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第二章
蚤の市 4
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「これ、サニによく似合うな。細くて長い柄と垂れた小さな青いガラスの玉が、サニの雰囲気にぴったりだ。銀色の髪の上で揺れると、とても美しい」
鏡を手に取ると合わせて見せてくる。
「ほら」
自分の髪よりも、その後ろにいるリエイムの満遍な顔から目が離せない。
「よし、買おう。戦闘時は衣装が決められているので使えぬが、普段使いならば良いだろう?」
懐から銀貨を出そうとする手をサニは止めた。
「だ、だめですっ」
「なぜ? 色が気に入らないか?」
「じゃ、じゃなくてっ。聖舞師は、普段はし、質素でいなくてはいけません。いらぬ装飾品を身にまとっては邪念が働きます」
「そうか。……ならば仕方ない」
リエイムはちょっと口をとがらせながらもかんざしを元に戻した。
咄嗟に出た自分の言葉が、宙に浮かんだまま消えない。
聖舞師を盾にして自分の気持ちを隠した後ろめたさがいつまでも追ってくる。
いらないと、強く断れなかった。なぜなら、本当はかんざしが欲しかったからだ。
リエイムが似合っていると言ってくれたから。
かんざしを挿している姿を、見せたいと思ってしまったから。
内にむくむくと湧き出た感情に、自分自身で愕然とした。
急に動機が激しくなって、胸が苦しい。
呼吸をうまくできず、胸元を両手で押さえた。
立ち止まったサニに気づいたリエイムが振り返り戻ってくる。
「サニ? どうしたのだ?」
「ちょっと、具合が悪くなって……今日はもう、部屋で休むことにします」
「大丈夫か? 部屋まで送ろう」
「いいえ、結構です。疲れているだけなので、横になれば回復しますから」
サニは言い終わる前に走って城に戻った。
自室に入るとすぐさま手足を清め、窓際に立つ。心臓が早撃ちをやめない。
はあはあとまだ荒い息を整えず、舞いを始めた。
いつもは踊り始めるとすぐに無心になれるのに、今日は頭を埋め尽くす邪念をなかなか取り払えない。
浮かんでくるのはリエイムの顔ばかりで、祈りに没頭できないでいた。
敬虔深い両親の元に生まれ、信仰はいつもそばにあった。
物心つくころにはごく自然に、自分は聖舞師になるものだと思うようになった。
幼いころから経典を読み込み、私欲を捨てることで常に神の声に耳を傾けた。
鏡を手に取ると合わせて見せてくる。
「ほら」
自分の髪よりも、その後ろにいるリエイムの満遍な顔から目が離せない。
「よし、買おう。戦闘時は衣装が決められているので使えぬが、普段使いならば良いだろう?」
懐から銀貨を出そうとする手をサニは止めた。
「だ、だめですっ」
「なぜ? 色が気に入らないか?」
「じゃ、じゃなくてっ。聖舞師は、普段はし、質素でいなくてはいけません。いらぬ装飾品を身にまとっては邪念が働きます」
「そうか。……ならば仕方ない」
リエイムはちょっと口をとがらせながらもかんざしを元に戻した。
咄嗟に出た自分の言葉が、宙に浮かんだまま消えない。
聖舞師を盾にして自分の気持ちを隠した後ろめたさがいつまでも追ってくる。
いらないと、強く断れなかった。なぜなら、本当はかんざしが欲しかったからだ。
リエイムが似合っていると言ってくれたから。
かんざしを挿している姿を、見せたいと思ってしまったから。
内にむくむくと湧き出た感情に、自分自身で愕然とした。
急に動機が激しくなって、胸が苦しい。
呼吸をうまくできず、胸元を両手で押さえた。
立ち止まったサニに気づいたリエイムが振り返り戻ってくる。
「サニ? どうしたのだ?」
「ちょっと、具合が悪くなって……今日はもう、部屋で休むことにします」
「大丈夫か? 部屋まで送ろう」
「いいえ、結構です。疲れているだけなので、横になれば回復しますから」
サニは言い終わる前に走って城に戻った。
自室に入るとすぐさま手足を清め、窓際に立つ。心臓が早撃ちをやめない。
はあはあとまだ荒い息を整えず、舞いを始めた。
いつもは踊り始めるとすぐに無心になれるのに、今日は頭を埋め尽くす邪念をなかなか取り払えない。
浮かんでくるのはリエイムの顔ばかりで、祈りに没頭できないでいた。
敬虔深い両親の元に生まれ、信仰はいつもそばにあった。
物心つくころにはごく自然に、自分は聖舞師になるものだと思うようになった。
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