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外伝 レオンハルト編
結婚3
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フローラはポルトから出た事がなく、初めての旅行をとても喜んだので、当初の予定よりも遠回りして竜王国に向かうことにした。
もう竜の俺に乗っての移動も、すっかり慣れて背の上で眠ってしまうくらいへっちゃらだ。
手を繋いだり、腕を組んだりして街を散策しながらご当地名物を食べ歩き、夜は宿で愛を深める。
絶景を二人で眺めては、この広い世界において二人が出会えた喜びに、愛を交わす。
幸せだ~。
幸せいっぱいのいちゃらぶ新婚旅行を満喫していたある日、フローラが体調不良を訴えた。
おろおろ心配する俺に、フローラは多分つわりじゃないかなと言う。
なるほどと安心したものの、やっぱり心配だったので、急いで竜王国へ戻る事に決めた。
だが、それは大きな間違いだった。
『レオン、レオン、私のレオン』
『大好きよ、愛してる』
『もう、あなたなしでは生きられないの』
『レオン、もっと愛して』
『ああ、レオン、お願い、私の手を離さないで』
ああ、今でも耳にこびり付くフローラの甘いあえぎ声と睦言の数々・・・
秘技だってまだ半分も試せていないのに・・・
懐かしの甘い日々よ・・・
竜王国に来てからというもの、俺がベッドに誘えば、
「レオン、ごめんね、お義母様がね、安定期に入るまでは、そういう事は控えなさいって」
竜王国を案内してやろうと言えば、
「お義母様にね、マタニティドレスを買いに行きましょうって誘われてるの。だから、またね」
部屋でいちゃいちゃ過ごしていると、いきなり握っていた俺の手を振り切って、
「ああ、もうこんな時間、お義母様の休憩時間だから、お茶しに行かなくっちゃ」
お義母様、お義母様って、一体何なんだ?!
番いの俺より母上を優先するなんて。
母上にはそりゃあ、絶望的な状況から救い出してもらって、結婚についても随分世話になった。
幼い頃に母親を亡くしているフローラが、誰よりも頼りがいがある母上を慕うのは、分かるけど・・・
二人きりの時は、あんなに俺を信頼して、甘えてくれていたのに・・・
手の平を返したようなこの仕打ち、あんまりだ。
そう言えば、パーティーの時、父上が愚痴を言いたくなったら聞いてやると言っていた。
きっと、このことだったのだ。
なら早速、父上にフローラの番いを蔑ろにするあんまりな仕打ちについて、聞いて貰おう。
「父上、」
「おお、レオン、ちょうど良いところに来た」
おかしい。
俺は、愚痴をこぼしに来たはずなのに、なんで父上の愚痴を聞いているのだろう。
「とにかくルシオが来てからというもの、ローリーは毎日ルシオを研究室に引き入れて、二人きりでごそごそ何やらやっておるのだ。ローリーには浮気疑惑があるゆえな、我が監視するために部屋に入ろうとすると、研究の邪魔だと言って追い出そうとするのだぞ。お邪魔虫の間男はアイツの方なのに! 正真正銘、番いで、夫で、追い出す権利を持っておるのは我の方なのに!!」
・・・・・・
「レオン、ちゃんと聞いておるか? それにな、ローリーは酷いのだ。アイツは紳士で優秀な魔法使いだとか、気が利くイケメンだから魔族の女にも好かれたのだとか、番いの我を前にして、これみよがしにアレを褒めるのだぞ! ローリーの格付けでは、我は残念なイケメンで、アイツは気が利くイケメンなのだ!」
・・・・・・
この拷問は、いつまで続くのかな。
本来の姿のルシオはイケメンだった。ま、フローラの父親だしな。
マティアスの時から、謙虚で優秀で、面倒見が良かった。
元からそういう性質なのだろう。
ただ、基本、番い以外に興味がない竜族の国にフェミニストは珍しい。
あの姉上達でさえ、あっという間に魅了してしまったルシオを、心配性の父上が警戒するのはまぁ、仕方がない話かも知れない。
「そういうわけでな、ローリーのお茶の時間には、我らも参入するぞ」
翌日、父上の作戦通り、俺達はフローラにくっ付いて、母上の休憩時間のお茶会に潜り込んだ。
父上曰わく、人間の番いは妊娠すると、出産の不安から夫よりも出産経験者を頼るようになるらしい。
なるほど。フローラは当然のように母上の隣に陣取った。
そして、父上はというと、母上を抱き上げようとして叱られ、フローラとは反対側の母上の隣でじっとしている。
ように見せかけて、しっかりルシオを牽制していた。
「ねぇ、ルシオ、昨日の神様のお話の続きをして!」
「私も聞きたい!」
ルシオの両側を陣取っている姉上達が、ルシオに強請る。
「ルシオ、私も聞きたいわ」
母上も同調した。
お父様が、大陸各地の言い伝えや伝承を調べていた、民族歴史学者の曾祖父から教えてもらった話らしいのだけど、とってもロマンチックで面白いのよと、フローラが小声で教えてくれる。
「では、とっておきの話をしましょう。一番有名な神様のお話と言えば、創世記です。教会が伝える創世記では、暴れん坊で人間を困らせてばかりいる混沌の神カオスを、大地の慈母神ガイアが成敗して、この世に秩序が生まれたとされておりますけれど、実際は少し違うようです。教会の教えの手前、あまり大ぴらには出来ない話なのですが、実は混沌の神カオスは、恋しい娘と添い遂げるために、成敗されたのではなく、自ら神の力を捨てることによって、人間になっていたのです」
俺達は、ある地域に伝わるカオス神の恋物語に耳を傾けた。
う~ん、なんか、どっかで聞いたような話だなあと思っていると、すぐ上の姉のジュリアが言う。
「なんかさ、カオス神って、父上みたいね」
もう竜の俺に乗っての移動も、すっかり慣れて背の上で眠ってしまうくらいへっちゃらだ。
手を繋いだり、腕を組んだりして街を散策しながらご当地名物を食べ歩き、夜は宿で愛を深める。
絶景を二人で眺めては、この広い世界において二人が出会えた喜びに、愛を交わす。
幸せだ~。
幸せいっぱいのいちゃらぶ新婚旅行を満喫していたある日、フローラが体調不良を訴えた。
おろおろ心配する俺に、フローラは多分つわりじゃないかなと言う。
なるほどと安心したものの、やっぱり心配だったので、急いで竜王国へ戻る事に決めた。
だが、それは大きな間違いだった。
『レオン、レオン、私のレオン』
『大好きよ、愛してる』
『もう、あなたなしでは生きられないの』
『レオン、もっと愛して』
『ああ、レオン、お願い、私の手を離さないで』
ああ、今でも耳にこびり付くフローラの甘いあえぎ声と睦言の数々・・・
秘技だってまだ半分も試せていないのに・・・
懐かしの甘い日々よ・・・
竜王国に来てからというもの、俺がベッドに誘えば、
「レオン、ごめんね、お義母様がね、安定期に入るまでは、そういう事は控えなさいって」
竜王国を案内してやろうと言えば、
「お義母様にね、マタニティドレスを買いに行きましょうって誘われてるの。だから、またね」
部屋でいちゃいちゃ過ごしていると、いきなり握っていた俺の手を振り切って、
「ああ、もうこんな時間、お義母様の休憩時間だから、お茶しに行かなくっちゃ」
お義母様、お義母様って、一体何なんだ?!
番いの俺より母上を優先するなんて。
母上にはそりゃあ、絶望的な状況から救い出してもらって、結婚についても随分世話になった。
幼い頃に母親を亡くしているフローラが、誰よりも頼りがいがある母上を慕うのは、分かるけど・・・
二人きりの時は、あんなに俺を信頼して、甘えてくれていたのに・・・
手の平を返したようなこの仕打ち、あんまりだ。
そう言えば、パーティーの時、父上が愚痴を言いたくなったら聞いてやると言っていた。
きっと、このことだったのだ。
なら早速、父上にフローラの番いを蔑ろにするあんまりな仕打ちについて、聞いて貰おう。
「父上、」
「おお、レオン、ちょうど良いところに来た」
おかしい。
俺は、愚痴をこぼしに来たはずなのに、なんで父上の愚痴を聞いているのだろう。
「とにかくルシオが来てからというもの、ローリーは毎日ルシオを研究室に引き入れて、二人きりでごそごそ何やらやっておるのだ。ローリーには浮気疑惑があるゆえな、我が監視するために部屋に入ろうとすると、研究の邪魔だと言って追い出そうとするのだぞ。お邪魔虫の間男はアイツの方なのに! 正真正銘、番いで、夫で、追い出す権利を持っておるのは我の方なのに!!」
・・・・・・
「レオン、ちゃんと聞いておるか? それにな、ローリーは酷いのだ。アイツは紳士で優秀な魔法使いだとか、気が利くイケメンだから魔族の女にも好かれたのだとか、番いの我を前にして、これみよがしにアレを褒めるのだぞ! ローリーの格付けでは、我は残念なイケメンで、アイツは気が利くイケメンなのだ!」
・・・・・・
この拷問は、いつまで続くのかな。
本来の姿のルシオはイケメンだった。ま、フローラの父親だしな。
マティアスの時から、謙虚で優秀で、面倒見が良かった。
元からそういう性質なのだろう。
ただ、基本、番い以外に興味がない竜族の国にフェミニストは珍しい。
あの姉上達でさえ、あっという間に魅了してしまったルシオを、心配性の父上が警戒するのはまぁ、仕方がない話かも知れない。
「そういうわけでな、ローリーのお茶の時間には、我らも参入するぞ」
翌日、父上の作戦通り、俺達はフローラにくっ付いて、母上の休憩時間のお茶会に潜り込んだ。
父上曰わく、人間の番いは妊娠すると、出産の不安から夫よりも出産経験者を頼るようになるらしい。
なるほど。フローラは当然のように母上の隣に陣取った。
そして、父上はというと、母上を抱き上げようとして叱られ、フローラとは反対側の母上の隣でじっとしている。
ように見せかけて、しっかりルシオを牽制していた。
「ねぇ、ルシオ、昨日の神様のお話の続きをして!」
「私も聞きたい!」
ルシオの両側を陣取っている姉上達が、ルシオに強請る。
「ルシオ、私も聞きたいわ」
母上も同調した。
お父様が、大陸各地の言い伝えや伝承を調べていた、民族歴史学者の曾祖父から教えてもらった話らしいのだけど、とってもロマンチックで面白いのよと、フローラが小声で教えてくれる。
「では、とっておきの話をしましょう。一番有名な神様のお話と言えば、創世記です。教会が伝える創世記では、暴れん坊で人間を困らせてばかりいる混沌の神カオスを、大地の慈母神ガイアが成敗して、この世に秩序が生まれたとされておりますけれど、実際は少し違うようです。教会の教えの手前、あまり大ぴらには出来ない話なのですが、実は混沌の神カオスは、恋しい娘と添い遂げるために、成敗されたのではなく、自ら神の力を捨てることによって、人間になっていたのです」
俺達は、ある地域に伝わるカオス神の恋物語に耳を傾けた。
う~ん、なんか、どっかで聞いたような話だなあと思っていると、すぐ上の姉のジュリアが言う。
「なんかさ、カオス神って、父上みたいね」
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