隣の同居人

此宮

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8,米田優平

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「まだ、勝手が分からないので集会に一緒に参加してもいいですか?」
と背が高いから上から見下ろしているくせに上目遣いという小難しい芸当をやってのける勝田くんは、なかなか子供らしくて可愛い。正直言うと僕もあんまり集会出たことないし、毎回忘れてるけど「もちろん」と見栄を張った。さっきまで警戒心丸出しの猫みたいに一歩引いていたから、頼ってくれるのは嬉しい。
彼は生まれたての雛みたいにちょこちょこ着いて来た。撫でたくなるなこれ…めっちゃ母性湧く…僕男だけど。

集会は大抵新入生向けのオリエンテーションの様なものだろうと、姿勢を崩して座っていたが、横に腰掛けた勝田くんはメモ帳とペンを握って難しい顔をしていた。ほんと真面目だなぁ。
後ろのドアからもまだ、続々と人が入って来ている。後ろの方はなんとなく席が埋まりやすい法則があり、座れない学生が前へと流れていく。
「あれ、君さっきの」
聞き取りやすい声が聞こえて、思わずそちらを向けば黒髪の短い大柄な男性がこっちの方に手を振っている。確か同学年だった気がする、ラグビー部のキャプテンだ。名前は覚えてないけど。

「あ、鼎先輩…」
横から声が上がったかと思うと、勝田が手を振り返している。その横顔にほんの少しだけ、笑みが宿っている気がして。胸がムカムカした。さっき、そんな顔見せなかっただろ。
「さっき名乗る暇なくてすみません、勝田です」
体育会系らしくぺこりと頭を下げた。
「そうかそうか。ところでさっきの事なんだが…」
鼎と呼ばれた男は一瞬勝田くんの横に座る僕を見てギョッとした後、こそこそと勝田くんに耳打ちした。それに対し彼はくすりと笑って同じように言葉を返す。頑張って耳を澄ませても「大丈夫ですよ」としか聞こえない。何が大丈夫なんだ?
胸の奥で嫌な黒い塊が頭をもたげたがそれを見ないふりして、けれど早くどこかに消えて欲しくて、グッと勝田くんの肩を掴んだ。わっ、という声と共にこちらに傾く彼の肩を抱きながら
「鼎くん鼎くん。もうすぐ集会始まるみたいだし、席取っといた方がいいんじゃない?埋まって来てるよ?」
とにっこり笑う。しかし睨みつける目だけは誤魔化せなかっただろう。
『こいつは僕のものだから近づくな』
というありったけの感情を込めてしまったせいか、鼎はじりっと壁際に下がる。
「……じゃあな勝田。俺の部屋3階の5号室だから何かあったら言ってくれ」
「ありがとうございます」
礼儀正しくまたぺこりと頭を下げる。律義なとこも可愛いけど、その関心が僕に向いていないのは気に食わない。
鼎は頷いて前の方の席を取りに行った。

「な、なんですか。先輩」
頬を突くと勝田くんはやっとこちらに顔を向けてくれた。恥ずかしそうに下の方を見ているが、こっらに感心が向いたのが嬉しくて気分が上昇する。我ながら現金な手のひらクルーっぷりに笑うしかない。
「なんの話?」
首を傾げると彼は「…内緒です」と言いながら前に向き直ってしまった。
内緒って言われるのはあんまり好きじゃない。さっきまで笑っていたのにまたすぐムスリとしている自分をどこか客観的に眺めていると誰かの行動と似ているなと感じてしまう。

誰だったか。







ーーーーそう、美蕾だ。
さっきまで遊びで付き合っていた彼女。だが彼女は僕のする事に一々一喜一憂したりしていたのを考慮すると、多分遊びのつもりではなかったんだ。
本当に好きでいてくれたんだと思う。その気持ちを踏み躙った罰なんだろうか。僕も同じように彼に奔走されている。




会ってすぐの彼にさっき分かったような理不尽な嫉妬をする。
彼の笑った顔が見たい。
できれば僕だけを見ていて欲しいし全部が欲しい。

けれど彼はそんな醜い感情を理解してくれるだろうか。



集会はすでに始まっていて、横では勝田くんがサラサラとメモを取っている。それを横目で見ながら「どうしたものかな」と考えているうちに時間は進んでいった。
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