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第二章 南へ
59.消息
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「ロシュ?」
一人でたたずむロシュは、二人が近付いてもまだ宙を眺めていた。アデルジェスが声をかけて、ようやくのろのろと顔を動かす。
「……ジェス? あれ?」
ようやく抜け殻だったようなロシュに表情が蘇ってくる。不思議そうにアデルジェスを見つめた後、隣のミゼアスに気付く。
「こんばんは。また会ったね、ロシュ」
ミゼアスが微笑むと、ロシュも口元に穏やかな笑みを浮かべる。
「こんばんは。二人もこっちに来ていたの?」
「うん、南方を見て回ろうってことになって。ロシュとこんなに早く再会するなんて、びっくりした」
答えながら、アデルジェスは近くから空いている椅子を二つ持ってきて、ロシュの座っている卓に置く。二人もロシュと同じ卓に座った。
「本当だ、びっくりしたよ」
口元に笑みは浮かんでいるのだが、ロシュの声には力がない。
「元気がないみたいだけれど……どうかしたの?」
アデルジェスが心配そうに問いかけると、ロシュは大きく息を吐いた。
「……昔、南方の取引先で可愛い子に会ったっていう話をしただろう」
「ああ、うん。えっと……」
「カリナちゃん、だっけ」
名前を考え込んだらしいアデルジェスの言葉をミゼアスが引き継ぐ。
「そう、カリナちゃん。もう七年くらい前に亡くなっていたらしい。そこの取引先も、とっくに潰れていた。商売に失敗して、親子とも亡くなったんだって。もうずっと付き合いがなかったから、知らなかったよ……」
「えっ……」
思わず、ミゼアスとアデルジェスは顔を見合わせる。
「昔、その取引先があったところは別の店になっていた。そのあたりで話を聞いてみたら、もう七年くらい前に……って」
ため息を漏らし、ロシュは宙を仰ぐ。
「親父はどうしてそことの取引、やめちゃったのかな。わかっていれば……まあ、何もできなかったか。せめて今だったら、少しくらい手助けできたかもしれないのに……」
「ロシュ……」
何か声をかけようとしたらしいアデルジェスが、突然厳しい表情になって後ろを振り返る。
ミゼアスもアデルジェスの視線の先を追うと、そこには一人の男がいた。二十代半ばから後半くらいで、中肉中背のごく普通の男に見える。
男は驚いたように一瞬固まったが、すぐに敵意がないことを示すように両手を顔の横に上げて、へらへらと笑った。
「怪しい者じゃないよ。あんたらからカリナ嬢様の話が聞こえたからさ。昼間、カリナ嬢様のことを聞いていたっていう人かい? この間探していた奴の仲間?」
男の言葉に、ロシュは目を見開く。
「確かに……昼間、話を聞いていたのは俺だ。でも、この間探していたっていうのは……俺はここに来るのは十年ぶりだが……」
「そうか、じゃあそっちは違うのか」
「探していた奴って……いや、それよりもカリナちゃんのことを何か知っているのか?」
ロシュが食いついたと見るや、男はにやりと笑って椅子を引き寄せ、勝手に同じ卓に座った。
「……どうも舌が乾いてしまってな。うまく話せないみたいだ」
しれっとする男にロシュは片眉を吊り上げたが何も言わず、手を上げて売り子を呼んだ。酒を瓶ごと数種類買う。
「好きなものを飲め。全部飲んでもいい」
「悪いな」
まったく悪びれない様子で男は笑う。
葡萄酒を選んで一気に煽ると、男は満足げな吐息を漏らした。
「うめぇーなー。こいつのために生きているようなもんだ。ああ、それでカリナ嬢様だったな。七年前に亡くなったとされているが、本当はそのときに亡くなっちゃいねえぜ」
一人でたたずむロシュは、二人が近付いてもまだ宙を眺めていた。アデルジェスが声をかけて、ようやくのろのろと顔を動かす。
「……ジェス? あれ?」
ようやく抜け殻だったようなロシュに表情が蘇ってくる。不思議そうにアデルジェスを見つめた後、隣のミゼアスに気付く。
「こんばんは。また会ったね、ロシュ」
ミゼアスが微笑むと、ロシュも口元に穏やかな笑みを浮かべる。
「こんばんは。二人もこっちに来ていたの?」
「うん、南方を見て回ろうってことになって。ロシュとこんなに早く再会するなんて、びっくりした」
答えながら、アデルジェスは近くから空いている椅子を二つ持ってきて、ロシュの座っている卓に置く。二人もロシュと同じ卓に座った。
「本当だ、びっくりしたよ」
口元に笑みは浮かんでいるのだが、ロシュの声には力がない。
「元気がないみたいだけれど……どうかしたの?」
アデルジェスが心配そうに問いかけると、ロシュは大きく息を吐いた。
「……昔、南方の取引先で可愛い子に会ったっていう話をしただろう」
「ああ、うん。えっと……」
「カリナちゃん、だっけ」
名前を考え込んだらしいアデルジェスの言葉をミゼアスが引き継ぐ。
「そう、カリナちゃん。もう七年くらい前に亡くなっていたらしい。そこの取引先も、とっくに潰れていた。商売に失敗して、親子とも亡くなったんだって。もうずっと付き合いがなかったから、知らなかったよ……」
「えっ……」
思わず、ミゼアスとアデルジェスは顔を見合わせる。
「昔、その取引先があったところは別の店になっていた。そのあたりで話を聞いてみたら、もう七年くらい前に……って」
ため息を漏らし、ロシュは宙を仰ぐ。
「親父はどうしてそことの取引、やめちゃったのかな。わかっていれば……まあ、何もできなかったか。せめて今だったら、少しくらい手助けできたかもしれないのに……」
「ロシュ……」
何か声をかけようとしたらしいアデルジェスが、突然厳しい表情になって後ろを振り返る。
ミゼアスもアデルジェスの視線の先を追うと、そこには一人の男がいた。二十代半ばから後半くらいで、中肉中背のごく普通の男に見える。
男は驚いたように一瞬固まったが、すぐに敵意がないことを示すように両手を顔の横に上げて、へらへらと笑った。
「怪しい者じゃないよ。あんたらからカリナ嬢様の話が聞こえたからさ。昼間、カリナ嬢様のことを聞いていたっていう人かい? この間探していた奴の仲間?」
男の言葉に、ロシュは目を見開く。
「確かに……昼間、話を聞いていたのは俺だ。でも、この間探していたっていうのは……俺はここに来るのは十年ぶりだが……」
「そうか、じゃあそっちは違うのか」
「探していた奴って……いや、それよりもカリナちゃんのことを何か知っているのか?」
ロシュが食いついたと見るや、男はにやりと笑って椅子を引き寄せ、勝手に同じ卓に座った。
「……どうも舌が乾いてしまってな。うまく話せないみたいだ」
しれっとする男にロシュは片眉を吊り上げたが何も言わず、手を上げて売り子を呼んだ。酒を瓶ごと数種類買う。
「好きなものを飲め。全部飲んでもいい」
「悪いな」
まったく悪びれない様子で男は笑う。
葡萄酒を選んで一気に煽ると、男は満足げな吐息を漏らした。
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