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第7章 新国テンプルム
第370話 至高の召喚士
「魔王ユーリよ、八つ裂きになるがいい、『斬鉄刃嵐舞』!」
帝国からの使者――『至高の召喚士』ラスティマが、精霊を召喚する。
これは……風の精霊『盾斬りイイズナ』か!
長い尻尾が特徴的な1mほどの可愛い動物の姿をしているが、その鋭い風刃は金属すら切断する能力を持ち、相手を盾ごと斬り刻むという強力な精霊だ。
通常は1体しか召喚できないはずだが、ラスティマは10体も喚び出している。凄い制御力だ。
なるほど、コレで僕のゴーレムを真っ二つにしたのか。
それにしても、僕のゴーレムだって弱くない。そう簡単には斬られないはずだけど、この『盾斬りイイズナ』は力が漲っている。
恐らく、通常の数倍の強さはあるだろう。
精霊の召喚は、術者の能力によって喚び出される精霊の力も変わる。弱い者が喚び出しても、精霊の力は上手く発揮できない。
だがこの『盾斬りイイズナ』は、見たことないほどの精霊力を秘めている。
『至高の召喚士』とも呼ばれているラスティマは、それほど能力が高いということか。
しかし、『盾斬りイイズナ』程度は、残念ながら僕には通じない。
10体もの精霊が目にもとまらぬ速さで乱舞するが、僕は棒立ちのまま、その攻撃を全て受けまくった。
「な……なんだと!? ワタシの斬鉄刃を受けて無傷だというのですか!?」
「『至高の召喚士』ともあろう人が、こんな可愛い精霊をけしかけて、僕をどうしたいんだ?」
「クッ、あなたを少しナメ過ぎてしまったようですね……では、本気でやらせていただきましょう!」
ラスティマはまた次の詠唱を始める。
召喚魔法は、通常の魔法よりも強力なモノが多い。精霊の力は、人間を遙かに凌駕しているからだ。
「出でよ、『蒼白に輝く大火竜』! この男を焼き殺し、この国全てを焦土と化すのです!」
ラスティマが喚び出したのは、火の精霊『火蜥蜴』の最上位種で、青白い炎を纏った15mほどの火竜だった。
外見はドラゴンに酷似しているけど、竜族ではなくて火の精霊なので、大きさはドラゴンよりも小さい。
しかしその力は、体長5mの下級『火蜥蜴』ですら、ノーマルドラゴンのブレスに匹敵するほどの火力がある。
その上位種の『灰燼の火竜』は10mほどの大きさで、場合によっては1つの町を壊滅させるほどの破壊力だ。
そしてこの『蒼白に輝く大火竜』は、邪黒竜にも匹敵するほど危険な存在で、まず喚び出せる人なんていない。
仮に召喚できたとしても、力を上手く発揮させるのは難しく、そして長時間の制御も無理だ。
すぐにコントロール不能となって帰還してしまうだろう。
しかし、この『蒼白に輝く大火竜』は、文句なしの力を発揮できているようだ。
その身体から発する超高熱の炎で、頑丈に作った『王の間』の壁が熔け出している。
制御も非常に安定しているし、確かにこのテンプルム国を焼き尽くすほど、長時間召喚し続けることも可能かもしれない。
「さあ行くのです『蒼白に輝く大火竜』!」
ラスティマがけしかけると、青白い火竜は僕のもとにまっすぐ突っ込んできた。
触れたモノ全てを瞬時に蒸発させるその突進を、僕は左手1本で止める。
もちろん、この程度の火力では、僕の身体には傷1つ付きはしない。
「こ……れは…………な、なぜあなたは消滅しないのです!? これ1体で、この国全てを焼き払えるほどなのに……!」
「この程度で? この王城の壁を溶かすくらいがせいぜいじゃないの?」
僕が手で押さえていると、『蒼白に輝く大火竜』は大人しくなり、そのまま精霊界へと還っていった。
まあ確かに凄いけど、僕はサクヤが喚び出した精霊の王『闇の炎王』と戦っているからね。
火竜を倒すのも簡単だけど、精霊を攻撃するのは可哀想だから、素直に攻撃を喰らってあげたよ。
それにしても、凄い召喚力だ。いくら『至高の召喚士』といっても、明らかにおかしい。
それに、『石化視線』をラスティマに使ってみたけど、まるで効果がない。
僕の強力な石化攻撃をモノともしないとは……やはり『亜天使』というのが謎のカギとなりそうだ。
「そ、そうか……なるほど、『魔王ユーリ』と呼ばれるだけはある。ここまでの存在とは、ワタシも思っていませんでしたよ。ならば、このワタシの最大の召喚術でお前を屠ろうではないか! 四神に申し上げる! 色成す物、音成す物、匂い成す物、痛み成す物……」
あ、この詠唱って……コイツ、こんな魔法まで使えるのか!
「黄泉の果て、常世の地より四死を招き、円環の理の外の外、死せる王のもとに、その昏き肉と冥き魂を捧げる……死界召喚『四死神酷虐葬送』っ!」
凄いな、『精霊召喚』で『界域魔法』を再現するとは……!
『魔術言語』を補足詠唱して、強引に『地獄の門』を開いたんだ!
こんなことは普通は無理だけど、これも『亜天使』という謎の力が関係しているのかもしれない。
しかし、まさかこれほど強力な魔法が使えるなんて驚きだ。
召喚が成功し、僕の周りの四方から4体の死神王が浮上してくる。
「ふはははっ、生ける者全てを地獄へと導く死の王だ! さすがの貴様でも、彼らには敵うまい!」
10mにもなる巨大な死神王たちは、地上に顕現してじっと僕を見つめたあと、静かにまた地の底へと還っていった。
死神王たちも、僕には敵わないことを感じたんだろう。
彼らは無駄なことなどしない。
「そ……んなバカな……地獄の王だぞ、人間では勝てるはずなどないのに……」
「何を言ってるんだ。僕は『魔界の王』だぞ。地獄の王などに負けはしない」
誤解が解けてからは『魔王』ということを否定してきた僕だけど、帝国相手には、『魔王』と思わせたほうが得策かもしれない。
そのほうが、『魔王』という存在に対して危機感を持ってくれるかもしれないからだ。ラスティマの発言を聞く限りでは、帝国は魔王軍をナメきっているからね。
僕のことで帝国が警戒心を強めてくれるなら、『魔王』のフリをする意味がある。
帝国以外の各国は僕のことを信頼してくれているから、もう誤解は起こらないだろうし。
「ほ……本物の『魔王』だというのですか!? 『魔王』が、国を作ったと?」
「その通りだ。証拠を見せてやろう……『炎駒』よ、来い!」
僕は神獣界から『炎駒』を喚び出した。
かなり大きいだけに、この『王の間』の天井まで『炎駒』の頭が届いちゃっているけどね。狭くてゴメン。
ちなみに、『赤き天馬』のときのように常時燃えているわけじゃないので、そばに居ても別段熱くはない。
「ごぉっ、おおおおおおっ!? こ……これは精霊なのか!? こんな怪物など見たことないぞっ」
「魔獣王『炎駒』の伝説を知らないのか? 『炎駒』は僕の部下だ」
「『炎駒』だとっ!? そ、そんなの神話の存在ではないか!? それが魔王の配下だと!?」
「そういうことだ。ほかにも超巨大竜『熾光魔竜』もいる。僕が本気になれば、帝国を滅ぼすことなんて造作もない。それを皇帝に伝えろ。侵略など考えずに、自国を守ることだけ考えるんだ!」
こう言えば、帝国も馬鹿な考えを改めるんじゃないか?
「はあはあ、魔王軍がすでに国を作っていたなんて……。しかし、確かに『炎駒』は脅威ですが、それだけでは我が帝国には勝てませんよ。『帝国神命十二騎士』の力を侮られては困ります」
『帝国神命十二騎士』……皇帝直下の最強親衛隊か! それが、この『炎駒』や『熾光魔竜』よりも強くなっていると?
それも『亜天使』の力だというのか?
『亜天使』とは、いったいなんなんだ!?
「……そっちこそ、『魔王』を侮っているんじゃないのか? 僕の力をもう少し思い知ってもらおう!」
僕はラスティマの全スキルを強奪する。
『精霊召喚』も当然奪ったが、しかし、『亜天使』の能力は奪えなかった。
スキルとは違う力ということか……。
「今お前の全てのスキルを強奪した。お前はもう『至高の召喚士』ではない」
「強奪……? ああっ、無いっ! ワタシの『精霊召喚』が、スキルが全て無くなっている!? こ、こんな力まであるというのか!?」
「分かったか? これでもまだ足らないというなら、お前の命を……」
「ま、ま、待て、待ってくれ、ワ、ワタシに手を出すな、ひひひ人質がどうなってもいいのか!?」
「人質……? なんのことだ!?」
「ワタシはこの国に1人で来たわけじゃない、帝国軍総軍団長パグローム様と一緒に来たのだ! パグローム様は交渉などわずらわしいことが苦手なので、別行動をされている」
パグロームだって!? 『灰色の殺戮王』の異名を持つ、帝国軍の司令官じゃないか!
帝国軍の最高司令官はドラコス将軍だけど、実質的に軍を指揮しているのはパグロームだという。
そして、戦いでは殺戮の限りを尽くす、どう猛な戦闘狂だ。
そんなヤツまでここに来ていたのか!?
「そいつはどこに居るんだ!? 言わないと、こちらにも考えがあるぞ」
「さ、さぁて、到着してからすぐに別れましたので、今はどこへいるのやら?」
くっ……こいつ! 交渉の材料にするつもりか!?
急がないとまずい、やりたくないが自白を強要させるしかない!
「ヒロ様、ひょっとして久魅那さんが向かった場所ではないでしょうか!」
久魅那……そうだ、トラブルが起こったと言ってたっけ!
「アニスさん、それはどこですか!?」
「ヒロ様がゼルドナからお呼びした女性が、農業を営んでいる場所です」
あの郊外の農地か! パグロームはあそこになんの用が……ああっ、あそこには、奴隷商人スクラヴォスから救い出した女性たちも居たんだった!
彼女たちを奪い返しにきたってことか? それを人質に使うと?
ラスティマに確認したいけど、簡単には口を割らないだろうな。行って確かめたほうが早い!
「アニスさん、僕は今から行ってくるので、メジェールたちへの連絡をお願いします! あ、コイツも連れていきますね」
ラスティマをここに残しておくとまた何をするか分からないので、一緒に連れていくことにする。
もし現地で何もなかったら、また改めてコイツに尋問すればいい。
「では行ってきます!」
僕はアニスさんとディオーネさんに王城を任せて、女性たちの居る郊外の地へ『空間転移』した。
◇◇◇
「みんなっ、だいじょう……こ、これはっ!?」
転移してみると、大きな男――恐らくパグロームであろう男が1人、その場に立っていた。
来るのが一足遅かったらしく、すでに戦闘は終わっていて、久魅那に渡したゴーレムたちの残骸があちこちに散らばっている状態だ。
特殊任務隊長である久魅那の護衛ゴーレムはアダマンタイト製で、そのうえほかのゴーレムよりも遙かに高性能に作ってある。
それを5体……このパグロームは簡単に破壊したというのか!?
そして、その残骸の中に混じって倒れている者がいる。
うつぶせのまま動かない久魅那と、全身バラバラにされたゼルマだった。
帝国からの使者――『至高の召喚士』ラスティマが、精霊を召喚する。
これは……風の精霊『盾斬りイイズナ』か!
長い尻尾が特徴的な1mほどの可愛い動物の姿をしているが、その鋭い風刃は金属すら切断する能力を持ち、相手を盾ごと斬り刻むという強力な精霊だ。
通常は1体しか召喚できないはずだが、ラスティマは10体も喚び出している。凄い制御力だ。
なるほど、コレで僕のゴーレムを真っ二つにしたのか。
それにしても、僕のゴーレムだって弱くない。そう簡単には斬られないはずだけど、この『盾斬りイイズナ』は力が漲っている。
恐らく、通常の数倍の強さはあるだろう。
精霊の召喚は、術者の能力によって喚び出される精霊の力も変わる。弱い者が喚び出しても、精霊の力は上手く発揮できない。
だがこの『盾斬りイイズナ』は、見たことないほどの精霊力を秘めている。
『至高の召喚士』とも呼ばれているラスティマは、それほど能力が高いということか。
しかし、『盾斬りイイズナ』程度は、残念ながら僕には通じない。
10体もの精霊が目にもとまらぬ速さで乱舞するが、僕は棒立ちのまま、その攻撃を全て受けまくった。
「な……なんだと!? ワタシの斬鉄刃を受けて無傷だというのですか!?」
「『至高の召喚士』ともあろう人が、こんな可愛い精霊をけしかけて、僕をどうしたいんだ?」
「クッ、あなたを少しナメ過ぎてしまったようですね……では、本気でやらせていただきましょう!」
ラスティマはまた次の詠唱を始める。
召喚魔法は、通常の魔法よりも強力なモノが多い。精霊の力は、人間を遙かに凌駕しているからだ。
「出でよ、『蒼白に輝く大火竜』! この男を焼き殺し、この国全てを焦土と化すのです!」
ラスティマが喚び出したのは、火の精霊『火蜥蜴』の最上位種で、青白い炎を纏った15mほどの火竜だった。
外見はドラゴンに酷似しているけど、竜族ではなくて火の精霊なので、大きさはドラゴンよりも小さい。
しかしその力は、体長5mの下級『火蜥蜴』ですら、ノーマルドラゴンのブレスに匹敵するほどの火力がある。
その上位種の『灰燼の火竜』は10mほどの大きさで、場合によっては1つの町を壊滅させるほどの破壊力だ。
そしてこの『蒼白に輝く大火竜』は、邪黒竜にも匹敵するほど危険な存在で、まず喚び出せる人なんていない。
仮に召喚できたとしても、力を上手く発揮させるのは難しく、そして長時間の制御も無理だ。
すぐにコントロール不能となって帰還してしまうだろう。
しかし、この『蒼白に輝く大火竜』は、文句なしの力を発揮できているようだ。
その身体から発する超高熱の炎で、頑丈に作った『王の間』の壁が熔け出している。
制御も非常に安定しているし、確かにこのテンプルム国を焼き尽くすほど、長時間召喚し続けることも可能かもしれない。
「さあ行くのです『蒼白に輝く大火竜』!」
ラスティマがけしかけると、青白い火竜は僕のもとにまっすぐ突っ込んできた。
触れたモノ全てを瞬時に蒸発させるその突進を、僕は左手1本で止める。
もちろん、この程度の火力では、僕の身体には傷1つ付きはしない。
「こ……れは…………な、なぜあなたは消滅しないのです!? これ1体で、この国全てを焼き払えるほどなのに……!」
「この程度で? この王城の壁を溶かすくらいがせいぜいじゃないの?」
僕が手で押さえていると、『蒼白に輝く大火竜』は大人しくなり、そのまま精霊界へと還っていった。
まあ確かに凄いけど、僕はサクヤが喚び出した精霊の王『闇の炎王』と戦っているからね。
火竜を倒すのも簡単だけど、精霊を攻撃するのは可哀想だから、素直に攻撃を喰らってあげたよ。
それにしても、凄い召喚力だ。いくら『至高の召喚士』といっても、明らかにおかしい。
それに、『石化視線』をラスティマに使ってみたけど、まるで効果がない。
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「そ、そうか……なるほど、『魔王ユーリ』と呼ばれるだけはある。ここまでの存在とは、ワタシも思っていませんでしたよ。ならば、このワタシの最大の召喚術でお前を屠ろうではないか! 四神に申し上げる! 色成す物、音成す物、匂い成す物、痛み成す物……」
あ、この詠唱って……コイツ、こんな魔法まで使えるのか!
「黄泉の果て、常世の地より四死を招き、円環の理の外の外、死せる王のもとに、その昏き肉と冥き魂を捧げる……死界召喚『四死神酷虐葬送』っ!」
凄いな、『精霊召喚』で『界域魔法』を再現するとは……!
『魔術言語』を補足詠唱して、強引に『地獄の門』を開いたんだ!
こんなことは普通は無理だけど、これも『亜天使』という謎の力が関係しているのかもしれない。
しかし、まさかこれほど強力な魔法が使えるなんて驚きだ。
召喚が成功し、僕の周りの四方から4体の死神王が浮上してくる。
「ふはははっ、生ける者全てを地獄へと導く死の王だ! さすがの貴様でも、彼らには敵うまい!」
10mにもなる巨大な死神王たちは、地上に顕現してじっと僕を見つめたあと、静かにまた地の底へと還っていった。
死神王たちも、僕には敵わないことを感じたんだろう。
彼らは無駄なことなどしない。
「そ……んなバカな……地獄の王だぞ、人間では勝てるはずなどないのに……」
「何を言ってるんだ。僕は『魔界の王』だぞ。地獄の王などに負けはしない」
誤解が解けてからは『魔王』ということを否定してきた僕だけど、帝国相手には、『魔王』と思わせたほうが得策かもしれない。
そのほうが、『魔王』という存在に対して危機感を持ってくれるかもしれないからだ。ラスティマの発言を聞く限りでは、帝国は魔王軍をナメきっているからね。
僕のことで帝国が警戒心を強めてくれるなら、『魔王』のフリをする意味がある。
帝国以外の各国は僕のことを信頼してくれているから、もう誤解は起こらないだろうし。
「ほ……本物の『魔王』だというのですか!? 『魔王』が、国を作ったと?」
「その通りだ。証拠を見せてやろう……『炎駒』よ、来い!」
僕は神獣界から『炎駒』を喚び出した。
かなり大きいだけに、この『王の間』の天井まで『炎駒』の頭が届いちゃっているけどね。狭くてゴメン。
ちなみに、『赤き天馬』のときのように常時燃えているわけじゃないので、そばに居ても別段熱くはない。
「ごぉっ、おおおおおおっ!? こ……これは精霊なのか!? こんな怪物など見たことないぞっ」
「魔獣王『炎駒』の伝説を知らないのか? 『炎駒』は僕の部下だ」
「『炎駒』だとっ!? そ、そんなの神話の存在ではないか!? それが魔王の配下だと!?」
「そういうことだ。ほかにも超巨大竜『熾光魔竜』もいる。僕が本気になれば、帝国を滅ぼすことなんて造作もない。それを皇帝に伝えろ。侵略など考えずに、自国を守ることだけ考えるんだ!」
こう言えば、帝国も馬鹿な考えを改めるんじゃないか?
「はあはあ、魔王軍がすでに国を作っていたなんて……。しかし、確かに『炎駒』は脅威ですが、それだけでは我が帝国には勝てませんよ。『帝国神命十二騎士』の力を侮られては困ります」
『帝国神命十二騎士』……皇帝直下の最強親衛隊か! それが、この『炎駒』や『熾光魔竜』よりも強くなっていると?
それも『亜天使』の力だというのか?
『亜天使』とは、いったいなんなんだ!?
「……そっちこそ、『魔王』を侮っているんじゃないのか? 僕の力をもう少し思い知ってもらおう!」
僕はラスティマの全スキルを強奪する。
『精霊召喚』も当然奪ったが、しかし、『亜天使』の能力は奪えなかった。
スキルとは違う力ということか……。
「今お前の全てのスキルを強奪した。お前はもう『至高の召喚士』ではない」
「強奪……? ああっ、無いっ! ワタシの『精霊召喚』が、スキルが全て無くなっている!? こ、こんな力まであるというのか!?」
「分かったか? これでもまだ足らないというなら、お前の命を……」
「ま、ま、待て、待ってくれ、ワ、ワタシに手を出すな、ひひひ人質がどうなってもいいのか!?」
「人質……? なんのことだ!?」
「ワタシはこの国に1人で来たわけじゃない、帝国軍総軍団長パグローム様と一緒に来たのだ! パグローム様は交渉などわずらわしいことが苦手なので、別行動をされている」
パグロームだって!? 『灰色の殺戮王』の異名を持つ、帝国軍の司令官じゃないか!
帝国軍の最高司令官はドラコス将軍だけど、実質的に軍を指揮しているのはパグロームだという。
そして、戦いでは殺戮の限りを尽くす、どう猛な戦闘狂だ。
そんなヤツまでここに来ていたのか!?
「そいつはどこに居るんだ!? 言わないと、こちらにも考えがあるぞ」
「さ、さぁて、到着してからすぐに別れましたので、今はどこへいるのやら?」
くっ……こいつ! 交渉の材料にするつもりか!?
急がないとまずい、やりたくないが自白を強要させるしかない!
「ヒロ様、ひょっとして久魅那さんが向かった場所ではないでしょうか!」
久魅那……そうだ、トラブルが起こったと言ってたっけ!
「アニスさん、それはどこですか!?」
「ヒロ様がゼルドナからお呼びした女性が、農業を営んでいる場所です」
あの郊外の農地か! パグロームはあそこになんの用が……ああっ、あそこには、奴隷商人スクラヴォスから救い出した女性たちも居たんだった!
彼女たちを奪い返しにきたってことか? それを人質に使うと?
ラスティマに確認したいけど、簡単には口を割らないだろうな。行って確かめたほうが早い!
「アニスさん、僕は今から行ってくるので、メジェールたちへの連絡をお願いします! あ、コイツも連れていきますね」
ラスティマをここに残しておくとまた何をするか分からないので、一緒に連れていくことにする。
もし現地で何もなかったら、また改めてコイツに尋問すればいい。
「では行ってきます!」
僕はアニスさんとディオーネさんに王城を任せて、女性たちの居る郊外の地へ『空間転移』した。
◇◇◇
「みんなっ、だいじょう……こ、これはっ!?」
転移してみると、大きな男――恐らくパグロームであろう男が1人、その場に立っていた。
来るのが一足遅かったらしく、すでに戦闘は終わっていて、久魅那に渡したゴーレムたちの残骸があちこちに散らばっている状態だ。
特殊任務隊長である久魅那の護衛ゴーレムはアダマンタイト製で、そのうえほかのゴーレムよりも遙かに高性能に作ってある。
それを5体……このパグロームは簡単に破壊したというのか!?
そして、その残骸の中に混じって倒れている者がいる。
うつぶせのまま動かない久魅那と、全身バラバラにされたゼルマだった。
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