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魔法学校編
エリックの話2
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「残酷?」
「さっき番いを諦めて、パートナーと過ごす者がいるって言ったけど、俺達は違う。番いを諦めたわけじゃなく、最初から探していないし、今では出会わないよう行動している。二人にとっては不幸な結末にしかならないからね」
よく分からない。
「どういう事ですか?」
「今、もし、フェルが番いと出会ってしまったら、俺は相手の番いに殺される前に逃げ出さなければならないし、俺が番いと出会っても同じだ。どんなにフェルを大切に思っていても、番いの不興を恐れて俺はフェルを追い払うだろう」
「そ、そんな・・・」
エリックさんの話に衝撃を受けた。
二人はいつも一緒に居て、お互いがお互いを大切にしているのが周りで見ていてもよく分かるほど、とても仲が良い。
それに、お父様が話していた、夫とするなら竜族の男が理想的という言葉をそのまま体現しているのがエリックさんだったのに。
「残酷な話だろう? 俺達は愛し合ってる。俺は誰よりもフェルが大切だ。フェルを傷つけるなんて考えられない。でも、それを狂わせるのが番いという存在なんだ。恐ろしいよ」
エリックさんは仮定の話なのに、近い現実のことのように心底怯えている。
「前振りが長くなってしまったけど、実はここからが本題なんだ」
前振り? あれが前振り? 嘘でしょ!
わたしは衝撃を受けるような話は正直もうおなか一杯で、聞きたくなかった。
もう逃げ出したい。
でも、エリックさんの話が本当なら、わたしはもうそこに巻き込まれてる。
わたしは覚悟を決めて、頷いた。
「三百年前、病で亡くなったのは年若い未婚の女性ばかりではない。若い母親も大勢亡くなったんだ。つまり、番いを失った夫が大勢いた。今までの話で、竜族にとって番いというものが唯一無二の存在である事は分かっているだろう? 大切な番いを失った男達はどうなったと思う?」
・・・・・・
「ああ、そもそも竜族は人間と違って病気になど滅多にならないし、簡単には死なないものなんだ。人間は出産で死んだり、病気で死んだり、死ぬ可能性というものをある程度は考慮して生きているだろうけど、竜族にとっては、それはもう晴天の霹靂、大恐慌に陥ったよ。竜族はね、番いと共に死ぬのが常だからね、片方だけが亡くなるなんてことはあり得ないんだ」
その時の状況を想像するのは、ちっとも難しくなかった。
黙ったまま答えないわたしに、エリックさんは静かに答えを教えてくれた。
「半数は絶望のあまり番いの亡骸を抱いて、自ら死んだ」
エリックさんの答えは、わたしが予想して口に出来なかったそれだった。
意外に思ったのは、エリックさんが、半数は、と言ったことだ。
あの話の流れでは、全員が死んでしまったとなってもおかしくなかったから。
でも、半数が人間と同じように、悲しみは胸に秘めて、子供や家族のために生きるとか、仕事に没頭するとか、何か生きがいを見つけて生きたのだとしたら、希望が持てる。
だが、エリックさんが次いで言った言葉は、わたしの希望を見事に打ち砕いた。
そればかりか、新たな衝撃をも与えていった。
「そして残りの半数は、代替わりしたばかりの竜王様、つまりアルベルト様によって殺されたんだ」
エリックさんの話は、わたしに途轍もないほどのダメージを与え、精神的な疲労と混乱に、動揺して立ってもいられない。
様々な事実を詰め込まれて、頭の中がぐちゃぐちゃになってる。
知恵熱が出そう。
あ、駄目だ。
そんなもの出したら、心配性のアルがすっ飛んで来るに決まってる。
今はアルの顔が見れない。
どんな顔をして会えばいいのか、全く分からない。
周りを巻き込んで大惨事を引き起こす狂った雄を、アルは竜王の名のもとに処分していったらしい。
そしてその雄の中には、アルの親友だった者もいたという。
重いよ! 重過ぎるよ!
「はあ~」
そう、それに話の内容が濃過ぎて、うっかりスルーしかけたけど、話の途中でアルの年が六百歳だったことが分かった!
完璧におじいちゃんじゃん。
なんか、アルの顔がマジに見れない。
おじいちゃんとか言っちゃいそう。
ディーンでさえ、二百歳とか! あり得ない!!
なんか嫌だ。
「はあ~」
エリックさんは、ディーンや宰相様やフェリシアさんよりもとてもいい仕事をしたと言える。
あまりの話の規模の大きさに、わたしのちっぽけな怒りなんて、どこかに飛んで行っちゃったもん。
えーと、なんでわたし怒ってたんだっけ?
ああ、監視よ監視。
でも、まあ、そりゃ六百歳じゃ、そうなるかもね。
アルに比べたらわたしなんて、生まれたてのホヤホヤって言ってもいいくらいだもん。
赤ん坊を信用なんて出来っこないわ。
「はあ~」
なんかわたしって、とんでもない人に好かれちゃったのね。
でもって、わたしもそのうちアルの事を求めてやまなくなると。
・・・・・・
「もう、寝よ」
「俺達はいいんだ。もし、狂って暴走したとしても、竜王様が処分してくれる。でも、竜王様は? 最強の竜王様はどうすればいいのかな?」
エリックさんの言葉がずっと頭の中でリフレインしている。
「さっき番いを諦めて、パートナーと過ごす者がいるって言ったけど、俺達は違う。番いを諦めたわけじゃなく、最初から探していないし、今では出会わないよう行動している。二人にとっては不幸な結末にしかならないからね」
よく分からない。
「どういう事ですか?」
「今、もし、フェルが番いと出会ってしまったら、俺は相手の番いに殺される前に逃げ出さなければならないし、俺が番いと出会っても同じだ。どんなにフェルを大切に思っていても、番いの不興を恐れて俺はフェルを追い払うだろう」
「そ、そんな・・・」
エリックさんの話に衝撃を受けた。
二人はいつも一緒に居て、お互いがお互いを大切にしているのが周りで見ていてもよく分かるほど、とても仲が良い。
それに、お父様が話していた、夫とするなら竜族の男が理想的という言葉をそのまま体現しているのがエリックさんだったのに。
「残酷な話だろう? 俺達は愛し合ってる。俺は誰よりもフェルが大切だ。フェルを傷つけるなんて考えられない。でも、それを狂わせるのが番いという存在なんだ。恐ろしいよ」
エリックさんは仮定の話なのに、近い現実のことのように心底怯えている。
「前振りが長くなってしまったけど、実はここからが本題なんだ」
前振り? あれが前振り? 嘘でしょ!
わたしは衝撃を受けるような話は正直もうおなか一杯で、聞きたくなかった。
もう逃げ出したい。
でも、エリックさんの話が本当なら、わたしはもうそこに巻き込まれてる。
わたしは覚悟を決めて、頷いた。
「三百年前、病で亡くなったのは年若い未婚の女性ばかりではない。若い母親も大勢亡くなったんだ。つまり、番いを失った夫が大勢いた。今までの話で、竜族にとって番いというものが唯一無二の存在である事は分かっているだろう? 大切な番いを失った男達はどうなったと思う?」
・・・・・・
「ああ、そもそも竜族は人間と違って病気になど滅多にならないし、簡単には死なないものなんだ。人間は出産で死んだり、病気で死んだり、死ぬ可能性というものをある程度は考慮して生きているだろうけど、竜族にとっては、それはもう晴天の霹靂、大恐慌に陥ったよ。竜族はね、番いと共に死ぬのが常だからね、片方だけが亡くなるなんてことはあり得ないんだ」
その時の状況を想像するのは、ちっとも難しくなかった。
黙ったまま答えないわたしに、エリックさんは静かに答えを教えてくれた。
「半数は絶望のあまり番いの亡骸を抱いて、自ら死んだ」
エリックさんの答えは、わたしが予想して口に出来なかったそれだった。
意外に思ったのは、エリックさんが、半数は、と言ったことだ。
あの話の流れでは、全員が死んでしまったとなってもおかしくなかったから。
でも、半数が人間と同じように、悲しみは胸に秘めて、子供や家族のために生きるとか、仕事に没頭するとか、何か生きがいを見つけて生きたのだとしたら、希望が持てる。
だが、エリックさんが次いで言った言葉は、わたしの希望を見事に打ち砕いた。
そればかりか、新たな衝撃をも与えていった。
「そして残りの半数は、代替わりしたばかりの竜王様、つまりアルベルト様によって殺されたんだ」
エリックさんの話は、わたしに途轍もないほどのダメージを与え、精神的な疲労と混乱に、動揺して立ってもいられない。
様々な事実を詰め込まれて、頭の中がぐちゃぐちゃになってる。
知恵熱が出そう。
あ、駄目だ。
そんなもの出したら、心配性のアルがすっ飛んで来るに決まってる。
今はアルの顔が見れない。
どんな顔をして会えばいいのか、全く分からない。
周りを巻き込んで大惨事を引き起こす狂った雄を、アルは竜王の名のもとに処分していったらしい。
そしてその雄の中には、アルの親友だった者もいたという。
重いよ! 重過ぎるよ!
「はあ~」
そう、それに話の内容が濃過ぎて、うっかりスルーしかけたけど、話の途中でアルの年が六百歳だったことが分かった!
完璧におじいちゃんじゃん。
なんか、アルの顔がマジに見れない。
おじいちゃんとか言っちゃいそう。
ディーンでさえ、二百歳とか! あり得ない!!
なんか嫌だ。
「はあ~」
エリックさんは、ディーンや宰相様やフェリシアさんよりもとてもいい仕事をしたと言える。
あまりの話の規模の大きさに、わたしのちっぽけな怒りなんて、どこかに飛んで行っちゃったもん。
えーと、なんでわたし怒ってたんだっけ?
ああ、監視よ監視。
でも、まあ、そりゃ六百歳じゃ、そうなるかもね。
アルに比べたらわたしなんて、生まれたてのホヤホヤって言ってもいいくらいだもん。
赤ん坊を信用なんて出来っこないわ。
「はあ~」
なんかわたしって、とんでもない人に好かれちゃったのね。
でもって、わたしもそのうちアルの事を求めてやまなくなると。
・・・・・・
「もう、寝よ」
「俺達はいいんだ。もし、狂って暴走したとしても、竜王様が処分してくれる。でも、竜王様は? 最強の竜王様はどうすればいいのかな?」
エリックさんの言葉がずっと頭の中でリフレインしている。
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