不良だった俺が極道にならず医者になった理由

Arara

文字の大きさ
37 / 47

罪作りな男5

しおりを挟む
 カゾクヲ・・・ヤメル?

 耳がキーンとして、周囲の音は何一つ聞こえないのに、その言葉だけが頭の中に響いている。

 家族の繋がりはやめるとか、やめないとかそういうもんじゃないだろう?
 この世に生まれて、俺はずっとずっと、お前を探していた気がするのに。
 漸く出会えた魂の片割れなのに、なんで、愛美はわからないんだよ! 
  
「大和くんの気持ちは嬉しいけど、私には返せるものがないから、・・・困る」

「何言ってんだよ。家族なんだから、返す必要なんて、」

「だから! 大和くんの、そういうの、困るの」

「なんでだよ!」

 怒りすら湧き上がる。

「大和くん! 愛美さんは嫌だって言ってるの! 愛美さんに嫌われたいの?!」 

 が、その一方で、俺と愛美は他人で家族じゃない、共にいられる保障なんて何もないんだと頭の片隅で叫ぶ自分もいた。

「愛美さん、大和くんは嬉しくて、つい調子に乗っちゃっただけなの。私がちゃんと話すから。だから、許してあげて? やめるなんて、悲しいこと言わないで? ね? るみ、愛美さんをお願い」

「あ、うん。愛美さん、行こ? 谷口も、行くよ!」

「は、はい!」




 俺は混乱していた。

「大和くん、気持ちは分かるけど、さすがに本物は重いよ」

「俺はただ、愛美に似合いそうだと思ったから・・・」

「中学生がするプレゼントじゃないって言ってるの!」

「今日は愛美が家族になってくれた特別な日だからさ、」

「・・・・・・」

 川越は溜め息をついて、再び口を開く。

「わかった。じゃあさ、パトロンでもあるまいし、なんでもかんでも買ってやるって愛美さんにつきまとうのだけはやめてくれる?」

「なんでだ? 俺はパトロンというか愛美の庇護者なんだ。金だって十分あるんだし、」

「お金の問題じゃないの! 愛美さんは、やめて欲しい、迷惑だってハッキリ言ってたでしょう?!」

「愛美は奥ゆかしいんだよ。なぁ、川越、愛美にどう言えば伝わるのかな、俺達の間柄で遠慮は必要ないんだって」

「・・・・・・」

「あ、あのさ、大和、た、たぶんだけど、高岡さんはプレゼントされることに馴れてないんじゃないかな。人間ってさ、馴れてないことをされると、怖いだろ? 怖ければ、当然逃げたくなる。大和は、高岡さんの気持ちを一番に考えてやるべきじゃないかな」


 河合に指摘されて、目が覚めた。

「そうか・・・・・・そうだよな」

 河合の言う通りだ。
 愛美はまだ卵から孵ったばかりの雛なのだ。



 愛美は俺の謝罪をすんなり受け入れ許してくれたし、やめると言った事も撤回してくれたけど、俺はすっかり怖くなってしまった。

 知らぬ間にまた何か失敗を犯して怖がらせるんじゃないか、無神経な人と嫌われて、愛想を尽かされるんじゃないか、とか。

 傍には行きたいのに、愛美の前でどう振る舞えばいいのかわからない。
 嫌われる要素しか思い浮かばない。
 不安ばかり大きくて、自分の行動に自信が持てない。
 この俺が・・・
 こんなこと、生まれて初めてだった。
 


 しかし、愛美を連れ帰る時間となり、いつまでも隠れているわけにはいかず、うっかり失態を演じないよう気を引き締めて愛美のもとへ向かう。
  
「これ、俺達全員から。パンケーキ奢って貰ったお返しだ。今日の記念になればと思ってさ。受け取ってくれ」

 二人で先に帰るため挨拶すると、河合から袋を渡された。
 開けてみろと言うので、袋から取り出す。

「何だ? スマホケース?」

「うん。高岡さん」

「あ、うん」

 河合に促され、愛美が真新しいピンク色のスマホケースに入った自身のスマホを俺に差し出す。

「あっ」

 それは、俺がもらったスマホケースと同じもので、色だけが違っていた。

「双子なら、お揃いじゃないとな! だろ?」

 河合が気が利くだろとばかりにウインクで合図して寄越す。
 愛美を見れば、照れくさそうに笑っていた。

「愛美、いいのか? 本当に、俺が、・・・その、これを持っても」

「うん。さっきはごめんなさい。私ね、自分だって大和くんにいろいろ無理を言って困らせてるのに、大和くんばかり責めたりするのはおかしいって反省したの」

 本来、俺はフィルムだけ貼ってケースは付けない派だけど、愛美とお揃いなら話は別だ。

「ありがとう、愛美。それに、みんなも」

 その場でケースに収め、お揃いの色違いのケースに入れられた俺と愛美のスマホを並べて眺める。
 並んだ二つのスマホは、まるで俺達のようで、なんともほほ笑ましいじゃないか。
 具現化することで、俺と愛美の不確かだった二人の繋がりが、確かなものへと変わった瞬間だった。
 



 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...