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婚約者編
求愛行動3
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これが番いの繋がりなのか、ただの恋情なのかはわからないけれど、わたしはもうアルから離れられない。
誕生会の前日、アルには怒って飛び出したことを謝って、再び愛を乞うた。
この一週間、悩みに悩んで、わたしは一つの結論に達する。
アルのことは愛してるけど、今はまだアルの妻になる自信がない。
今のわたしは、魔法使いとしても半人前。
無知な子供に過ぎない今のわたしは、ただアルの愛に縋ることしかできない。
アルの番いがわたしでなければならない理由でも見いだせたなら、自信を持てるのかも知れないけど。
だから、わたしが世間を知り、一人前の魔法使いになってアルの役に立てるようになるまで、待ってもらうことに決めた。
その間には、胸だって成長するはずだし。
フォンテーヌ様のような立派な胸を千人分も見てきたアルに、現状で裸を見せるなんて絶対にむり!
誕生会の最中もアルはしつこくて、なんでなんでといつまでもうるさかったけど、無視した。
わたしだって、アルが過去に千人もの美女の大きな胸を揉んでたと知るまでは、結婚するつもりだった。
だけど、状況が変わったんだもの、仕方ないじゃない!
誕生会の翌週の早朝、離宮の私室で支度をしていると、何やら部屋の外がざわついている気配がする。
何事かと思い、扉を開けてみると、わたしの部屋の前に動物の死骸が置かれていた。
わたしが驚いて目を丸くしていると、離宮で世話をしてくれているメイドさんが、心配そうな顔で気遣ってくれる。
「誰かの嫌がらせでしょうか」
そうよね。普通、嫌がらせ?って思うわよね。
でも、この死骸、籐のかごに入れられてリボンまでついていた。
そして、手のひらほどの白い毛並みが美しいこの獣、つい最近見た覚えがある。
辺りをきょろきょろ見回し、廊下の角から頭をひょっこり出してこちらの様子を窺っているアルを見つける。
「ありがとう、大丈夫よ。嫌がらせじゃなくて、毛皮をとるために頼んだ白ミンクだから」
かごを持って部屋に入り、じっくり観察をする。
実物は初めて見たけど、やっぱりレノルドの北の霊峰に住む幻の珍獣、白き神の御使いと呼ばれるムステラに間違いない。
可愛い顔に反して鋭い歯を持ち、尾に特徴があるから、同じイタチ科のミンクとは異なる。
レノルドでは霊獣と崇められ、殺傷するなどもってのほか。
っていうか、希少過ぎて、めったにお目にかかれる代物ではないはずなんだけど。
でも現実には、目の前で五匹のムステラがのびていた。
その時、コンコンというノックの音と同時に、アルの入ってもよいかとの声が聞こえた。
部屋に迎え入れ、抱擁を交わす。
そして、アルはかごの方をちらりと見たかと思うと、もじもじして言った。
「ローリー、我の贈り物の獲物は気に入ったか?」
やっぱり。
「竜族の男はな、求婚する時、相手への愛の深さを表現するために、珍しい獲物を狩って贈るのだ。よいか? 珍しければ珍しいほど、相手を深く愛しているいう証になるのだぞ?」
わたしが黙っていると、アルは不安そうな顔つきで懸命に言葉を繋ぎ始める。
「それは、珍しい獣なんだろう? そなたの本に載っておったぞ? 幻の獣というページだ。その中から、ローリーが好きそうな可愛いやつを選んだのだが、やっぱり生きたままがよかったか? 我もな、ローリーは生き物が好きだから、最初は生きたまま持ち帰ってペットにするつもりだった。ところが、こやつはなかなか凶暴でな、我はローリーが噛まれてはいけないと思ったのだ。だから、ペットはやめて襟巻きにできるように、一週間粘ってやっとのこと五匹捕まえた。白くて美しい毛並みだし、毛ざわりもよいだろう?」
あんぐり口を開けて、なんと言えばよいのか言葉が見つからないわたしに、アルがさらに追い打ちをかける。
「その白い獣より朱雀の方がよかったか? それとも、白虎か? 亀は論外として、さすがに青龍は勘弁してもらいたいと思う。同族ではないが、親戚みたいなものだろう? それから、これらはおそらく通常の獣ではないゆえ、氷漬けで持ってくるしかないと思うが、置く場所が」
わたしはその時、アルの番いがわたしでなければならない理由を理解した。
神のご意思か、はたまた世界の無意識の総意が、世界の存続のためにわたしを選んだに違いない。
「ううん、わたし、これが一番良かったから、すごく嬉しい! アルの気持ちは、十分に伝わったわ。本当に、ありがとう。大切にするね!」
アルの番いである責任を改めて痛感し、その重圧に涙が零れる。
「そうか! 気に入ったか! 我がどれほどそなたを想っているか、わかってくれたのだな?!」
アルがわたしの両手を握り、目を合わせて念を押すように言う。
「ええ、本当によくわかったわ!」
だから、わたしもアルの両手をしっかり握り返し、目を合わせてはっきり答える。
「わたしはあなたの番いなんだって、はっきり自覚したわ!」
異性の気を引き、繁殖行為に持ち込むために行う雄の求愛行動。
アルはわたしとエッチするためなら、幻であろうが神獣であろうが狩ってくるだろう。
「本当か?! 番いだとはっきり認識できたのか?! ああ、ローリー、我は嬉しい。我も我も同じ気持ちだ。恥ずかしがらずともよいぞ? 番いとは、そういうものなのだ。愛の巣で、思う存分、深く」
「わたしは番いとして、あなたに深く愛されれば愛されるほど、研鑽を積んで良識ある大人にならなければならないのよ!」
「・・・・・・」
誕生会の前日、アルには怒って飛び出したことを謝って、再び愛を乞うた。
この一週間、悩みに悩んで、わたしは一つの結論に達する。
アルのことは愛してるけど、今はまだアルの妻になる自信がない。
今のわたしは、魔法使いとしても半人前。
無知な子供に過ぎない今のわたしは、ただアルの愛に縋ることしかできない。
アルの番いがわたしでなければならない理由でも見いだせたなら、自信を持てるのかも知れないけど。
だから、わたしが世間を知り、一人前の魔法使いになってアルの役に立てるようになるまで、待ってもらうことに決めた。
その間には、胸だって成長するはずだし。
フォンテーヌ様のような立派な胸を千人分も見てきたアルに、現状で裸を見せるなんて絶対にむり!
誕生会の最中もアルはしつこくて、なんでなんでといつまでもうるさかったけど、無視した。
わたしだって、アルが過去に千人もの美女の大きな胸を揉んでたと知るまでは、結婚するつもりだった。
だけど、状況が変わったんだもの、仕方ないじゃない!
誕生会の翌週の早朝、離宮の私室で支度をしていると、何やら部屋の外がざわついている気配がする。
何事かと思い、扉を開けてみると、わたしの部屋の前に動物の死骸が置かれていた。
わたしが驚いて目を丸くしていると、離宮で世話をしてくれているメイドさんが、心配そうな顔で気遣ってくれる。
「誰かの嫌がらせでしょうか」
そうよね。普通、嫌がらせ?って思うわよね。
でも、この死骸、籐のかごに入れられてリボンまでついていた。
そして、手のひらほどの白い毛並みが美しいこの獣、つい最近見た覚えがある。
辺りをきょろきょろ見回し、廊下の角から頭をひょっこり出してこちらの様子を窺っているアルを見つける。
「ありがとう、大丈夫よ。嫌がらせじゃなくて、毛皮をとるために頼んだ白ミンクだから」
かごを持って部屋に入り、じっくり観察をする。
実物は初めて見たけど、やっぱりレノルドの北の霊峰に住む幻の珍獣、白き神の御使いと呼ばれるムステラに間違いない。
可愛い顔に反して鋭い歯を持ち、尾に特徴があるから、同じイタチ科のミンクとは異なる。
レノルドでは霊獣と崇められ、殺傷するなどもってのほか。
っていうか、希少過ぎて、めったにお目にかかれる代物ではないはずなんだけど。
でも現実には、目の前で五匹のムステラがのびていた。
その時、コンコンというノックの音と同時に、アルの入ってもよいかとの声が聞こえた。
部屋に迎え入れ、抱擁を交わす。
そして、アルはかごの方をちらりと見たかと思うと、もじもじして言った。
「ローリー、我の贈り物の獲物は気に入ったか?」
やっぱり。
「竜族の男はな、求婚する時、相手への愛の深さを表現するために、珍しい獲物を狩って贈るのだ。よいか? 珍しければ珍しいほど、相手を深く愛しているいう証になるのだぞ?」
わたしが黙っていると、アルは不安そうな顔つきで懸命に言葉を繋ぎ始める。
「それは、珍しい獣なんだろう? そなたの本に載っておったぞ? 幻の獣というページだ。その中から、ローリーが好きそうな可愛いやつを選んだのだが、やっぱり生きたままがよかったか? 我もな、ローリーは生き物が好きだから、最初は生きたまま持ち帰ってペットにするつもりだった。ところが、こやつはなかなか凶暴でな、我はローリーが噛まれてはいけないと思ったのだ。だから、ペットはやめて襟巻きにできるように、一週間粘ってやっとのこと五匹捕まえた。白くて美しい毛並みだし、毛ざわりもよいだろう?」
あんぐり口を開けて、なんと言えばよいのか言葉が見つからないわたしに、アルがさらに追い打ちをかける。
「その白い獣より朱雀の方がよかったか? それとも、白虎か? 亀は論外として、さすがに青龍は勘弁してもらいたいと思う。同族ではないが、親戚みたいなものだろう? それから、これらはおそらく通常の獣ではないゆえ、氷漬けで持ってくるしかないと思うが、置く場所が」
わたしはその時、アルの番いがわたしでなければならない理由を理解した。
神のご意思か、はたまた世界の無意識の総意が、世界の存続のためにわたしを選んだに違いない。
「ううん、わたし、これが一番良かったから、すごく嬉しい! アルの気持ちは、十分に伝わったわ。本当に、ありがとう。大切にするね!」
アルの番いである責任を改めて痛感し、その重圧に涙が零れる。
「そうか! 気に入ったか! 我がどれほどそなたを想っているか、わかってくれたのだな?!」
アルがわたしの両手を握り、目を合わせて念を押すように言う。
「ええ、本当によくわかったわ!」
だから、わたしもアルの両手をしっかり握り返し、目を合わせてはっきり答える。
「わたしはあなたの番いなんだって、はっきり自覚したわ!」
異性の気を引き、繁殖行為に持ち込むために行う雄の求愛行動。
アルはわたしとエッチするためなら、幻であろうが神獣であろうが狩ってくるだろう。
「本当か?! 番いだとはっきり認識できたのか?! ああ、ローリー、我は嬉しい。我も我も同じ気持ちだ。恥ずかしがらずともよいぞ? 番いとは、そういうものなのだ。愛の巣で、思う存分、深く」
「わたしは番いとして、あなたに深く愛されれば愛されるほど、研鑽を積んで良識ある大人にならなければならないのよ!」
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