198 / 455
7.呪われしアルストメリー
ルカと神の恐ろしい秘密
しおりを挟む
アルフィーは、ルカの話を疑った。
知識というものは、思考するための道具である。
道具は多ければ多いほど良い、というものではない。
多いからこそ、それらはぶつかり合うことも十分にある。
アルフィーの頭の中は、引き出しのように綺麗に整頓されているが、取り出した知識同士がぶつかり合うということは日常茶飯事。
例えば、キノコという、たった一語についても、アルフィーの中には無数の情報がある。
名前、生息地、毒の有無というのは当たり前。
どういう物質で構成されているのか。
何と一緒に調理をすれば、美味しいのか。
などなど、知識の種類をあげればキリがない。
知識の吸収は、スポンジのように。
だけど知識の保管は、何物にも壊されない、鋼鉄の器の中に。
それがアルフィーの脳。
だからこそ、矛盾に対しては酷くアレルギー反応を起こす。
知っている知識のはずのものに、あり得ない知識が融合した時、アルフィーは酷く動揺し、疑惑という形になって、表に出る。
ルカの「神の声」の話は、まさにアルフィーの持つ知識と相反した。
「神がそんなことを、お前のような子供に言うものか」
アルフィーにとっての神は、国が信仰する存在。
それは偶像化されたものかもしれないし、自然そのものかもしれない。
それは、人によっても、国によっても違う。
神の声を伝える者も、あちこちに出てきているのも、アルフィーは知識として知ってはいる。
そういう人たちのことを、伝道師と、いうらしい。
だが、伝道師という存在は、神の声を伝えるだけの存在で、人間はそれを受け取るだけにすぎない。
それが、神と人間の違い、のはずだ。
アルフィーは、神と人間の関係はそういうものであると、脳の中にインプットをしていた。
だからこそ、ルカが
「西に行けば、お前を助けるやつと会わせてやろう」
などと神という存在が言ったことは、疑う他なかった。
アルフィーの問いかけに対して、ルカは
「うーん」
と頭上を見ながら考えていた。
それから、うん、うんと数回頷いていた。
まるで、空と対話をしているように、アルフィーには見えた。
そしてルカは
「うん、わかった」
と空に向かって言うと、アルフィーに向かって満面の笑みを浮かべた。
「な、なんだ……?」
「よかったね!おじさん!」
「な、なに?」
何がよかったと言うのか?
そもそも、自分はおじさんなどではない。
などと、アルフィーが、次の言葉を選んでいる間に
「神様がね、おじさんにだったら話しても良いよって言ってる」
と、ルカが突拍子もないことを言い出した。
「……は?」
「おじさんも、特別な人なんでしょう?」
「特別な人……だと?」
「うん、神様が教えてくれた。だから、私も神様と私しか知らない秘密を教えても良いって言ってる」
「秘密……だと?」
アルフィーがそう言うと、ルカは祈りをするかのように、手を大空に広げてから
「神様ー!キノコに合う美味しいものが欲しいですー!」
と叫んだ。
すると、風がさあっと吹いたかと思うと、またルカが
「うんうん」
と頷いている。
「わかったーありがとー!」
再び、ルカが空に向かってお礼を言うと
「あっちから、美味しいものがくるって」
「え?」
ルカが指差した方向を、アルフィーも見てみると、どすどすどすと、大きな獣の足音だと明らかにわかる音が、森の方から聞こえてきた。
「おい、まさか……」
アルフィーがルカに尋ねる前に、大きな獣がアルフィーとルカの前に現れた。
「神様がね、キノコと一緒に食べるととっても美味しいから、連れてくるよって言ってくれたのー」
「はあ!?」
それから、アルフィーはあの手この手の知識を総動員して、どうにか獣を倒した。
その結果として獣肉とキノコを美味しくいただくという、ルカの希望が叶う形になった。
まだ、これだけの出来事で結論づけるのは早いと、アルフィーの理性が警告するが、仮説はすでにできている。
ルカという少女は、神になんらかを願うとする。
ルカが神と呼ぶ存在は、ルカの望みが叶う方法を伝授する。
その結果、ルカの望みは叶う。
簡単に解釈すると、これだろうが……十分これでも恐ろしい力だと思った。
でも同時に、この仮説が正しいとするなら、ルカを味方につけておいた方が、疑うよりは自分の身が安全だろうと、アルフィーは考えたから。
なのでアルフィーは、ルカが言う西の方に、共に進む決意をした。
実際、その判断がその時は正しいことを知ったのは、それから数日分西に進んでから。
だけど一方で、ルカが持つ「魔」の恐ろしさにアルフィーが気づいたのも、同じタイミングだった。
知識というものは、思考するための道具である。
道具は多ければ多いほど良い、というものではない。
多いからこそ、それらはぶつかり合うことも十分にある。
アルフィーの頭の中は、引き出しのように綺麗に整頓されているが、取り出した知識同士がぶつかり合うということは日常茶飯事。
例えば、キノコという、たった一語についても、アルフィーの中には無数の情報がある。
名前、生息地、毒の有無というのは当たり前。
どういう物質で構成されているのか。
何と一緒に調理をすれば、美味しいのか。
などなど、知識の種類をあげればキリがない。
知識の吸収は、スポンジのように。
だけど知識の保管は、何物にも壊されない、鋼鉄の器の中に。
それがアルフィーの脳。
だからこそ、矛盾に対しては酷くアレルギー反応を起こす。
知っている知識のはずのものに、あり得ない知識が融合した時、アルフィーは酷く動揺し、疑惑という形になって、表に出る。
ルカの「神の声」の話は、まさにアルフィーの持つ知識と相反した。
「神がそんなことを、お前のような子供に言うものか」
アルフィーにとっての神は、国が信仰する存在。
それは偶像化されたものかもしれないし、自然そのものかもしれない。
それは、人によっても、国によっても違う。
神の声を伝える者も、あちこちに出てきているのも、アルフィーは知識として知ってはいる。
そういう人たちのことを、伝道師と、いうらしい。
だが、伝道師という存在は、神の声を伝えるだけの存在で、人間はそれを受け取るだけにすぎない。
それが、神と人間の違い、のはずだ。
アルフィーは、神と人間の関係はそういうものであると、脳の中にインプットをしていた。
だからこそ、ルカが
「西に行けば、お前を助けるやつと会わせてやろう」
などと神という存在が言ったことは、疑う他なかった。
アルフィーの問いかけに対して、ルカは
「うーん」
と頭上を見ながら考えていた。
それから、うん、うんと数回頷いていた。
まるで、空と対話をしているように、アルフィーには見えた。
そしてルカは
「うん、わかった」
と空に向かって言うと、アルフィーに向かって満面の笑みを浮かべた。
「な、なんだ……?」
「よかったね!おじさん!」
「な、なに?」
何がよかったと言うのか?
そもそも、自分はおじさんなどではない。
などと、アルフィーが、次の言葉を選んでいる間に
「神様がね、おじさんにだったら話しても良いよって言ってる」
と、ルカが突拍子もないことを言い出した。
「……は?」
「おじさんも、特別な人なんでしょう?」
「特別な人……だと?」
「うん、神様が教えてくれた。だから、私も神様と私しか知らない秘密を教えても良いって言ってる」
「秘密……だと?」
アルフィーがそう言うと、ルカは祈りをするかのように、手を大空に広げてから
「神様ー!キノコに合う美味しいものが欲しいですー!」
と叫んだ。
すると、風がさあっと吹いたかと思うと、またルカが
「うんうん」
と頷いている。
「わかったーありがとー!」
再び、ルカが空に向かってお礼を言うと
「あっちから、美味しいものがくるって」
「え?」
ルカが指差した方向を、アルフィーも見てみると、どすどすどすと、大きな獣の足音だと明らかにわかる音が、森の方から聞こえてきた。
「おい、まさか……」
アルフィーがルカに尋ねる前に、大きな獣がアルフィーとルカの前に現れた。
「神様がね、キノコと一緒に食べるととっても美味しいから、連れてくるよって言ってくれたのー」
「はあ!?」
それから、アルフィーはあの手この手の知識を総動員して、どうにか獣を倒した。
その結果として獣肉とキノコを美味しくいただくという、ルカの希望が叶う形になった。
まだ、これだけの出来事で結論づけるのは早いと、アルフィーの理性が警告するが、仮説はすでにできている。
ルカという少女は、神になんらかを願うとする。
ルカが神と呼ぶ存在は、ルカの望みが叶う方法を伝授する。
その結果、ルカの望みは叶う。
簡単に解釈すると、これだろうが……十分これでも恐ろしい力だと思った。
でも同時に、この仮説が正しいとするなら、ルカを味方につけておいた方が、疑うよりは自分の身が安全だろうと、アルフィーは考えたから。
なのでアルフィーは、ルカが言う西の方に、共に進む決意をした。
実際、その判断がその時は正しいことを知ったのは、それから数日分西に進んでから。
だけど一方で、ルカが持つ「魔」の恐ろしさにアルフィーが気づいたのも、同じタイミングだった。
6
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる