竜王様のヘタレな恋 ーR18バージョンー

Arara

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外伝 レオンハルト編

最強(恐)の魔法使い1

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 気が付いたら空の上にいた。

「え?」

 横たわるレオンに抱き付いていた体をそろりと少しだけ起こし、目だけを動かして辺りを窺った。

「フローラ、俺達は今、兄上の背中に乗っているんだ」

 ということは、竜の背に乗って、空を飛んでいるってこと?!

「兄上が俺達を落っことすようなヘマはしないよ。フローラを乗せているから、いつもより厳重に結界で守ってくれている」

 思わずレオンに固くしがみ付くと、レオンはくすくす笑って言った。
 確かに言われてみれば、風を切る音は聞こえるのに、ここは部屋にいる時と同じくらい風も揺れも感じない。
 こうやって話していれば、いつものレオンと何も変わらないように思うのに、しがみ付いた胸からは心臓の拍動が感じられなかった。

「レオン・・・」

 レオンの命の灯った瞳を見詰め、再び会えた喜びを噛み締めながらも、不安な気持ちを抑える事は出来なかった。
 助けは来たけど、だからといってレオンが絶対に助かるという保証はない。
 危機は脱したものの、現状は楽観出来るものではないから。

「フローラ、そんな顔をするな。大丈夫、母上がきっとなんとかしてくれる。普段は厳しくて恐い母上だけど、こういう時は一番頼りになる存在なんだ」

 私が余程思い詰めた表情をしていたのか、逆にレオンに励まされる。

「うんっ・・・」

 私の方がしっかりしなきゃいけないのに。ごめんね、レオン。
 
『はは、レオンの言う通りだよ、フローラ。我らが母上は、この世で最強(恐)の魔法使いだからな!』

 ぐすぐすと泣く私を見かねてか、兄上様の明るく優しい声が頭に響く。

『さあ、フローラ、顔を上げて見てごらん。あれが俺達の自慢の家族、フローラの新しい家族だよ』

 こわごわ立ち上がって前方を見れば、空の向こうに黒い点の集まりが見えた。
 その黒い点は見る間にどんどん大きくなり、一つずつが竜である事がはっきりと見て取れた。
 空中浮揚する兄上様の目の前で、竜の一塊もまた制止する。
 ほとんどがレオンと同じ黒竜だけど、白竜が一匹とその子供と思われる銀色の竜もいる。
 レオンの竜体はよく知ってる。ミニチュア版だけど、部屋で何度も見せてもらった。
 その姿にそっくりだから、ここにいる竜達がレオンの兄姉なんだろう。
 レオンの窮地を知って助けに来てくれたのだ。
 
 先頭にいた黒竜がゆっくり近付いて来る。 
 一際大きく立派な黒竜は、言葉が出ないほど神々しく美しくて、そして何より凄まじく強い魔力のオーラを放ち、近付くほどに圧倒的な存在感を示す。
 
 スゴ・・・い!!

 この竜が、竜王様に間違いない。
 一目で畏怖の念を抱かせるほどに、風格が段違いだ。
 レオンの父上様は、背中に魔法使いの正装であるローブを着た人を乗せていた。
 レオンや兄上様が最強の魔法使いと恐れる母上様だろう。

 そんな恐い母上様に、嫁として気に入ってもらえるかすごく心配だけど、そんな心配よりも前に、何としてでもレオンを助けてもらわないと。
 頼みの綱は母上様だけなのだから、とにかく一生懸命お願いしよう。
 心を決めて、怖い母上様を待ち構えた。

 
 え? 
 ところが転移魔法で目の前に現れたのは、レオンとは全く似ても似つかない金髪に緑の瞳を持つ少女だった。
 えーと、えーと、誰?
 てっきり、母上様だと思っていたけど。
 
「はじめまして、フローラ。レオンの母親のグローリアよ。あれほど言っていたのに、この馬鹿息子のせいで、あなたを辛い目に合わせてしまったわ。私の教育が足りなかったせいで、ごめんなさい。どうか許してちょうだい」 
 母上様は足元に横たわっているレオンをギロリと一睨みすると、目を丸くして驚いている私に謝った。

 レオンの母親だと名乗ったのだから、確かに母上様なのだろう。
 いろんな意味で、全然そう思えないけど!!

「そんな、母上様、私がいけないんです! 私がもっと注意していればこんな事には! レオンは私を助けに来て、こんな目にあったんです。レオンを、レオンを助けて下さい。お願いしますっ、お願いっ」

 私は跪き、母上様に縋りついて懇願した。

「まぁ、フローラ・・・泣かなくていいのよ。大丈夫だから、安心しなさい。とにかく、二人を連れ戻す事が出来て良かったわ」

 母上様は優しい慈愛の籠もった眼差しで、私の涙を拭い、抱き締めてくれる。
 母上様は小さくて華奢な身体なのに、その胸はとても広く大きくて、お父さまみたいだと思った。
 もうずっと長い間、思い出す事などなかったのに。
 お父さまが恋しくなって、ぎゅっと強く抱き付くと、母上様もぎゅっと抱き締め返してくれる。
 柔らかな胸はお母さまみたいにいい匂いがした。

「母上さまっ」
「フローラ、可愛い子、今まで辛かったわね。これからは、私達がついているわ」

 涙が次から次に溢れ出る。
 レオン以外で、こんなに優しくしてもらったのは、初めてかも知れない。



「レオン・・・」
「母上・・・、ごめん、心配かけ・・・ぐえっ」

「結婚前に番うなんて、どういうつもりなのよ! 人間の貴族はすぐに結婚出来ないって教えたはずよ?!許可を取ってる間に、侯爵家のお嬢さんのお腹が大きくなっちゃうじゃない!! すぐに侯爵様に会いに行きなさい! いいわね!? 返事は!? レオン、聞いてるの?!」

「は、は、母上様! レオンを振り回すのは止めて下さい! レオンが、レオンが、死んじゃう!」

 私は、馬乗りになってレオンを揺さぶる母上様の手を掴んで必死に止めた。

「レオン、レオン、大丈夫? しっかりして!」

 ぐったりしているレオンを抱き起こす。

「あ、ああ、・・・なん・・・とか、げほっ」

 生きてて良かった。
 母上様に助けてもらうつもりが、危うく母上様に殺されるところだった。

「大げさねぇ」

 死にかけてる息子に馬乗りになって説教する母親がこの世にいるだろうか。
 あんなにお優しい母上様が恐れられる理由の片鱗を見た気がした。

『母上! 説教は後で好きなだけやってくれていいから、早くレオンを助けてやってよ』

「ルカまで。レオンは竜族なのよ? 心臓の一つや二つ取られたところで死なないわよ、馬鹿ね」

『「「えーーーー!?」」』 





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