竜王様のヘタレな恋 ーR18バージョンー

Arara

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婚約者編

舞踏会1

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 竜王国の存在の公表に伴い、今、アルのところには、あちこちの国から舞踏会やら夜会やらの招待状が山のように届いている。
 事前の根回しや広報活動、情報操作が功を奏して、現在大きな暴動や混乱は起こっていない。

 しかし、未知なるものは恐ろしいもの。
 窮鼠猫をかむというように、恐怖を覚えて反撃に転じることも考えられるし、また逆に大昔のように竜族を妙薬と狙って、襲ってくる可能性もある。
 もちろん、そんな輩に後れをとる竜族ではないけれど、無益な争いを避けるために、アルは目下広報活動に励んでいた。
 つまり、竜族は友好的に接するならば全然怖くないけど、同胞に手を出したら容赦なく潰すぞと力を見せ付けて圧力をかけるのだ。


 そして、このレノルドも例外ではなく、竜王様を歓迎する舞踏会が開かれることとなった。
 他の国ならいざ知らず、この国で開かれる舞踏会だし、わたしはてっきり婚約者として、出席するものと思っていた。

 なのに!

「なんで、同伴者がクリスティーネ様なの?!」

「舞踏会など有象無象の輩が集まってくるのだぞ? 危ないではないか。我の婚約者だと知れて、狙われたらどうする。そなたが、並みの令嬢でないのは重々承知しておるが、我は三千年前の愚行を繰り返すわけにはゆかぬ」

「それは、そうだけど・・・」

 多くの竜族が殺される結果となったのは、同族の雄が番いの雌を人質にとられて、人間に手を貸したためと言われている。
 だから、竜王国以外の国にいる時、竜族のカップルは、常に行動を共にして絶対に離れない。

「じゃあ、婚約者じゃなくていいから。お付きの一人でいいから!」

「それでも、特別な人間としてそなたを衆目の目に晒すことになる」

「わかった。そこまで言われたら仕方がないわ。竜王国や竜族の人に迷惑をかけるわけにはいかないもの。アルと舞踏会で踊れると思って楽しみにしてたけど、諦めるわ」

「済まぬ、ローリー」

「ううん、いいの。気にしないで」
 




 社交界デビューをしていないわたしには、王宮はおろかどこからも招待状が届くことはない。
 だから、アルが心配するのはわかるけど、わたしだって女の子だもん、王宮で開かれる煌びやかな舞踏会に、一度は着飾って参加してみたい。

 アルが困るのは、わたし・・・の存在が周囲にバレることであって、わたしでない別人なら参加しても問題ないと思うのよね。
 それに、わたしはアルと一緒に出席するのは諦めると言ったけど、参加しないと言った覚えはないし。
 
  
 というわけで、現在、わたしは元の姿とは正反対の、ナイスバディで妖艶な美女に変化へんげしている。
 竜気もがっちり結界を張って、外には漏らしていないから、アルにも他の竜族の人にもバレないと思う。
 肉体のコンプレックスも解消して、人生初の舞踏会を楽しむべく、わたしは意気揚々とメイン会場へと乗り込んだ。


 舞踏会は、はっきり言って全然楽しくなかった。
 エロおやじには付きまとわれ、アルはアルで、黒地に金の刺繍が施された異国風の正装に身を包んで、普段と違ってなんていうか竜王様らしくて、威厳があって、立派で、カッコよくて、とにかくモテモテで、なんかムカついた。
 そりゃ、この舞踏会は竜王様を歓迎する為に開かれたわけだから、レノルドがおもてなしをするのは当然のことだけど、今夜のアルは本当に凛々しくて、必要以上に女性達を吸い寄せている気がする。
 
 アルが他の女性と踊っているのを見ると、無性に悲しくなる。
 こうなったら、お酒は初めてだけど、ヤケ酒よ! 
 飲み物や軽食が用意されたテーブルに陣取り、人だかりを睨み付けながら、グラスの中身を一気に飲み干した。


「お一人ですか?」
「ええ、そうよ。見れば、わかるでしょ」
「では、ご一緒しても? 私も一人なんです。パートナーを竜王様にとられてしまいまして」
 
 近付いて来た男は、人だかりに視線を向けて言った。

「勝手にすれば」

 同じ境遇に置かれているところに、少しだけシンパシーを感じる。

「でも、仕方がないです。あの御方はいろんな意味で、とても魅力的な方ですからね」

 男の言いたいことを理解して、不愉快になったわたしは、さらにグラスをあおったのだった。



 
「飲み過ぎですよ。酔いを醒ましに庭へ行きましょう」

 男にしつこく促され、席を立つ。
 よっぽど美しい庭なのか、誘われて踊った男も、あのエロおやじも、みんな庭へわたしを連れて行きたがる。
 いい場所があるんですよと言う男について行き、押し倒されてようやく気付いた。
 注意して周囲をうかがえば、あっちの暗闇でもこっちの暗闇でも、ごそごそと音がしている。

 グローリア=ハイネケン、一生の不覚。
 のこのここんなところについて来てしまったわたしもわたしだけど、貴族の貞操観念って、一体どうなってるの!? 
 しかも、こんなところで!! 信じられない!!

「ひとり者同士、慰め合いましょう」
「冗談でしょ! さっさとどかないと、電撃をお見舞いするわよ!」

 わたしはディーンみたいな軽い男にナンパされるのは御免だから、幻影魔法を施したアルの婚約指輪を既婚者の証である左手の薬指にはめていた。
 この男だって、いい年してるんだから、結婚してるに違いないのに。

「そんなこと言わないで、寂しいんでしょう? 優しくしてあげますから」

 揉み合いながら、なんとか穏便に逃れようとするけれど、男はしつこかった。

「嫌だと言ってるでしょう!? わからない人ね!」

 魔法を使うとあとあと面倒なことになりそうだから正直使いたくなかったけど、背に腹はかえられないと決心した時だった、男をつまみ上げてどかせてくれた人がいた。
 たすかったー。

「ご親切にありがとうございます。助かりましたわ」

 見上げて驚く。げ、アルだ!! 

「大丈夫か?」
 
「あ、あの、これは、その、」

 どう言い訳をしようかとしどろもどろなわたしに、アルがさらりと言う。

「さぁ、戻るぞ」

「え? あ、はい」
 
 あっ、そうか、今のわたしは、変化へんげして別人になってるんだった。
 ふー、焦ったー! バレなくてよかったー!

「あの・・・ありがとうございました。本当に助かりました」

「よい」
 
 アルにこんなところを見つかっていたら、小言をもらうだけじゃなく、さっきの男に対抗心を燃やしたアルが、権利があるのは我の方だとかなんとか主張して、押し倒してきたに違いない。
 わたしとしたことが、浮気を疑われても仕方がないほどの失態だった。

「まいるぞ」

「あ、はい」


 ホールに戻れば、アルが紳士のマナーとして一曲どうかと申し込んでくれる。
 ぼろを出す前にさっさと帰った方がいいのはわかっていたけど、アルと踊りたかったわたしは、その魅力的な言葉に抗えない。
  
「はい、よろこんで」

 お決まりの言葉を返して、アルの手を取ったのだった。




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