少年の短い家出

虚偽《きょぎ》

　電車のドアが開いた。するとそこには先ほどとは違う警察の人がいた。

「君が無明匠くんであってるね？」

「はい。そうですがどうかしましたか？」

「しらを切らないでくれかな？こっちも時間が限られてるんだよ。ひとまずきてもらおうか。」

　もうだめだ、そう思った瞬間。

「おーい、やっと見つけた。さっさと来い。葬式行くぞ」

　そこには、30代後半くらいの人がこちらに呼び掛けていた。警察は混乱していた。きっとあれが名無ノさんだ、ならばと俺は話を合わせる。

「伯父ちゃん、久しぶり！葬式って何時から？」

　その質問を遮るかのように警察が名無ノさんに質問した。

「あれ？あなたは保護者さん？」

「いいえ、伯父です。葬式があるんで、急用じゃなければなるべく早く行きたいんですけどいいですか？」

「あ、はい。そういうことでしたら。」

　警察はどこか腑に落ちない様子だったが、これで俺の家での最初の難関はクリアできたのだった。

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「おい、これやるよ。キャッチしろよー。」

　名無ノさんはそう言って冷蔵庫から取り出したキンキンに冷えたコーラを投げた。俺はそれをうまく受け取り蓋を開けようとする。開ける寸前で今開けたら、泡が出ると悟り少し机の上に置いた。

「あれ？どうした？コーラ嫌いか？だったらほかのもあるけど、どうする？」

「いや、今投げたでしょ？今開けたら泡出ちゃうでしょ。」

「あ、、、、まあいいや。家出っつっても俺は、ここの貸し家借りてるからお前も自由に使え、一人だと寂しくてな。まあよろしくな、俺の名前は竹山雅人《たけやままさと》だ。」

「よろしくお願いします。」

　そういって俺は雅人と握手をした。雅人の手はとても大きくごつごつとした男の手だった、幾度となく苦労を重ねてきた人の手それはとても冷え切っていた。

「じゃあその部屋使っていいよ。」

　そういって雅人は居間の奥のふすまを指でさした。そのふすまを開けると何もないし、広いとも言い難い部屋だったが俺はとてもうれしかった。ここが俺の新しい部屋、今日から俺はここでロボットにならないような、すごい大人になってやると決意を固めた。