……旅行代の方だな……」
「神なら何とかならないのか?」
「俺に万引きでもしろと?」
「そうは言ってないが……」
「其れとも何か?能力で増やせと言うのか?この神である俺に!」
「他に方法があるのか?」
「うぐっ!其れは……」
俺と神田が言い争っている間、夜奈は必死に考えていた。
あと一か月もない。バイトをしたところでどこまで稼げるのかも分からない。
そんな中、夜奈の出した結論は、
「たっくん。大阪に行くのを夏休みにしない?」
「夏休みか?」
「うん。どう頑張っても、あと一か月足らずで資金を集めるのは無理だと思う。やはりバイトとかして資金を集めないと」
「やはりそうなるか」
こればかりは、仕方ないか。
「分かった。けど無理は禁物だ」
「大丈夫。もう一つ方法があるから。其れには、神田にも手伝ってもらうから」
「まあ良いが、能力で資金を増やすのはダメだぞ!」
「わかってる。あんたはその時になるまで何もしなくていいから」
夜奈のその言葉に、俺と神田は意味が分からなかった。
其れから俺と夜奈は、バイトを見つけ、それぞれの旅行費の為にせっせと働いた。勿論、学生の本分である勉強に差し支えが無い程度に、だ。
六月の下旬には二人合わせて十二万円程の資金が集まり、何とか行ける迄のお金が集まった。
しかし、夜奈は納得いっていなかった。
ある日の土曜日の昼頃。俺と神田は夜奈に呼び出された。
場所は夜奈の家の近くにある喫茶店である。
「集まったわね」
「六霊夜奈。今日はどう言った用件で呼んだんだ?」
「資金についてよ。私とたっくんで約十二万円程の資金を手に入れた。しかし、足りないのでは?と、私は考えているの」
「理由としては、三つ。一つ目は、大阪と島根と行く為、資金を半分にしないといけない。故に、一回の旅行費が六万円になる。二つ目は、滞在日数が分からないという事。例えば、名前はたっくんがそこの神に聞いたから大丈夫だとして、場所が堺市と出雲市のどこに居るのかわからなければ、その分日数はかかる。更に、あと数日で完成すると言われたとすると、再びそこへ行くのはあまりにも遠い。故に、その場合そこで滞在した方がいい為、その為の資金が必要である可能性がある。そして三つ目は、私の個人的な欲求なんだけど……大きいホテルか旅館に泊まりたい!」
「あ、うん。分からないでもないが……」
「六霊夜奈。俺も君の要求は分からないでもないが、一体どうやってお金を更に集めるつもりなんだ?」
神田のその言葉に夜奈は即答で答えた。
「競馬よ!」
俺と神田は夜奈のその言葉の意味を理解するのに数秒費やした。
そして、脳がようやく理解した。
何言っているんだ?と。
「夜奈。今競馬って言ったのか?」
「うん!」
「六霊夜奈。競馬と言うものは、二十歳以上でないと、馬券を買えないし、折角貯めたお金を賭け事に使うのは関心しないが?」
「俺もそう思う」
「大丈夫だよ、たっくん。勝つ自信があるから」
「六霊夜奈。勝つ自信があるからと言って………もしや、お前……!」
「そう。勝てる馬が分かるの。もう五回も生き返っているんだもん」
「なるほど。結果を見たと言う事か。其れなら勝てるだろうが、覚えているのか?」
「うん。明日のレースで出るスターライトと言う馬が勝つ。三回目の時にたまたまお父さんがテレビで見ていたのを思い出したの。たまたまその時五十勝してたの」
「そうか。しかし……」
もう一つ問題がある。
誰が買いに行くのか、だ。
俺は夜奈にそう問いかけた。すると夜奈は、にっこりと微笑み、指を差した。
夜奈が指を差した先にいた人物を見て、俺も納得した。
「なるほど。神田なら、買いに行けるな」
「どうせ、あんた。私たちと同じ歳じゃないでしょう?」
「………フフ。考えたな。確かに俺はお前たち以上に生きている。……にしても、神に馬券を買いに行かせるか?普通」
「俺たち」「私たち」
「「普通じゃないから」」
「ふっ。ハハハハハ!!いいだろう!その提案を受け入れよう。しかし、神を使った提案はこれで最後だ。そもそも、神と言うのは、この世の観察者であって、願いを叶える者ではない。叶ったと思っているのは、たまたまそうなったか、この世界の秩序を保つ為に神が手を加えたかのどちらかだ。個人の願いを叶えるのは、まず無いと知れ」
神田が言ったその言葉は重く、ある意味残酷であった。
俺たちは運が良かったのだ。と、俺はそう思ってしまった。
「其れはそうと、その馬が走るのは明日でいいんだな?」
「あ、うん。其れでお願い」
「理解した。其れでは、お前たちが働いたバイト代を貰おうか?」
俺と夜奈は神田にバイトで稼いだお金を全て託した。
翌日。夜奈が言っていた馬が、夜奈の言っていた通りになり、資金を増やす事に成功した。
「これでようやく大阪と島根に向かう為の資金が集まったな」
神田から渡されたお金を見ながら、俺はぼそりとそう言った。
「そうだね。其れと……一応あんたには迷惑かけたからね」
夜奈はそういうと神田に資金の一部を渡した。
「…………」
しばし渡されたお金を見つめた神田は、いきなり笑い出した。
「ど、どうした?」
俺と夜奈は驚きの表情を見せた。
「いや、何でもない。気にするな」
「気になるんだが?」
俺はそう訊いた。すると神田はこう答えた。
「別に大した事ではない。ないが……強いて言えば、面白い人間もいるのだなと。まさか神にお金を渡す人間がいるとは思っていなかったのでな」
神田は再び笑いながら、受け取ったお金をポケットに入れた。
そんな神田を見た俺は、先程言った神田の言葉の意味が出来ないでいた。
お金を渡しただけで面白い?意味が分からない。
「其れが神と人間の違いだよ」
「っ!?心を読みやがったな?」
「読まれるお前が悪い」
「じゃあ、どうすればいいと?」
「無心でいる事だな。其れはそうと、さっさと大阪に向かう準備をしろ。人間は俺と違って寿命が短いんだから、一分一秒大切にしろよ」
「言われなくても行くさ」
俺はそう言うと、支度を整えに家へと戻った。
三日後。俺と夜奈はそれぞれ支度を整え、大阪へと向かった。
俺はいつも聴き慣れているアラーム音で、目が覚めた。
見覚えのある天井。見覚えのある机。見覚えのあるテレビ。
「あー、戻って来れたんだ」
果たして戻って来れたのか?
何だか、長い夢でも見ていたような気もする。
俺は、ハンガーに掛けてあるピカピカの制服を手に取り、慣れた手つきで着替えた。
ところで今はいつ何だろか?
俺は携帯の画面に出ている日付けを見て確認した。
「なるほど。アイツ、面白い日へと戻してくれたな」
忘れる筈が無い。今日は、夜奈が俺に告白して来た、初登校日であった。
俺は、朝食も食べずに家を出た。
何だか緊張する。
会ったら、まず何を話せばいいのだろうか?
初めまして?いや、違う気がする。
久しぶり!これは無いな。
付き合ってください!唐突すぎるかな?いや、夜奈もそんな感じだったか?
などと考えながら、夜奈と初めて出会った場所へと着いた。
「おはよう。どうも、はじめまして」
声をかけてきたのは、入学式の時の新入生の挨拶の時の黒髪ロングの青と黄色のオッドアイの女子生徒であり、俺の初めての彼女であった。
俺はそんな彼女にグッと抱きついた。
言葉より先に体が動いていたのだ。
「え!?え!?」
彼女はいきなり抱き付かれて、戸惑っていた。
「会いたかった!夜奈……」
嬉しかった。夜奈に再び出会える事が出来て。俺は更に強く抱きしめた。
「あ、そうなんだ……」
夜奈は何か分かったように、そう言った。
そして、
「私、たっくんを守れ無かったんだね」
涙が溢れ落ちながら、夜奈はそう言った。
その夜奈の言葉に俺は、首を横に振った。
「違うよ。夜奈は俺を守ってくれたんだ。死んでしまったのは、俺が勝てる筈も無いあの化け物に向かって行ったからさ」
「そうか。私、ようやく貴方を守れたんだね」
「ああ」
「良かった……」
微笑みながらそう言った夜奈は、今までで一番綺麗であった。
「夜奈。喜ぶのはまだ早い。倒そう!アイツを。あの化け物を一緒に!」
「………たっくん。私はね、貴方に生きて欲しいの。アイツは私が倒す。だから、たっくんは、出来るだけアイツから、あの化け物から逃げて。お願い」
「……なあ、夜奈。俺は生き返る時にやりたい事が二つあったんだ。一つは、お前と再会する事。もう一つは、お前といつまでも一緒にいる事。頭の良いお前なら分かるよな。俺はもう死なない。お前も死なせない。そして、これが最初の約束だ。俺と一緒にクリスマスデートをして下さい」
「……ば、ばか。こんなところで……。恥ずかしいよ……」
「其れはオーケーって事かな?」
「……う、う、うるさい!てか、学校に行くよ」
そう言った夜奈は、俺が知っている夜奈とはちょっぴり掛け離れた、素の夜奈を見れた気がした。
放課後。俺と夜奈は待ち合わせをし、会う事になった。
「たっくんお待たせ。待った?」
「いいや。そんなに待ってはいなかったよ」
「そう。其れなら良かった」
俺が待ち合わせ場所に選んだところは、誰も居なくなった教室であった。
俺達はそれぞれ机を引っ付けて、向かい合わせに座った。
「さてと、第一回魔物討伐会議をします」
俺は今朝、夜奈との感動的再会の後、あの魔物を倒せる可能性があると、夜奈に告げておいた。夜奈は食い気味にその内容を聞いて来たが、時間が時間で話せそうに無かった為、メールでこの教室に待っていると告げ、こうして今、二人っきりで教室にいる。
「朝も言ったように、あの魔物を倒せる可能性があると言ったが、具体的にどうすればいいのか、説明していこうと思う。まず、あの魔物で一番厄介なのは何か分かるか?」
「うーん……無数の触手と無数の目?」
「いや違う。恐ろしいまでの回復スピードだ」
「そう言えば、何度斬っても、すぐに治っていた……」
「ああ。実際あの自己再生により、夜奈のスタミナは減るが、奴の触手や体に傷がつく事は無い。そこで俺は、自称神に問うた。すると、あの馬鹿……いや、自称神はその解決策を教えてくれた」
「自称神?」
「俺の事だよー」
「そうそう。コイツの事………ん?」
俺は声が聞こえて来た方を見た。そこに居たのは、自称神の神田であった。
「どうしてお前がここにいるんだ?」
「居たら悪いのか?ねえ?夜奈ちゃん」
「兎に角、死んで下さい」
「酷く無い!?俺の扱い、酷く無い!?」
「「いや、全然」」
流石に言い過ぎたのか、神田は教室の角で体育座りをしながら、落ち込んだ。
「まあ、いいんじゃない?其れより、解決策って?」
「ああ。まず魔物と呼ばれるモノ達には弱点がある。其れは霊力。これが魔物にとっても弱点なんだ。昔、ある二人の人間があの魔物と戦ったんだ。一人は男で、霊力を帯びた剣で挑み、もう一人は女で霊力を能力に変えて挑んだ。この話は死んだ時に聞いたりしたか?」
夜奈はふりふりと首を振った。
「そうか。まあ、話を続けるとだな、普段の二人なら楽勝で勝てた。しかし、女性の方が出産後で体力がなく、魔物を消し飛ばすことが出来なかった。やむを得ず、封印することにした。話が少しズレたが要するに、霊力を使って戦えば、回復されにくく、勝てるという事だ。そうだろ?」
「ああ。神である俺の考えでは、一瞬で回復していたモノが、十秒から十五秒程で回復すると思われる」
「そして、ある程度触手を切断した後、スパン!と核を破壊する」
「核?なにそれ?」
「もしかして、核がある事が分からずに戦っていたのか?」
「うん。真っ二つにすれば、簡単に倒せたからね」
「その考えはあながち間違いじゃ無い。低級の魔物の核は全て中心軸のいずれかにある。故に簡単に倒せた。しかし、あの魔物は違う」
「違う?どう言う事?たっくん!」
「核が移動しているみたいなんだ」
「え!?じゃ、じゃあその移動している核を破壊しないといけないって事!?」
「そうだ。しかも核のスピードは相当速いらしく、当てる事は困難だと」
「でも、数回見たけど、そんな核みたいなのは無かったよ?」
「体内にあるんだ」
「そ、そんなの無理じゃ無い!どうやって倒せって言うの!」
「その為の作戦会議だよ。神田曰く、俺の目には弱点である核が見えるとの事。実際、死ぬ前に動いている何かが見えた。恐らく其れが核だと思う」
「そこで俺からの提案だ。六霊夜奈。君には囮になってもらって、注意と魔物の戦力を減らす。そして国井には、これを使ってもらう」
神田はそう言うと、パチンと指を鳴らした。すると、神田の胸の付近に直径五十センチメートルくらいのブラックホールのような見た目のモノが現れた。神田はそこに手を突っ込み、探る素振りを見せた。数秒後、神田は目当ての物が見つかったのか、突っ込んでいた手を引っ張り、それを取り出した。
「其れって……」
神田が取り出した それは、長さが一メートル以上はある、ライフル銃であった。
「これをお前にやる」
神田は俺に其れを渡してきた。
恐る恐る受け取ったライフル銃は重く、そして冷たい印象であった。
「弾は三発。まあ、お前なら楽勝だろう。因みに、その三発の弾には神聖力が込められている。……俺が言いたい事は、もう分かるよな?六霊夜奈が最前線で、相手の体力と戦力を減らす。その後、国井がそのライフル銃で、核を破壊する。簡単だろ?」
理屈では簡単だ。けど……
「俺、こんなモノ扱ったこと無いし、それに……」
「六霊夜奈に当たるのが怖いか?」
「ああ……」
「そう言うと思ってた。けどな、俺はお前なら出来ると思っているんだ。お前の動体視力と六霊夜奈との気持ち、心、波長などが合い、共鳴し合えるのは、お前しかいないんだ!」
「そうは言うが……」
怖い。もし俺が撃った銃弾が夜奈に当たったりしたら俺は、やる気も生き返る気力もこの人生も全て折れてしまうだろう。
そんな俺はふと、夜奈の方を見た。すると夜奈は俺の手を取り、
「大丈夫だよ。私は死なない。そうでしょう?たっくんが、私を死なせないと言ったんだよ?だったら、私はそれを信じる。そして、クリスマスにデートしよ?」
「夜奈……」
そうだよ。俺は何を言っている。
俺が言ったんじゃないか!
「ああ。そうだったな」
俺のその言葉に夜奈はにっこりと微笑んだ。
「じゃあ、あとは刀だな」
「そうだな。……夜奈、ゴールデンウィークは空いてるか?」
「空いているけど、あの刀は駄目なの?」
「霊力が弱すぎる。すぐに回復されてしまう。故に刀を新しく作った方がいい」
「だそうだ。どうする?」
「分かった…。そうする。けど、何処に行くの?」
「大阪府だよ。そこの堺市に行って刀を作ってくれる」
「そこそこ遠いね……。福井県の坂井市なら良かったのに」
「だな。けど仕方ない」
「うん……。でも、お金はどうするの?」
「「あっ……!」」
神田と共にお金の方を忘れていた。
「恐らく、刀の方は大丈夫だ。二人であの映像を見た時に刀を持ってきていたから、その方は大丈夫だ。しかし……旅行代の方だな……」
「神なら何とかならないのか?」
「俺に万引きでもしろと?」
「そうは言ってないが……」
「其れとも何か?能力で増やせと言うのか?この神である俺に!」
「他に方法があるのか?」
「うぐっ!其れは……」
俺と神田が言い争っている間、夜奈は必死に考えていた。
あと一か月もない。バイトをしたところでどこまで稼げるのかも分からない。
そんな中、夜奈の出した結論は、
「たっくん。大阪に行くのを夏休みにしない?」
「夏休みか?」
「うん。どう頑張っても、あと一か月足らずで資金を集めるのは無理だと思う。やはりバイトとかして資金を集めないと」
「やはりそうなるか」
こればかりは、仕方ないか。
「分かった。けど無理は禁物だ」
「大丈夫。もう一つ方法があるから。其れには、神田にも手伝ってもらうから」
「まあ良いが、能力で資金を増やすのはダメだぞ!」
「わかってる。あんたはその時になるまで何もしなくていいから」
夜奈のその言葉に、俺と神田は意味が分からなかった。
其れから俺と夜奈は、バイトを見つけ、それぞれの旅行費の為にせっせと働いた。勿論、学生の本分である勉強に差し支えが無い程度に、だ。
六月の下旬には二人合わせて十二万円程の資金が集まり、何とか行ける迄のお金が集まった。
しかし、夜奈は納得いっていなかった。
ある日の土曜日の昼頃。俺と神田は夜奈に呼び出された。
場所は夜奈の家の近くにある喫茶店である。
「集まったわね」
「六霊夜奈。今日はどう言った用件で呼んだんだ?」
「資金についてよ。私とたっくんで約十二万円程の資金を手に入れた。しかし、足りないのでは?と、私は考えているの」
「理由としては、三つ。一つ目は、大阪と島根と行く為、資金を半分にしないといけない。故に、一回の旅行費が六万円になる。二つ目は、滞在日数が分からないという事。例えば、名前はたっくんがそこの神に聞いたから大丈夫だとして、場所が堺市と出雲市のどこに居るのかわからなければ、その分日数はかかる。更に、あと数日で完成すると言われたとすると、再びそこへ行くのはあまりにも遠い。故に、その場合そこで滞在した方がいい為、その為の資金が必要である可能性がある。そして三つ目は、私の個人的な欲求なんだけど……大きいホテルか旅館に泊まりたい!」
「あ、うん。分からないでもないが……」
「六霊夜奈。俺も君の要求は分からないでもないが、一体どうやってお金を更に集めるつもりなんだ?」
神田のその言葉に夜奈は即答で答えた。
「競馬よ!」
俺と神田は夜奈のその言葉の意味を理解するのに数秒費やした。
そして、脳がようやく理解した。
何言っているんだ?と。
「夜奈。今競馬って言ったのか?」
「うん!」
「六霊夜奈。競馬と言うものは、二十歳以上でないと、馬券を買えないし、折角貯めたお金を賭け事に使うのは関心しないが?」
「俺もそう思う」
「大丈夫だよ、たっくん。勝つ自信があるから」
「六霊夜奈。勝つ自信があるからと言って………もしや、お前……!」
「そう。勝てる馬が分かるの。もう五回も生き返っているんだもん」
「なるほど。結果を見たと言う事か。其れなら勝てるだろうが、覚えているのか?」
「うん。明日のレースで出るスターライトと言う馬が勝つ。三回目の時にたまたまお父さんがテレビで見ていたのを思い出したの。たまたまその時五十勝してたの」
「そうか。しかし……」
もう一つ問題がある。
誰が買いに行くのか、だ。
俺は夜奈にそう問いかけた。すると夜奈は、にっこりと微笑み、指を差した。
夜奈が指を差した先にいた人物を見て、俺も納得した。
「なるほど。神田なら、買いに行けるな」
「どうせ、あんた。私たちと同じ歳じゃないでしょう?」
「………フフ。考えたな。確かに俺はお前たち以上に生きている。……にしても、神に馬券を買いに行かせるか?普通」
「俺たち」「私たち」
「「普通じゃないから」」
「ふっ。ハハハハハ!!いいだろう!その提案を受け入れよう。しかし、神を使った提案はこれで最後だ。そもそも、神と言うのは、この世の観察者であって、願いを叶える者ではない。叶ったと思っているのは、たまたまそうなったか、この世界の秩序を保つ為に神が手を加えたかのどちらかだ。個人の願いを叶えるのは、まず無いと知れ」
神田が言ったその言葉は重く、ある意味残酷であった。
俺たちは運が良かったのだ。と、俺はそう思ってしまった。
「其れはそうと、その馬が走るのは明日でいいんだな?」
「あ、うん。其れでお願い」
「理解した。其れでは、お前たちが働いたバイト代を貰おうか?」
俺と夜奈は神田にバイトで稼いだお金を全て託した。
翌日。夜奈が言っていた馬が、夜奈の言っていた通りになり、資金を増やす事に成功した。
「これでようやく大阪と島根に向かう為の資金が集まったな」
神田から渡されたお金を見ながら、俺はぼそりとそう言った。
「そうだね。其れと……一応あんたには迷惑かけたからね」
夜奈はそういうと神田に資金の一部を渡した。
「…………」
しばし渡されたお金を見つめた神田は、いきなり笑い出した。
「ど、どうした?」
俺と夜奈は驚きの表情を見せた。
「いや、何でもない。気にするな」
「気になるんだが?」
俺はそう訊いた。すると神田はこう答えた。
「別に大した事ではない。ないが……強いて言えば、面白い人間もいるのだなと。まさか神にお金を渡す人間がいるとは思っていなかったのでな」
神田は再び笑いながら、受け取ったお金をポケットに入れた。
そんな神田を見た俺は、先程言った神田の言葉の意味が出来ないでいた。
お金を渡しただけで面白い?意味が分からない。
「其れが神と人間の違いだよ」
「っ!?心を読みやがったな?」
「読まれるお前が悪い」
「じゃあ、どうすればいいと?」
「無心でいる事だな。其れはそうと、さっさと大阪に向かう準備をしろ。人間は俺と違って寿命が短いんだから、一分一秒大切にしろよ」
「言われなくても行くさ」
俺はそう言うと、支度を整えに家へと戻った。
三日後。俺と夜奈はそれぞれ支度を整え、大阪へと向かった。
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