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第二章 南へ
61.己を刺す痛み
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「あんた……もしかして、カリナ嬢様が今どうしているのか知ってるのか!?」
男が興奮した様子で立ち上がり、ミゼアスの肩をつかむ。強い力にミゼアスが顔をしかめると、アデルジェスが男の手を引き剥がした。
「あ……悪い……」
睨み付けるアデルジェスに怯えながら男は手を戻し、謝る。
アデルジェスはそれ以上何もしなかったが、ミゼアスとロシュの間から、ミゼアスと男の間に椅子を持って移動してきた。
「……まあ、その様子だと当たりっていうことか。とりあえず、元気に過ごしているよ」
肩をさすりながらミゼアスは苦笑を浮かべる。
「そうか……よかった……」
男は大きく息を吐き出し、安堵したように笑う。
すると今まであっけに取られたようにミゼアスと男とのやり取りを眺めていたロシュが、驚愕の表情でおそるおそる口を開いた。
「フェイちゃん……ジェスの話だと、きみは確か娼館に売られ……」
「しっ」
言いかけたロシュを鋭く黙らせる。
「ここだと、人が多すぎる。続きを話すのなら、場所を移そう」
ロシュが取っている宿の一室に四人で移ってきた。
男はしっかり酒瓶と食べ物を持ってきたが、もうほろ酔いだった気分も醒めているようだ。言葉もなく、黙々とついてきた。
さほど広くない部屋の中で、思い思いの場所に座る。ミゼアスはアデルジェスと並んで寝台に腰掛けた。
「……さっき、ロシュが言いかけたとおり、僕は娼館に売られた。ヴァレン……カリナちゃんはあまり馴染まないから、ヴァレンで通させてもらうよ。とにかく、ヴァレンとは娼館で出会った」
ミゼアスを案じるように、アデルジェスが手を握ってくる。温かい手に勇気付けられ、ミゼアスは口を開いた。
「そ、その娼館がどこか、教えてくれ!」
椅子から身を乗り出すようにロシュが叫ぶ。
しかしミゼアスは一瞥を投げかけただけで、表情は動かさない。
「教えてどうするの?」
「決まっている、助けに行く」
「助け? あの子を一晩買って、売上を助けてやるってこと?」
「なっ……」
ミゼアスが冷たく言い放つと、ロシュは目を見開いて口ごもった。
「違うの? じゃあ、身請けしたいってこと?」
「身請け……とにかく、自由にしてあげたい。娼館なんて……かわいそうに……」
ロシュの呟きが、ミゼアスの胸をちくりと刺す。
「そう。たとえば身請けしたとして、それからどうするの? 自由にしたから後は好きにしろって放り出すの?」
胸の疼きを隠すように、ミゼアスは表情を伺わせない声で問いかける。
「それとも妻にする? あの子は男だから、西方じゃあ風当たりがきついと思うけれど」
自ら口にした言葉が、ミゼアスをも突き刺す。忘れかけていた今朝の悪夢が蘇ってくる。
男が興奮した様子で立ち上がり、ミゼアスの肩をつかむ。強い力にミゼアスが顔をしかめると、アデルジェスが男の手を引き剥がした。
「あ……悪い……」
睨み付けるアデルジェスに怯えながら男は手を戻し、謝る。
アデルジェスはそれ以上何もしなかったが、ミゼアスとロシュの間から、ミゼアスと男の間に椅子を持って移動してきた。
「……まあ、その様子だと当たりっていうことか。とりあえず、元気に過ごしているよ」
肩をさすりながらミゼアスは苦笑を浮かべる。
「そうか……よかった……」
男は大きく息を吐き出し、安堵したように笑う。
すると今まであっけに取られたようにミゼアスと男とのやり取りを眺めていたロシュが、驚愕の表情でおそるおそる口を開いた。
「フェイちゃん……ジェスの話だと、きみは確か娼館に売られ……」
「しっ」
言いかけたロシュを鋭く黙らせる。
「ここだと、人が多すぎる。続きを話すのなら、場所を移そう」
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男はしっかり酒瓶と食べ物を持ってきたが、もうほろ酔いだった気分も醒めているようだ。言葉もなく、黙々とついてきた。
さほど広くない部屋の中で、思い思いの場所に座る。ミゼアスはアデルジェスと並んで寝台に腰掛けた。
「……さっき、ロシュが言いかけたとおり、僕は娼館に売られた。ヴァレン……カリナちゃんはあまり馴染まないから、ヴァレンで通させてもらうよ。とにかく、ヴァレンとは娼館で出会った」
ミゼアスを案じるように、アデルジェスが手を握ってくる。温かい手に勇気付けられ、ミゼアスは口を開いた。
「そ、その娼館がどこか、教えてくれ!」
椅子から身を乗り出すようにロシュが叫ぶ。
しかしミゼアスは一瞥を投げかけただけで、表情は動かさない。
「教えてどうするの?」
「決まっている、助けに行く」
「助け? あの子を一晩買って、売上を助けてやるってこと?」
「なっ……」
ミゼアスが冷たく言い放つと、ロシュは目を見開いて口ごもった。
「違うの? じゃあ、身請けしたいってこと?」
「身請け……とにかく、自由にしてあげたい。娼館なんて……かわいそうに……」
ロシュの呟きが、ミゼアスの胸をちくりと刺す。
「そう。たとえば身請けしたとして、それからどうするの? 自由にしたから後は好きにしろって放り出すの?」
胸の疼きを隠すように、ミゼアスは表情を伺わせない声で問いかける。
「それとも妻にする? あの子は男だから、西方じゃあ風当たりがきついと思うけれど」
自ら口にした言葉が、ミゼアスをも突き刺す。忘れかけていた今朝の悪夢が蘇ってくる。
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