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第二章 南へ
73.誘拐事件
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ちょうど翌朝、ローダンデリアを通過する駅馬車が出るというので、同じ宿でもう一泊することにした。
ローダンデリアまでは、その日のうちに着くようだった。ゆっくりと宿で休み、朝になると三人は出発する。
天候にも恵まれ、馬車は順調に進んでいく。日が暮れる前に無事、ローダンデリアに到着した。
馬車を降りて、さてどうしようかと三人が考えていると、二人の兵士が現れた。巡回でもしているのだろうかと思ったものの、どう考えてもまっすぐ三人の元にやってくる。
どうしたのだろうかと、三人は顔を見合わせた。
もしや、ローダンデリアではまだ事件の真っ最中で、立ち寄るのは早計だっただろうか。いや、だからといってミゼアスたちのことなど、ローダンデリア側に知られているとは思えない。
もしかしたら、旅人を呼び止めているのだろうか。
それならば、ただ観光に来ただけだと答えればよいだろう。
ミゼアスは同じようなことを考えたらしいロシュと目配せをしあい、アデルジェスには黙って合わせるようにといった眼差しを送る。
「フェイミゼアス・リーネイン様はいらっしゃいますか?」
ところが、兵士の言葉は意外なものだった。ミゼアスの正式名を持ち出してきたのだ。兵士たちの態度に威圧するようなものはなく、丁寧で友好的に振る舞っている。
ミゼアスは訝しく思いながらも、素直に足を一歩、踏み出す。
「僕です」
宣言したミゼアスに向かって兵士たちは頭を下げると、穏やかに口を開く。
「ローダンデリア領主がお待ちしております。どうぞ屋敷へ。ご案内いたします」
何がどうなっているのかわからないまま、三人は馬車に乗せられた。
途中の兵士たちの態度も、連行といったものではなく、ご案内といった丁寧なものだった。ただ、何の用なのかと尋ねても、領主に聞いてほしいとしか答えない。
小高い丘の上にある屋敷に向かい、馬車は軽快に駆けていく。
三人は顔を見合わせるが、答えなど得られるはずもない。
やがて屋敷へと到着すると、応接室らしき場所に通された。一級品ばかり見慣れたミゼアスにとっては、質素ともいえる部屋だったが、広さはそれなりにある。
部屋の中には二人の男がいた。一人がにこやかな笑みを浮かべて、口を開く。
「ようこそ。お待ちしておりました。私がローダンデリア領主です」
領主は燃えるような赤い髪に、海のような青い瞳を持つ、二十代半ば程度の男だった。丸い鼻には愛嬌があり、人好きのする笑顔が魅力的だ。美青年といえるほどではない、ごく普通の顔だったが、どこか人を安心させるような、柔らかい印象を受ける。
ヴァレンの従兄ということになるのだろうが、あまり似ていない。瞳の色だけは同じだが、すっきり整った顔立ちの美少年であるヴァレンとは随分違う。
「もしかしたら、あなた方がいらっしゃるかもしれない、という連絡があったのですよ」
領主はちらり、と横に視線を移す。
視線の先には、一人の大男が立っていた。金茶色の髪を浅く刈り込んだ、逞しい身体つきの男だ。背筋を伸ばして立つ姿は堂々としていたが、ミゼアスの目にはやや緊張しているようにも見えた。
コホン、と咳払いをすると、領主は口元を歪ませて笑みを形作る。
「誘拐事件を嗅ぎまわっているそうですね。でも、もうあなた方は袋のネズミです。さあ、覚悟してください」
ローダンデリアまでは、その日のうちに着くようだった。ゆっくりと宿で休み、朝になると三人は出発する。
天候にも恵まれ、馬車は順調に進んでいく。日が暮れる前に無事、ローダンデリアに到着した。
馬車を降りて、さてどうしようかと三人が考えていると、二人の兵士が現れた。巡回でもしているのだろうかと思ったものの、どう考えてもまっすぐ三人の元にやってくる。
どうしたのだろうかと、三人は顔を見合わせた。
もしや、ローダンデリアではまだ事件の真っ最中で、立ち寄るのは早計だっただろうか。いや、だからといってミゼアスたちのことなど、ローダンデリア側に知られているとは思えない。
もしかしたら、旅人を呼び止めているのだろうか。
それならば、ただ観光に来ただけだと答えればよいだろう。
ミゼアスは同じようなことを考えたらしいロシュと目配せをしあい、アデルジェスには黙って合わせるようにといった眼差しを送る。
「フェイミゼアス・リーネイン様はいらっしゃいますか?」
ところが、兵士の言葉は意外なものだった。ミゼアスの正式名を持ち出してきたのだ。兵士たちの態度に威圧するようなものはなく、丁寧で友好的に振る舞っている。
ミゼアスは訝しく思いながらも、素直に足を一歩、踏み出す。
「僕です」
宣言したミゼアスに向かって兵士たちは頭を下げると、穏やかに口を開く。
「ローダンデリア領主がお待ちしております。どうぞ屋敷へ。ご案内いたします」
何がどうなっているのかわからないまま、三人は馬車に乗せられた。
途中の兵士たちの態度も、連行といったものではなく、ご案内といった丁寧なものだった。ただ、何の用なのかと尋ねても、領主に聞いてほしいとしか答えない。
小高い丘の上にある屋敷に向かい、馬車は軽快に駆けていく。
三人は顔を見合わせるが、答えなど得られるはずもない。
やがて屋敷へと到着すると、応接室らしき場所に通された。一級品ばかり見慣れたミゼアスにとっては、質素ともいえる部屋だったが、広さはそれなりにある。
部屋の中には二人の男がいた。一人がにこやかな笑みを浮かべて、口を開く。
「ようこそ。お待ちしておりました。私がローダンデリア領主です」
領主は燃えるような赤い髪に、海のような青い瞳を持つ、二十代半ば程度の男だった。丸い鼻には愛嬌があり、人好きのする笑顔が魅力的だ。美青年といえるほどではない、ごく普通の顔だったが、どこか人を安心させるような、柔らかい印象を受ける。
ヴァレンの従兄ということになるのだろうが、あまり似ていない。瞳の色だけは同じだが、すっきり整った顔立ちの美少年であるヴァレンとは随分違う。
「もしかしたら、あなた方がいらっしゃるかもしれない、という連絡があったのですよ」
領主はちらり、と横に視線を移す。
視線の先には、一人の大男が立っていた。金茶色の髪を浅く刈り込んだ、逞しい身体つきの男だ。背筋を伸ばして立つ姿は堂々としていたが、ミゼアスの目にはやや緊張しているようにも見えた。
コホン、と咳払いをすると、領主は口元を歪ませて笑みを形作る。
「誘拐事件を嗅ぎまわっているそうですね。でも、もうあなた方は袋のネズミです。さあ、覚悟してください」
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