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第二章 南へ
62.対照的
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「……きみは何が言いたいんだ」
わずかに眉をひそめ、ロシュが憮然とした声を漏らす。
「あなたは全ての責任を負う覚悟があるの? 偶然が重なって、盛り上がった勢いで言っちゃっているだけじゃないの?」
悪夢は無理やり押し込め、ミゼアスは毅然と顔を上げて問いかける。
ロシュがはっとした顔をする。自らに問いかけるように胸を押さえ、ゆっくりと大きく息を吐き出した。
「……少し頭を冷やせっていうことか」
自嘲するような笑みをうっすらと浮かべ、ロシュは呟く。
「まずはあの子が今どうしているか、聞いてみてからのほうがいいんじゃないかな。それであの子が助けを必要としていて、あなたに助けられると思うのなら、そうするのもいい」
「そうだな……」
「じゃあ、まずはその娼館がどこにあるかから話そうか」
ミゼアスが再び語り出そうとすると、ミゼアスの手を強く握る温もりを感じた。アデルジェスが心配そうに、ミゼアスの手を握る力を強めてきたのだ。
ミゼアスの胸に突き刺さる痛みが、和らぐ。
大丈夫だよ、というようにミゼアスはアデルジェスに微笑みかけた。
「不夜島……知っているかな、この国一番の高級娼館といわれる島。ヴァレンは今もまだ、あの島にいる」
「不夜島……」
ロシュと男が同時に呟く。
ロシュはやや苦しみも混じる複雑そうな表情、男は単純に感嘆の表情という違いはあったが、両者とも知っているようだ。
「その顔だと、二人とも知っているみたいだね。ヴァレンはそこの上級白花だ。一花から五花まである格付けのうち、あの子は四花。順位だと……今なら多分、片手で数えられるうちに入るね」
「そんなに……」
「すげえ……カリナ嬢様……」
ますますロシュの表情が曇る。対照的に男は尊敬に顔を輝かせた。
「とっくに借金も返し終わっている。何故島を出ないのか聞いてみたら、島のほうが面白そうだと答えたよ。身請け話もちらほら来ていたけれど、全部断っていたね」
「……助けなんて必要ないってことか」
力なく首を左右に振り、ロシュはため息を吐き出した。
「正直言って、僕はそう思うね。あの子は日々を楽しく過ごして、好きに生きているよ。あの子くらい元気な白花は他にいないね」
「カリナ嬢様……立派になってるんだな……元気でよかった」
不夜島と聞いてから男の表情が明るくなったのが、面白い。
不夜島の白花といえば、そこいらの男娼とは格が違う。単純に身を売るのではなく、美貌と才知をもって愛を売るとされる。かつての尊敬される存在としての名残を未だに留めているのだ。
それでも西方出身のミゼアスは、身を売ることに変わりはないと、苦い思いを捨てきれない。ロシュが先ほど漏らした『かわいそう』という言葉は、ミゼアスの思いそのままでもある。
目の前の男はおおらかな南方の人間らしく、単純に感心しているようだ。これくらい楽観的な考えができれば、ミゼアスも幸せだったのかもしれない。
じわじわと胸に広がる痛みを、アデルジェスの手の温もりだけが和らげてくれる。
大丈夫、本物のアデルジェスはあの夢のようなことは言わない。こうしてミゼアスを守ってくれている。
ミゼアスはアデルジェスの手を強く握り返し、本来の目的を思い返す。
自分の過去すら明かして語ったのは、尋ねたいことがあったからだ。
わずかに眉をひそめ、ロシュが憮然とした声を漏らす。
「あなたは全ての責任を負う覚悟があるの? 偶然が重なって、盛り上がった勢いで言っちゃっているだけじゃないの?」
悪夢は無理やり押し込め、ミゼアスは毅然と顔を上げて問いかける。
ロシュがはっとした顔をする。自らに問いかけるように胸を押さえ、ゆっくりと大きく息を吐き出した。
「……少し頭を冷やせっていうことか」
自嘲するような笑みをうっすらと浮かべ、ロシュは呟く。
「まずはあの子が今どうしているか、聞いてみてからのほうがいいんじゃないかな。それであの子が助けを必要としていて、あなたに助けられると思うのなら、そうするのもいい」
「そうだな……」
「じゃあ、まずはその娼館がどこにあるかから話そうか」
ミゼアスが再び語り出そうとすると、ミゼアスの手を強く握る温もりを感じた。アデルジェスが心配そうに、ミゼアスの手を握る力を強めてきたのだ。
ミゼアスの胸に突き刺さる痛みが、和らぐ。
大丈夫だよ、というようにミゼアスはアデルジェスに微笑みかけた。
「不夜島……知っているかな、この国一番の高級娼館といわれる島。ヴァレンは今もまだ、あの島にいる」
「不夜島……」
ロシュと男が同時に呟く。
ロシュはやや苦しみも混じる複雑そうな表情、男は単純に感嘆の表情という違いはあったが、両者とも知っているようだ。
「その顔だと、二人とも知っているみたいだね。ヴァレンはそこの上級白花だ。一花から五花まである格付けのうち、あの子は四花。順位だと……今なら多分、片手で数えられるうちに入るね」
「そんなに……」
「すげえ……カリナ嬢様……」
ますますロシュの表情が曇る。対照的に男は尊敬に顔を輝かせた。
「とっくに借金も返し終わっている。何故島を出ないのか聞いてみたら、島のほうが面白そうだと答えたよ。身請け話もちらほら来ていたけれど、全部断っていたね」
「……助けなんて必要ないってことか」
力なく首を左右に振り、ロシュはため息を吐き出した。
「正直言って、僕はそう思うね。あの子は日々を楽しく過ごして、好きに生きているよ。あの子くらい元気な白花は他にいないね」
「カリナ嬢様……立派になってるんだな……元気でよかった」
不夜島と聞いてから男の表情が明るくなったのが、面白い。
不夜島の白花といえば、そこいらの男娼とは格が違う。単純に身を売るのではなく、美貌と才知をもって愛を売るとされる。かつての尊敬される存在としての名残を未だに留めているのだ。
それでも西方出身のミゼアスは、身を売ることに変わりはないと、苦い思いを捨てきれない。ロシュが先ほど漏らした『かわいそう』という言葉は、ミゼアスの思いそのままでもある。
目の前の男はおおらかな南方の人間らしく、単純に感心しているようだ。これくらい楽観的な考えができれば、ミゼアスも幸せだったのかもしれない。
じわじわと胸に広がる痛みを、アデルジェスの手の温もりだけが和らげてくれる。
大丈夫、本物のアデルジェスはあの夢のようなことは言わない。こうしてミゼアスを守ってくれている。
ミゼアスはアデルジェスの手を強く握り返し、本来の目的を思い返す。
自分の過去すら明かして語ったのは、尋ねたいことがあったからだ。
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