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罪作りな男4
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カツアゲ?
谷口の言葉に周りの人間が凍りつく。
「・・・えっと、私、」
「ガッツリ、大和に毒を吐いてたよ」
河崎が呆れたように答え、河合はおろおろして、川越は気まずそうにしている。
あー・・・
カツアゲなんて俺には全く縁のないシロモノだったから、ついうっかりしていた。
確かに、不良だったらやってても不思議じゃないよな。
「す、す、す、す、すみませんすみません! でも、あの、大和くん、私、思ってません! 大和くんは不良だけど、優しくて、そんな、恐喝とか、本当に、思ってないのに! 私は、ただ、不良の人達って、学校の外では何をしてるんだろうとか、出所がはっきりしないお金は少し気持ち悪いなとか、ほんのちょっと思っただけで、本当に、」
「わかってる。わかってるから、谷口、落ち着け」
「あの、私、頭がおかしいんです! だから、あの、本当にごめんなさい。どうかゆるしてください」
「谷口、俺は、怒ってない。だから、落ち着け」
俺は、怯えてパニックを起こしている谷口を落ち着かせるために、ゆっくりと言い聞かせるように言葉をかける。
「・・・はい」
素直な性格の谷口は俺の暗示に簡単にかかった。
「もう、麻耶ちゃんったら」
「あの、・・・本当に、ごめんなさい」
「いいんだ。俺は不良だし、知り合って間もないお前らがそう思うのも無理はない。誤魔化すような言い方をした俺が悪かった」
谷口は哀れな奴だった。
川越は谷口を二重人格のコミュ障と呼んでいるが、それは単にそういう状況に陥っているだけで、谷口の本質を言い表した言葉ではない。
俺は、谷口をある種のマインドリーダーだとふんでいる。
高過ぎる感受性が、周囲にいる人間の胸の内を掬い取るのだ。
毒を吐く代弁者は、オリジナルの人格が耐え切れず作り出してしまった二次的な人格だろう。
「谷口には、いらぬことを言わせてしまったな。すまなかった」
谷口の問題は、全てが無意識下で行われ、本人に自覚がないことにある。
そして、皮肉にも、自身を守るために生まれた代弁者に、窮地に追い込まれている。
とりあえず、こいつらの不安はきっぱり払拭しておこう。
「カツアゲなんてしたことねぇよ」
俺がはっきり否定すると、河合や河崎、そして川越も明らかにホッとした表情を見せた。
さて、どうするか。
金の出所をはっきりさせなければ、奢るどころか、信用を失うことになりかねない事態だ。
適当にでっち上げるか、それとも、投資で儲けたと白状するか。
最近は中学生の投資家も増えてきてるから、案外すんなり受け入れるかも・・・かな?
そこで、ふと思いつく。
「バイトは、・・・知り合いの店のサイト管理者をやってる」
まるっきりの嘘ではない。
正式な管理者は親父だけど、押し付けられて俺が管理している。
「口を濁したのは、大ぴらにしたくなかったからだ。中学生が管理者をしてるなんてバレたら、店の信用にかかわるだろう?」
俺が弁解すると、皆、なるほどと納得してくれる。
助かった。
「じゃ、誤解も解けたことだし、出るか。川越、伝票をくれ」
しかし、嘘ではないからこその突っ込まれたくない事情があったりもする。
早々に話を打ち切り、どさくさにまぎれて上手く誘導したつもりだったのだが。
「だめよ。それとこれとは話が別でしょ。みんな、一人ずつ会計してもらうわよ」
川越は俺の差し出した手を無視して、みんなを引き連れレジへと向かおうとする。
・・・・・・
やってくれるじゃねぇか!
「大和! 相手は女だ!」
俺の只ならぬ気配を感じて、河合が制止の声をあげる。
川越は昔から生真面目で強情な奴だった。
態度が鷹揚になっていたから、随分成長したもんだなと感心していたけど、本質はやはり変わらないようだ。
「ククッ、ああ、その通りだ」
しかし、俺にとっては好都合。
日和見主義な奴に愛美は任せられん。
だがな、川越、今日のところは悪いが譲ってもらうぞ。
止めようとした河合の手をすり抜けて、川越を追いかける。
「川越、ちょっと待ってくれ」
「何? えっ?!」
経験上、俺は自分の容姿が女に好まれるのを知っている。
男は女に、女は男に弱いものだ。
伝票を持つ川越の腕をとって引き寄せた。
「俺は、みんなに世話になってるから、礼がしたいんだよ。特に川越、お前には本当に感謝しているんだ。今後も愛美のことでは面倒をかけると思うし、お前になら安心して愛美を任せられる」
川越のような女には、力を誇示するのではなく真摯に頼って懇願するにかぎる。
「だから、これは俺に任せてくれ」
色仕掛けに固まった川越の手から伝票を抜き取るのは、赤子の手をひねるより簡単だった。
谷口の言葉に周りの人間が凍りつく。
「・・・えっと、私、」
「ガッツリ、大和に毒を吐いてたよ」
河崎が呆れたように答え、河合はおろおろして、川越は気まずそうにしている。
あー・・・
カツアゲなんて俺には全く縁のないシロモノだったから、ついうっかりしていた。
確かに、不良だったらやってても不思議じゃないよな。
「す、す、す、す、すみませんすみません! でも、あの、大和くん、私、思ってません! 大和くんは不良だけど、優しくて、そんな、恐喝とか、本当に、思ってないのに! 私は、ただ、不良の人達って、学校の外では何をしてるんだろうとか、出所がはっきりしないお金は少し気持ち悪いなとか、ほんのちょっと思っただけで、本当に、」
「わかってる。わかってるから、谷口、落ち着け」
「あの、私、頭がおかしいんです! だから、あの、本当にごめんなさい。どうかゆるしてください」
「谷口、俺は、怒ってない。だから、落ち着け」
俺は、怯えてパニックを起こしている谷口を落ち着かせるために、ゆっくりと言い聞かせるように言葉をかける。
「・・・はい」
素直な性格の谷口は俺の暗示に簡単にかかった。
「もう、麻耶ちゃんったら」
「あの、・・・本当に、ごめんなさい」
「いいんだ。俺は不良だし、知り合って間もないお前らがそう思うのも無理はない。誤魔化すような言い方をした俺が悪かった」
谷口は哀れな奴だった。
川越は谷口を二重人格のコミュ障と呼んでいるが、それは単にそういう状況に陥っているだけで、谷口の本質を言い表した言葉ではない。
俺は、谷口をある種のマインドリーダーだとふんでいる。
高過ぎる感受性が、周囲にいる人間の胸の内を掬い取るのだ。
毒を吐く代弁者は、オリジナルの人格が耐え切れず作り出してしまった二次的な人格だろう。
「谷口には、いらぬことを言わせてしまったな。すまなかった」
谷口の問題は、全てが無意識下で行われ、本人に自覚がないことにある。
そして、皮肉にも、自身を守るために生まれた代弁者に、窮地に追い込まれている。
とりあえず、こいつらの不安はきっぱり払拭しておこう。
「カツアゲなんてしたことねぇよ」
俺がはっきり否定すると、河合や河崎、そして川越も明らかにホッとした表情を見せた。
さて、どうするか。
金の出所をはっきりさせなければ、奢るどころか、信用を失うことになりかねない事態だ。
適当にでっち上げるか、それとも、投資で儲けたと白状するか。
最近は中学生の投資家も増えてきてるから、案外すんなり受け入れるかも・・・かな?
そこで、ふと思いつく。
「バイトは、・・・知り合いの店のサイト管理者をやってる」
まるっきりの嘘ではない。
正式な管理者は親父だけど、押し付けられて俺が管理している。
「口を濁したのは、大ぴらにしたくなかったからだ。中学生が管理者をしてるなんてバレたら、店の信用にかかわるだろう?」
俺が弁解すると、皆、なるほどと納得してくれる。
助かった。
「じゃ、誤解も解けたことだし、出るか。川越、伝票をくれ」
しかし、嘘ではないからこその突っ込まれたくない事情があったりもする。
早々に話を打ち切り、どさくさにまぎれて上手く誘導したつもりだったのだが。
「だめよ。それとこれとは話が別でしょ。みんな、一人ずつ会計してもらうわよ」
川越は俺の差し出した手を無視して、みんなを引き連れレジへと向かおうとする。
・・・・・・
やってくれるじゃねぇか!
「大和! 相手は女だ!」
俺の只ならぬ気配を感じて、河合が制止の声をあげる。
川越は昔から生真面目で強情な奴だった。
態度が鷹揚になっていたから、随分成長したもんだなと感心していたけど、本質はやはり変わらないようだ。
「ククッ、ああ、その通りだ」
しかし、俺にとっては好都合。
日和見主義な奴に愛美は任せられん。
だがな、川越、今日のところは悪いが譲ってもらうぞ。
止めようとした河合の手をすり抜けて、川越を追いかける。
「川越、ちょっと待ってくれ」
「何? えっ?!」
経験上、俺は自分の容姿が女に好まれるのを知っている。
男は女に、女は男に弱いものだ。
伝票を持つ川越の腕をとって引き寄せた。
「俺は、みんなに世話になってるから、礼がしたいんだよ。特に川越、お前には本当に感謝しているんだ。今後も愛美のことでは面倒をかけると思うし、お前になら安心して愛美を任せられる」
川越のような女には、力を誇示するのではなく真摯に頼って懇願するにかぎる。
「だから、これは俺に任せてくれ」
色仕掛けに固まった川越の手から伝票を抜き取るのは、赤子の手をひねるより簡単だった。
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