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第二章 南へ
22.大切なこと
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『ジェスさん、お元気ですか? こっちはみんな元気にやっています。新婚旅行をさぞ楽しんでいることかと思います。ミゼアス兄さんはジェスさんにベタ惚れですからね』
ここまで読んで、アデルジェスはため息を漏らす。現在、楽しくない出来事の真っ最中だ。やや暗くなりながら、続きに目を向ける。
『でも、ときには機嫌を損ねてしまうこともあるかと思います。そんなときのために、良いものを同封しました。これでミゼアス兄さんの機嫌取りは完璧!』
暗闇に光明が差した。アデルジェスは食い入るように文字を追う。どうやらミゼアスは演劇などが好きだから、観に行こうと誘ってやれば喜ぶということらしい。紹介状のようなものが同封されている。
そういえば島でミゼアスと曲芸を見物したことがあった。目を輝かせて見入る姿が可愛らしく、アデルジェスはあのときにミゼアスへの想いを自覚したのだ。
なるほど、とアデルジェスは頷く。確かにミゼアスはそういったものが好きそうだ。アデルジェスはあまり興味がない分野なので、気付かなかった。
何と素晴らしい助言だろう。さらに劇場の手配まで、いたれりつくせりだ。アデルジェスは感心することしかできない。
『あと、もし何か仕出かしてしまったとしたら、とにかく普通に謝ることをおすすめします。派手な演出は、逆効果です。俺は前方宙返りをしながらミゼアス兄さんの前に現れ、後方転回からの流れで床に平伏したことがありますが、さらにお仕置きが増えました』
しかし続きを読み進めたところ、頭を抱える内容が出てきた。あまり、というよりもまったく参考にならない。いったい何を考えてその行動に出たのか、謎だ。
やはりヴァレンのことはよくわからない。きっとアデルジェスのような凡人には、到底及びもつかないような視点で物事を考えているのだろう。理解できないし、理解してはいけないような気がした。
『とにかく、ミゼアス兄さんはジェスさんのことが大好きなんだから、何かあっても一過性のものですよ。すれ違わないよう、きちんと話し合ってくださいね。お二人とも、お幸せに』
最後はこう締めくくられていた。アデルジェスはもやもやしていた胸に、一陣の風がすっと通り抜けていったようなさわやかさを覚える。
失態をやらかすと、ミゼアスが離れていってしまうのではないかという恐怖がどこかにあるのだ。島でもミゼアスに捨てられるのではないかと不安を抱いていた。恐れが邪魔をして、どうすればよいのかわからなくなってしまい、結局何もできなくなってしまう。
自分がしっかりしなくてはならないのだと島でも決意した。もう一度、そのときの決意を胸に浮かび上がらせる。
大切なことを思い出したような気分だった。
アデルジェスは窓からさわやかな空を見上げる。もう先ほどの鳩の姿は見当たらない。ただ突き抜けるような空の青さが眩しかった。
それにしてもヴァレンは何と折りよく手紙を寄こしてくれたことだろう。まるで全て見透かされているかのようだ。
そういえば、よくアデルジェスたちの居場所がわかったものだ。しかも先ほどの鳩は何故、アデルジェスをはっきりと認識できたのだろう。
考えていくとだんだん恐ろしくもなってきたが、アデルジェスは余計なことは考えないようにしようと首を振った。今、大切なのはミゼアスの機嫌を直すことだ。
アデルジェスは祈りを捧げるように、ヴァレンへの感謝を空に向けて送った。
ここまで読んで、アデルジェスはため息を漏らす。現在、楽しくない出来事の真っ最中だ。やや暗くなりながら、続きに目を向ける。
『でも、ときには機嫌を損ねてしまうこともあるかと思います。そんなときのために、良いものを同封しました。これでミゼアス兄さんの機嫌取りは完璧!』
暗闇に光明が差した。アデルジェスは食い入るように文字を追う。どうやらミゼアスは演劇などが好きだから、観に行こうと誘ってやれば喜ぶということらしい。紹介状のようなものが同封されている。
そういえば島でミゼアスと曲芸を見物したことがあった。目を輝かせて見入る姿が可愛らしく、アデルジェスはあのときにミゼアスへの想いを自覚したのだ。
なるほど、とアデルジェスは頷く。確かにミゼアスはそういったものが好きそうだ。アデルジェスはあまり興味がない分野なので、気付かなかった。
何と素晴らしい助言だろう。さらに劇場の手配まで、いたれりつくせりだ。アデルジェスは感心することしかできない。
『あと、もし何か仕出かしてしまったとしたら、とにかく普通に謝ることをおすすめします。派手な演出は、逆効果です。俺は前方宙返りをしながらミゼアス兄さんの前に現れ、後方転回からの流れで床に平伏したことがありますが、さらにお仕置きが増えました』
しかし続きを読み進めたところ、頭を抱える内容が出てきた。あまり、というよりもまったく参考にならない。いったい何を考えてその行動に出たのか、謎だ。
やはりヴァレンのことはよくわからない。きっとアデルジェスのような凡人には、到底及びもつかないような視点で物事を考えているのだろう。理解できないし、理解してはいけないような気がした。
『とにかく、ミゼアス兄さんはジェスさんのことが大好きなんだから、何かあっても一過性のものですよ。すれ違わないよう、きちんと話し合ってくださいね。お二人とも、お幸せに』
最後はこう締めくくられていた。アデルジェスはもやもやしていた胸に、一陣の風がすっと通り抜けていったようなさわやかさを覚える。
失態をやらかすと、ミゼアスが離れていってしまうのではないかという恐怖がどこかにあるのだ。島でもミゼアスに捨てられるのではないかと不安を抱いていた。恐れが邪魔をして、どうすればよいのかわからなくなってしまい、結局何もできなくなってしまう。
自分がしっかりしなくてはならないのだと島でも決意した。もう一度、そのときの決意を胸に浮かび上がらせる。
大切なことを思い出したような気分だった。
アデルジェスは窓からさわやかな空を見上げる。もう先ほどの鳩の姿は見当たらない。ただ突き抜けるような空の青さが眩しかった。
それにしてもヴァレンは何と折りよく手紙を寄こしてくれたことだろう。まるで全て見透かされているかのようだ。
そういえば、よくアデルジェスたちの居場所がわかったものだ。しかも先ほどの鳩は何故、アデルジェスをはっきりと認識できたのだろう。
考えていくとだんだん恐ろしくもなってきたが、アデルジェスは余計なことは考えないようにしようと首を振った。今、大切なのはミゼアスの機嫌を直すことだ。
アデルジェスは祈りを捧げるように、ヴァレンへの感謝を空に向けて送った。
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