270 / 455
7.呪われしアルストメリー
王子の重苦しい愛があるなら
しおりを挟む
「ちょっ!ちょっと待った!!」
「出ていけ!」
「だから、火!危ない!」
「早く!!!」
「だから、このまま火近づけたらカシーちゃん火傷しちゃうでしょうが!!!」
私が、カシーという言葉をあえて使ったことで、ぴたりとエディ王子の行動を止めることができた。
しゅんっと、エディ王子の手のひらから火が消えた。
かと思いきや
「お前が、カシーと言うな……」
よくわからないポイントで怒ってきた。
そういえば、カサブランカの記憶の中で、王子はずーっとカサブランカのことをカシーと呼び続けていた。
(自分だけの、特別な呼び名……とでも思ってるんだろうか)
最も、記憶の中のカサブランカに至っては……呼び名1つ違うことくらいでは、王子の気持ちを見極めることは到底できず、その結果、エディ王子の気持ちを誤解していた……ということになるみたいだ。
火はどうにか収めてもらったとはいえ、次に変な攻撃をされないように、慎重にセリフを選ばなければならない。
(エディ王子は、カサブランカを傷つけることは嫌なはず)
それは徹底的に利用させてもらいたいと、私は考えた。
「あなたが私に攻撃しちゃうと、この体に傷がついちゃうけど、いいの?」
「……っ……卑怯者……」
(好きでこんな状態にしたわけじゃないんだけどなー)
エディ王子から、敵意丸出しで見られているけれど、私は私で、一応被害者ではある。
そこをどうにか説明して、せめて目的だけはすり合わせたい。
「カサブランカを、取り戻したくないの?」
「どう言う意味だ」
「言葉の意味。私から、カサブランカを取り戻したくないのかって、聞いてるの」
「そんな当たり前のことを、わざわざ聞くな」
自分の中では当たり前と思っていることほど、相手にとっては当たり前ではない可能性がある。
エディ王子の当たり前は私の当たり前ではないが、想像するのはとても簡単だった。
エディ王子の予想通りの食いつきに、私は顔がにやけそうになる。
「じゃあ、私のお願い、聞いてくれるかなーきゃははー?」
カサブランカが絶対言わない、ぶりっこな表現を使うことで、中の人がいることをあらためてエディ王子にプッシュしてみる。
エディ王子の眉間にカード1枚くらいなら挟めそうな深い溝が入ったので、私の行動を不快に感じていることはよく伝わってくる。
そこから、どれくらいの時間が経ったのか。
私とエディ王子が睨めっこを始めてから。
私は、エディ王子の体から溢れんばかりの殺気を浴び続けながら、好機を待った。
エディ王子の、カサブランカへの重苦しい愛を、カサブランカの体越しで受け止めた私だ。
だからこそ、信じたかった。
きっと、彼は決めるはずだと。
私からカサブランカを取り戻すために。
「願いとは……なんだ?」
(キ……キター!!!!!)
その言葉を聞いた瞬間、私は膝から崩れ落ちた。
「出ていけ!」
「だから、火!危ない!」
「早く!!!」
「だから、このまま火近づけたらカシーちゃん火傷しちゃうでしょうが!!!」
私が、カシーという言葉をあえて使ったことで、ぴたりとエディ王子の行動を止めることができた。
しゅんっと、エディ王子の手のひらから火が消えた。
かと思いきや
「お前が、カシーと言うな……」
よくわからないポイントで怒ってきた。
そういえば、カサブランカの記憶の中で、王子はずーっとカサブランカのことをカシーと呼び続けていた。
(自分だけの、特別な呼び名……とでも思ってるんだろうか)
最も、記憶の中のカサブランカに至っては……呼び名1つ違うことくらいでは、王子の気持ちを見極めることは到底できず、その結果、エディ王子の気持ちを誤解していた……ということになるみたいだ。
火はどうにか収めてもらったとはいえ、次に変な攻撃をされないように、慎重にセリフを選ばなければならない。
(エディ王子は、カサブランカを傷つけることは嫌なはず)
それは徹底的に利用させてもらいたいと、私は考えた。
「あなたが私に攻撃しちゃうと、この体に傷がついちゃうけど、いいの?」
「……っ……卑怯者……」
(好きでこんな状態にしたわけじゃないんだけどなー)
エディ王子から、敵意丸出しで見られているけれど、私は私で、一応被害者ではある。
そこをどうにか説明して、せめて目的だけはすり合わせたい。
「カサブランカを、取り戻したくないの?」
「どう言う意味だ」
「言葉の意味。私から、カサブランカを取り戻したくないのかって、聞いてるの」
「そんな当たり前のことを、わざわざ聞くな」
自分の中では当たり前と思っていることほど、相手にとっては当たり前ではない可能性がある。
エディ王子の当たり前は私の当たり前ではないが、想像するのはとても簡単だった。
エディ王子の予想通りの食いつきに、私は顔がにやけそうになる。
「じゃあ、私のお願い、聞いてくれるかなーきゃははー?」
カサブランカが絶対言わない、ぶりっこな表現を使うことで、中の人がいることをあらためてエディ王子にプッシュしてみる。
エディ王子の眉間にカード1枚くらいなら挟めそうな深い溝が入ったので、私の行動を不快に感じていることはよく伝わってくる。
そこから、どれくらいの時間が経ったのか。
私とエディ王子が睨めっこを始めてから。
私は、エディ王子の体から溢れんばかりの殺気を浴び続けながら、好機を待った。
エディ王子の、カサブランカへの重苦しい愛を、カサブランカの体越しで受け止めた私だ。
だからこそ、信じたかった。
きっと、彼は決めるはずだと。
私からカサブランカを取り戻すために。
「願いとは……なんだ?」
(キ……キター!!!!!)
その言葉を聞いた瞬間、私は膝から崩れ落ちた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる