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第7章 新国テンプルム
第336話 守りたい者たち
牙無魔に案内されて久魅那の『時空通穴』から出ると、そこには少し大きめの建物――何かの施設のようなモノがあった。
小さな村にある学校というか、外観から察するに、人が集まるような場所みたいだけど、1階建てなのでそれほど多くは収容できないだろう。
僕を連れてきたかったようだけど、ここはなんだろう?
「おーっす、帰ってきたぜ! みんな元気にしてたか?」
「あっ、牙無魔兄ちゃんだ! みんな、牙無魔兄ちゃんが帰ってきたぞーっ!」
「わーっ!」
牙無魔が大きな声で誰かを呼ぶと、施設の戸が開いて、中から子供たちがたくさん出てきた。
え、じゃあ小学校? ……いや、なんか違うよな。
子供たちの年齢はバラバラで、明らかにまだ未就学児のような幼い子から、中等部くらいの年齢の子もいる。
兄弟にしては人数が多すぎるし、この子たちはどういう関係なんだ?
「牙無魔兄ちゃん、この人たち誰だ!? 黒い髪してないから、兄ちゃんたちの仲間じゃないだろ?」
「ああ、オレたちと一緒に来た異世界人じゃねえが、オレの友達だ。お前たちのためにお土産もくれたんだぜ。お礼をちゃんと言えよ!」
そう言って、牙無魔は僕があげたお土産を子供たちに渡す。
「うおおおおお、なんかスゲー美味しそうな物がいっぱいあるぞ!」
「この布も、肌触りめっちゃきもちいーっ」
「兄ちゃんの友達、ありがとう!」
子供たちは、お土産を奪い合うように手に取って喜んでいる。
こんなに大勢いるんだったらお土産が足りないな。もうちょっと牙無魔に渡しておくか。
しかし、『兄ちゃん』とは呼んでるけど、牙無魔の弟たちじゃないよなあ?
黒髪でもないし。
「ユーリ、ここは孤児院なんだ。みんな親がいないみなしごで、ここで一緒に暮らしているのさ」
「みなしご? 法王国にそんな子供たちがいたなんて……」
「ふむ、ユーリ君、実は法王国に孤児は凄く多いんですぞ。何故かというと、ここなら幸せに育ててくれると思って、赤ん坊を捨てていく人が絶えないのです」
「ええっ、そんなことが……!?」
「そうなんだ、俺っちたちも驚いたけどな。ただ、子供たちは幸せに暮らすどころか、街外れの施設に入れられて貧しい生活をしているんだ。ここ以外にもたくさんあるんだぜ」
「なんで法王国はそんなことを!?」
「そこがお前たちこの世界のヤツらが勘違いしているところだ。法王国にとっちゃ、金にならない子供を捨てられてもいい迷惑なんだよ。かといって、ここは世界一信頼されている国だけに、体面上無下にするわけにもいかず、適当な施設に押し込めてそのまま放置されているって状況だ」
なんてこった……。
信仰があつく、お金では買えない幸福で溢れている国が法王国だと思っていたのに、その実体は、不幸な子供すら救ってあげないなんて……。
「ユーリ様、牙無魔は任務で得た収入を、ほとんどこの施設に寄付しているのです。実は牙無魔は、元の世界でも両親がいない孤独な身で、それでこの施設のことが他人事に思えないみたいです」
「得た収入を寄付? だからお金に困ってるのか……。でも、君たちは異世界からわざわざ喚ばれた救世主なんだから、法王国は金銭的な支援もしっかりしてくれてるんじゃないのかい?」
「全然ですぞ。我々は必要最小限のお金しかもらえず、食料なども全て支給ですぞ」
「なんでそんな……」
「俺っちたちを喚びだしたこの法王国の連中は、異世界人たちが金や自由を得ることを良しとしないらしいぜ。まあ大金を持っちまったら、俺っちたちをコントロールしづらくなるからだろうな」
そうか、異世界人たちが裕福になったりして、現状に満足してしまったら、魔王軍相手に戦ってくれなくなっちゃう可能性を心配してるんだ。
勝手に喚んでおきながら、ちょっと酷い仕打ちだな……。
「わたしたちはここに来て以来、3年間ずっと秘密の存在だったので、収入を得るようなことはできませんでした。自由に動けるようになったのも最近です。法王国にいる一般民も、異世界人のことを知ったのはついこの前なのです」
「倒したモンスターから得た魔石も管理されてるから、自由に換金もできねえんだ。それでも、ちびちびと収入になるようなこともあったんで、それを子供たちにくれてやったのさ。どうせオレたちには使う用途もないしな」
衝撃の事実を聞かされて、僕は声も出なかった。メジェールたちも同じだ。
無理矢理喚ばれた異世界人たちは、完全に被害者じゃないか。なのに、その召喚を行った張本人である法王国が、牙無魔たちを何も支援しないなんて……。
「牙無魔、久魅那、弐琉須さん、礼威次さん、勝手な都合でこの世界に喚んだりしてすみませんでした」
「いや、ユーリが謝るこっちゃねーけどよ」
「いえ、魔王復活の危機で、僕もそれ以外のことが見えていませんでした。まさか法王国が、そんな身勝手な国だったなんて……。この世界のことで巻き込んだりして、本当に申し訳なく思います」
「俺っちたちこそ、お前のこと『魔王ユーリ』って決めつけて襲っちまったし、お互い様だ」
僕は異世界人たちを、よく考えもせずに心強い味方だと決めつけちゃったけど、彼らにしてみればいい迷惑だろう。
いきなり喚ばれて、魔王と戦えなんて言われたのだから。
牙無魔たちの仲間はみんな殺されてしまったし、この世界は本当に彼らに酷いことをしたと思う。
なのに、牙無魔たちは少ない稼ぎを孤児たちに寄付してくれている。
今度は僕が彼らに協力してあげないと。
「牙無魔、差し出がましいけど、僕が持っている食料とお金を君に分けるよ。アイテムボックスごと渡すから、必要に応じて色々配ってあげて」
「おいおい、そこまでしてくれなくても……」
「いや、僕もこの子たちを救ってあげたいんだ。テンプルム国王として口を出すと内政干渉になるから、この子たちのことは牙無魔に任せるよ」
「……そういうことならありがたく貰っておくぜ。なんか色々気を使わせちまったようでわりぃな、こんなつもりでユーリたちを連れてきたわけじゃねえんだ」
「気にしなくていいよ。ただ、孤児たちを支援するときは気を付けて。牙無魔が色々持っていることがバレたら、面倒なことになるかもしれない」
「了解だ。気付かれないように上手く使っていくさ」
この施設も、僕ならもっと過ごしやすい建物に建て直すことも可能だけと、余計なことをすると目を付けられちゃうかもしれないから、このままのほうがいいだろう。
いずれ何かの機会に、僕の国テンプルムで孤児たちを引き取れたらと思う。
「牙無魔君、帰ってきたのね!?」
僕たちが話していると、施設から女性が出てきた。
茶色の髪をうなじで結んでいて、年は僕たちより1~2歳ほど上に見える。
この人もここの孤児なのかな?
「おうサキ、今日帰ってきたところだ。こいつはユーリ、オレでも全然敵わねえほどクソみてーにつえーヤツだ」
「牙無魔君、そんな汚い言葉だと、褒めているようには見えませんよ。初めまして、この施設を管理しているサキと申します」
「初めまして、ユーリです」
管理人さんだったのか……じゃあ、法王国からここを任されている責任者ってことなのかな?
「サキさんはこの孤児院で育った方で、施設に残ってそのまま子供たちの面倒を見ているの。そして、牙無魔の想い人なんです」
久魅那がヒソヒソ声で僕に教えてくれる。
牙無魔の想い人……? 片想いの人ってコトかな?
そうか、牙無魔が言っていた『守りたい人』って、子供たちとこの人のことだったのか。
なるほど、あのぶっきらぼうな牙無魔が、少しぎこちない感じでサキさんに接している。
その牙無魔の様子を見て、眷女のみんなはすぐにピンときたようだ。
勘のいい子たちだなあ。
「牙無魔君てば怖いもの知らずで向かっていくから、毎回心配なの。少しは自分の身体を気遣ってくださいね」
「分かってるって! でもオレたちの仕事は戦うことだからなあ」
こんな大切な人がいるなら、牙無魔に危ないことはさせられないな。
「牙無魔、これからは危険な相手がいたら僕を呼んでくれ。君には『魔導通信機』を渡しておくから」
「お、おう……なんかまたすげーアイテムだな。ま、そう簡単にやられるオレじゃねえから心配すんなって!」
確かに、牙無魔を倒せるヤツなんてそうはいないだろうけど、割とお調子者だし、無鉄砲に見えるからなあ……。
メジェールはああ見えて結構慎重だからね。
牙無魔が自重してくれることを祈ろう。
「牙無魔、お前たち帰ってきていたのか!」
「念のため覗きに来てみれば、またこんな所で油を売ってやがって……!」
僕たちの後ろから突然声をかけてきたのは、数人の騎士たちだった。
***********************************
12/11から、『無限のスキルゲッター』の電子書籍版が販売開始となります。
「番外編 ユーリ大好き」というSSも付いておりますので、是非よろしくお願いいたしますm(_ _)m
ちなみに、SSはとらのあな様の書籍版にも特典で付いております。
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そう言って、牙無魔は僕があげたお土産を子供たちに渡す。
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「この布も、肌触りめっちゃきもちいーっ」
「兄ちゃんの友達、ありがとう!」
子供たちは、お土産を奪い合うように手に取って喜んでいる。
こんなに大勢いるんだったらお土産が足りないな。もうちょっと牙無魔に渡しておくか。
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「全然ですぞ。我々は必要最小限のお金しかもらえず、食料なども全て支給ですぞ」
「なんでそんな……」
「俺っちたちを喚びだしたこの法王国の連中は、異世界人たちが金や自由を得ることを良しとしないらしいぜ。まあ大金を持っちまったら、俺っちたちをコントロールしづらくなるからだろうな」
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無理矢理喚ばれた異世界人たちは、完全に被害者じゃないか。なのに、その召喚を行った張本人である法王国が、牙無魔たちを何も支援しないなんて……。
「牙無魔、久魅那、弐琉須さん、礼威次さん、勝手な都合でこの世界に喚んだりしてすみませんでした」
「いや、ユーリが謝るこっちゃねーけどよ」
「いえ、魔王復活の危機で、僕もそれ以外のことが見えていませんでした。まさか法王国が、そんな身勝手な国だったなんて……。この世界のことで巻き込んだりして、本当に申し訳なく思います」
「俺っちたちこそ、お前のこと『魔王ユーリ』って決めつけて襲っちまったし、お互い様だ」
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牙無魔たちの仲間はみんな殺されてしまったし、この世界は本当に彼らに酷いことをしたと思う。
なのに、牙無魔たちは少ない稼ぎを孤児たちに寄付してくれている。
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「牙無魔君、帰ってきたのね!?」
僕たちが話していると、施設から女性が出てきた。
茶色の髪をうなじで結んでいて、年は僕たちより1~2歳ほど上に見える。
この人もここの孤児なのかな?
「おうサキ、今日帰ってきたところだ。こいつはユーリ、オレでも全然敵わねえほどクソみてーにつえーヤツだ」
「牙無魔君、そんな汚い言葉だと、褒めているようには見えませんよ。初めまして、この施設を管理しているサキと申します」
「初めまして、ユーリです」
管理人さんだったのか……じゃあ、法王国からここを任されている責任者ってことなのかな?
「サキさんはこの孤児院で育った方で、施設に残ってそのまま子供たちの面倒を見ているの。そして、牙無魔の想い人なんです」
久魅那がヒソヒソ声で僕に教えてくれる。
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そうか、牙無魔が言っていた『守りたい人』って、子供たちとこの人のことだったのか。
なるほど、あのぶっきらぼうな牙無魔が、少しぎこちない感じでサキさんに接している。
その牙無魔の様子を見て、眷女のみんなはすぐにピンときたようだ。
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「牙無魔君てば怖いもの知らずで向かっていくから、毎回心配なの。少しは自分の身体を気遣ってくださいね」
「分かってるって! でもオレたちの仕事は戦うことだからなあ」
こんな大切な人がいるなら、牙無魔に危ないことはさせられないな。
「牙無魔、これからは危険な相手がいたら僕を呼んでくれ。君には『魔導通信機』を渡しておくから」
「お、おう……なんかまたすげーアイテムだな。ま、そう簡単にやられるオレじゃねえから心配すんなって!」
確かに、牙無魔を倒せるヤツなんてそうはいないだろうけど、割とお調子者だし、無鉄砲に見えるからなあ……。
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17年間実力を隠してスローライフを謳歌してたが、うっかり王女様を助けてから勝手に成り上がり人生が始まった
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※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中