49 / 54
第10章 12月-二人(4)*
しおりを挟む
「――なあ」
ヘッドボードに置いたジェルとゴムを取ろうと身を起こすと、茂が下から話し掛けてくる。
「ん?」
「矢野さんにやったみたいにやって」
そう言った茂が何を求めているのか、高志にはすぐに分かった。
「いいよ」
ゴムとジェルをいったんシーツの上に置いて、高志は少し後ろに下がってベッドの上に座った。起き上がった茂が高志の前で膝立ちになる。
「俺にもたれて」
「こう?」
間近に来た茂が高志の肩に手を置く。
「うん」
片手を茂の体に回して支えながら、もう片手でジェルを取ろうと視線をシーツに落とすと、ふと首の辺りが温かいもので包まれた。
「――」
支えていた手をそっと背中に回すと、きゅ、と茂の腕に力が込められる。昔、何度か同じように抱き締められた覚えがあった。高志はもう片方の手も茂の背中に回して、今度こそちゃんと抱き締め返した。
「……藤代」
密着した胸から体温が伝わってくる。温かくて柔らかい、吸い付くようなその肌の感触は充分になまめかしく感じられ、高志は片手で茂の後頭部を抱き寄せた。
「……お前、矢野さんともこんな風にしたの」
「こんなに近付いてない」
回された腕の力が更に強くなる。
「気になる?」
そう聞いてみると、小さく頷く動きが伝わってきた。
「やっぱ女の子とならできるのかって思った」
「今のお前の方が近いよ」
茂がもう一度頷く。
「お前の方が、触りたいし」
「……羨ましかっただけ」
「お前の連絡先と交換条件だったって言っただろ。じゃなかったらしてない」
「……うん」
「細谷」
高志の呼び掛けに、茂が顔を上げる。茂の頭を引き寄せると、意図を察した茂が自ら唇を寄せてきた。強めに唇を吸われる。
昔なら戸惑うだけだった。今なら求められるのが嬉しいと思う。茂が言ったのもこういうことだろう。昔の自分が与えることのできなかった喜び。
高志に優しくされたい。高志からキスされたら嬉しい。昨日そう言った茂。
――ずっと、どれだけの感情を飲み込んで、自分に体を預けていたのか。
せめて今、茂の求めるだけずっとキスを続けた。茂の背中に手を回して、ぎゅっと力強く抱き締める。高志が満たされたように、茂の心も満たされるまで。
やがて茂が唇を離して体を起こしたので、高志はジェルを手に取った。再び軽く体重を預けてくる茂の肩越しに見ながら、指にゴムを被せ、そこにジェルを出す。
「痛かったら言えよ」
「うん」
茂の臀部に手をやり、ジェルを塗り込めてから、少しずつ慎重に指を入れていった。茂の呼吸が浅くなっているのが分かる。慎重に指を進めて、奥まで入った頃に声を掛ける。
「平気?」
「……うん」
茂がある程度慣れた頃に、高志はいったん指を抜き、あらためて二本の指にゴムを被せた。指を重ねて再び埋め込もうとした瞬間、肩に回された茂の腕に力がこもる。高志は指を止めて、空いている手で宥めるように背中を撫でた。そしてもう一度ゆっくりと指を進めながら、茂の前を緩く握る。間近に聞こえる息遣いや直に伝わってくる腕の力の微妙な変化を注意深く窺う。何度も指を出し入れしながら、徐々にそこを慣らしていった。前にも刺激を与えているせいか、茂の呼吸は速くなってきている。萎えかけていた手の中のそれは、また少しずつ硬さを増してきていた。
ヘッドボードに置いたジェルとゴムを取ろうと身を起こすと、茂が下から話し掛けてくる。
「ん?」
「矢野さんにやったみたいにやって」
そう言った茂が何を求めているのか、高志にはすぐに分かった。
「いいよ」
ゴムとジェルをいったんシーツの上に置いて、高志は少し後ろに下がってベッドの上に座った。起き上がった茂が高志の前で膝立ちになる。
「俺にもたれて」
「こう?」
間近に来た茂が高志の肩に手を置く。
「うん」
片手を茂の体に回して支えながら、もう片手でジェルを取ろうと視線をシーツに落とすと、ふと首の辺りが温かいもので包まれた。
「――」
支えていた手をそっと背中に回すと、きゅ、と茂の腕に力が込められる。昔、何度か同じように抱き締められた覚えがあった。高志はもう片方の手も茂の背中に回して、今度こそちゃんと抱き締め返した。
「……藤代」
密着した胸から体温が伝わってくる。温かくて柔らかい、吸い付くようなその肌の感触は充分になまめかしく感じられ、高志は片手で茂の後頭部を抱き寄せた。
「……お前、矢野さんともこんな風にしたの」
「こんなに近付いてない」
回された腕の力が更に強くなる。
「気になる?」
そう聞いてみると、小さく頷く動きが伝わってきた。
「やっぱ女の子とならできるのかって思った」
「今のお前の方が近いよ」
茂がもう一度頷く。
「お前の方が、触りたいし」
「……羨ましかっただけ」
「お前の連絡先と交換条件だったって言っただろ。じゃなかったらしてない」
「……うん」
「細谷」
高志の呼び掛けに、茂が顔を上げる。茂の頭を引き寄せると、意図を察した茂が自ら唇を寄せてきた。強めに唇を吸われる。
昔なら戸惑うだけだった。今なら求められるのが嬉しいと思う。茂が言ったのもこういうことだろう。昔の自分が与えることのできなかった喜び。
高志に優しくされたい。高志からキスされたら嬉しい。昨日そう言った茂。
――ずっと、どれだけの感情を飲み込んで、自分に体を預けていたのか。
せめて今、茂の求めるだけずっとキスを続けた。茂の背中に手を回して、ぎゅっと力強く抱き締める。高志が満たされたように、茂の心も満たされるまで。
やがて茂が唇を離して体を起こしたので、高志はジェルを手に取った。再び軽く体重を預けてくる茂の肩越しに見ながら、指にゴムを被せ、そこにジェルを出す。
「痛かったら言えよ」
「うん」
茂の臀部に手をやり、ジェルを塗り込めてから、少しずつ慎重に指を入れていった。茂の呼吸が浅くなっているのが分かる。慎重に指を進めて、奥まで入った頃に声を掛ける。
「平気?」
「……うん」
茂がある程度慣れた頃に、高志はいったん指を抜き、あらためて二本の指にゴムを被せた。指を重ねて再び埋め込もうとした瞬間、肩に回された茂の腕に力がこもる。高志は指を止めて、空いている手で宥めるように背中を撫でた。そしてもう一度ゆっくりと指を進めながら、茂の前を緩く握る。間近に聞こえる息遣いや直に伝わってくる腕の力の微妙な変化を注意深く窺う。何度も指を出し入れしながら、徐々にそこを慣らしていった。前にも刺激を与えているせいか、茂の呼吸は速くなってきている。萎えかけていた手の中のそれは、また少しずつ硬さを増してきていた。
0
あなたにおすすめの小説
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
有能課長のあり得ない秘密
みなみ ゆうき
BL
地方の支社から本社の有能課長のプロジェクトチームに配属された男は、ある日ミーティングルームで課長のとんでもない姿を目撃してしまう。
しかもそれを見てしまったことが課長にバレて、何故か男のほうが弱味を握られたかのようにいいなりになるはめに……。
【完結】それより俺は、もっとあなたとキスがしたい
佑々木(うさぎ)
BL
一ノ瀬(27)は、ビール会社である「YAMAGAMI」に勤めていた。
同僚との飲み会に出かけた夜、帰り道にバス停のベンチで寝ている美浜部長(32)を見つけてしまう。
いつも厳しく、高慢で鼻持ちならない美浜と距離を取っているため、一度は見捨てて帰ろうとしたのだが。さすがに寒空の下、見なかったことにして立ち去ることはできなかった。美浜を起こし、コーヒーでも飲ませて終わりにしようとした一ノ瀬に、美浜は思いも寄らないことを言い出して──。
サラリーマン同士のラブコメディです。
◎BLの性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください
* 性的描写
*** 性行為の描写
大人だからこその焦れったい恋愛模様、是非ご覧ください。
年下敬語攻め、一人称「私」受けが好きな方にも、楽しんでいただけると幸いです。
表紙素材は abdulgalaxia様 よりお借りしています。
僕がそばにいる理由
腐男子ミルク
BL
佐藤裕貴はΩとして生まれた21歳の男性。αの夫と結婚し、表向きは穏やかな夫婦生活を送っているが、その実態は不完全なものだった。夫は裕貴を愛していると口にしながらも、家事や家庭の負担はすべて裕貴に押し付け、自分は何もしない。それでいて、裕貴が他の誰かと関わることには異常なほど敏感で束縛が激しい。性的な関係もないまま、裕貴は愛情とは何か、本当に満たされるとはどういうことかを見失いつつあった。
そんな中、裕貴の職場に新人看護師・宮野歩夢が配属される。歩夢は裕貴がΩであることを本能的に察しながらも、その事実を意に介さず、ただ一人の人間として接してくれるαだった。歩夢の純粋な優しさと、裕貴をありのまま受け入れる態度に触れた裕貴は、心の奥底にしまい込んでいた孤独と向き合わざるを得なくなる。歩夢と過ごす時間を重ねるうちに、彼の存在が裕貴にとって特別なものとなっていくのを感じていた。
しかし、裕貴は既婚者であり、夫との関係や社会的な立場に縛られている。愛情、義務、そしてΩとしての本能――複雑に絡み合う感情の中で、裕貴は自分にとって「真実の幸せ」とは何なのか、そしてその幸せを追い求める覚悟があるのかを問い始める。
束縛の中で見失っていた自分を取り戻し、裕貴が選び取る未来とは――。
愛と本能、自由と束縛が交錯するオメガバースの物語。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる