竜王様のヘタレな恋 ーR18バージョンー

Arara

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出会い編

ディーン

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「アル、お願いがあるの」

 あれからアルは予定通り一週間程で一旦は帰って来たけれど、またすぐに戻って行った。
 騒ぎは想像以上に大きくなっていて(オルレアンとイシュラムの間で戦争が勃発しそうとか)、事態を収拾するために竜族の存在を公にすると決めたらしい。
 公表するにあたっての根回しやら、準備やらで、アルは忙しく竜王国とレノルドを行ったり来たりしている。
 国のために一生懸命働いているけれど、きっとうまくいかない事が多くて、頭を痛めているのだと思う。
 アルはこのところずっと悩ましげな顔をしていた。

 アルはわたしと離れたがらなかったので、こちらの離宮でも執務をとることが増え、それに伴い竜族の人達が出入りすることも増えた。
 奇妙奇天烈な行動が多いアルだから、こうしてまとも・・・に執務をとっているところを見ると、本当に王様でちゃんとお仕事が出来るのだと驚くばかりである。
 
 わたしがディーンにそう言うと、アルがおかしな行動をとるのはわたしが関わることに限定されるらしい。
 ディーン曰く、竜王様は気さくだけれど普段は威厳もあるし、竜体の体躯などとても立派で誰もが憧れ、頭を垂れる黒竜なのだとか。
 それに何より、危機に直面した時、当代竜王様が竜王国を救ったのは紛れもない事実で、親を失った子竜で育ててくれた竜王様に感謝しない者はいない。それだから魔力のせいだけでなく、自分も含めて、竜王様を心から慕って仕えている者が多いのだと、ディーンが誇らしげに話してくれた。

  
「ディーンも一緒に学校に通うことを許可してもらいたいの」
 
 ディーンの口癖は『俺は出来そこないだから』。
 竜族なのに魔法が使えない、それがひどいコンプレックスになっている。

「おい、やめろっ! 俺は魔法を習いたいとも学校に行きたいとも、何も言ってないだろ!」

 ディーンがわたしとアルの間に割り込んで来た。
 わたしはディーンに学校に通う事を薦めていたけど、ディーンは自分と向き合うことを恐れていて、いつも逃げてしまう。

「今年度のハイネケン魔法学校の生徒の募集は年齢制限がゆるくなってるし、チャンスなのよ。あなた、魔法が使えないこと、悔しくないの?」

 ジェラルドおじ様のせいで、ハイネケン魔法学校は今や創立理念から大きく外れて、クズ貴族のためのクズ子弟が通う学校になり果てている。
 平民のための奨学金制度は廃止され、且つお金さえ払えば入学が認められたため、王立の貴族が通う魔法学校に行けない出来そこないばかりが集まってきていた。
 それを是正するため、今お母様は奔走しているわけなのだけれど、今回の幅広い年齢層の募集も、七年の間平民の入学が阻害されたために、市中にいるであろう優秀な人材を掬いあげる目的を持っている。
 

「悔しいさ。だけど、仕方がないだろ! 魔力はあっても、使えないものは使えないんだ。俺は出来そこないなんだよ!」

 学校へ通うための準備の途中、ディーンがわたしの教科書に興味を示し、そう言えば、ディーンは魔法が下手くそなのだとアルが言っていたのを思い出した。
 それでわたしがディーンにいろいろ聞いてみると、驚くべき事実が判明する。

 生粋の竜族は生まれながらに魔法が使えるらしい。
 誰に教えられなくても、本能で魔法を操るのだとか。
 ところがハーフは魔力は備わっているものの、本能で使うということが出来ない。
 人間のように学習することが必要だったけれど、母親に捨てられたディーンに魔法を教えてくれる人間はいなかった。
 宰相様やアルが途中で気付いて教えてくれたらしいけど、イメージしたり念じれば発動する竜族の魔法をディーンは扱えなかったのだ。
 
 ハーフの存在にも扱いにも慣れていなかった竜族の中で、魔法を操れない竜と蔑まれてきたディーンは、自分を出来そこないだと思い込んでしまっている。
 現在の竜王国では、ディーンの失敗を踏まえて、母親から魔法を習えないハーフや人間の子供達は、学校で習えるようになっているらしい。


「ディーンは出来そこないなんかじゃないし、魔法が使えなかったのはあなたのせいじゃない。何度も言うけど、竜族の魔法と人間の魔法は似て非なるものなのよ」
 
 人間の魔法は魔法陣に組み込まれた魔法式に魔力を流す事で、発動させる。
 イメージも大切だけれども、魔法式抜きには発動しないものなのだ。
 慣れれば確かに考えなくても出来るようになるけれど、竜族の魔法のように水と念じれば水が出て来るような、そんなものとは根本的に異なるのだ。
 
 わたしだってそんなあきれた魔法使えないわよって何度も説得したけれど、今度も上手くいかなかったらと、ディーンの心の傷や不安はあまりにも大きくて、なかなか一歩を踏み出せずにいるのだ。
 
 アルは、黙ってわたし達のやりとりを聞いていた。


「それは妙案だな。ああ、まったくよい。ディーン、ローリーと共に学校へ行け。これは命令だ」

「アルベルト様!」

「ありがとう! アル!」

 一歩を踏み出せずにいるディーンの背中を、アルが押してくれた! 
 ちょいちょいとアルがディーンを手招きして呼んだ。

「ディーン、ちょっとこっちへ来い」
 
 そしてアルが何やらディーンにこそこそ話をし始めた。
 男同士、経験豊かな人生の先輩としてのアドバイスで、ディーンを励ましてくれているのに違いない。
 アルはディーンのコンプレックスも重々知っているし、育ての親なんだもんね。
 わたしは嬉しくてディーンに笑いかけて言った。

「アルもやっぱりディーンの事は心配だったのね! ね! ディーン、わたしも協力するからね!」


「・・・・・・」






 ◇◇ ◇◇ ◇◇ 
 

「我はずっと悩んでおったのだ。ローリーが学校に通うのを許可したものの、あんなに愛らしいのだ、学校で若い雄に横取りされたりしないだろうかと心配で心配で、夜もおちおち眠れぬほどに頭を悩ませておったのだ。竜族ならば我の魔力に気付くだろうが、人間ではそうもいくまい? 本当は我が一緒に学校について行きたいくらいなのだが、執務をとっている我はカッコいいとローリーが褒めてくれたゆえ、放り出して行くわけにもいかぬ。お前がローリーに近付く雄は排除せよ。よいな?」



「・・・はい」






 
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