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7.呪われしアルストメリー
教会の子供たち
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「聖女様!おはようございます!」
「はい、おはようございます」
プルメリアに連れられて、廊下を歩いている時だった。
同じような白い服を身につけた子供たちが、笑顔で走りながら挨拶をしていく。
「あの……聖女……様?」
「プルメリアでよろしくてよ。ああ、でも少し長くて呼びづらいですわね……」
プルメリアは、少し考えてから
「プーはいかがです?」
「ぷっ……プー!?」
「はい。プーです」
「プー……」
……だめだ。
確かに、口馴染みはとても良い。
けれど……プーという音を発する度に2つほど全く別のイメージのものを思い出してしまう。
1つは……有音の屁。
別に下ネタで喜ぶような年齢ではないけれど……ついくすくす笑ってしまいそう。
そしてもう1つは、黄色いクマのキャラクター。
はちみつばかり食べてそうな印象まで、セットで付いてくる。
「すみません、やっぱりプーはちょっと……」
「何故ですの?」
この2つのイメージのことを、清らかな目をしているプルメリアに正直に言うのは気が引ける。
相手を否定する時は別案を出せ。
前世で、上司に文句を言った時に散々言われた。
言われた当時は
「そんなことできるわけないじゃん」
と思っていたけれど、今ならわかる。
代案を出すことの効果が。
「プルさんは……どうでしょう?」
「カサブランカ様にさん付けしていただくのは、とても気が引けますわ」
「……じゃあプルで……」
「決まりですわね」
プルメリアは満面の笑みで頷くと、スタスタと歩いて行く。
「ごめんなさいね」
「え?」
「カサブランカ様をこのように長く歩かせてしまって。食堂までちょっと遠いんです」
「あ、いえいえ、気にしないでください」
「……そう言っていただけるとありがたいですわ」
「そうですか……」
プルメリアの後に続いて歩きながら、私は周囲を見渡してみる。
1~2回しか城の中の廊下は歩いていないが、城は豪華絢爛に作られているにも関わらず、暗くてじめじめした印象を受けた。
ちょっと電気を消したら、洋風のお化け屋敷ツアーなんかも作れそうだなと、ちらと思ってしまっていた。
それに比べて……ここはどうだろう。
使われている素材は石なので、一見すると暗く思える。
だけど、あちこちに空が見えるような大きな窓が作られている。
風通りも良く、空気も爽やか。
また、廊下からは畑も見える。
色とりどりの花だけではなく、ツヤツヤに実った野菜もたくさんある。
先ほどの子供達だろうか。
その畑できゃっきゃと騒ぎながら、野菜を収穫したり、花を詰んでいた。
「プル、聞いても……?」
「勿論ですわ」
「あの子達は何をして……?」
「自分達の食事の準備ですわ」
「え」
「自分で食べるものは、自分で作る。そうして自分の命には自分で責任を持つ。……それが、ここで過ごすためのルールなのです」
「自分の命に……自分で責任……?」
「ああ、カサブランカ様はそんなことなさらなくて大丈夫ですわ。すでに用意してありますから」
「あ、ありがとうございます……」
私は、もう一度子供達の方を見た。
彼らが何を話しているか、具体的な声は聞こえないが、みんなが楽しそうに駆け回っている。
カサブランカとしての記憶の中に、カサブランカがあんな風に笑ったのは数回だけ。
何も知らずに王子と会っていた時のみ……。
その時、ぴたりと、プルメリアが立ち止またったので、私も続けて止まった。
目の前には、木で作られた大きめの扉。
「さあ、ここが食堂ですわ」
プルメリアが扉を開けると、すでに先客が数人いた。
その中に見知った顔がいたので、私は息を飲んだ。
「はい、おはようございます」
プルメリアに連れられて、廊下を歩いている時だった。
同じような白い服を身につけた子供たちが、笑顔で走りながら挨拶をしていく。
「あの……聖女……様?」
「プルメリアでよろしくてよ。ああ、でも少し長くて呼びづらいですわね……」
プルメリアは、少し考えてから
「プーはいかがです?」
「ぷっ……プー!?」
「はい。プーです」
「プー……」
……だめだ。
確かに、口馴染みはとても良い。
けれど……プーという音を発する度に2つほど全く別のイメージのものを思い出してしまう。
1つは……有音の屁。
別に下ネタで喜ぶような年齢ではないけれど……ついくすくす笑ってしまいそう。
そしてもう1つは、黄色いクマのキャラクター。
はちみつばかり食べてそうな印象まで、セットで付いてくる。
「すみません、やっぱりプーはちょっと……」
「何故ですの?」
この2つのイメージのことを、清らかな目をしているプルメリアに正直に言うのは気が引ける。
相手を否定する時は別案を出せ。
前世で、上司に文句を言った時に散々言われた。
言われた当時は
「そんなことできるわけないじゃん」
と思っていたけれど、今ならわかる。
代案を出すことの効果が。
「プルさんは……どうでしょう?」
「カサブランカ様にさん付けしていただくのは、とても気が引けますわ」
「……じゃあプルで……」
「決まりですわね」
プルメリアは満面の笑みで頷くと、スタスタと歩いて行く。
「ごめんなさいね」
「え?」
「カサブランカ様をこのように長く歩かせてしまって。食堂までちょっと遠いんです」
「あ、いえいえ、気にしないでください」
「……そう言っていただけるとありがたいですわ」
「そうですか……」
プルメリアの後に続いて歩きながら、私は周囲を見渡してみる。
1~2回しか城の中の廊下は歩いていないが、城は豪華絢爛に作られているにも関わらず、暗くてじめじめした印象を受けた。
ちょっと電気を消したら、洋風のお化け屋敷ツアーなんかも作れそうだなと、ちらと思ってしまっていた。
それに比べて……ここはどうだろう。
使われている素材は石なので、一見すると暗く思える。
だけど、あちこちに空が見えるような大きな窓が作られている。
風通りも良く、空気も爽やか。
また、廊下からは畑も見える。
色とりどりの花だけではなく、ツヤツヤに実った野菜もたくさんある。
先ほどの子供達だろうか。
その畑できゃっきゃと騒ぎながら、野菜を収穫したり、花を詰んでいた。
「プル、聞いても……?」
「勿論ですわ」
「あの子達は何をして……?」
「自分達の食事の準備ですわ」
「え」
「自分で食べるものは、自分で作る。そうして自分の命には自分で責任を持つ。……それが、ここで過ごすためのルールなのです」
「自分の命に……自分で責任……?」
「ああ、カサブランカ様はそんなことなさらなくて大丈夫ですわ。すでに用意してありますから」
「あ、ありがとうございます……」
私は、もう一度子供達の方を見た。
彼らが何を話しているか、具体的な声は聞こえないが、みんなが楽しそうに駆け回っている。
カサブランカとしての記憶の中に、カサブランカがあんな風に笑ったのは数回だけ。
何も知らずに王子と会っていた時のみ……。
その時、ぴたりと、プルメリアが立ち止またったので、私も続けて止まった。
目の前には、木で作られた大きめの扉。
「さあ、ここが食堂ですわ」
プルメリアが扉を開けると、すでに先客が数人いた。
その中に見知った顔がいたので、私は息を飲んだ。
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