ゆるふわ系乙男召喚士、異世界に舞い降りる

玲音

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第11話 初依頼①

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武器屋への寄り道を済ませ、昴広達は当初の目的通り冒険者ギルドにやってきた。

昨日は夕暮れ時に来たから怖く感じたのかと思っていたが、2度目の今日、昼間にやって来てもやはり、その無骨な建物で建っている冒険者ギルドは物々しさを滲ませている。

例えるとするならば、ガラの悪い人達がコンビニの前で待ち構えているような感じだ。

入口の前で深呼吸をし心を落ち着かせると、スハイルとセバスチャンを連れて中に足を踏み入れた。


「ひっ・・・・・・!」


昴広達が入るやいなやガヤガヤと騒がしかった冒険者達がバッと入口の方に鋭い目線を向けてくる。

余りの威圧感に息を飲んで1歩後ろへ後ずさると、今度はなぜか顔を一瞬で青ざめさせた冒険者達がガクガクと震えながら昴広達から一斉に目を背けた。

昴広を威圧した時点で、昴広には柔和な笑みしか見せたことないセバスチャンとスハイルが昴広に見えないように冒険者達を睨み返したのだが、そんなことを昴広が分かるはずもない。


「昴広様。早めに依頼を受けませんと、日が暮れてしまいますので・・・・・・」


冒険者達の様子にきょとんと不思議そうにしている昴広を、スっと横に出てきたセバスチャンが先程まで冒険者達に向けていた表情を消し、何事も無かったの如く昴広の手を取ると、さらりと掲示板の方へと手を引く。


「あれ・・・・・・?
お昼頃なのにまだこんなに依頼が残ってるんですね?」


掲示板の前にやってくると残っている依頼の多さに目を瞬かせる。


「そうですね。
冒険者ですから、やはり討伐系の依頼の方が人気があるので、この時間まで残っているものの大半が雑事系の依頼が多いのですよ。
ちなみに、昨日説明されてませんでしたが、依頼は1度に3つまで同時に受けられます。」


隣で説明をしてくれるセバスチャンに、へぇ…っと納得しながら頷くと、再度掲示板の方へと視線を向け、昴広にもできそうな内容を探す。

残っている依頼はペットの散歩や、草むしりなど簡単そうな内容なので、その中から3つ選ぶ。


「そちらの依頼でよろしいのですか?3つとも報酬の方が低いかと思われますが。」


冒険者になるものは依頼の報酬が高いものを選ぶことが多いのだが、昴広が選んだ依頼内容をみて、セバスチャンが確認してきた。


「はい。昨日売った服のおかげで武器を買っても、お金には余裕があるので、初依頼は確実に達成できそうなのがいいかなと思って。」


ふわっと花が綻ぶように笑みを浮かべると、依頼用紙を剥がし受付場所に向かう。

(昴広が微笑むと実際に花が舞っているように見え、チラチラと横目で昴広達を見ていた冒険者達は頬を赤らめている。)


「お受けされるのはこちらの3点でお間違いはないでしょうか?」


昨日担当してくれたギルド嬢のルイーゼが居たので、挨拶をしながら用紙を手渡す。


「間違いありません。」


手渡す間際にルイーゼに睨まれたような気がしたが気のせいかな?と僅かに首を傾げながら返事をする。


「ギルドカードの方に依頼を受け付けたことを記しますので、こちらの水晶にかざして下さい。」


ルイーゼが呪文のようなものを唱えると、目の前にある大きな水晶が輝く。
言われた通りにギルドカードをかざすとミョンっと不思議な音がして水晶の光が消えた。


「ありがとうございます。登録完了致しました。
昴広様は今回が初依頼ですので、依頼不達成時に通常発生する違約金はございませんが、不達成にならないようお気をつけくださいませ。」


無くさぬようギルドカードを直しながら注意事項を聞くと、セバスチャンの案内で依頼主の元へと向かう。


1つ目の依頼である、宿屋の皿洗いを難なくこなし、2つ目の依頼場所へと向かうと冒険者ギルドから徒歩10分のところにある民家だった。

当然の如く日本のようにインターフォンがないようなので、軽くドアをノックするとパタパタと近寄ってくる足音が聞こえ、ドアが開き老齢のご婦人が顔を出す。


「すみません。依頼を受けに来ました、昴広と申します。ゼルマさんのお宅でお間違えないでしょうか?」


会社で鍛えた対人スキルを駆使して、柔らかな笑みを浮かべ、失礼のないように問いかける。


「・・・・・・あの?」


なぜ、自分の顔を見るとみんな固まるんだろうと若干しょんぼりしながらもポカンと口を開け、昴広を凝視するご婦人の顔の前でヒラヒラと手を振り、再度問う。


「はっ!・・・・・・す、すまないね。ちょっと予想外の出来事でびっくりしちゃってねぇ?
私が依頼を出したゼルマだよ。」


思考を再開させたらしいご婦人、ゼルマはぎこちない笑みを浮かべながら首を縦に振る。


「えーとねぇ、依頼なんだけど見ての通りだいぶ歳をとってしまってこの荷物を持っていくのが億劫になってね?これを、息子夫婦のところに持って行ってほしいんだ。」


ゼルマはそういいながら既に準備されていた中ぐらいの木箱を指差す。

このくらいだったら持てるかな?と快く快諾すると持ちにくいだろうからと、大きな風呂敷のようなものを持ってきて包んだくれる。

ゼルマの家から歩いて30分のところにあるという、息子さん夫婦のお家の場所をきき、依頼書にサインを貰い荷物を受け取り歩き始めた。


「昴広様、やはりそちらの箱は私がお持ちいたします。」


昴広に荷物を持たせるのが嫌なのか、セバスチャンは眉をひそめながら10回目の同じ言葉を出す。


「もう!さっきから同じことを言ってますけど、これは僕が受けた依頼ですよ?ちゃんと自分でしますから!」


プリプリと可愛らしく怒るが、譲る気のないセバスチャンにきくはずもなく、昴広はため息を吐きながら諦めて荷物を手渡すことにした。


〈あと少しで依頼場所なのだからいいんじのないか。セバス本人は喜んでるみたいだぞ。〉

昴広の腕の中に飛び込みながら、嬉々として荷物を受け取るセバスチャンに対して、スハイルは呆れたようにフスンと鼻を鳴らす。


「何を言うのですか!このセバスチャンがいますのに、昴広様にこのような重いものを持たせるなど言語道断でございます!」


キリッと今まで見た中で一番いい顔をしながらセバスチャンは当然のように言う。
本人の中では既に昴広の執事をしているつもりなのだ。

「僕だって男なんですから、重いものくらい持てますよ。」

頬を膨らませながら可愛らしく拗ねる昴広を慰めるように、スハイルは擦り寄る。

本当に日本年齢でアラサー男子だったのかと問いたくなる可愛さに昴広達を遠巻きに見ていた人々が、デレデレと顔を緩ませているのだが、周りを見ていない昴広達はその人々の前を素通りしていく。

そうこうしているうちに依頼者の息子さん夫婦の家につき、すみませんと声をかけながらドアをノックする。


「はーい。どちら様で…」


ガチャっとドアを開きながら、男の人が顔を出し、やはり昴広をみて固まってしまう。


「あ、兵士のお兄さん!」


門で出会った兵士、アルビーンとの再会に昴広は驚いたように声を上げる。

(え、なんで俺の美の女神が俺の家の前にいるんだ?とゆーか二日前に会った時より更に美人になってないか??ん?俺の気のせいか?いや気のせいじゃない!!見たことない服からあのクンカクンカしたいサラサラの髪の色に合う淡い薄紫の服に着替えたことによって神秘さが際立ってより一層俺の女神様が輝いて見えるんだ!!これはいつも頑張っている俺に対して神様からの送りものなのかもしれない!ここで唇にキスをしてもなんの罪にも問われない筈だ!)

昴広を変態の如く上から下までみながら、アルビーンは跪き昴広の手をとると、手の甲にキスを落とす。


「へ?」


昴広は突然の出来事にパチリと目を瞬かせると、脇の方に預かりものの荷物を置いていたセバスチャンがアルビーンから出ている不穏な空気を即座に察知し、アルビーンに蹴りを入れ込む。


「ちっ。そのような汚らしい手で昴広様に触れるとは万死に値します。死を持って償いなさい。」


自身の後ろに昴広を隠すと目を細め殺気を放ちながら懐に手を入れ、ナイフを取り出す。

茫然と目の前の出来事を見ていた昴広は慌ててセバスチャンを止めに入ると、ゼルマさんからのお届けものですと言い残し、セバスチャンの背を押しながらその場をあとにした。
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