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第11話 千夏
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「ちょっと、落ち着けって」と、体を押し退ける。
「...私じゃダメ」
「ダメとかじゃないけど、今は冷静じゃないって言うかさ...。パニックになってるだけだと思うから。もう少し冷静に考えてみよう」
「...焦りもするよ。私にはおにぃちゃんしかいないんだから...」
「...安心しろ。恋人じゃなくても俺はずっとお前のおにぃちゃんなんだから」
「...それじゃあ足りないんだよ」
–––––––––––
休みの日、少しだけ1人になりたくて、特に何の用事もないのに街中に来て、どこにいくわけでもなくふらふらしていた。
「おっ、久しぶりー、大河くーん」と、後ろから声をかけられる。
清楚系な見た目の割に元気な感じの女の子。
一宮千夏...。元カノである紗希のお姉さんだった。
「あっ...どうも」
「こんなところで奇遇だねー?いや、運命なのかな?」
「...は、はぁ...」
「紗希から聞いたよ?やっぱり君はあの大河くんだったんだね。なんとなく見たことがあった気がしたけど、まさか妹の元カレとはね。これは一本取られたよ」と、おでこを叩いてなかなかいいリアクションをする。
本当にあれだ。なかなかの残念美人である。
「それで?こんなところでぼーっとしてどうしたんだい?何か悩み事かい?お姉さんが相談に乗ってあげようか?」
「...いえ。混み入った話なので...。それにあまり人にペラペラ話す内容でもないですし」
「けど、悩んでいる。そうだろ?なら相談するべきだよ。深く知らないからこそ話せることだってあるさ」と、俺の腕を引いてカラオケに連れて行かれる。
「いぇーい!!今日は歌っちゃうぞー!」
...え?俺の悩み聞いてくれるんじゃないの?という顔をしていると、「話したくないなら無理に話す必要はないよ。まあでも、歌うと意外とスッキリするものだよ」と、ニヤッと笑いながらそう言った。
最初からカラオケに行く人を探していたのでは...。なんというか...自由な人である。
それから渋々何曲か歌う。
しかし、次第に乗っていったのは合いの手だったり、デュエットをしてくれたことが大きな要因である気がした。
「どうだい?少しはスッキリしたかい?」
「はい!結構...スッキリしました」
「そうかいそうかい。それなら良かったよ」
「...あの...紗希はどうしてますか?」
「ん?気になる?んー、そうだなー。最近は家にいることが多いね。大河くんと別れて遊ぶことも少なくなったんじゃないか?」
「...新しい彼氏とはうまく行ってるんですかね」
馬鹿か。
せっかくスッキリしたのに何聞いてんだ。
いや、この場合は聞かない方がモヤモヤするか...。
「新しい彼氏?あぁ...なるほど。そういうこと。血は争えないね。んー...私は家にいないことも多いから分からないけど、上手く行ってないんじゃないかな。多分」
「何でですか?」
「最近元気ないし。なんか追い詰められているというか、そんな雰囲気がしていた。てっきり傷心のためかと思ったけど、どうやら悪いのは紗希の方だったということだね」と、少ない情報から正確な事実に辿り着く。
「...そうですか」
「未練はあるのかい?けど、私から言えることはあの子はやめておいた方がいいってことだね」
「...え?」
「1度浮気した人間は2度も3度も浮気する。それだけのこと。大河くんみたいな真面目な子は傷つくだけじゃないかな」
「...」
「けど、会いたいなら私が仲介に入ろうか?私は一向に構わないよ」
「...今更話すことなんてないですよ」
「そうかもね。けど、何か言いたいことがあるって顔はしてるよ」と、俺の携帯をすっと取ると、勝手に顔認証したのち、何やら携帯を操作する。
「私の連絡先を入れておいた。まぁ、何かあったら気軽に相談してきていいよ。人生の先輩として可能な限りアドバイスをしよう」
「...なんか、何から何までありがとうございます」
「ううん、気にしないで。私は頼られるの好きだから」
そうして、さらに何曲か歌ったのち、千夏さんと別れて家に帰った。
すると、家に帰るとむすっとした表情の果南が立っていた。
「...ご立腹?」
「どこ行ってたの?」
「街にちょっと...。千夏先輩と遊んでた」
「千夏先輩...。連絡先とか交換してたの?」
「いや偶然会って...」
「千夏先輩、すごくいい人だけど男遊びは激しいから気をつけた方がいいよ」
まぁ、あれだけ可愛かったらそりゃモテるよな。
「...私じゃダメ」
「ダメとかじゃないけど、今は冷静じゃないって言うかさ...。パニックになってるだけだと思うから。もう少し冷静に考えてみよう」
「...焦りもするよ。私にはおにぃちゃんしかいないんだから...」
「...安心しろ。恋人じゃなくても俺はずっとお前のおにぃちゃんなんだから」
「...それじゃあ足りないんだよ」
–––––––––––
休みの日、少しだけ1人になりたくて、特に何の用事もないのに街中に来て、どこにいくわけでもなくふらふらしていた。
「おっ、久しぶりー、大河くーん」と、後ろから声をかけられる。
清楚系な見た目の割に元気な感じの女の子。
一宮千夏...。元カノである紗希のお姉さんだった。
「あっ...どうも」
「こんなところで奇遇だねー?いや、運命なのかな?」
「...は、はぁ...」
「紗希から聞いたよ?やっぱり君はあの大河くんだったんだね。なんとなく見たことがあった気がしたけど、まさか妹の元カレとはね。これは一本取られたよ」と、おでこを叩いてなかなかいいリアクションをする。
本当にあれだ。なかなかの残念美人である。
「それで?こんなところでぼーっとしてどうしたんだい?何か悩み事かい?お姉さんが相談に乗ってあげようか?」
「...いえ。混み入った話なので...。それにあまり人にペラペラ話す内容でもないですし」
「けど、悩んでいる。そうだろ?なら相談するべきだよ。深く知らないからこそ話せることだってあるさ」と、俺の腕を引いてカラオケに連れて行かれる。
「いぇーい!!今日は歌っちゃうぞー!」
...え?俺の悩み聞いてくれるんじゃないの?という顔をしていると、「話したくないなら無理に話す必要はないよ。まあでも、歌うと意外とスッキリするものだよ」と、ニヤッと笑いながらそう言った。
最初からカラオケに行く人を探していたのでは...。なんというか...自由な人である。
それから渋々何曲か歌う。
しかし、次第に乗っていったのは合いの手だったり、デュエットをしてくれたことが大きな要因である気がした。
「どうだい?少しはスッキリしたかい?」
「はい!結構...スッキリしました」
「そうかいそうかい。それなら良かったよ」
「...あの...紗希はどうしてますか?」
「ん?気になる?んー、そうだなー。最近は家にいることが多いね。大河くんと別れて遊ぶことも少なくなったんじゃないか?」
「...新しい彼氏とはうまく行ってるんですかね」
馬鹿か。
せっかくスッキリしたのに何聞いてんだ。
いや、この場合は聞かない方がモヤモヤするか...。
「新しい彼氏?あぁ...なるほど。そういうこと。血は争えないね。んー...私は家にいないことも多いから分からないけど、上手く行ってないんじゃないかな。多分」
「何でですか?」
「最近元気ないし。なんか追い詰められているというか、そんな雰囲気がしていた。てっきり傷心のためかと思ったけど、どうやら悪いのは紗希の方だったということだね」と、少ない情報から正確な事実に辿り着く。
「...そうですか」
「未練はあるのかい?けど、私から言えることはあの子はやめておいた方がいいってことだね」
「...え?」
「1度浮気した人間は2度も3度も浮気する。それだけのこと。大河くんみたいな真面目な子は傷つくだけじゃないかな」
「...」
「けど、会いたいなら私が仲介に入ろうか?私は一向に構わないよ」
「...今更話すことなんてないですよ」
「そうかもね。けど、何か言いたいことがあるって顔はしてるよ」と、俺の携帯をすっと取ると、勝手に顔認証したのち、何やら携帯を操作する。
「私の連絡先を入れておいた。まぁ、何かあったら気軽に相談してきていいよ。人生の先輩として可能な限りアドバイスをしよう」
「...なんか、何から何までありがとうございます」
「ううん、気にしないで。私は頼られるの好きだから」
そうして、さらに何曲か歌ったのち、千夏さんと別れて家に帰った。
すると、家に帰るとむすっとした表情の果南が立っていた。
「...ご立腹?」
「どこ行ってたの?」
「街にちょっと...。千夏先輩と遊んでた」
「千夏先輩...。連絡先とか交換してたの?」
「いや偶然会って...」
「千夏先輩、すごくいい人だけど男遊びは激しいから気をつけた方がいいよ」
まぁ、あれだけ可愛かったらそりゃモテるよな。
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