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第二章 南へ
71.きっと大丈夫
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三人は老人の家を後にして町の宿を取り、ロシュの取った部屋に集まる。部屋はアデルジェスとミゼアスが同室で、ロシュが別に一室を取った。
「ヴァレンに手紙を書くよ。夕月花のこと、もう少し詳しく教えてもらえる?」
「ああ……」
ロシュは頷いて、話し始める。
夕月花は、その地に根付くためにまず生贄を必要とする。そこで生贄を捧げた一族が世話をすることにより、花を咲かせるのだという。
定期的に生贄を捧げなくては、花は枯れてしまうらしい。
かつてローダンデリアで夕月花が咲いていたことがあるそうだ。しかし、あるとき絶えてしまったという。それが長い年月を経て、十年ほど前に蘇った。
ロシュが父親から話を聞いたのも、この蘇ったという噂が流れてきたときだったという。
おそらく、かつて夕月花が絶えたのは、生贄を捧げ続けることに嫌気がさしたためだろう。それなのに、また生贄を捧げたのか、と。
ミゼアスは話を聞きながら、手紙をしたためていく。ヴァレンの生家のこと、夕月花のこと、わかっていることをできる限り詳細に記す。
おそらく、ヴァレンには危機が迫っているのだろう。早く伝えなくてはと、ペンを走らせる。
ひととおり書き終えると、ミゼアスは胸にたまった重い息を吐き出した。
ヴァレンは賢い。おそらく、そう簡単に罠にかかることはないはずだ。そう自らに言い聞かせ、心を落ち着かせる。
ミゼアスがゆっくりと深呼吸をしていると、肩にぽん、と手を置かれた。
それまでずっと黙って見守っていたアデルジェスが、気遣うようにミゼアスの肩に手を置いたのだ。
アデルジェスが触れた場所から、ゆっくりと緊張がほぐれていくようだった。
心配そうにミゼアスを伺うアデルジェスを見上げ、ミゼアスは微笑みを浮かべた。
不安を胸に抱えながらも、まずは休もうとロシュと頷きあい、ミゼアスとアデルジェスは自分たちが取った部屋に戻ってきた。
「ジェス……ごめんね。ジェスにはよくわからない話ばかりで、退屈だったでしょう? 僕に付き合わせちゃって……」
「そんなことないよ。ヴァレンは、ミゼアスにとっては弟のような存在なんでしょう? 何だか危険が迫っているような感じだし……もし、何かできることがあったらしてあげないと」
アデルジェスは落ち着かせるようにミゼアスの髪を撫でる。大きな手が、安堵をもたらしてくれるようだった。
「ジェス……ありがとう……」
ミゼアスはアデルジェスの胸に顔を埋め、ぎゅっとしがみついた。
「俺に気を使う必要なんかないよ。遠慮しないで、ミゼアスの好きなようにして。島でも別の場所でも、どこでも行くんだったら行ってもいいし、俺もできる限りミゼアスの助けになるように頑張るから」
優しくミゼアスの背中を撫でながら、アデルジェスはミゼアスを甘やかす。穏やかな愛情がミゼアスを温め、包んでくれる。
きっと大丈夫だという思いが広がっていった。
腕の中からアデルジェスを見上げて唇を突き出せば、アデルジェスは優しく口づけてくれた。軽くからかうように啄み、じゃれあう。
やがてゆっくりと互いに舌を絡めあわせ、濡れた音を響かせる。
ミゼアスを安心させるように、アデルジェスの動きは穏やかで、性急な求め方はしてこない。ついこの間までぎこちなかったのに、随分と上達したものだ。思わず笑いがこぼれてしまいそうだった。
アデルジェスの背中に手を回し、ミゼアスは優しい口づけに酔う。
やがて口を離し、互いにくすりと笑いを漏らした。
「……今はちょっと花嫁修業がおろそかになっちゃっているけれど、僕、頑張って立派な『およめさん』になるからね。料理も頑張っていろいろ覚えて、ジェスに美味しいものを食べさせてあげる」
「楽しみにしているよ。この間の肉団子は、本当に美味しかった。ミゼアスの作るものは、きっと何でも美味しいんだろうなあ」
二人で他愛もない話をして、笑いあう。
ヴァレン絡みのことが解決したら、また料理を習えるところを探そう。ミゼアスはそう決意し、もう一度アデルジェスに口づけをねだった。
「ヴァレンに手紙を書くよ。夕月花のこと、もう少し詳しく教えてもらえる?」
「ああ……」
ロシュは頷いて、話し始める。
夕月花は、その地に根付くためにまず生贄を必要とする。そこで生贄を捧げた一族が世話をすることにより、花を咲かせるのだという。
定期的に生贄を捧げなくては、花は枯れてしまうらしい。
かつてローダンデリアで夕月花が咲いていたことがあるそうだ。しかし、あるとき絶えてしまったという。それが長い年月を経て、十年ほど前に蘇った。
ロシュが父親から話を聞いたのも、この蘇ったという噂が流れてきたときだったという。
おそらく、かつて夕月花が絶えたのは、生贄を捧げ続けることに嫌気がさしたためだろう。それなのに、また生贄を捧げたのか、と。
ミゼアスは話を聞きながら、手紙をしたためていく。ヴァレンの生家のこと、夕月花のこと、わかっていることをできる限り詳細に記す。
おそらく、ヴァレンには危機が迫っているのだろう。早く伝えなくてはと、ペンを走らせる。
ひととおり書き終えると、ミゼアスは胸にたまった重い息を吐き出した。
ヴァレンは賢い。おそらく、そう簡単に罠にかかることはないはずだ。そう自らに言い聞かせ、心を落ち着かせる。
ミゼアスがゆっくりと深呼吸をしていると、肩にぽん、と手を置かれた。
それまでずっと黙って見守っていたアデルジェスが、気遣うようにミゼアスの肩に手を置いたのだ。
アデルジェスが触れた場所から、ゆっくりと緊張がほぐれていくようだった。
心配そうにミゼアスを伺うアデルジェスを見上げ、ミゼアスは微笑みを浮かべた。
不安を胸に抱えながらも、まずは休もうとロシュと頷きあい、ミゼアスとアデルジェスは自分たちが取った部屋に戻ってきた。
「ジェス……ごめんね。ジェスにはよくわからない話ばかりで、退屈だったでしょう? 僕に付き合わせちゃって……」
「そんなことないよ。ヴァレンは、ミゼアスにとっては弟のような存在なんでしょう? 何だか危険が迫っているような感じだし……もし、何かできることがあったらしてあげないと」
アデルジェスは落ち着かせるようにミゼアスの髪を撫でる。大きな手が、安堵をもたらしてくれるようだった。
「ジェス……ありがとう……」
ミゼアスはアデルジェスの胸に顔を埋め、ぎゅっとしがみついた。
「俺に気を使う必要なんかないよ。遠慮しないで、ミゼアスの好きなようにして。島でも別の場所でも、どこでも行くんだったら行ってもいいし、俺もできる限りミゼアスの助けになるように頑張るから」
優しくミゼアスの背中を撫でながら、アデルジェスはミゼアスを甘やかす。穏やかな愛情がミゼアスを温め、包んでくれる。
きっと大丈夫だという思いが広がっていった。
腕の中からアデルジェスを見上げて唇を突き出せば、アデルジェスは優しく口づけてくれた。軽くからかうように啄み、じゃれあう。
やがてゆっくりと互いに舌を絡めあわせ、濡れた音を響かせる。
ミゼアスを安心させるように、アデルジェスの動きは穏やかで、性急な求め方はしてこない。ついこの間までぎこちなかったのに、随分と上達したものだ。思わず笑いがこぼれてしまいそうだった。
アデルジェスの背中に手を回し、ミゼアスは優しい口づけに酔う。
やがて口を離し、互いにくすりと笑いを漏らした。
「……今はちょっと花嫁修業がおろそかになっちゃっているけれど、僕、頑張って立派な『およめさん』になるからね。料理も頑張っていろいろ覚えて、ジェスに美味しいものを食べさせてあげる」
「楽しみにしているよ。この間の肉団子は、本当に美味しかった。ミゼアスの作るものは、きっと何でも美味しいんだろうなあ」
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