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第8章 英雄の育成
第392話 ごめんなさい
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「では、今日から訓練開始しようか。ほかのみんなに追い付けるよう頑張ろう」
「「「はい!」」」
サイファ、ランゼ、クリスティの3人が元気よく返事をする。
いま僕たちは、ファーブラ王都から少し離れた森に来ている。
多少強いモンスターと戦いたかったので、馬車を借りて遠出したのだ。
御者はもちろん僕が務めた。
戦闘訓練ということで、今日はサイファたちも戦いに適した格好をしている。
結局メンターパートナーというのを続けることになってしまったが、メジェールたちは僕が関わった時点でこうなることも予想済みだったらしい。
試験会場での成り行きを話すまでもなく、「アンタのことだからどうせ師匠を続けてあげるんでしょ?」と言われてしまった。
「困ってる人を見捨てるなんてアンタらしくないからね。アタシたちのことはいいから、少年を助けてあげなさい」
とまあこんな感じだった。
普段は厳しいことを言ってくるけど、本当はやさしい子たちだからね。
ただ、みんなはサイファたちのことを『少年』と勘違いしたままだ。
真実を教えようか迷ったけど、余計な心配をかけそうなので訂正しないでおくことにした。
せっかくファーブラに来ているんだから、僕のことを気にせず楽しんでほしいし。
まあサイファたちなら、メジェールたちが心配するようなことにもならないだろう。
とりあえず、今日から1週間、学院は休みとなるらしい。
その間に、各自パートナーと自主訓練をして、お互いの絆を深めるように指示されている。
願ってもないことなので、サイファたちをしっかり鍛え上げたいところだ。
ちなみに、エンギさんはあのあとすぐにファーブラを去ってしまったので会えなかったけど、冒険者ギルド本部から情報を少し聞くことができた。
一応僕は『ナンバー0』だからね。
ただ、聞いた限りでは、学院の悪い噂などはないようだった。
学院の卒業生はすでに冒険者として活動してるけど、非常に優秀で、ギルドとしても期待しているらしい。
よって、生徒の育成についてギルドも全面協力するということで、エンギさんもその関係で来たとのこと。
となると、ますますあの学院長の目的がよく分からない。なんでこんなシステムを採用してまで、優秀な生徒を作り上げてるんだ?
単純にお金目的なら、そう心配することもないかもしれないけど……うーんやっぱり気にかかる。
とにかく、しばらく様子を見てみるしかないな。
あとは僕の正体についてだけど、恐らくバレないと思う。
僕はまだ王としては日が浅いし、テンプルム国王の顔をちゃんと知ってる人はそうはいないだろう。
基本的には、他国の王様の顔なんて知らない人が多い。僕自身、シャルフ王の顔も知らなかったし。
仮に僕の顔を知ってても、冒険者の格好をしてたら、他人の空似くらいにしか思われないはず。
試験のときも誰も気付かなかったみたいだし、まあ大丈夫だろう。
ということで、戦闘訓練開始だ。
「ヒロ、師匠になってくれたのは嬉しいが、いきなりこんな森に来て大丈夫か? アタシたちあまり強くないぜ?」
「そうよ、ここって結構危険な場所よ? もしもがあったら怖いんだけど……」
森に漂う異様な気配に、ランゼとクリスティが不安がっている。
なら、まずは訓練の前に安心させなくちゃな。
僕のことをしっかり信頼してもらえないと、このあと何を教えても身が入らないだろうし。
「大丈夫だよ、僕のことを信頼してほしい。あ、ちょうどいいモンスターが来たよ」
僕が話してると、いいタイミングでモンスターが現れた。
超巨大蜘蛛――マウンテンスパイダーだ。
身体本体の大きさは10mほど、脚を広げると20m以上にもなるが、討伐ランクとしてはSSランク程度の強さである。
「ぎょおおおおえええええええっ、か、怪物だああああっ!」
「ヒ、ヒ、ヒロさん、大変ですよ、ボクたち食べられちゃいますっ」
「こ、こんな、にげ、にげ……」
「ああ、コイツは身体はデカイけど、大したことないよ」
「そんなわけないだろっ、お前バカかっ!?」
「ヒロくんなんて信用するんじゃなかった! ああ、私ここで死ぬのね……」
「ヒ、ヒロさん、ボクもうだめ……」
マウンテンスパイダーを見て、ランゼたちが大パニックになっている。
確かに毒牙や粘着糸なんかは危険だけど、動きはそれほど速くないからね。
見た目こそデカイけど、力もそれほど強いタイプじゃない。
SSランクチームならなんとか倒せる相手だ。
巨大な割には体重も軽いので、ドスドスというよりかはモサモサとした感じでこちらに近づいてくる。
それを見てランゼたちは腰を抜かしちゃったようで、一歩も動けずに尻餅をついてしまった。
「あわわわ、もう終わりだ、みんなさよなら……」
3人は両手を組んで祈りを捧げる。
普段は勝ち気な子たちだけど、信仰深いファーブラ民らしい行為だな。
さて、充分近づいてきたし、倒すとするか。
「えいっ」
ド ゴ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ン……!
僕のパンチで、マウンテンスパイダーは遥か彼方へと飛んでいった。
「…………………………え?」
ランゼたち3人は、遠方へ小さく霞んでいくマウンテンスパイダーを呆然と見つめている。
まだイマイチ状況が分かっていないようだ。
「ね、大したことないでしょ?」
「ヒ……ヒロがやったんだよな?」
「そうだよ」
「まって、ヒロくんって、こんなに強かったの……?」
「安心したかい?」
「な、なんで試験のとき、この力を見せなかったんだよーっ」
「そうよ、英雄級の強さじゃないの!」
いや、そこそこ見せたつもりだったんだけど、何故か測定数値が悪かったんだよね……。
おっと、忘れないうちにこれをやっておかないと。
「みんな、今ので経験値が入ったはずだ。それでまずはベースレベルを上げておこう。基礎能力値が低いと、色々と危険だからね」
「あ、ホントだわ! 凄いたくさん経験値が入ってる!」
「こんなの見たことないです!」
「すげーっ、レベル8だったのが19にまで上がったぜ! これならあっという間にクラスの奴らに追い付けるぞ!」
4人で分けあったから、まあこんなもんだろうな。
それなりに強いモンスターがいる場所に来たけど、とりあえず経験値取得については秘策があるので、ここで頑張ろうとは考えてない。
ここに来たのは、パワーレベリングとは少し違う別の目的だ。
「ヒロさん凄いです! 最高の師匠です!」
「そうね、『ナンバーズ』と知り合いなのも伊達じゃなかったのね!」
「ああ、デミトフたちのパートナーなんか目じゃないぜ! ヒロ、改めてよろしく頼む!」
3人とも、どうやら僕のことを心から信頼してくれたようだ。
これなら訓練も上手くいくだろう。
「さて、僕の力を分かってもらえたということで、早速訓練開始といきたいところだけど、その前に昼食を食べようか」
「オッケーだぜ。腹ペコじゃ力が出ないしな」
まだ少しお昼には早いけど、早朝から馬車で移動してきたし、まず腹ごしらえをしておきたいところだ。
僕の言葉を聞いて、サイファたち3人は荷物袋からお弁当を取り出す。
えっ、それが昼食……?
「どうしたのヒロくん?」
「いや、それを食べるのかなと……」
3人のお弁当は、見るからに古くなったカチコチのパンに、しなびた野菜をざっくりと挟んだサンドイッチだった。
どう見ても少女らしからぬ昼食だ。
「ああ、アタシたちは貧乏だから、ロクな食材が買えないんだ。これも、お店で捨てるヤツを安く売ってもらったんだ」
そういや、お金がないから僕への報酬も払えないって言ってたっけ。
育ち盛りの少女がこんな物しか食べられないなんて……。
牙無魔たちに連れていってもらった孤児院も、凄い貧乏だったよな。
どこも同じということか。
「みんな、もっといい物を食べないと強くなれないぞ。僕の昼食を分けてあげるから一緒に食べよう」
そう言って、アイテムボックスから栄養のある食べ物をごっそりと取り出す。
「うわあ~すごい! こんなご馳走見たことないわ!」
「ヒロさん、いいんですかボクたちがこれを食べても?」
「もちろん。しっかり訓練するためにしっかり食べるんだ。あ、でも、食べ過ぎちゃだめだよ。動けなくなるからね」
「了解だ! うっひゃあ~どれから食べよう?」
とランゼが目を輝かしたところで、ふと料理を取ろうとした手が止まる。
「どうしたランゼ? 遠慮せず食べていいんだよ?」
「いや、孤児院のみんなもお腹減らしてるから、アタシたちだけ食べるのがみんなに悪くって……」
なるほど、仲間思いのやさしい子だな。
「大丈夫、ほかの子の分もたくさんあげるから、お土産に持って帰るといい。だから安心して食べていいよ」
「ホントか!?」
ランゼたちは飛び上がって喜ぶ。
貧しい生活をしてるみたいだから、食べ物だけじゃなく、いろいろ必要な物も渡すことにするか。
「ヒロさん、ボクたち何もお礼できないのに、どうしてそんなにやさしくしていただけるんですか?」
「先輩冒険者として、後輩の面倒を見るのは当然だよ。それに、あの嫌な学院長の鼻をあかしてやりたいからね。ご飯の分、3人には頑張ってもらうよ、いいね?」
3人は同時に頷いた。
「ヒロくん、昨日は頼りないとか酷いこと言ってごめんなさい。世界で一番頼りになるわ」
「アタシも……ごめんなヒロ、こんなに凄いヤツだなんて思わなかった」
「ボクも、ヒロさんを選んで本当によかったです。フラウさんが言ってたように、このお礼は身体でなんとかお支払いします!」
「アタシも身体で払うぜ!」
「私もそうするわ!」
き……君たち、意味も知らずにそういうこと言っちゃだめだよ?
あとでやんわりと意味を教えておかないと、のちのち大変なことになりそうだ。
ところで、3人が持ってるお弁当袋や荷物袋がやたら可愛い出来だな。
食べ物を買うお金がないにしてはいい品だ。
どこで手に入れたんだろ?
「君たちが持ってるその袋、買った物じゃなさそうだけど、誰かからもらったのかい」
ちょっと気になったので聞いてみた。
「あ、コレってランゼちゃんが作ってくれたんです」
「ランゼは小物作りとか凄く上手なのよ」
「へへっ、意外だろ?」
ランゼが鼻を擦って得意気な顔をする。
そういえばランゼのスキルって、『手工芸』ってヤツだっけ。
なるほど、手先は器用なんだな。何か戦闘に役立てないかな。
まあ何はともあれ、まずは基本的なことからやっていくことにしよう。
昼食を食べ終えて少し休憩したあと、いよいよ訓練開始となった。
「「「はい!」」」
サイファ、ランゼ、クリスティの3人が元気よく返事をする。
いま僕たちは、ファーブラ王都から少し離れた森に来ている。
多少強いモンスターと戦いたかったので、馬車を借りて遠出したのだ。
御者はもちろん僕が務めた。
戦闘訓練ということで、今日はサイファたちも戦いに適した格好をしている。
結局メンターパートナーというのを続けることになってしまったが、メジェールたちは僕が関わった時点でこうなることも予想済みだったらしい。
試験会場での成り行きを話すまでもなく、「アンタのことだからどうせ師匠を続けてあげるんでしょ?」と言われてしまった。
「困ってる人を見捨てるなんてアンタらしくないからね。アタシたちのことはいいから、少年を助けてあげなさい」
とまあこんな感じだった。
普段は厳しいことを言ってくるけど、本当はやさしい子たちだからね。
ただ、みんなはサイファたちのことを『少年』と勘違いしたままだ。
真実を教えようか迷ったけど、余計な心配をかけそうなので訂正しないでおくことにした。
せっかくファーブラに来ているんだから、僕のことを気にせず楽しんでほしいし。
まあサイファたちなら、メジェールたちが心配するようなことにもならないだろう。
とりあえず、今日から1週間、学院は休みとなるらしい。
その間に、各自パートナーと自主訓練をして、お互いの絆を深めるように指示されている。
願ってもないことなので、サイファたちをしっかり鍛え上げたいところだ。
ちなみに、エンギさんはあのあとすぐにファーブラを去ってしまったので会えなかったけど、冒険者ギルド本部から情報を少し聞くことができた。
一応僕は『ナンバー0』だからね。
ただ、聞いた限りでは、学院の悪い噂などはないようだった。
学院の卒業生はすでに冒険者として活動してるけど、非常に優秀で、ギルドとしても期待しているらしい。
よって、生徒の育成についてギルドも全面協力するということで、エンギさんもその関係で来たとのこと。
となると、ますますあの学院長の目的がよく分からない。なんでこんなシステムを採用してまで、優秀な生徒を作り上げてるんだ?
単純にお金目的なら、そう心配することもないかもしれないけど……うーんやっぱり気にかかる。
とにかく、しばらく様子を見てみるしかないな。
あとは僕の正体についてだけど、恐らくバレないと思う。
僕はまだ王としては日が浅いし、テンプルム国王の顔をちゃんと知ってる人はそうはいないだろう。
基本的には、他国の王様の顔なんて知らない人が多い。僕自身、シャルフ王の顔も知らなかったし。
仮に僕の顔を知ってても、冒険者の格好をしてたら、他人の空似くらいにしか思われないはず。
試験のときも誰も気付かなかったみたいだし、まあ大丈夫だろう。
ということで、戦闘訓練開始だ。
「ヒロ、師匠になってくれたのは嬉しいが、いきなりこんな森に来て大丈夫か? アタシたちあまり強くないぜ?」
「そうよ、ここって結構危険な場所よ? もしもがあったら怖いんだけど……」
森に漂う異様な気配に、ランゼとクリスティが不安がっている。
なら、まずは訓練の前に安心させなくちゃな。
僕のことをしっかり信頼してもらえないと、このあと何を教えても身が入らないだろうし。
「大丈夫だよ、僕のことを信頼してほしい。あ、ちょうどいいモンスターが来たよ」
僕が話してると、いいタイミングでモンスターが現れた。
超巨大蜘蛛――マウンテンスパイダーだ。
身体本体の大きさは10mほど、脚を広げると20m以上にもなるが、討伐ランクとしてはSSランク程度の強さである。
「ぎょおおおおえええええええっ、か、怪物だああああっ!」
「ヒ、ヒ、ヒロさん、大変ですよ、ボクたち食べられちゃいますっ」
「こ、こんな、にげ、にげ……」
「ああ、コイツは身体はデカイけど、大したことないよ」
「そんなわけないだろっ、お前バカかっ!?」
「ヒロくんなんて信用するんじゃなかった! ああ、私ここで死ぬのね……」
「ヒ、ヒロさん、ボクもうだめ……」
マウンテンスパイダーを見て、ランゼたちが大パニックになっている。
確かに毒牙や粘着糸なんかは危険だけど、動きはそれほど速くないからね。
見た目こそデカイけど、力もそれほど強いタイプじゃない。
SSランクチームならなんとか倒せる相手だ。
巨大な割には体重も軽いので、ドスドスというよりかはモサモサとした感じでこちらに近づいてくる。
それを見てランゼたちは腰を抜かしちゃったようで、一歩も動けずに尻餅をついてしまった。
「あわわわ、もう終わりだ、みんなさよなら……」
3人は両手を組んで祈りを捧げる。
普段は勝ち気な子たちだけど、信仰深いファーブラ民らしい行為だな。
さて、充分近づいてきたし、倒すとするか。
「えいっ」
ド ゴ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ン……!
僕のパンチで、マウンテンスパイダーは遥か彼方へと飛んでいった。
「…………………………え?」
ランゼたち3人は、遠方へ小さく霞んでいくマウンテンスパイダーを呆然と見つめている。
まだイマイチ状況が分かっていないようだ。
「ね、大したことないでしょ?」
「ヒ……ヒロがやったんだよな?」
「そうだよ」
「まって、ヒロくんって、こんなに強かったの……?」
「安心したかい?」
「な、なんで試験のとき、この力を見せなかったんだよーっ」
「そうよ、英雄級の強さじゃないの!」
いや、そこそこ見せたつもりだったんだけど、何故か測定数値が悪かったんだよね……。
おっと、忘れないうちにこれをやっておかないと。
「みんな、今ので経験値が入ったはずだ。それでまずはベースレベルを上げておこう。基礎能力値が低いと、色々と危険だからね」
「あ、ホントだわ! 凄いたくさん経験値が入ってる!」
「こんなの見たことないです!」
「すげーっ、レベル8だったのが19にまで上がったぜ! これならあっという間にクラスの奴らに追い付けるぞ!」
4人で分けあったから、まあこんなもんだろうな。
それなりに強いモンスターがいる場所に来たけど、とりあえず経験値取得については秘策があるので、ここで頑張ろうとは考えてない。
ここに来たのは、パワーレベリングとは少し違う別の目的だ。
「ヒロさん凄いです! 最高の師匠です!」
「そうね、『ナンバーズ』と知り合いなのも伊達じゃなかったのね!」
「ああ、デミトフたちのパートナーなんか目じゃないぜ! ヒロ、改めてよろしく頼む!」
3人とも、どうやら僕のことを心から信頼してくれたようだ。
これなら訓練も上手くいくだろう。
「さて、僕の力を分かってもらえたということで、早速訓練開始といきたいところだけど、その前に昼食を食べようか」
「オッケーだぜ。腹ペコじゃ力が出ないしな」
まだ少しお昼には早いけど、早朝から馬車で移動してきたし、まず腹ごしらえをしておきたいところだ。
僕の言葉を聞いて、サイファたち3人は荷物袋からお弁当を取り出す。
えっ、それが昼食……?
「どうしたのヒロくん?」
「いや、それを食べるのかなと……」
3人のお弁当は、見るからに古くなったカチコチのパンに、しなびた野菜をざっくりと挟んだサンドイッチだった。
どう見ても少女らしからぬ昼食だ。
「ああ、アタシたちは貧乏だから、ロクな食材が買えないんだ。これも、お店で捨てるヤツを安く売ってもらったんだ」
そういや、お金がないから僕への報酬も払えないって言ってたっけ。
育ち盛りの少女がこんな物しか食べられないなんて……。
牙無魔たちに連れていってもらった孤児院も、凄い貧乏だったよな。
どこも同じということか。
「みんな、もっといい物を食べないと強くなれないぞ。僕の昼食を分けてあげるから一緒に食べよう」
そう言って、アイテムボックスから栄養のある食べ物をごっそりと取り出す。
「うわあ~すごい! こんなご馳走見たことないわ!」
「ヒロさん、いいんですかボクたちがこれを食べても?」
「もちろん。しっかり訓練するためにしっかり食べるんだ。あ、でも、食べ過ぎちゃだめだよ。動けなくなるからね」
「了解だ! うっひゃあ~どれから食べよう?」
とランゼが目を輝かしたところで、ふと料理を取ろうとした手が止まる。
「どうしたランゼ? 遠慮せず食べていいんだよ?」
「いや、孤児院のみんなもお腹減らしてるから、アタシたちだけ食べるのがみんなに悪くって……」
なるほど、仲間思いのやさしい子だな。
「大丈夫、ほかの子の分もたくさんあげるから、お土産に持って帰るといい。だから安心して食べていいよ」
「ホントか!?」
ランゼたちは飛び上がって喜ぶ。
貧しい生活をしてるみたいだから、食べ物だけじゃなく、いろいろ必要な物も渡すことにするか。
「ヒロさん、ボクたち何もお礼できないのに、どうしてそんなにやさしくしていただけるんですか?」
「先輩冒険者として、後輩の面倒を見るのは当然だよ。それに、あの嫌な学院長の鼻をあかしてやりたいからね。ご飯の分、3人には頑張ってもらうよ、いいね?」
3人は同時に頷いた。
「ヒロくん、昨日は頼りないとか酷いこと言ってごめんなさい。世界で一番頼りになるわ」
「アタシも……ごめんなヒロ、こんなに凄いヤツだなんて思わなかった」
「ボクも、ヒロさんを選んで本当によかったです。フラウさんが言ってたように、このお礼は身体でなんとかお支払いします!」
「アタシも身体で払うぜ!」
「私もそうするわ!」
き……君たち、意味も知らずにそういうこと言っちゃだめだよ?
あとでやんわりと意味を教えておかないと、のちのち大変なことになりそうだ。
ところで、3人が持ってるお弁当袋や荷物袋がやたら可愛い出来だな。
食べ物を買うお金がないにしてはいい品だ。
どこで手に入れたんだろ?
「君たちが持ってるその袋、買った物じゃなさそうだけど、誰かからもらったのかい」
ちょっと気になったので聞いてみた。
「あ、コレってランゼちゃんが作ってくれたんです」
「ランゼは小物作りとか凄く上手なのよ」
「へへっ、意外だろ?」
ランゼが鼻を擦って得意気な顔をする。
そういえばランゼのスキルって、『手工芸』ってヤツだっけ。
なるほど、手先は器用なんだな。何か戦闘に役立てないかな。
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