上 下
117 / 455
4.王子の葛藤

風の香り

しおりを挟む
(カシー!どこにいるんだ……!?)

城の中は広い。
住人として生まれた時から生活をしている俺でさえ、ここを全て探すのは難しい。

当たりをつけなくてはいけない。

カシーはどうやって外に出た?
目的は?
そもそも、カシーが自分で外に出たのか?
いや、そんなこと今はどうでもいい。
とにかく、探すしかない。

俺は、馬を走らせながら、水の玉を複数出した。
そして俺の周囲に散りばめる。
空気が、その水の中に入り込む。
空気の中に含まれている香りが、水の中に吸収され、濃い香りのエキスに変わるのだ。

俺は、その1つ1つの水の粒を手にして確認をする。
これは、あの薔薇園の香りがする。
いい香りだけど、カシーとは種類が違う。
これは、料理の香りがする。
今日の夕飯は肉がメインか……腹が減りそうだ。

(……そういえば、カシーは飯……どうしてたんだろう……)

本当に、俺は何も知らない。
知らされていない。
その事実に、改めて胸が痛む。
ふと、その時。

(これは……!!)

馬を走らせていた方と、少しずれた方向に浮いている水の粒から、確かにカシーの香りがした。

「こっちかっ……!!!」

その水の玉からした香りにはカシーの香りだけではなかった。
もっと別の……汚物のような臭い。
そしてもう1つ……全く嗅いだことのない種類の香のようなものがあった。

俺は馬に鞭打ち、急がせた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

腹黒上司が実は激甘だった件について。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:505pt お気に入り:139

女學生のお嬢さまはヤクザに溺愛され、困惑しています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:686

身代わりおまけ王子は逃げ出したい

BL / 連載中 24h.ポイント:404pt お気に入り:3,578

その腕で眠らせて

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:200pt お気に入り:1

遠い昔からの物語

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:75

処理中です...